ブラック・レイン 参滴目 リドリー・スコット監督作品 | 俺の命はウルトラ・アイ

ブラック・レイン 参滴目 リドリー・スコット監督作品

 『ブラック・レイン』

 Black Rain

 映画 125分 カラー

 1989年9月22日 アメリカ公開

 1989年10月7日 日本公開

 製作国 アメリカ

 

製作 スタンリー・R・ジャッフェ

     シェリー・ランシング

 

 脚本 クレイグ・ボロディン

     ウォーレン・ルイス

 音楽 ハンス・ジマー

 撮影 ヤン・デ・ボン

 

 

出演

 

 マイケル・ダグラス(ニック・コンクリン)

 

 

 アンディ・ガルシア(チャーリー・ビンセント)

 

 高倉健(松本正博)


 

 ケイト・キャプショー(ジョイス)

 

 

 國村隼(吉本)

 小野みゆき(ホステス)

 ガッツ石松(片山)

 安岡力也(菅井の用心棒)

 島木譲二(菅井の子分)

 

 

 内田裕也(梨田)

 神山繁(大橋警視)


 

 松田優作(佐藤浩史)

 

 

 若山富三郎(菅井国雄)

 


 

 監督 リドリー・スコット

 

 

 ☆

 奥村勝=若山富三郎

   =城健三朗

   =城健三郎

 ☆

 2014年11月24日アレックス・シネマ

 にて鑑賞

 

 2021年9月21日に画像をインターネッ

トより拝借引用し記事を再編しました。

 

 2014年11月25日発表記事・2023年4月

2日発表記事を再編しています。

 

 

 拙感想文は物語の核心に言及しています。

鑑賞予定の方はご注意下さい。

 ☆ 

 

  ニューヨークのはみだし刑事のニックはバ

イク競争が趣味で危険を承知で賭けレースを

楽しむ。自宅では留守番電話には別れた妻

から子供の養育費が滞納になっていることを

指摘される。

 

 歯の矯正等、出費に苦しむニックは、犯罪者

の金を横領したことを上司に疑われ、内心悩ん

でいた。

 

 若い二枚目の同僚チャーリーは闘牛ごっこが

好きだ。

 

 二人がレストランで食事をしていると、日本人

客数人のテーブルにいた。

 

 闇の組織の人間達だった。

 

 「動くな!プルプルプル」と威嚇の声を挙げて

銃を構えた日本人とその親分らしきサングラス

の日本人男性が入ってきた。

 

 ニック・チャーリーはサングラスの男とその

部下のただならぬ殺気を警戒する。

 

 サングラスの日本人男性は、眼鏡を外し、「久

しぶりだな」と挨拶し、「しばらくだ」と返答した年

配のやくざらしき男性から、偽札印刷の為の原

版を取る。

 

 彼が去ろうとすると、取られた男性は、「相変

わらずひよっこだな」とからかう。

 

 「はん?」

 

 サングラスをかけていた男は鋭い眼光を光ら

せるて怒る。次の瞬間、男はやくざとからかった

男性を刺殺し仲間と共に逃げる。

 

 ニック・チャーリーは男を追い詰め、乱闘の末に

逮捕する。

 

 男の名は佐藤浩史。

 

 ニック・チャーリーの二人が大阪まで護送するこ

とになった。

 

 佐藤は沈黙していたが、ニックを見てニヤリと

嘲笑い肘鉄を喰らう。

 

 ニックは飛行機機内でも平気で喫煙する。

 

 伊丹空港に着くと日本人刑事二人が佐藤の身

柄の引き取りの為に現れ、書類を出してニックに

署名を求め、ニックは応じて、求められるまま手錠

の鍵を渡した。

 

 佐藤は合掌の後手をピストルの型にして、ニック

に向けて不敵に微笑んで護送されていった。

 

 その後、刑事二人が現れ、佐藤の身柄引き渡

しを求めて、ニック・チャーリーは贋者刑事に犯

罪者を渡してしまった失敗を後悔する。

 

 贋刑事の一人は佐藤に刺殺されていた。

 

 仲間も手にかけるほど、佐藤は恐ろしい男で

あった。

 

 大阪の警察で、ニック・チャーリーは、刑事が

蕎麦を食べる光景に注目する。

 

 刑事の名は松本正博で警部補だ。松本は真面

目で一徹な男で英語が堪能だ。

 

 大橋警視はニック・チャーリーが佐藤を放して

しまったことへの謝罪が無いことに不満を露に

する。ニックは怒り出す。

 

 大橋は日本での捜査は日本警察の仕事であり、

ニック・チャーリーから拳銃を預かる。

 

