シャンドライの恋 | 俺の命はウルトラ・アイ

シャンドライの恋

『シャンドライの恋』

 L’assedio

 映画 94分 トーキー カラー

 1999年2月5日 イタリア公開

 平成十二年(2000年)二月五日 日本公開

 製作国 イタリア イギリス

 製作言語 英語 イタリア語

 製作 マッシモ・コルテジ

 脚本 ベルナルド・ベルトルッチ

    クレア・ぺプロ―

 原作 ジェームズ・ラスダン

 音楽 ジャンニ・シルベストリ

 撮影 ファビオ・チャンケッティ

 編集 ヤコポ・クワドリ

 

 出演

 

 タンディ・ニュートン(シャンドライ)

 

 デヴィッド・シューリズス(キンスキー)

 

 クラウディオ・サンタマリア(アゴスティーノ)

 シリル・ヌイ(シャンドライの夫)

 

 監督 ベルナルド・ベルトルッチ

 ◎

 鑑賞日時場所

 平成十二年(2000年)三月一日パラダイスシネマ2

 二度鑑賞

 ◎

 本作シーンの画像はインターネットより拝借引用し

 ている。

 ◎

 

 

 アフリカ黒人女性シャンドライの夫が逮捕された。

夫の政治活動が体制に睨まれた。

 イタリアに渡ったシャンドライは白人音楽家キン

スキーの家に住み込み清掃作業員として勤務する。

 

 労働しつつ医科大学に学ぶ。これがシャンドライの

日常である。

 

 シャンドライはクローゼット代わりに使用している

リフトのうちから疑問符の書かれた五線譜を見た。リ

フトはキンスキーの部屋に繋がっている。リフトを通

して花や指輪が届けられる。

 当惑したシャンドライは指輪を返しに行くとキンス

キーは告白した。

 

 キンスキーはシャンドライの仕事ぶりを見つつ惹か

れた。

 シャンドライは思わず「夫を返して」と語った。キ

ンスキー邸の品々が無くなって行く。

 シャンドライは夫の無事を知らせる手紙を受け取り

安堵する。

 

 キンスキーの屋敷の中ではグランドピアノが残った。

小さな音楽会がキンスキーによって開かれた。夫が釈放

され彼女のもとに帰ってこれることをシャンドライは

知る。

 

 グランドピアノの売却でキンスキーが夫の釈放資金

を払っていてくれたことをシャンドライは知った。

 

 シャンドライはキンスキーのベッドに入って情を交

わした。

 

 

 ☆人妻と音楽家の恋☆

ベルナルド

 ベルナルド・ベルトルッチ

 Bernardo Bertolucci

 映画監督・脚本家。

 1941年(昭和十六年)3月16日イタリアパルマにお

いて、詩人アッティオ・ベルトルッチの息子として生

まれる。

 ピエル・パオロ・パゾリーニ監督のもとで学び、19

62年第一回監督作品『殺し』 La  Comarre Secca

(トーキー作品 92分 白黒)を演出し、同年9月19

日に公開さる。

 以後数多くの傑作映画を演出し、世界の映画芸術を

輝かせた。

 2018年(平成三十年)11月26日イタリアローマに

おいて死去。77歳。

 

 タンディ・ニュートンは1972年11月6日にイギリス

に誕生した。本名はThandiwe Adjewa Newtonである。

仏教徒である。25歳でシャンドライを熱演した。

 

 『シャンドライの恋』はベルナルド・ベルトルッチ

57歳の監督作品である。

 黒人人妻と白人音楽家の恋愛ドラマである。序盤は

アフリカの激しい日差しの森で愛する夫を権力によって

奪われたシャンドライの哀しみを描く。

 

 タンディ・ニュートンの涙は強烈だった。

 

 イタリアに渡ったシャンドライは医科大学に学びつ

つ清掃作業員を為すのだが、雇い主の音楽家キンスキー

に口説かれる。人妻シャンドライを諦められないキン

スキーは熱意を抑えられない。

 

 デヴィッド・シューリズは切ない恋を繊細に表現

する。許されない事かもしれないが夫のいる女性を

好きになってしまい熱く口説く。

 

 肌の色も音楽の趣味も違う人妻と音楽家は惹かれ

合う。

 

 夫の無事と再会への夢を知りシャンドライは知り

感激するが、そこにキンスキーが私財を擲って尽力

してくれたことを知る。

 

 ここでポイントになるのが、キンスキーはシャン

ドライが人妻で彼女の幸のみを願って私財を擲った

か?或いは見返りを求める下心で恩を着せて彼女を

モノにしようという魂胆だったか?これらの疑問が

起こると思う。後者はやはり違う。

 

 デヴィッド・シューリスの演技を見て、無償の

愛で好きな人の力になれればということがキンスキー

の気持ちだったのであろう。

 

 だからこそ、シャンドライはキンスキーの真心に

感動したのだろう。

 

 しかし、夫と自身の為に尽力してくれたとはいえ、

人妻が恩返し的に情を交わすだろうか?この疑問は

確かにある。

 

 この辺りがベルナルド監督の性問題表現方法な

のかなとも感じた。

 

 『ラスト・タンゴ・イン・パリ』『1900年』の

激烈な性描写を思うと、『シャンドライの恋』の

人妻・音楽家の恋はかなりおとなしい演出という

印象を受ける。

 

 ベルナルド演出作風にも変化が見られる。

 

 1970年代の大作の熱き探求に対し、1990年代

は繊細で穏やかな表現になっている。

 

 ベルナルド・ベルトルッチが2012年に演出し

た最後の監督作品『孤独な天使たち』は表現が

爽やかで吃驚した。

 

 29歳の若さで耽美な悲劇『暗殺の森』を演出

した天才は老年になって少年の感受性を探求し、

作風にも青少年の一途さが見受けられた。

 

 『シャンドライの恋』はベルナルド・ベルト

ルッチ演出・作風の歩みでも転機の一本になっ

たと想像している。

 

 わたくし個人はドキドキ緊張しながら鑑賞し

た。

 

 2000年3月1日パラダイスシネマ2の床に財布

を落としたが、本編上映が始まりスクリーン映像

を一瞬たりとも見逃したくなかったので鑑賞に集

中し終映後下を見て拾えてほっとしたことをよく

覚えている。

 

 「ベルトルッチ監督はこういう繊細な演出もす

るのか!」と感嘆しもう一枚1日上映チケットを購

入し鑑賞した。

 

 ベルナルド・ベルトルッチ監督作品で一日二度

鑑賞した活動写真は本作のみである。

 

 タンディ・ニュートンとデヴィッド・シューリ

スがベルトルッチの期待に応え、銀幕に人妻と音

楽家の切ない恋物語を繊細に咲かせた。

 

 

                    合掌