通し狂言 菅原伝授手習鑑 三段目・四段目 五段目 国立劇場小劇場上演中 | 俺の命はウルトラ・アイ

通し狂言 菅原伝授手習鑑 三段目・四段目 五段目 国立劇場小劇場上演中

国立劇場小劇場

令和五年(2023年)八月三十一日初日

九月二十四日千秋楽

 

第一部 十時三十分開演

『通し狂言 菅原伝授手習鑑』

三段目           車曳の段

              茶筅酒の段

              喧嘩の段

              訴訟の段

             桜丸切腹の段

 

 四段目          天拝山の段

              寺入りの段

              寺子屋の段

第二部 十五時開演

『寿式三番叟』

『通し狂言 菅原伝授手習鑑』

四段目   北嵯峨の段

      寺入りの段

      寺子屋の段

五段目   大内天変の段

 

第三部 十九時開演

『曽根崎心中』

生玉社前の段

天満屋の段

天神森の段

 

 

 

 

 『菅原伝授手習鑑』は菅丞相こと菅原道真の

忍耐と彼に関わる舎人三兄弟とその一族の忠義

を語る浄瑠璃である。

 

 作者は竹田出雲・並木千柳・三好松洛・竹田小

出雲。

 延享三年(1746年)八月二十一日大坂竹本座

にて初演された。

 

 昭和四十一年(1966年)十一月国立劇場が建立

され本館が同月一日に開場した。

寿海

 『寿式三番叟』

 翁役は三代目市川寿海が勤めた。

 国立劇場小劇場は東京における文楽公演の

本城である。

 戦後経済的危機に何度も遭い、分裂もした

文楽だが、国立劇場小劇場という東京での活

動拠点を得て息を吹き返した。

 

 昭和五十九年(1984年)三月大阪日本橋

に国立文楽劇場が開場した。

 

 

 

 初代国立劇場小劇場文楽最終公演が八月三十一

日開幕した。

 

 『菅原伝授手習鑑』の全段通し上演が五月公演・

九月公演に亘って為されることとなった。

 

 梅王丸・松王丸・桜丸三つ子兄弟の忠義を語る。

三人は父四郎九郎後の白太夫の七十の賀の祝いに

参加する。桜丸は父白太夫と妻八重の前で自責の

念から腹を切る。

 

 菅丞相は筑紫で藤原時平の陰謀を知り、刺客

鷲塚平馬の生首を梅の枝で叩き斬り、口から火

を吹き時平の陰謀を糾弾する。

 

 菅丞相より筆法の奥義を伝授された武部源蔵は

戸浪と鳴滝で寺子屋を営みつつ、丞相の息子菅秀才

を匿っていた。


 夫婦は時平の家臣春藤玄蕃と松王丸が、菅

秀才の首を取りにくることを通達される。身

代わりに寺子の一人を身代わりに斬って首を

差し出すという作戦を打ち立てる。

 

 今回中々上演されない『北嵯峨の段』と『大

内天変の段』が上演される。

 

 八重の命を捨てての忠義と菅丞相の時平への

怒りを舞台で聞く。

 

 原作戯曲を読み興奮している。


 わたくしにとっては、舞台でこの二段をまだ鑑賞してない。

 

 文楽は原作浄瑠璃を尊び忠実に上演する演劇で

ある。

 

 「原作に忠実」ということは、読書しない者が

想像し憶測で語っていいことではない。

 

 戯曲を心身挙げて読み聞く。

 

 自己の生涯が戯曲の中に包まれる。

 

 この営みをくぐらなげれば「原作に忠実」な演

劇であるかどうかは絶対に分からないことだ。

 

 原作を読まないで「忠実」か「歪曲」か等と

いうことは分からないことだ。

 

 何故なら原作を読み戯曲に自己を投ずること

で「分からない」世界が教えられるからである。

 

 自己自身の不明への確かめなしに「忠実」か

「不実」かなど絶対に見えないし聞こえない。

 

 分からない事柄を教わりながら観客は戯曲

の広大な世界に包まれて行くのである。

 

 太夫・三味線弾き・人形遣いの三業が原作

浄瑠璃の命を舞台に吹き込む。

 

 古典演劇は原作戯曲に忠実な舞台でなけれ

ば後の時代に存在し得ないものになる。現代

人は私心を排して心身を挙げて古典に学ぶこ

とが課題になる。

 

 文楽太夫は語る前に床本に拝礼する。

 

 大切な営みである。

 

 原作浄瑠璃に崇敬の念を表する。ここから芸

の歩みが始まるのだ。

 

 『菅原伝授手習鑑』は世界文学・世界演劇の

大傑作と言われている。その偉大さは、戯曲を

読むだけでなく、原作の尊さを忠実に舞台化す

る公演が上演されることが必須である。

 

 文楽が日本にあることに深謝する。

 

 最強の技芸で永遠不滅の戯曲の舞台公演を劇場

客席で見聞しうる。

 

 菅丞相が大序や二段目で忍耐に徹している在り

方を示すが「天拝山の段」で大きく変化し激怒を

示すことが印象的である。

 

 理不尽な事柄には妥協忖度せず怒りを露わにす

る。

 

 花火を吹く人形に感嘆する。


 古典を尊ぶ文楽は世界演劇の至宝である。



 わたくしは今月の公演を鑑賞する予定を立てて

いる。チケットは購入した。

 

 鑑賞日を楽しみにしている。




 

 

                    合掌