 乱暴者のニックと真面目な松本は合わないことが

多い。佐藤のアジトを追跡し、ニックは紙幣を秘かに

取る。この光景を松本が目撃し落胆し上司に報告し

た。

 

 しかし、ニックの目的は紙幣の怪しさを見抜くこと

であり燃やして灰から偽札と見破る。

 

 アジトから逃げた佐藤はヘルメットを被って、秘か

にニックの動きを注視する。

 

 佐藤の狙いは偽札の印刷であり、彼が昔仕えて

いた近畿の大物やくざ菅井親分との抗争であった

ことが判明する。

 

 夜の難波でニック・チャーリーは暴走族に囲まれ

る。

 

 ニックと松本の対立がしばしば起こり、チャーリー

は難波のバーで松本を誘い、レイ・チャールズの

曲をデュエットして交流を深める。

 

 ニックは魅惑的なアメリカ人ホステスジョイスから

菅井との接点を聞くが、「ガイジンには無理」と諭され

る。

 

 菅井が入店するや沢山の人々がかしこまる。関西

の大親分なのだ。

 

 早朝の梅田駅。ニックとチャーリーが酔いをさまし

つつ散策していた。バイクを暴走させる男がチャー

リーを挑発し、チャーリーが闘牛士の仕種でスーツで

迎えるとバイクの男はスーツを奪った。チャーリーは

スーツにパスポートを入れていて慌てて追っかける。

 ニックはただならぬ罠と直観し、チャーリーを制止

するが、チャーリーは動転したまま追跡する。

 

 駐車場

 

 バイクの男は唾を吐きかけてスーツを捨てた。チャ

ーリーが悲しみをこめて拾って闘牛のゲームを再開

しようとするとバイクの男と暴走族の男達が、チャーリー

を囲んでナイフで刺した。

 

 ニックはチャーリーの名を呼ぶ。

 

 一台のバイクがチャーリーめがけて走る。

 

 運転している男は佐藤だった。

 

 不敵に笑いナイフを抜いて、チャーリーの首を無残

にも斬り落として殺害し、大笑して去って行った。

 

 ニックは佐藤への復讐と逮捕を誓い、松本に協力を

要請する。

 

 二人は佐藤の情婦のホステスのを追跡し、佐藤と菅

井が製鉄所の一室で会談する。

 

 菅井は佐藤の横暴がやくざの仁義に反するものと

して厳しく叱責して、偽札印刷の原版を渡せと命ずる。

 

  佐藤は「あんたの息のかかってねえハワイ」をくれ

と縄張を求める。

 

 菅井「お前、長生きしたいやろ?」

 

 佐藤「あんた程長生きするつもりはねえよ」

 

 会談は物別れになった。ニックが佐藤を追うが逃げ

られ、かけつかた大橋はニックを叱責し松本を謹慎

処分にする。

 

 ニックはゴルフ練習中の菅井に近づき、彼の豪邸

で協力を要請する。

 

 菅井は小学生の頃に空襲に遭い、爆撃が「黒い雨」

であったことを語り、ニックの国アメリカが新たな価値

観を日本に押し付けて、佐藤のような人間を生んだの

だと怒る。

 

 ニックは組織と関係なく、自分が友達の仇討で佐藤

を倒したいと思いを語る。

 

 菅井「ぶち殺したろか、こんガキャ」

 

 怒った菅井だったが、銃をニックに与える。

 

 農場の中の大きな家屋で菅井と親分衆が会合を持

ち、佐藤が詫びに現れる。

 

 ニックは張り込み、彼の危機を松本が救う。

 

 やくざたちの会合では、菅井が佐藤に「おんどれも

極道ならけじめの付け方は知っとるやろ!指詰め!」

と叱責し、佐藤は承諾する。

 

 包丁で指を詰めた佐藤は痛みを堪えて原版を渡す。

 

 菅井の激怒の前に降伏したように見えた佐藤だが、

秘かに反撃の機会を待っていたのだ。そして佐藤の

強烈な一撃が放たれた。

      

 2014年11月24日アレックス・シネマで鑑賞した。

改めてスコット監督の映す梅田・難波に衝撃を受けた。

 

 マイケル・ダグラスのはみだしデカニックは荒っぽい

短気者だが、内面は仲間思いである。ヘビースモーカ

ーでイライラを抑えられない暴れん坊のニックが次第

に松本の大きさと優しさに心打たれていく道をマイケル

・ダグラスが鮮やかに表現する。


 

 アンディ・ガルシアは優しく知的なチャーリーを好演

する。いいねえ。

 

 梅田駅で佐藤に斬首されるシーンは悲愴美を見せ

た。

 

 

