新必殺仕置人 密告無用 | 俺の命はウルトラ・アイ

新必殺仕置人 密告無用

『新必殺仕置人』「密告無用」
(『新・必殺仕置人』「密告無用)

テレビ映画 トーキー 54分  

カラー(一部白黒)

放映日 昭和五十二年(1977年)五月六日

朝日放送系

 

製作国 日本

製作言語 日本語

 

 オープニングナレーション

 のさばる悪を なんとする

 天の裁きは 待ってはおれぬ

 この世の正義も あてにはならぬ

 闇に裁いて 仕置する

 南無阿弥陀仏

 

 

 南町奉行所同心中村主水は剣術稽古を

休むことがしばしばあった。上司からも

厳しく注意される。稽古欠席は減給処分

にも直結する。

 妻りつ、姑せんの厳しい叱責は減給され

れば離縁するというものである。

 

 岡っ引き亀吉が奉行所で陽気に歌い同

心達の人気者になっている。踊る亀吉を

主水はこかしてさぼるなと厳しく叱る。

 

 主水が去ると亀吉は「偉そうに言いや

がって言いつけちゃうぞ」とせん・りつに

主水の剣術稽古休みを告げることを決める。

 

 正八の絵草子屋に念仏の鉄・おてい・主

水が集う。仕事は己代松一人で十分と鉄は

語る。主水は金が欲しいので仕事を取って

きてくれと鉄に頼む。

 

 金は天下の回り者だと鉄は述べる。主水

は家庭を持つ者の身になってくれと重ねて

頼む。

 

 夜。遊女おくめが川に身を投げようとし

たが人の気配で身を隠す。

 

 己代松は男を竹鉄砲で仕置した。おくめ

は仕置の現場を目撃した。

 

 観音長屋で岡っ引き伊蔵の追求から逃げる

おくめは己代松の家をつきとめ、「人を殺し

て下さい。」と頼む。己代松は「何の話だ」

と問い返す。「夕べ見たんです」とお粂は

述べた。証拠を掴まれている事を知った己

代松は怯える。おくめは歌舞伎の人気役者

菊之丞の暗殺を頼む。

 

 中を覗いた鉄は叶屋の看板女郎おくめを

松は上手く口説き落としたと見る。おくめ

が去ると鉄は「おめえ。巧くやったな」と

松を讃える。

 「そんなんじゃねえや」と松は否定する。

 

 おくめは亭主が居たのだが、菊之丞応援

に燃えていた。菊之丞との座敷で彼に迫られ、

二人は仲睦まじくなる。そこへ伊蔵と叶屋

主人唐兵衛が現れ、強請られ叶屋において

女郎勤めを強制された。

 

 中村家では亀吉の告げ口によりりつとせん

は主水の剣術さぼりを厳重に注意し減俸ならば

離縁と申し渡し、剣術の日をこよりに書き指

にまくように主水に命じた。

 

 松は仕置現場を目撃されたことが死神に知れ

たら仕置されることを思い怖がる。全ての事情

を鉄に打ち明けた。

 

 鉄は主水に松には初心な点があることを述べ、

人別帳でおくめの素性を調べるように頼む。

 

 松はおくめを生かしておくと危険と感じ自ら

仕置しようと決めた。しかし、おくめは伊蔵に

刺されていた。

 致命傷を負ったおくめは伊蔵・叶屋・菊之丞

にはめられた事を離し、男達三者は大店の主人

の妻たちを食い物にして暴利をむさぼっている

ことを告げ、重ねて仕置を託して息絶えた。

 

 飲み屋の屋台で鉄と松は語り合う。親父を

鉄は気絶させて寝かした。松は一度江戸を去

ると決意を語る。鉄は何のために殺し屋をし

ているかを語る。親父が覚醒した。鉄は殴って

再び寝かせる。

 松は自ら金を払って鉄に寅の会の競りにか

けるように頼んだ。

 

 寅の会が開かれた。鉄が五両で仕事を競り

落とす。

 

 正八絵草子屋地下室で鉄は松が資金をはたき

隣の婆さんから預かった鍋も売って仕置料を払

ったことを告げる。仕置の段どりは松が立てる。

 

 おていは豪商杵屋の内儀に扮して正八を連れ

て菊之丞の楽屋に行って食事に誘う。

 

 宴席で菊之丞はおていに迫る。おていは逃げ

て隣室の正八に合図を送る。

 

 己代松が菊之丞を竹鉄砲で仕置する。

 

 鉄は叶屋唐兵衛を骨はずしで殺害した。

 

 主水は伊蔵を暗がりで呼び剣術の相手にな

ってくれと頼み、彼の悪事を糾弾し刺殺する。

 

 剣術稽古に参加した主水は上司に痛めつけ

られ、給金をせんとりつに渡す。せんとりつ

は減俸が無かったことを喜ぶ。

 

 屋台で鉄と松が飲む。親父が頭に包帯をし

ていた。鉄はよく効く薬があり、一両はかか

るとして薬を渡し親父から金を取ろうとした。

 

 松が鉄を殴って気絶させ、「金はいらねえ

よ」と親父に金を返した。

 

 ◎密告への思い◎

 

 

 山﨑努(やまざき・つとむ)は昭和十一年

(1936年)十二月二日千葉県に誕生した。本

作は山崎努の表記である。

 四十歳で仕置人念仏の鉄を演じた。三十六

歳の時代に『必殺仕置人』で初めて演じ凄ま

じい迫力で当たり役を極めた。同じ役は二度

演じないと決めていた山﨑努だが、スタッフ

の熱意を受け、四十歳の時代に『新必殺仕置

人』で二度目の鉄役のオファーを受け、坊主

頭で骨外しの達人鉄サーガの集大成を為した。

第十五話「密告無用」は鉄にとっての仕置の

テーマが語られ、強かな儲け方が示されるエ

ピソードでもある。

 本日令和五年(2023年)十二月二日は、

山﨑努の八十七歳誕生日である。

 

