男はつらいよ 葛飾立志篇 | 俺の命はウルトラ・アイ

男はつらいよ 葛飾立志篇

『男はつらいよ 葛飾立志篇』

映画 トーキー 97分 カラー

昭和五十年(1975年)十二月二十七日封切

製作国 日本

製作言語 日本語 台詞に外国語あり

製作会社 松竹大船撮影所

配給 松竹

 

出演

 

渥美清(車寅次郎)

 

倍賞千恵子(諏訪さくら)

 

下條正巳(車竜造)

前田吟(諏訪博)

三崎千恵子(車つね)

佐藤蛾次郎(源公)

太宰久雄(蛸社長こと桂梅太郎)

 

吉田義夫(旦那)

中村はやと(諏訪満男)

笠井一彦(中村)

羽生昭彦(印刷工)

木村賢治(印刷工)

長谷川英敏(印刷工)

坂大勝也(印刷工)

木村賢治(印刷工)

谷よしの(野球応援の主婦)

後藤泰子(八百屋のおかみ)

戸川美子(主婦)

統一劇場(西部の酒場の人びと)

 

上條恒彦(ギターを弾く男)

露木幸次(馬子・メガネをかけたご近所さん)

岡本茉莉(観光船のガイド)

 

 

米倉斉加年(轟巡査)

大滝秀治(住職)

笠智衆(御前様)

 

桜田淳子(最上順子)

樫山文枝(筧礼子)

 

小林桂樹(田所雄介)

 

製作 島津清

   名島徹

企画 高島幸夫

   小林俊一

 

脚本 山田洋次

   朝間義隆

 

撮影 高羽哲夫

美術 高田三男

録音 中村寛

調音 松本隆司

照明 青木好文

編集 石井巌

スチール 長谷川宗平

 

音楽 山本直純

主題歌 「男はつらいよ」

作詞 星野哲郎

作曲 山本直純

唄  渥美清

 

 

原作・監督 山田洋次

 

鑑賞日時

令和二年(2020年)七月二十六日

大阪ステーションシティシネマ

シアター5 I-17

 

 西部の居酒屋で女性歌手はならず者

に苦しめられていたが生き別れの兄との

再会を夢見て堪えていた。

 ヴァージニアから流れてきたタイガー

キッドがならず者を撃つ。

 

 とらやに女子高生最上淳子が尋ねてきた。

亡き母お雪の恋人で生き別れた父は寅次郎

ではないかと考えていた。

 

 毎年欠かさず手紙や金を贈ってくる寅次郎

を父ではないかと思う順子は修学旅行で関東に

来たので意を決してとらやにきた。

 

 寅次郎はとらやに帰って来て恩人お雪と瓜

二つの順子との再会を喜ぶ。赤ん坊時代の順子

に寅はであった。飢えで苦しんでいた寅にお

雪は味噌汁と御飯を恵み命を助けてくれた。

 

 

 順子はお雪が昨年病気で亡くなった事を寅

次郎に報告した。寅は順子に彼女の実父では

ないことを告げる。

 

 墓参りに山形にきた寅次郎は、お雪の墓の

ある寺の住職から、学歴がなかったために

厳しい人生を送ったお雪の苦労を伝えられ

る。

 

 寅次郎は「己を知る」ために学問をなす

ことの大切さを住職から学教わり柴又への

帰路につく。

 

 

 とらやに、御前様の姪に当たり、大学で

考古学助手をしている筧礼子が下宿するこ

とになる。寅次郞は、柴又の喫茶店で礼子と

出会い一目惚れして「己を知る」ことの大切

さを語り合う。

 

 寅次郎は礼子に気に入ってもらうために

眼鏡をかけて勉強に取り組む。礼子は寅次郎

の家庭教師を引き受ける。

 

 

 数日後、とらやに礼子の師田所教授が現れた。

煙草を吸いまくり髭を生やす田所は破天荒な

性格だが繊細な神経の持ち主でもある。

 豊かな芸力も持っている。複数の外国語に精

通する考古学者であった。寅次郎の恋愛論を聞き

感嘆した田所は師事する。

 

 だが、彼も又美しい礼子に恋する男のひとり

であった。

 

 ◎男二人の想い◎

 

 

 

 渥美清は昭和三年(1928年)三月十日

東京府に誕生した。本名は田所康雄である。

 船乗りを目指したが、肺結核に罹り手術で

右肺を除去し術後に胃腸を患い入院生活を送

った。

 舞台の喜劇俳優として活躍し、映画・テレ

ビに出演し大スタアとなった。

 

 平成八年(1996年)八月四日六十八歳で

死去した。

 

 