 高倉健は昭和六年(1931年)二月十六日福岡県に

誕生した。本名は小田剛一(おだ・たけいち)であ

る。東映任侠映画で大スタアとなった。

 平成二十六年(2014年)十一月十日、八十三歳

で死去した。

 

 高倉健の松本は重厚で深い存在感を明かす。作品

全体にとって柱となる人物の重みを健さんが渋く伝え

てくれた。暴れん坊のニックを弟にように見守る松本

は、日本人の古き良き「男」の姿を代表している。寡黙

で誠実でじっと堪える。松本の忍耐は男の生き方を教

えてくれる。

 

 神山繁が厳格な大橋警視を凄み豊かに演ずる。

 

 健さんを叱り飛ばせる風格と怖さを出せるのは、

やはりこの方である。

 

 

 この映画で最も強烈な存在感を示すのは佐藤役の

松田優作と菅井親分の若山富三郎である。

 

 松田優作は昭和二十四年(1959年)九月二十一日

に誕生した。父は日本人、母は韓国人である。

 関東学院大学を経て文学座に学び、テレビドラマ・

映画に出演した。演技に対しては非妥協で打ち込み、

徹底した研究で工夫を重ねて挑む。役を生きる凄み

はフィルムからも伝わってくる。1970年代・1980

年代に映画・テレビのスタアとして活躍した。映画

監督としても辣腕を振るっている。

 佐藤役は長年の夢であったハリウッド・デビュー

でもあり、鬼気迫る芸は観客の心を圧倒した。

 撮影中身体は癌に冒されていたが、安岡力也にのみ

打ち明けて撮影に臨んだと言われている。

 作品完成後から約一か月後の平成元年(1989年)

十一月六日、四十歳の若さで死去した。

 本作完成版フィルムは松田優作が命の全てを賭けて

佐藤に燃えたことを伝えてくれている。

 

 『ヨコハマBJブルース』における近藤明(田中浩二)

の「DJ。俺、『ゴッドファーザー』のアル・パチーノ

みたいに成りたかったんだ。」の台詞はDJ役で主演し

た松田優作が書いたという。

 

 本作において松田優作演ずる佐藤浩史は、アンディ

・ガルシア演ずるチャーリー・ビンセントの首を梅田

駅近くの駐車場で斬る。

 翌年1990年アンディ・ガルシアは『ゴッドファーザ

ーPARTⅢ』においてアル・パチーノのマイケル・コル

レオーネの甥ビンセント・マンシー二役を演ずる。

 2020年には再編版の『ゴッドファーザー最終章 マ

イケル・コルレオーネの最期』が製作・公開された。ふ

たつの『ゴッドファーザー』第三部において、アンディ

・ガルシアは若きゴッドファーザービンセント・マンシ

ー二・コルレオーネを繊細かつ重厚に表現している。

 

 

 

 昭和四年(1929年)九月一日生まれの若山富三郎

の本名は奥村勝である。城健三朗の芸名を名乗った

時期もある。アクション・柔術・殺陣の名手であり日

本映画の歴史を支えた大名優・大スタアである。

 

 菅井対佐藤の対決を若山富三郎と松田優作の激突

競演で語る。

 

 

 

 二人の凄みは圧巻である。

 

 残酷な斬殺を平然と行い、金と利益を独占しようとする

若きやくざ佐藤。

 

やくざは仁義と礼節を守れと主張する老親分の菅井。

 

 この世代間闘争が、松田優作と若山富三郎という最強

の配役で実現したことが本作の魅力の源となっている。

 

 若山先生めがけて全身全心でぶつかり挑む優作の

役者魂が作品の緊張感を熱く燃やした。

 

 佐藤が菅井の腕を匕首で刺すシーンが最大の山場と

なっている。

 

 やくざの対立ドラマの中に、息子が父を越えようとする

挑戦心が描かれている。

 

 脇役の若山先生・優作さんの存在感に圧倒された。

 

 健さんとマイケルはちょっと気の毒でもある。

 

 優作さんは怖かった。

 

 若山先生の迫力は強烈である。

 

 日本版予告編とポスターでは留めだったが、納得で

ある。健さんが出演していても、留めは若山先生なの

だ。その重厚さは圧倒的なのだ。

 

 若武者優作さんと大御所若山先生。

 

 二人の凄みが全編の中で最も強烈な存在感を放って

いる。


 

 改めて震えて、観賞後ロケ地梅田駅を見に行った。

リドリー・スコットの撮影魔術に感嘆した。

 

 

 

 

 記録映画『健さん』においてマイケル・ダグラスは

撮影で健さんとうどんを沢山食べたことを語っていた。

 

 

 ラストの高倉健の爽やかさは輝いている。

             

          

                 合掌