戦争と人間 第二部 愛と悲しみの山河(後篇) | 俺の命はウルトラ・アイ

戦争と人間 第二部 愛と悲しみの山河(後篇)

『戦争と人間 第二部 愛と悲しみの山河』

 

映画 トーキー 179分  カラー・一部白黒

昭和四十六年(1971年)六月十二日公開  

製作国     日本国

製作言語 日本語

製作      日活株式会社
配給      日活株式会社

 

出演

岩崎信忠(趙延年)

井川比佐志(朴)

石津康彦(甘栗売り)

晴海勇三

波多野憲(武居弘通)

浜口竜哉

二木草之助

西村晃(狩野市郎)

本目雅昭

地井武男(徐在林)

大浜詩郎

大月ウルフ(イワーノフ)

織田俊彦

加藤剛(服部達夫)

河上喜史朗

桂小かん

鴨田喜由

田畑善彦

高原駿雄

高橋幸治(高畠正典)

高橋悦史(伍代英介)

高橋明

高橋英樹(柘植進太郎)

髙城淳一(特高刑事)

龍岡晋(趙大福)

玉井謙介

玉川伊佐男(相沢三郎)

玉村駿太郎(特高刑事)

滝沢修(伍代由介)

辻萬長(大塩雷太)

成合晃

中津川衛

中野十春

南原宏治(陣内志郎)

内田稔(刑事)

野村隆

久遠利三(防人会の男)

久野征四郎

草薙幸二郎(特高刑事)

矢頭昌宏

山田禅二(梅谷庄吉)

山内明(石原莞爾)

山本学(白永祥)

山本圭(標耕平)

前田昌明(梁恩生)

牧野義介(看守)

深江章喜(佐官将校A)

藤岡重慶(板垣征四郎)

藤田陽一

藤田啓而

小泉郁之助

後藤陽吉

江原真二郎(灰山浩一)

榎木兵衛

相原巨典

浅若芳太郎

芦田伸介(伍代喬介)

斉藤誠

沢美鶴

坂口芳貞(李)

木島一郎

衣笠真喜男

北大路欣也(伍代俊介)

雪丘恵介

三国連太郎(鴫田源次郎)

宮原徳平

柴田新三

庄司三郎

白井鋭

弘松三郎(伍代本社総務部長)

光でんすけ

氷室政司

英原穣二

千賀拓夫

 

和泉雅子(梅谷邦)

吉永倫子(戸越ユキ)

吉永小百合(伍代順子)

栗原小巻(趙瑞芳)

浅丘ルリ子(伍代由紀子)

木村夏江(全明福)

岸田今日子(鴻珊子)

水戸光子(お滝)

鈴村益代

若原初子

佐久間良子(狩野温子)

 

 

鈴木瑞穂(ナレーター)  

 

協力

俳優座

文学座

劇団民藝

 

第一部 解説引用映像出演

伊藤孝雄(標拓郎)

井上昭文(荒木五郎)

二谷英明(矢次)

吉田次昭(標耕平)

中村勘九郎(伍代俊介)

青木義朗(佐川少佐)

清水将夫(市来善兵衛)

杉本孝次(若杉)

松原智恵子(高畠素子)

☆☆☆

中村勘九郎→十八代目中村勘三郎

三国連太郎=三國連太郎

☆☆☆           

首題  戦争と人間 第二部

尾題  戦争と人間 第二部 愛と悲しみの山河

鑑賞日時場所

平成二十七年(2015年)九月七日

シネ・ヌーヴォ

 

 満州の雨の夜。日本人の白髪の男が

中華民国の馬車を乗り回して三十銭は

かかろうというところを十銭しか払わない

と言い張り、車夫を差別用語で愚弄する。

 

 見合わせた俊介は、白髪の男に「三十

銭払うべきです」と注意する。

 梅谷邦がその問答を聞く。白髪の男は

日本人で中華民国の人間に味方するのか

と怒る。

 

 白髪の男は俊介の名を聞き、俊介は伍

代俊介と名乗る。白髪の男は残りの銭を

泥に向かって放り投げた。

 

 車夫は中華民国の人間を愚弄した日本

人に激しく怒り、俊介に対しても憤怒を

見せて去る。

 

 邦は白髪の男の無礼を嘆きつつ、車夫

の男性の態度もひどいと悲しむ。俊介は

仕方がないと感ずる。邦は働き靴を買い

夜学で学んでいる。

 

 関東軍の田中隆吉中佐・武藤章中佐は

内蒙古を調査する。伍代喬介は作戦を教

えて欲しいと頼み、武藤は満州伍代の貪欲

さに驚く。

 

 東京の伍代邸で当主由介は石原莞爾と

お茶を飲みながら語り合う。満州国が綏遠

省を越えて出兵するには奉勅命令が必要と

石原莞爾は述べる。

 