 

 「密告無用」はその名の通り「密告」の言葉

が大きく己代松の心に響くドラマである。

 

 仕置の現場を女郎おくめに目撃された己代松

は、そのことを虎や死神に密告されれば粛清さ

れる。このことへの恐怖感がドラマを支える流

れとなる。

 

 己代松とおくめの出会いに先立って、主水が

亀吉をいじめ、剣術さぼりをせん・りつに「密

告」されるエピソードがある。

 

 亀吉は『必殺仕置屋稼業』のレギュラー登場

人物であった。主水の部下だが、中村家ではり

つとせんに忠実に仕え、主水の様々な行状を報

告し時にお小遣いをもらう。主水の裏稼業につ

いては全く知らない。この『新必殺仕置人』第

十五話一話のみ小松政夫は復帰した。

 

 おくめが自害を決意するシーンでキャメラは

履物を映す。

 名人石原興の撮影術は凄い。

 

 己代松のアップが印象的だ。中村嘉葎雄が松

の繊細さを眼で魅せる。

 

 念仏の鉄は美人女郎おくめを松が上手く誘った

と勘違いするが、仕置を目撃された事情を彼から

聞き、主水におくめの身辺事情探求を頼む。

 

 美人を見てときめき、仕置人仲間の窮地を知り、

チームの崩壊を恐れる。

 

 念仏の鉄の揺れる心を、山﨑努が鮮やかに表す。

 

 岡まゆみがおくめの哀れさを鮮明に表す。ドラマ

の中においてはおくめの「密告」はない。松の心の

中で「密告」されることを想定した恐怖が尋ねられ

た訳だ。

 

 おくめが死亡してから、伊蔵・唐兵衛・菊之

丞の人妻強請りの奸計の手口が語られる。

 

 石橋蓮司・谷口完・坂東三津志郎の悪役ト

リオは憎たらしさが溢れていて素晴らしい。

 

 おていの菊之丞誘いでは、中尾ミエがお内

儀の風格、火野正平が手代の魅力を見せる。

 

 松の菊之丞狙撃、鉄の唐兵衛骨はずし、主水

の伊蔵刺しは迫力豊かだ。

 

 剣術稽古で凄腕の主水が能力を隠し上司に

嬲られるのも「必殺主水シリーズ」の原点確認

でもある。

 

 飲み屋でがめつい鉄は松に殴られ、親父殴り

の罰を受ける。

 

 親父の傷を労わる松の気遣いが印象的だ。

 

 中村勝行脚本・大熊邦也演出のドラマ語りの

流れは光っている。

 

 

 

 

 キャスト

 

 

 藤田まこと(中村主水)

 

 

 中村嘉葎雄(巳代松)

 

 

 火野正平(正八)

 

 

 中尾ミエ(おてい)

 

 河原崎建三(死神)

 

 小松政夫(亀吉)

 

 

 石橋蓮司(伊蔵)

 岡まゆみ(おくめ)

 

 谷口完(唐兵衛)

 坂東三津志郎(菊之丞)

 

 

 藤村富美男(元阪神タイガース)(元締虎)

 

 明石螢子(おふさ)

 寺下貞信(高田屋) 

 千葉敏郎(師範)

 

 出水憲司(同心)

 玉生司朗(与力)

 北村光生(吉蔵)

 布目眞爾(裏方)

 

 藤沢薫(闇の俳諧師)

 原聖四郎(闇の俳諧師)

 堀北幸夫(闇の俳諧師)

 沖時男(闇の俳諧師)

 秋山勝俊(闇の俳諧師)

 

 

 菅井きん(中村せん)

 

 白木万理(中村りつ)

 

 

 山崎努(念仏の鉄)

 

 

 

 スタッフ
 

 制作    山内久司(朝日放送)

       仲川利久(朝日放送)

       桜井洋三(松竹)

 

 脚本         中村勝行

 

 

 音楽          平尾昌晃

 編曲          竜崎孝路

 

 撮影          石原興

 製作主任        渡辺寿男

 

 

 美術          川村鬼世志

 照明          中島利男

 録音          二見貞行

 調音          本田文人 

 編集          園井弘一

 

 助監督         高坂光幸

 装飾          玉井憲一

 記録          杉山栄理子

 進行          黒田満重

 特技          宍戸大全

 

 

 装置          新映美術工芸

 床山結髪        八木かつら

 衣装          松竹衣裳

 小道具         高津商会

 現像          東洋現像所

 

 

 製作補         佐生哲雄

 殺陣          美山晋八

             布目真爾

 題字          糸見渓南

 

 ナレーター       芥川隆行

 

 オープニング 

 ナレーション作     早坂暁

 予告篇ナレーター    野島一郎

 

 主題歌          「あかね雲」

 作詞           片桐和子

 作曲           平尾昌晃

 編曲           竜崎孝路

 唄            川田ともこ

 東芝レコード

 

 

 制作協力         京都映画株式会社

 

 監督           大熊邦也

 

 

 制作            朝日放送

               松竹株式会社

 

 

 ☆

 藤田まこと=はぐれ亭馬之助

 

 

 中村嘉葎雄=中村賀津雄

 

 

 二瓶康一→火野正平

 

 中尾ミエ=中尾ミヱ

 

 河原崎建三=河原崎健三

 

 

 白木万理=松島恭子=白木マリ

 

 山崎努=山﨑努 

 

 

 山内久司=松田司

 

 平尾昌晃=平尾昌章

 

 

 早坂暁・野島一郎はノークレジット。

 ◎

 

            南無阿弥陀仏