 倍賞千恵子(ばいしょう・ちえこ)は昭和十六

年(1961年)六月二十九日に東京都に誕生した。

 昭和三十六年(1961年)『斑女』で映画デビ

ューを飾った。自分は『斑女』を未見である。

 

 樫山文枝は昭和十八年(1943年)八月十三日に

誕生した。劇団民藝において活躍している。

 

 

 小林桂樹は大正十二年(1923年)十一月二十三

日群馬県に誕生した。月桂樹にちなんで、「桂樹」

と命名された。

 

 昭和十六年(1941年)日活の入社試験に合格し

十七年(1942年)に映画界に俳優としてデビュー

した。昭和十八年(1943年)応召され、満州に渡

り昭和二十年(1945年)の終戦を経て復員した。

 昭和四十八年(1973年)の『日本沈没』で田所

教授を演じた。自分は銀幕では未見である。テレビ

放映版のみ視聴している。

 平成二十二年(2010年)九月十六日、小林桂樹

は八十六歳で死去した。

 

 

 山田洋次は昭和六年(1931年)九月十三日

大阪府に誕生した。父は満鉄のエンジニアで

洋次は二歳で満洲に渡り、昭和二十二年(19

47年)一家で大連から日本に引き揚げた。

 東京大学に学んだ洋次は学生時代、前進座

映画にエキストラとして出演したという。

 松竹に入り助監督として勤務し、脚本家とし

ても活躍した。

 

 昭和三十六年(1961年)十二月十五日公開

『二階の他人』が第一回監督作品である。

 

 

 昭和四十四年(1969年)八月二十七日、渥

美清主演・山田洋次原作・監督の映画『男はつ

らいよ』が公開された。

 

 『男はつらいよ 葛飾立志篇』はシリーズ第

十六作である。

 

 車寅次郎役の渥美清の本名は田所康雄である。

 

 小林桂樹の役名は田所雄介である。

 

 田所氏二人の絆は暖かい。

 

 当時トップアイドルであった桜田淳子が最上

順子役で出演する。「寅に娘が居たか」と観客

は緊張する。寅が帰還しお雪に世話になり助け

てもらったことを語る。

 

 米倉斉加年の轟巡査が「ようこそここへ」と

鼻歌を歌う。

 

 2020年7月26日大阪ステーションシティシネ

マの鑑賞でわたくしはクスっときたがお若い方

には難しかったかもしれない。

 

 桜田淳子歌唱『わたしの青い鳥』の歌詞であ

る。

 

 順子の父親探しと寅のお雪への感謝が前半に

語られる。

 

 大滝秀治が住職役で『男はつらいよ』初登場

する。

 

 お雪は学歴問題で苦労したことを教わり、寅

次郎は「己を知る」ために学を志す。

 

 とらやで筧礼子先生に出会い師事し恋してし

まう。

 

 学問を一から始める寅次郎と考古学碩学の田所

教授の両者が礼子を慕う。親友二人は同じ女性を

愛していることを知らない。

 

 山田洋次と朝間義隆の脚本の鋭さに痺れる。

 

 田所教授が詩で空しく過ぎた時間への後悔を

語る言葉が重い。功績を打ち立てた碩学でも失

った時間への悔恨は重くのしかかる。それでも

愛する礼子との出会いでその失った時間も縁に

繋がる契機に感じられたのだが。

 

 クライマックスの切なさは強烈である。

 

 失恋の悲しみを痛感しても笑顔を絶やさず

堪える。山田洋次ヒーローは逞しい。

 

 「ベアトリーチェのような人」と田所は片思

いのひとを讃える。

 

 寅次郎はニコニコと微笑む。

 

 

 

 平成三十一年(2019年)二月十八日(月曜日)

紀伊国屋サザンシアター公演『正造の石』を鑑賞

した。福田英子を勤める樫山文枝を見た。

 風格豊かで気品があった。

 

 知的な女性は樫山文枝の当たり役だ。

 

 礼子先生は男性が憧れる上品さが豊かに光って

いる。

 

 高嶺の花という言葉がぴったりだ。

 

 八月二日佐藤蛾次郎をお別れ会が開かれ、山田

洋次・前田吟が挨拶をされた。

 

 源公はフィルの中に生き続ける。

 

 令和二年七月二十六日大阪ステーションシティ

シネマで鑑賞しフィルムの中に昭和五十年のムード

と空気を感じた。

 

 笑わせて切なさを伝える。

 

 山田洋次喜劇の魅力が溢れている。

 

 失恋を契機にして笑顔で歩む男達に逞しさを

学んだ。

 

 寅さんは強い。

 

                  合掌