 由介は日本とアメリカ・イギリスとの戦

争は避けたいという気持を語り、満州で力

を蓄えてからとして、弟喬介の強硬路線に

は反対する。

 

 昭和十一年(1936年)十一月関東軍は

内蒙古綏遠省のホンゴルド付近に徳王を

首班とする蒙古軍を指揮して中国を攻撃

した。

 

 平和主義の青年標耕平は反戦ビラを街

の壁に張っていた。

 

 伍代順子は恋人標耕平が勤務する工場

を尋ねるが留守だと言われる。彼の同僚か

ら刑事が工場に聞き込みにきたと伝言を頼

まれる。

 

 耕平は順子に反戦運動がどれほど小さい

ものでも治安維持法に引っ掛けられると不安

を述べる。「一人前になったら順子さんと結婚

したいと妄想していました」と切ない心を語る

耕平は刑務所に送られる身であることを思う。

 

 順子は、貴方を助けることはできなくても、

貴方を待つことはできてよと語る。貴女に心

配されることが一番つらいと耕平は苦しい胸

のうちを語る。

 

 投獄された耕平は獄中で学生島津と意気

投合する。トラック運転手の朝鮮人の囚人

朴は耕平や島津を励ます。

 

 島津は刑事たちから殴る蹴るの暴行を受

ける。

 

 

 由介は愛娘順子が「耕平さんを助けてあげて

欲しいの」と頼んでくる言葉を聞き、「標は社会

の秩序を壊そうとしている」ので助けられないと

いい、「もし法が間違っているならば、法と戦う息

子俊介や標を守るだろうが、法は誤っていない」

と述べる。

 

 革命は実現不可能に近いと由介は冷厳に語る。

 

 取調室で刑事が弁当を食べる耕平に茶碗を与え

つつ殴り倒す。

 

  「天皇制はどうなんだ?」

 

  「僕は天皇制から何の恩恵も受けていない!」

 

  「それで天皇制否定についてグループ活動を

  したんだね?」

 

 刑事は耕平に隣室で朴が逆さ吊りにされて刑事

達から竹刀で殴られ流血している光景を見せられ、

「お前もああなるぞ」と警告を受ける。

 

 

 耕平は血まみれの朴に「ゲロしないと殺される

よ」と注意する。朴は君達は気の毒で牢獄を出た

ら徴兵され、侵略戦争に参加させられると同情する。

 階級的良心と戦えるかという朴の問いに耕平は

悩む。

 

 朴は片仮名を指に示す手法で耕平と会話する。

 

  「ドウセシヌナラチョウセンデシニタイ」

 

  「カゾクハ」

 

  「ミンナコロサレタ カントウダイシンサイノ

   トキニ 二ホンノケンペイニ」

 

 耕平は死ぬなよと朴に語り、「朝鮮があんたの

手に戻る迄」と励ます。

 

 関東軍内で石原莞爾と武藤章は対中華民国

との戦争を不拡大か拡大化で激論を為す。

 武藤は満州事変における石原莞爾と板垣征

四郎の独断専行の手法に学んでいるのにお叱り

を蒙るとは心外と気持ちを語る。

 

 

 伍代俊介の部屋に中華民国人の馭者を虐め

た男が来ており、狩野温子の夫市郎であると名

乗りを受ける。市郎は妻温子に信頼されていな

いことを堂々と述べ、彼女の恋人が俊介である

ことを確かめ、忙しい自身に代わって、「可愛が

ってやって下さい」と伝える。俊介は貴方は温子

さんに相応しくないと述べてドアを閉める。

 

 温子は俊介の姉由起子に俊介から「大連ニ

来ラレタシ」という電報を貰ったことを相談す

る。

 由起子は、温子が弟と愛し合っていることを

確かめる。

 

 

 大連の港で俊介は温子と愛し合うだが、二人

の愛の生活は狩野市郎に見つかる。。

 

 俊介は叔父喬介に借金五万円を頼む。

 

 叔父は金を渡し、天津の高畠正則を尋ねろと指

示を出した。

 

 俊介がホテルに戻ると温子からの手紙をホテル

スタッフから渡された。

 

 

 十二月十二日張学良は蒋介石を監禁する。この

事件の後国共合作が成り立った。

 

 趙延年・瑞芳兄妹梁恩生青年と服部達夫医師

は事件について語り合う。

 瑞芳はホテルで日本人夫妻として宿泊してい

ることになっていると服部を誘い室内で日本軍

の軍事倉庫爆発事件に関わっている事を述べ、

日本の憲兵隊に追われていることを報告する。

 

