ディック・トレイシー
『ディック・トレイシー』
Dick Tracy
映画 トーキー 105分 カラー
1990年6月15日 アメリカ封切
1990年12月24日 日本封切
製作国 アメリカ合衆国
製作言語 英語
製作会社 タッチストーン・ピクチャーズ
シルバー・スクリーン・パートナーズⅣ
マルホランド・プロダクション
配給 ブエナ・ビスタ・ピクチャーズ
（アメリカ）
ワーナー・ブラザーズ（日本）
製作 ウォーレン・ベイティ
製作総指揮 ハリー・M・オズボーン
アート・リンソン
フロイド・マトラックス
原作 チェスター・グールド
脚本 ジム・キャッシュ
ジャック・エップス・Jr
音楽 ダニエル・エルフマン
スティーヴン・ソンドハイム
歌曲 『スーナーオアレイター』
作詞・作曲 スティーヴン・ソンドハイム
編集 リチャード・マークス
撮影 ヴィットリオ・ストラーロ
美術 リチャード・シルバート
装置 リック・シモンズ
メイクアップ ジョン・カリオン・ジュニア
ダグ・ドレスグラ―
出演
ウォーレン・ベイティ（ディック・トレイシー）
マドンナ（ブレスレス・マホニ―）
アル・パチーノ（アルフォンス “ビッグ・ボーイ”
キャプリス）
グレン・へドリー（テス・トゥルーハート）
チャーリー・コスモ（キッド）
ダスティン・ホフマン（マンブルス）
ウィリアム・フォーサイス（フラットトップ）
エド・オロス（イッチ―）
ヘンリー・シルヴァ（インフルエンス）
チャールズ・ダ―二ング（ブランドン署長）
キャシー・ベイツ（ミセス・グリーン）
ディック・ヴァン・ダイク（ジョン・フレッチャー検事）
ジェームズ・トル―カン（ナンバーズ）
マンディ・パティンキン（88キーズ）
R・G・アームストロング（プルーンフェイス）
ポール・ソルヴィノ（リップス・マンリス）
ジェームズ・カーン（スパッズ・スパルド―二）
キャサリン・オハラ（テキシ―・ガルシア）
監督 ウォーレン・ベイティ
◎
ウォーレン・ベイティ＝ヘンリー・W・ベイティ
◎
鑑賞日時場所
平成三年（1991年）六月三十日
祇園会館
画像はインターネットより拝借引用
している。
◎
1930年代の都市において刑事ディック・ト
レイシーは活躍していた。宿敵アルフォンス
“ビッグ・ボーイ” キャプリスの魔の手から街
を守る為ディックは奮闘している。
テス・トゥルーハートという恋人とキッド
という少年相棒はしっかりとディックを支え
ている。
ビッグ・ボーイはクラブリッツのオーナーリ
ップスが命乞いするのも無残に斬り捨てて惨
殺し、その愛人ブレスレスを自身のものにし
た。
ディックはリップス殺害事件を調査し、ブレ
スレスに協力を頼むが、ブレスレスは彼の愛を
求める。
ビッグ・ボーイの部下にディックは襲われる
がキッドの力で危機を突破した。
テスは魅惑的なブレスレスに言い寄られ揺らぐ
ディックの内面に気付いたか、彼の愛に疑問を
感じる。テスから別れの手紙を受け取ったディ
ックは悲しむ。
意見が合わないスパルド―二をビッグボーイは
無残に車ごと爆殺する。
何者かがジョン・フレッチャー検事を殺害し
た。眠らされたディックは身体を検事殺害現場
に運ばれ容疑をかけられる。テスは何者かに拉
致される。
ディックはテスを探しビッグ・ボーイのアジト
に監禁されている彼女を見つける。このことは影
の人物が仕組んだことであった。
警官隊がついてビッグボーイを追う。ビッグ・
ボーイはテスを人質に取って逃げる。ディックは
恋人テスを奪還し、宿敵ビッグ・ボーイを捕える
為に後を追う。
◎絢爛たる色彩で描くアクションドラマ◎
ウォーレン・ベイティ製作・主演・監督の
劇映画である。
1937年3月30日、ヘンリー・ウォーレン・
