新必殺仕置人 濡衣無用 | 俺の命はウルトラ・アイ

新必殺仕置人 濡衣無用

ブログ再開します。

2023年12月22日早朝は「年内更新は

無理かな」と思われる状況でしたが、

本日23日「記事を書ける時間が持てる

かもしれない」という流れになりました。

 

しかし、何時更新休止せざるを得ない

状況になるか分からないことも確かで

す。

 

休止する場合はご了承下さい。

 

寒さ厳しい年末年始です。

 

皆様 お体ご自愛下さい。

 

記事では文体を敬体から常体にします。

『新必殺仕置人』「濡衣無用」

(『新・必殺仕置人』「濡衣無用」)

テレビ映画 トーキー 

54分  カラー(一部白黒)

昭和五十二年(1977年)七月十五日放送

 

製作国 日本

製作言語 日本語

 

 オープニングナレーション

 のさばる悪を なんとする

 天の裁きは 待ってはおれぬ

 この世の正義も あてにはならぬ

 闇に裁いて 仕置する

 南無阿弥陀仏

 

 川の中を老人男性庚申の月三が泳ぐ。月

三は虎の名を呼ぶ。

 庚申の夜遊里で遊び人念仏の鉄は遊女から

モテモテだ。

 

 観音長屋において己代松は、首に縄の跡

があり記憶を失っている娘きぬを保護する。

 

 月三は二十年前の庚申の夜の日に札差一

家約二十名が毒殺された事件の下手人とし

て捕らえられた。

 

 雨の日に与力は牢を脱した月三が江戸に

舞い戻った噂を聞き捕縛するように命じ、

中村主水に「お前に月三が捕らえられるか」

と嫌味を言う。

 

 寅の会では三本杉の仕置が百両で競りに

かけられた。三本杉と名乗っている富豪金

貸町人の前身は同心平田である。妻秋野は

昔月三の女房であった秋である。

 

 仕置人達は三本杉殺しは難しいから止め

てくれと元締虎に頼む。

 

 虎はどなたも引き受けないならば私が仕

置すると名乗りでる。「元締が仕損じたら

俺達が三本杉に消される」と仕置人達は怯え

る。

 

 「その時は三本杉を俺が殺る」と死神が

仕置を受ける意向を示した。

 

 三本杉仕置は鉄が競り落とした。死神は

鉄に相談を持ち掛ける。

 

 鉄は虎・死神から月三を紹介される。

 

 二十年前庚申の夜、月三は鎧櫃を背負っ

た平田後の三本杉と札差屋の邸近くですれ

違った。

 

 毒殺事件の後平田は現場近くに居たという

理由で月三を捕え拷問にかける。月三は無実

を主張で「おめえこそ下手人だろう」と平田

を糾弾した。平田は激怒し褌一枚で水攻めに

している月三に更に残酷な拷問を為した。

 

 月三は責められても無実を主張したが、家

の庭から盗まれた五百両の金が出てきたこと

と女房お秋から犯行についての証言を語られ

罪を着せられた。

 

 お秋はその後平田の愛人になり、平田は

金貸三本杉、秋は秋野の名を名乗り、ふた

りは夫婦になった。

 

 月三は平田が札差一家毒殺の下手人で自身

の家に五百両の金を埋め、お秋は買収話を持ち

かけられ、金と贅沢暮らし欲しさに裏切ったと

告発する。

 

 平田とお秋の仕置を月三は悲憤をこめて鉄

に頼む。虎は月三に命を救われた事を語り、

どうしても月三さんの頼みは断れないんだと

鉄に語った。

 

 おきぬは優しい己代松の人柄に感動し彼を

支えた。

 

 己代松も暖かいおきぬの人柄に惹かれる。

 

 三本杉は妻秋野に娘おきぬは何故家を出た

のかと問う。おきぬの身を母秋野も案じてい

る。三本杉は我ら夫婦は悪事を犯した身だが、

おきぬにとっては良き父・良き母であった筈

だとして愛娘の家出の事由が分からない。

 

 月三脱獄の噂を聞いた三本杉は復讐される

ことを恐れ用心棒の侍達の警護を強固なもの

にする。

 

 正八は三本杉邸の地下に潜み厳重な屋敷の

警戒を知る。

 

 絵草子屋の会議で正八は鉄・松・中村主水・

おていに三本杉が芸人を呼び芸を見る日しか

仕置の機会はないことを述べた。四人の仲間は

その日に決行することを確認する。

 

 己代松は三本杉仕置の危険性を感じ、もしも

のことを思い、おきぬに手紙を書き、箪笥に小

判を入れる。

 

 月三の容態が深刻になる。

 三本杉・秋野仕置に執念を燃やす月三は、

仲間虎の手を握りながら病死した。

 

 三本杉が屋敷に芸人を呼ぶ日が来た。

 

 己代松・おていは清国の人々に扮し、正八

は上方の落語家に化けて三本杉邸に入る。

 

 おていは見事な芸を見せた。

 

 正八は落語を語り、庚申の夜の物語を語る。

三本杉は二十年前の札差屋一家毒殺の犯行を

想起し精神の気分を崩す。

 

