リア王 ローレンス・オリヴィエ主演 マイケル・エリオット監督版 1983年 | 俺の命はウルトラ・アイ

リア王 ローレンス・オリヴィエ主演 マイケル・エリオット監督版 1983年

『リア王』

King Lear

テレビドラマ ビデオ映像

1983年4月3日放送

製作・放送 グラダナテレビ

原作 ウィリアム・シェイクスピア

 

出演

 

ローレンス・オリヴィエ(リア)

 

ドロシー・テュティン(ゴネリル)

ダイアナ・リグ(リーガン)

アンナ・カルダー・マーシャル(コーディリア)

 

ロバート・リンゼイ(エドマンド)

ジェレミー・ケンプ(コーンウォール)

 

ブライアン・コックス(バーガンディー)

エドワード・ピーターブリッジ(フランス王)

デヴィッド・トレフォール(エドガー)

ジェフィリー・べイトマン(オズワルド)

 

コリン・ブレイクリー(ケント)

レオ・マッカーン(グロスター)

 

ジョン・ハート(道化)

 

監督 マイケル・エリオット

 

画像はインターネットより拝借

引用している。

 ブリテンの八十代の老王リアは政務に疲労

し、王位は名のみ残して隠居し、国を三分割し

て権力・財産と共に娘達に与える事を決める。

 

 三人の娘が自身を愛する言葉を強く語れば、

沢山の領土と力・財を恵むことを約束する。

 

 長女ゴネリルはオールバニー公爵の妻、次女

リーガンはコーンウオール公爵の妻である。独

身の三女コーディリアには、フランス王とバーガ

ンディー公爵から求婚されている。

 

 老王リアは三人娘に愛の言葉を求める。

 

 ゴネリル・リーガンが甘い世辞を述べると、

単純なリアは沢山の領土と権力と財産を与える。

 

 純真無垢な三女コーディリアは老父リアから

愛の言葉を言ってくれと求められた。娘として

「お父様を愛するのみ」と真心のままに明答し

コーディリアは、飾る言葉は一切言えないと

正直に態度を明示した。

 

 傲慢で我儘なリアは激怒し彼女の追放を決定

する。

 

 忠臣ケントはリアの愚かな決定を諫めるが、

激怒するリアはケントの追放も決めてしまう。

追放を宣告されたケントだが、リアに対する

敬意・忠義は変わらず、変装して名も代えて

仕えたいと内心で希望する。

 

 バーガンディー公爵は、リアから持参金もない

娘でもよろしいかと言われ、求婚の気持ちを終

える。

 

 コーディリアの求婚者フランス王は、彼女の

無垢な真心に心を強く打たれて惚れ直し求婚

する。

 

 コーディリアは、姉のゴネリル・リーガンに

父の身を頼む。

 コーディリアが去ると、姉二人は父王の激怒

に恐れをなし強く警戒する。

 

 

 野心家のエドマンドは、陰謀を巡らせ、兄の

エドガーに反乱の動きがあったという嘘を父グ

ロスターに吹き込み、兄エドガーには危機が迫

っていると告げて伯爵家から去らせて、伯爵家

後継者の地位を入手する。

 

 グロスターは、長男エドガーに裏切られたと思

い込んで憎み、エドマンドの忠義を讃える。

 

 リアは、オールバニ公爵・ゴネリル夫妻の宮殿

に行く。ケイアスと名前を変えて変装し声色を使

うケントはリアにご奉公をと頼む。

 

 ゴネリルの執事オズワルドはリアに冷たい態

度を取って激怒させ、リアの心を受けたケントに

打擲される。

 ゴネリルは、リアに冷酷な態度を取り虐待する。

落ち込み傷ついたリアは憤慨しゴネリルの邸を

出る。

 

 グロスターの城の前でケントはオズワルドと

争い、現れたコーンウォール・リーガンはケント

に足枷をはめる。リアは道化・紳士と共にグロス

ターの城に現れ、ケイアス実はケントが辱めら

れていることに抗議する。

 