 服部はレジスタンスを続ける事は危険と警告

するが、瑞芳は「私は逃げません」と態度表明

して平和が失われ、獣のような人間伍代英介に

レイプされてから逃げないことを決めたと宣言

する。

 趙家に憲兵隊が瑞芳捜索で押し入り父大福

を連行する。兄延年は父を救えない。

 

 

 瑞芳と達夫の部屋に鴻珊子が現れ一服して

いた。

 

 

 

 昭和十二年七月八日盧溝橋。

 

 銃声が響き、日本軍と中華民国軍の間に戦闘

が起こる。日本守備隊は北京郊外盧溝橋におい

て攻撃の火蓋を切った。

 

 陸軍参謀司令室では石原莞爾が現地軍に

謀略行為はやらぬようにと指示したと述べる。

 

 石原莞爾ら対ソ連戦争に向けて力を蓄えようと

する派閥と対中華民国に派兵しようとする勢力が

対立した。

 

 しかし、七月十一日の閣議で日本内地より三

ヶ師団が派遣されることが決まる。

 七月十九日蒋介石は廬山において対日戦線

辞さずの生命を出した。

 

 由起子は柘植進太郎が歩む姿を見て、乗って

いた自動車が降りてその影を追う。

   

 夜釈放され徴兵される耕平が、軍隊に行くか又

投獄されるかの決心がつかないことを恋人順子に

語る。順子は耕平が徴兵されることに酷過ぎると

嘆く。

 

 

 天津では俊介が高畠に今後の進路を相談する。

 

 

 中華民国で日本軍と中華民国軍の激しい戦闘

が起こる。

 

 字幕

 奉勅

 支那駐屯軍司令部ハ

 平津地方ノ支那軍ヲ

 膺懲シテ同地方ノ

 主要各地ノ安定ニ任

 スヘシ

   閑院宮戴仁

 

  ナレーター「七月二十二日支那駐屯司令部

         に対し奉勅命令が伝達された。

         日本軍隊の統帥者天皇責任に

         おいて軍部の全面的出動即ち

         宣戦布告なき戦争が命ぜられた

         のである。以後八年に及ぶ日中

         戦争の戦端はここに開かれ戦争

         は中国全土に拡大されていった。」

 

監督     山本薩夫

 

原作     五味川純平
脚本     山田信夫

        武田敦

 

企画     大塚和

        武田靖

        宮古とく子

 

 


撮影     姫田真佐久

照明     岩木保夫

録音     古山常夫

美術     横尾嘉良

        深民浩

編集     丹治陸夫

音楽     佐藤勝

助監督    結城良熙

        大沢豊

製作担当者  柴垣達郎

色彩計測   佐藤重明

         内田周作

史料考証   沢地久枝

言語指導   古場重幸

         宋元恩

軍事指導   木島一郎

特殊撮影   日活特殊技術部

特撮      成田亨

現像      東洋現像所

 

 ☆戦争の圧力☆

 

 『戦争と人間 第二部 愛と悲しみの山河』

後篇において、由起子・進太郎、俊介・温子、

耕平・順子、達夫・瑞芳の四組の恋人達が、戦

争の荒波に仲を引き裂かれる。

 

 浅丘ルリ子・高橋英樹、北大路欣也・佐久間

良子、山本圭・吉永小百合、加藤剛・栗原小巻

という美女美男の八人スタアが恋人達を演ずる

という配役は豪華である。

 

 八大スタアが戦争に愛を引き裂かれる恋人

達の苦悩を深く熱演する。

 

 伍代家の中国侵略の野望は重厚な演出と緻密

な演技によって描かれ語られていく。

 

 軍国主義財閥の巨頭兄弟でも、弟喬介は

田中隆吉や武藤章の内蒙古指導により中華

民国攻撃に賛成であり、兄由介は満州におけ

る国力増強で英米に対抗しようとする。

 

 劇中で触れられるように、第一部では中華

民国侵略の首謀者であった石原莞爾が第二

部では慎重論を語る。

 

 芦田伸介は軍部を後押しして金儲けを企む

喬介の野望を豊かに表現する。悪の華は本作

においても絢爛と咲き誇っている。冷酷非情

な野心家だが、悪のヒーローとしての魅力は

豊かである。

 

 滝沢修は慎重に国力戦力を蓄えてから英米

と満洲における争いを為すべきという由介の

冷徹さを厳かに見せる。

 

 山内明の石原莞爾、藤岡重慶の板垣征四郎

の重厚な存在感に圧倒される。

 

 捕らえられた耕平は、取調室で飲食中に拷

問に遭う。

 

 刑事役の草薙幸二郎の虐め演技は圧巻であっ

た。

 

 「天皇制から何の恩恵も受けていない」とい

う耕平の悲しみは時代を超えて公開五十二年後

の今日の日本においても強く響く。天皇制廃止

という平等の願いは、日本国においては殴る

蹴るの暴行を受ける対象になる。

 