ベイティ Henry Warren Beatyは誕生し
た。
映画スタア・俳優・脚本家・監督・舞台俳
優・演出家・作家・ピアニストとして活躍し
ている。ハリウッドの中でプレイボーイとし
も名を馳せている。
53歳でオールスタア大作の主人公ディックを
演じ、製作・監督も兼ねた。
マドンナ・ルイーズ・チッコ―二 Madonna
Louise Cicconeは1958年8月16日に誕生した。
31歳でブレスレスを魅惑的に演じた。
アル・パチーノ Al Pacinoは1940年4月
25日にアメリカ合衆国ニューヨーク市ブロンク
スに生まれた。本名はAlfredo James Pacinoで
ある。
十代の頃の綽名はソニーであった。少年時代か
ら苦労多き歩みで進んだが、アクターズ・スタジオ
でリー・ストラスバーグに演技を学んだ。1969年
『ナタリーの朝』で映画初出演を為した。ウィリア
ム・シェイクスピアの戯曲を深く研究している。
若き日からウィリアム・シェイクスピア戯曲の公
演に出演していることを研究書やサイトで聞いてい
る。
50歳で悪のヒーロービッグ・ボーイを軽快に演
じた。
チェスター・グールドの原作コミックは未読であ
る。
ウォーレン・ベイティ監督は、正義の味方ディッ
ク対巨悪ビッグボーイの戦とブレスレス・テスの二
美人に愛されて悩むディックの葛藤を鮮やかに纏め
ているなと感じた。
全編喜劇調で進む。残酷シーンも喜劇的に描かれ
陰湿なイメージはない。
ディックやテスに立ちはだかる謎の人物はあまり
謎めいた描写はせず大体の見当は付くように描かれ
ている。
ポール・ソルヴィノ、ダスティン・ホフマン、
ディック・ヴァン・ダイクといった大御所が短時
間出演するという贅沢さも素敵だ。
名優達が派手なメイクで登場する。
特筆したいのはヴィットリオ・ストラーロの
華麗な色彩現出撮影である。「光で書く」撮影
術はコミカルで軽快なテンポで進む本作におい
ても鮮やかに光っている。
1991年3月25日の第63回アカデミー賞授賞式
においては美術賞・メイクアップ賞・歌曲賞に輝
いた。
アル・パチーノは『ゴッドファーザーPARTⅢ』
のマイケル・コルレオーネの重厚な名演でノミネ
ートされなかったのは残念だが、本作のビッグボ
―イ役でノミネートされた。だが、ビッグボーイ
の喜劇調名演を以てしても受賞は果たせなかった。
この時代アルは無冠の名優だった。勿論賞の有無
で芸は明確になる訳ではない。
ビッグボーイがスパルド―二と意見が合わず二人
は物別れになる。スパルド―二はビッグボーイの冷
酷な命令で車ごと爆殺される。このエピソードをアル・
パチーノとジェームズ・カーンが演じていることは、
明らかに『ゴッドファーザー』を意識した配役であ
ろう。
かつて兄弟の絆を演じた二人が、別の作品では被
害者・加害者で競演する。この試みは支持したい。
因みにアル・パチーノ主演、ジェームズ・カーン
共演作品『ゴッドファーザーPART2』が1975年4
月8日第47回アカデミー賞授賞式において作品賞を
受賞したが、この時のプレゼンターはウォーレン・
ベイティである。
正義の味方ディックが巨悪のボスビッグボーイを
追いつめるドラマが主筋だが、ウォーレン・ベイテ
ィよりも断然アル・パチーノが美味しい。これは贔
屓目ではない。コミカルで喜劇調の大悪党をアルは
軽快に演じた。悪の華を咲かせつつも人間臭い弱さ
や哀れさもたっぷりと魅せてくれた。
悪の脇役でアル・パチーノの豊かな芸が絢爛と咲
いた。
ビッグボーイの喜劇的巨悪の軽快さにアルの名演
が輝き忘れられないフィルムとなっている。
アル・パチーノとヴィットリオ・ストラーロの
協働チームが具現したという点においても歴史的
な作品である。
合掌