 己代松が隙を見て竹鉄砲で三本杉を射殺す

る。

 

 正八・おていと共に走り抜けて逃げた。

 

 追ってくる侍達を主水が斬るが、逆襲に遭い

主水も傷を追う。

 だが、主水は襲い掛かってくる侍達を斬り

捨てる。

 

 秋野は愛娘おきぬとの再会を祈り、金泥写経を

為していた。

 

 鉄が読経する。秋野は不審を感じ近付く。鉄

は秋野を抱きしめ接吻し骨はずしで殺害した。

 

 己代松が観音長屋の家に帰ると、おきぬの姿

は無かった。

 

 中村家において怪我をした主水は妻りつ・姑

せんに支えられる。

 

 

 キャスト

 

 

 藤田まこと(中村主水)

 

 

 中村嘉葎雄(巳代松)


 

 

 火野正平(正八)

 

 

 中尾ミエ(おてい)

 

 

 

 河原崎建三(死神)

 

 

 マキ(屋根の男)

 

 神田隆(同心平田 三本杉)

 弓恵子(お秋 秋野)

 

 

 

 藤村富美男(元阪神タイガース)(元締虎)

 

 

 近藤宏(庚申の月三)

 石川えり子(おきぬ)

 

 

 玉生司朗(与力)

 飯田覚三(老同心)

 入江慎也(勘定方の役人)

 

 佐名手ひろ子(おもん)

 三笠敬子(女郎)

 山上洋子(女郎)

 和田かつら(女郎)

 

 伊波一夫(番太)

 新郷隆(用心棒)

 渡辺憲悟(用心棒)

 丸尾好広(用心棒)

 宍戸大全(用心棒)

 

 松尾勝人(役人)

 平手靖(門番)

 美鷹健児(改役)

 横堀秀勝(用心棒)

 北村光生(吉蔵)

 

 

 藤沢薫(闇の俳諧師)

 原聖四郎(闇の俳諧師)

 沖時男(闇の俳諧師)

 秋山勝俊(闇の俳諧師)

 伴勇太郎(闇の俳諧師)

 

 

 菅井きん(中村せん)

 

 

 白木万理(中村りつ)

 

 

 

 

 

 山崎努(念仏の鉄)

 

 

 

 

 スタッフ

  

 

 

 制作      山内久司(朝日放送)

         仲川利久(朝日放送)

         桜井洋三(松竹)

 

                                                                                   

 脚本      松田司

 

 

 音楽      平尾昌晃

 編曲      竜崎孝路

 

 

 

 撮影      藤原三郎

 製作主任    渡辺寿男

 

 

 美術      川村鬼世志

 照明      中島利男

 録音      木村清治郎

 調音      本田文人 

 編集      園井弘一

 

 

 助監督     服部公男

 装飾      玉井憲一

 記録      野口多喜子

 進行      佐々木一彦

 特技      宍戸大全

 

 

 装置      新映美術工芸

 床山結髪    八木かつら

 衣装      松竹衣裳

 小道具     高津商会

 現像      東洋現像所

 

 殺陣      美山晋八

         布目眞爾

 題字      糸見渓南

 

 ナレーター   芥川隆行

 

 

 

 オープニング 

 ナレーション作     早坂暁

 

 

 主題歌     あかね雲

 作詞      片桐和子

 作曲      平尾昌晃

 編曲      竜崎孝路

 唄        川田ともこ

 東芝レコード

 

 

 制作協力     京都映画株式会社

 

 

 監督       高坂光幸

 

 

 制作      朝日放送 

         松竹株式会社

 

 ☆

 藤田まこと=はぐれ亭馬之助

 

 中村賀津雄→中村嘉葎雄

 

 二瓶康一→火野正平

 

 

 中尾ミエ=中尾ミヱ

 

 河原崎建三=河原崎健三

 

 マキ=真木勝宏

 

 白木万理=松島恭子=白木マリ

 

 山崎努=山﨑努 

 

 

 山内久司=松田司

 

 平尾昌晃=平尾昌章

 ☆

 早坂暁はノークレジット

 

 芥川隆行のオープニングナレーション

とは別に本篇内にナレーションが別人に

よって語られる。

 

 野島一郎の声であろうか?

 ☆

 

 第二十五話「濡衣無用」は松田司のペンネ

ームで制作山内久司が脚本を書いた。

 

 松田司こと山内久司は昭和六年(1931年)

十一月九日に大阪市に誕生した。京都大学を

経て朝日放送に入局した。制作者・脚本家と

して辣腕を振るい数多くのテレビ映画・テレビ

ドラマを産み出した。

 「必殺シリーズ」の産みの親である。

 

 脚本家松田司として数々の名作シナリオを

執筆している。本作はその一本である。

 

 『必殺シリーズ』の特集番組・回顧番組でト

ークゲストで出演した際はマシンガントークを

鮮やかに語っていた。

 

 朝日放送現役の後は朝日放送顧問を勤めた。

春日太一は著書で時代劇衰退の因を分析して

欲しいよ山内から託されたことを著書で書いて

いた。

 