 リアはゴネリルに虐待されることをリーガンに

訴えたが、次女は姉を庇い、リアの態度に問題

があるとして謝罪するようにと注意する。

 虐めを受けて謝罪しろ言われリアの怒り・不満

は燃える。ゴネリルも現れ、はリアに供の家来を

減らすようにと求め、リーガンは一人の家来の同

伴も許さない。

 

 

 激怒したリアは嵐の中に身を投じ、激しく怒りを

ぶつける。

 

 道化・グロスター・ケントが懸命に守るリアは、

狂気を装い腰に布のみ巻きトムと名乗るエドガーに

会い、人間本来の姿を見出す。

 

 グロスターは、リア救出をコーディリアと共に

為したいと望むが、エドマンドの裏切りに合い、

コーンウォール・リーガン夫妻の拷問に遭い、

両目を潰される。

 

 リーガンの冷笑から、エドマンドが裏切者で

エドガーを無実の罪で放り出した事をグロス

ターは後悔する。

 

 コーンウォールは彼の非道に怒った召使

と斬り合って、斬殺するが自身も負傷し後に

絶命する。

 

 

 両目を失い生きることに絶望するグロスター

は自殺を決意するが、狂気のリアと再会し、

リアはグロスターと気付き、主従は再会を

喜ぶ。

 トムに扮するエドガーは父、グロスターの

自殺の決意を捨てさせようと奮闘し、刺客

オズワルドと戦って彼を斬る。

 

 フランス王妃となったコーディリアは、姉二

人に父が嬲られたことを聞き、フランス軍を

率いて父王を救出する。

 

 精神が錯乱し狂気に身を焦がしたリアは、

自身を優しく看護してくれる美しい女性が、

娘コーディリアではないかと問い、彼女は

「そうなのです」と頷き、疲労困憊した父を

労わる。

 

 しかし、ブリテン軍はフランス軍を打ち負

かす。コーディリアは命がけで父を守るが、

ブリテン軍に囲まれ、改めて父への愛を語

り、親子はブリテン兵士に捕らえられる。

 

 ゴネリル・リーガンはエドマンドを巡って

争う。

 

 夫コーンウオールが死亡し、未亡人となった

リーガンは有利だ。オールバニー公爵の妻で

あるゴネリルは不利を痛感し、妹の毒殺を決

意する。

 エドマンドは、部下にリア・コーディリア

処刑の命令を伝える。

 

 オールバニーは、ゴネリル・エドマンドの行為

を厳しく糾弾する。

 

 エドガーが表れ、エドマンドに決闘を申し込

み、エドマンドも応戦し、二人は戦い、兄が弟

に致命傷を与える。

 

 エドガーはオールバニーに、父グロスターに

自身の本当の名を告げ親子で再会を確かめ

合い、グロスターは亡くなった事を報告する。

 毒殺されたリーガンと自殺したゴネリルの

死体がオールバニーのもとに運ばれる。

 瀕死のエドマンドは、リア・コーディリアを殺す

ようにと部下に命じたことを告げて息絶える。

 

 リアは、愛娘コーディリアの死体を抱いて現

れて激しく悲しみ、心身全体で苦しむ。

 愛娘コーディリアを殺した下手人であるエド

マンド部下を自ら殺したことをリアは語りつつ、

死体の娘は、息があるかと鏡を口元に近づき曇

りはしないかと最期の試みを為す。だが、コー

ディリアの遺体は呼吸しない。

 

 オールバニー・エドガー・ケントは痛ましい

光景に胸を痛める。

 

 最愛の娘を殺された悲しみに胸が張り裂け

るような苦痛を覚えたまま、リアは死亡する。

 

 ケントは主君のもとに行くという決意を告げ

る。

 

 エドガーとオールバニーは悲しみを痛感する。

 

 ◎ローレンス・オリヴィエの気迫◎

 ローレンス・オリヴィエ

 Laurence Kerr Oliver

 1907年5月22日生まれ。

 1989年7月11日死去。

 

 イギリスの大名優ローレンス・オリヴィエは

75歳でウィリアム・シェイクスピア作『リア王』

のテレビドラマ版に主演しリア役を演じた。

 