 井川比佐志の朴が逆さ吊りにされて竹刀

で刑事に打擲されるシーンは恐ろしい。

 

 ファシズムは平和を願う声を許さない。

 

 獄中で手のひらに指文字で心を書くシーンに

切なさがこみあげてくる。

 

 耕平は絶望的になっている朴を励まし、彼の

家族が関東大震災で憲兵に殺された事を聞く。

 

 井川比佐志が重厚な演技で平和主義者の

朝鮮人男性を勤める。

 

 妻を取られた狩野市郎の嫉妬と屈曲を西村

晃が豊かな演技で粘り強く表現する。俊介に

嫌味を言うシーンの憎たらしさは偉大な芸術で

ある。

 

 大連の温子と俊介の恋は美しいシーンであ

る。

 

 妻の心を掴み、寝取った若い美男子への

嫉妬を西村晃が緻密な芸による笑顔で表現

する。その憎々しさは堪らない。

 

 甥に色恋沙汰に金は出せんといいながら出し

てやる叔父を芦田伸介が逞しく演じる。

 

 佐久間良子と北大路欣也が年上の人妻と年

下の青年の切ない不倫の恋を豊かに表現する。

 

 喬介は鉱山強奪の野望の赴くまま商談相手

だった大福も憲兵に捕らえさせる。ファシズムに

おける金銭欲の流れは止まる所を知らず狂奔

する。

 

 奉天駅における服部と憲兵隊の争いに山本

薩夫のアクション演出が光る。

 

 加藤剛と栗原小巻はまさに美男美女だ。

 

 柘植進太郎と伍代由起子の気品豊かな会話

は絢爛たる物語美を示す。

 

 山本薩夫監督は高橋英樹と浅丘ルリ子の影

と影を見せ、二つの影が近付くと会話が響くと

いう鋭い演出を見せる。

 

 

 切なさがこの名場面に溢れている。

 

 本篇字幕に従い物語要約では盧溝橋事件を昭

和十二年(1937年)七月八日と書いたが、七月

七日が開戦日である。

 

 成田亨の特撮は凄みがある。

 

 徴兵される耕平と令嬢順子の清らかな恋が描

かれる。

 

 戦争の暴力に抗し、愛を貫こうとする順子と

耕平は強い。

 

 

 

 俊介は高畠に徴兵された場合、支那人に

銃口を向けられるかどうかと悩み問いかける。

 

 高畠は無言でその苦悶を聞く。

 

 北大路欣也の動と高橋幸治の静が鮮やかな

対照を見せている。

 

 ラストで「支那軍ヲ膺懲」という奉勅命令が

引用される。

 

 日中戦争の責任者は裕仁である。裕仁の責任

において日中戦争の戦端は開かれ、戦争は中華

民国全土に拡大していく。

 

 山本薩夫監督は、昭和四十六年(1971年)に

この歴史事実を映画で確認した。

 

 

 拙ブログでは平成二十九年(2017年)十一月十

三日・平成三十年(2018年)二月十日・九月十八

日・十九日・二十日・令和元年(2019年)八月十

日・十三日・十四日・十五日・二十八日・九月五

日・十二月三十日・令和二年(2020年)二月十日

・五月十八日・二十二日・二十八日・令和三年(2

021年)二月二十二日・二十六日・三月五日・六月

十二日の二十回に渡って本作感想文を記した。

 

 

 

 日中戦争開戦八十六年・戦後七十八年・封切五十

二年の今年山本薩夫が探求した平和希求の精神に学

ぶ。

 

 麻生太郎自民党副総裁・元首相は日本・台湾に

戦う覚悟が必要と語った。これは中華人民共和国

を敵視することを意識した発言である。

 

 

 戦いを止める覚悟こそ必要である。

 

 中華人民共和国・中華民国・日本国の関係に平和

を築くことが政治の課題である。

 

 

 岸田文雄政権は日本国憲法を天皇元首化・戦争

放棄に自衛隊明記による自衛戦争可能化・mRNA

致死猛毒注射強制を可能にする緊急事態条項独裁

を狙う自民党草案に改変しようとしている。

 

 福島第一原発事故放射能・核汚染水を海洋に捨て、

ダボス会議の言うがままに健康保険証廃止・全口座

紐付けのマイナンバーカードを日本在住地球人に強

制しようとしている。

 

 

 ロシア・ウクライナの戦争が終わる事とmRNA致

死猛毒強制が無くなることを祈っている。

 

 世界平和への夢を熱くし命を守る。

 

 この課題を歩むに当たって、山本薩夫監督が渾身

の演出力で撮った傑作『戦争と人間 第二部 愛と

悲しみの山河』は五十二年の時を超えて、道を照ら

す灯となってくれている。

 

 

 

 

                    合掌