 平成二十六年(2014年)八月十三日、山内

久司は八十二歳で死去した。

 

 高鳥都の名著『必殺シリーズ秘史』『必殺

仕置人大全』を山内久司に読んで欲しかった。

 

 『必殺シリーズ10周年スペシャル 仕事人

大集合』のいい加減な構成と過去傑作登場人物

の使い捨てと軽薄ドラマ作りに落胆した。この

作品の続編『必殺仕事人Ⅲ』から悪人を仕事人

が倒しつまらないギャグが横行する軽薄ドラマ

に「必殺シリーズ」は腐敗した。ところが視聴

率は爆発的な人気を示し、「時代劇は必殺です」

という標語とともに知名度はアップした。

 いい加減な作りで視聴率を稼ぐという拝金主義

に山内久司が溺れる光景は残念だった。

 

 『新必殺仕置人』リアルタイム視聴者であるわ

たくしには、『必殺仕事人Ⅲ』の軽薄路線は耐え

られなかった。

 

 その感情は今も熱いが、『新必殺仕置人』制作・

脚本で山内久司が番組を産み支えた事実は変わらな

い。

 

 昭和二十三年(1948年)一月二十六日、帝国

銀行椎名町支店において来店した男に赤痢予防と

称する薬を飲まされた十二人の銀行員が毒殺され

た。帝銀事件である。犯人として画家平沢貞通が

逮捕された。

 平沢貞通は死刑判決を受けた。弁護士遠藤誠は

平沢の無罪を力説した。

 平沢貞通は冤罪で捕えられたとわたくしは見て

いる。釈放されないまま、昭和六十二年(1987年)

五月十日、九十二歳で死去した。

 

 本作において平田が札差屋一家を毒饅頭で殺害

するエピソードは帝銀事件に想を得た松田司のド

ラマである。

 

 神田隆・弓恵子・近藤宏・石川えり子のゲスト

出演者の気迫が松田司名シナリオの人物達を鮮や

かに息吹かせた。

 

 平田後の三本杉の憎たらしさは圧巻である。悪

役名優神田隆の凄みが視聴者を震わせる。月三を

拷問にかけるシーンの残酷さに緊張した。

 

 弓恵子が金と贅沢に憧れて無実の夫を嵌めてし

まう秋後の秋野の哀れさを繊細に見せる。彼女の

芸名の名付親は伊藤大輔である。

 

 近藤宏は川泳ぎ・褌一枚での拷問といった壮絶

なシーンを体当たりで演じた。平田への怨念とと

もに裏切った秋への想いもしみじみと感じさせて

くれた。

 若き日と老年の月三を渋い名演で伝えてくれた。

 

 『必殺仕置人』「いのちを売ってさらし首」で

無実の百姓松造を闇の御前として斬首して替え玉

処刑を犯した的場弥平次を憎たらしさたっぷりに

演じた人は近藤宏である。濡衣を着せた的場を演

じた近藤宏が、濡衣を着せられる月三を演じる。

深い配役である。

 

 『必殺仕置人』「閉じたまなこに深い淵」で悪党

清原検校こと弁蔵を重厚に演じた名優は神田隆であ

る、

 

 『必殺仕置人』の悪役巨星二人が被害者と加害者

で激突競演することは興味深い。

 

 

 

 『必殺仕置人大全』において高鳥都は「おきぬ」の

名がタイトルの「濡衣無用」に掛かっていると指摘し

ている。鋭い洞察である。

 

 仕置場面ではおていがチャイナドレスを着て「中国」

の台詞を語る。これも松田司らしい時空飛び越え術と

も言えそうだ。

 

 正八が上方落語を綺麗な大阪弁で語る。

 

 饅頭エピソードは三本杉の二十年前の庚申の夜の

犯行を想起せしめる。

 

 松田司脚本・高坂光幸演出は大詰で平田が札差一家

殺人事件下手人であることを明かす。

 

 神田隆が目の動きで罪の苦悶を演じる。平田の苦悶

に、『ハムレット』においてハムレットが考案した役

者達の毒殺芝居を見たクローディアスが自身の罪を思

い出して明かりを求めて苦悩する場面を思い出した。

 

 清国の人々の服装を着た松が護衛監視の中、三本杉

を銃殺する。

 

 鉄は秋野に一度接吻して、骨はずしで仕置する。

 

 山﨑努が鉄の女への複雑なこころを重厚な演技で

示す。

 

 三本杉・秋野共におきぬへの愛は本当だった。おき

ぬは両親が仕置人に仕置されたことを知らぬまま、ど

こかへ旅立っていく。

 

 高坂光幸の演出は迫力豊かだ。

 

 おきぬが己代松と心を通わせながら去って行く大詰

は切ない。別れたとは言え父三本杉が己代松に射殺さ

れた。後におきぬがこのことを知ればどう思うか?

 

 こうした未来への問いを視聴者に与える松田司の脚

本は深い。

 

 ラストで顔に傷を負う主水がりつとせんに支えら

つつ捕物ではなかったことを告げるシーンも印象的

だ。

 

 

                  南無阿弥陀仏