 監督はマイケル・エリオットが担当した。

 

 日本ではビデオがリリースされていた時期が

あった。

 

 ゴネリル役のドロシー・テュティンに会えた。

ドロシーが『十二夜』のヴァイオラを舞台で勤め

ていた写真を見ていたので、その映像に会えた

喜びは大きかった。

 

 手強く逞しく粘り強く陰険で冷酷なゴネリルを

表現していた。

 

 ダイアナ・リグのリーガンも凄みがあり、冷酷

非情は光っていた。

 

 アンナ・カルダー・マーシャルはコーディリア

の無垢を鮮やかに表現していた。

 

 ロバート・リンゼイはエドマンドの冷徹さと残

酷さを繊細に表現する。

 

 ジェレミー・ケンプが酷薄で冷酷で弱い者いじめ

が大好きなコーンウォールの憎たらしさたっぷりに

演じていて怖かった。

 

 レオ・マッカーンのグロスターが目つぶしをされ

る拷問シーンのケンプの残忍さの探求に息を呑んだ。

 

 そのレオのグロスターも深かった。迷ってエドガ

ーの忠義が分からず、眼を潰さされてリーガンから

エドマンドの裏切を聞かされ不明を恥じる。父の苦

闘がレオの重量感溢れる芸に光る。

 

 コリン・ブレイクリーのケントは凄みがあった。

 

 ジョン・ハートは道化のおかしさよりも優しさを

伝えてくれる名演であった。

 

 オリヴィエは鬼気迫る熱演であった。

 

 嵐の中でゴネリル・リーガンの虐待・いじめに

抗議するシーンは迫力豊かであった。

 狂気の果てに鳥類のみそそざいも性の営みをし

ていると語るが、このシーンのオリヴィエの語り

は重かった。

 

 最愛の娘コーディリアに救われ、再会の喜び

を噛みしめるシーンも心を打たれた。

 

 大詰において最愛の娘コーディリアを殺され

狂気の果てに苦しみ死ぬシーンにオリヴィエの

芸魂の燃え上がりを感じた。

 

 生意気な事を言うなとお叱りを受けるかもし

れいない。

 映画館未鑑賞でビデオ視聴・テレビ放送版視

聴しかしていなのだが、ローレンス・オリヴィエ

主演・監督の『ヘンリイ五世』『ハムレット』

『リチャード三世』にはのめりこめないのだ。

 「何かが違う」という違和感を覚える。

 

 綺羅星の如く名優が並びオリヴィエ自身の

ヘンリイ五世・ハムレット・リチャードは迫力

豊かなのだが、どうしても作品には首を傾げ

てウィリアム・シェイクスピア戯曲の映像版

としては躍動感を感じられぬ。

 

 だが、ナレーション担当の『ロミオとジュリ

エット』ゼフィレッリ版の声は全身で震えた。

 

 スチュアート・バージ監督版『オセロ』に

おけるオセロ役のローレンスの名演をビデオ・

テレビで視聴し全身で熱くなった。

 

 そして、本作のリアの渾身の熱演に心身全体

で緊張し感嘆した。

 

 名演の中の名演である。

 

 ローレンス・オリヴィエは「私は能動的で、

ジョンは受動的」とインタビューで語っていた。

 

 本作のリアの悲劇は熱く激しく探求されてい

た。

 

 1994年のラジオドラマ版『リア王』を聞くと

ジョン・ギールグッドは厳かにリアの悲しみを

明かしていた。

 

 マイケル・エリオットの演出は重厚であり

堂々たるリズムで進んでいた。

 

 超豪華配役を組んでリアの悲劇を描く。1982

年のマイケル・ホーダーン主演、ジョナサン・

ミラー監督のBBC版『リア王』に対抗意識があ

ったことは間違いないと思われる。

 

 悪に苦しめられ嬲られ命全体を挙げて抗議する

怒れるリアをローレンス・オリヴィエが演技の王

道で現した。

 

 

                   合掌