新必殺仕置人 女房無用 | 俺の命はウルトラ・アイ

新必殺仕置人 女房無用

『新必殺仕置人』「女房無用」 

(『新・必殺仕置人』「女房無用」)


  テレビ映画  トーキー 54分 カラー

   昭和五十二年(1977年)三月二十五日

  朝日放送系放映

 

 令和五年(2023年)三月十日十六時五十七分

 BS朝日再放送

 

 

 製作国 日本

 製作言語 日本語

 

 オープニングナレーション

 のさばる悪を なんとする

 天の裁きは 待ってはおれぬ

 この世の正義も あてにはならぬ

 闇に裁いて 仕置する

 南無阿弥陀仏

 

 口入屋相模屋前に巡礼の一行が通り

がかり相模屋主人惣五郎暗殺に挑む。

 惣五郎一家は返り討ちにする。巡礼

に扮した一行は仕置人であった。死神

は「仕損じたか」と見る。一人の仕置

人を惣五郎は捕らえる。

 

 寅の日稼ぎを求めるおていは鉄の居

場所を問い、正八は博奕の借金がかさん

でいることを告げ、己代松は鉄の居場所

は一つしかねえと確かめる。

 

 女郎屋で鉄はかさんでいる借金の催促

を女郎や遣り手婆さんに叱られる。督促

に正八が来ると鉄は「良い所に来た」と

身代わりを頼み、婆さんに「何かあったら

こいつを叩き売っていいから」と提案す

る。

 

 寅の会では相模屋惣五郎仕置失敗で

担当仕置人から二十両の詫び料が払われ

計三十両が吉蔵から提示される。

 鉄が三十両で競り落とす。死神は仕損

じてしまうと寅の会の命運に関わると注

意する。吉蔵は仕置人が一人捕えられて

いるのでその者も始末して頂きたいと口

封じを頼む。

 

 惣五郎から拷問を受けた仕置人は舌を

嚙み切って自害する。雇われた殺し屋と

直観した惣五郎は頼み人を焙りだすこと

にする。

 

 鉄は主水に仕置人人質の件を語り、喉元

に匕首を突きつけられていると警告する。

だが主水は仕置を降りる。「殺されても口を

割らねえのが裏稼業だ」と確かめ「俺はろ

くな死に方をしねえだろうがそれまで生きて

いたい」と望みを告げる。

 松は同業者の弔い合戦として仕置を受け

る。

 

 鉄は正八を殴り倒し、正八も殴り返す。

 

 阿片で儲ける惣五郎は女郎達の煙草に

薬を仕込んでいる。稼ぎは二倍に膨らんだ。

女郎部屋を見た惣五郎は役に立たない女郎は

阿片の無駄使いになるから始末しろと部下

に命ずる。

 

 主水は盗みを働いた元船頭の政吉を捕え

る。元船頭の政吉を雇っていた惣五郎は阿片

運搬問題で悩み、捕えた同心が中村主水であ

ることを知り部下藤七と策略を巡らす。

 

 せんとりつは楽しみにしていた芝居見物

に向けて着物を確かめるが虫食いがあり嘆く。

 主水はりつから新しい着物を買って下さい

と懇願される。呉服屋で主水はりつの着物を

買う。店を出たりつは駕籠屋から「お買い上げ

頂いた方はお送りすることになってるんで」と

言われ駕籠に乗る。

 

 主水が呉服屋から出ると男から手紙を渡さ

れた。「政吉を解放せ。さもないと女房の命

はない」という脅迫文であった。

 

 りつは相模屋の女郎部屋に監禁される。

 

 ◎女郎屋の煙◎

 

 昭和五十二年(1977年)三月二十五日本作

を視聴し全身全心を挙げて緊張した。

 相模屋女郎屋における女郎達が吸う阿片入り

煙草のシーンに衝撃を受けた。

 石原興は天才だ。撮影術は凄い。女郎達が

吸い吐く煙の妖しさにドキドキして胸が熱く

なった。映像の魔力を松野宏軌監督に教えて

頂いた。

 

 中村勝行の脚本は完璧である。昭和十七年

(1942年)十一月十四日生まれの中村勝行は

「必殺シリーズ」を支えた脚本家である。兄は

中村敦夫である。令和四年(2022年)三月十一

日に死去した。

 

 松野宏軌(まつの・こうき)は大正十四年

(1925年)七月九日に誕生した。本名は松野

博(まつの・ひろし)である。松竹で伊藤大輔

に学んだ。「必殺シリーズ」において数々の傑

作を発表された。本作はその一本である。

 

 相模屋前で蕎麦屋で客が巡礼を見る。巡礼が

主人惣五郎を襲うが失敗する。寅の会は仕置人

一人が捕らえられたという危機に立ち鉄が仕置

を落札する。

 

 女郎屋に借金を背負う鉄は返済の為もあって

危険な仕事を受ける。

 

 主水は怯えて降りる。ところがりつが誘拐

されて受けざるを得なくなる。

 

 政吉は明らかに自分から奉行所に捕まりに

行った。主水は政吉釈放を誘拐されたりつの

命の安全の交換条件に提示される。政吉から

事情を問い質す主水は背景を知る。

 

 船頭だった政吉は知らないところで阿片の

運び屋にされていた。惣五郎に阿片運びの仕事

を断ると女房が阿片を吸わされている光景を

見せつけられて断れなくなった。

 

 日頃は虐めらている主水だが捕らわれの身

となったりつは自ら救出に行く。はっきりと

は明示されないが主水とりつの夫婦愛が物語

の核になっている。

 

 微妙な描写に中村勝行と松野宏軌の表現が

光っている。

 

 常田富士男(ときた・ふじお)は昭和十二年

(1937年)一月三十日長野県に生まれた。平成

三十年(2018年)七月十八日東京都において死

去した。八十一歳。

 昭和四十八年(1973年)五月五日放送・脚本

安倍徹郎・監督松本明の『必殺仕置人』「はみだ

し者に情なし」において亀吉役を勤めた。

 奇しくも今回も主水と協働する頼み人役であ

る。

 

 神田隆(かんだ・たかし)は大正七年(1918

年)四月十四日に誕生した。本名は神田澄孝で

ある。昭和六十一年(1986年)七月十三日、六

十八歳で死去した。

 東京大学卒業後松竹撮影所に入り映画で活躍

した。悪役名優の巨星である。昭和四十八年(1

973年)六月二日放送・脚本山田隆之・監督工藤

栄一の『必殺仕置人』「閉じたまなこに深い渕」

では清原検校こと弁蔵を重厚に演じた。

 

 今回も山崎努と神田隆の激突競演がクライマッ

クスに位置付けられている。

 

 

 鉄が正八を殴る。正八も殴り返す。

 

 山﨑努と火野正平の口元には本当に血が出て

いる。

 

 殴り合うシーンは本気で殴り合う。

 

 山﨑努と火野正平の芸への情熱に息を呑み

緊張し震える。

 

 『新必殺仕置人』「女房無用」は仕置人の闘

志と夫婦の絆を語る大傑作である。

 

 

 

  

 

 キャスト

 

 

 藤田まこと(中村主水)

 

 

 中村嘉葎雄(巳代松)


 

 

 火野正平(正八)

 

 

 中尾ミエ(おてい)


 

 河原崎建三(死神)

 

 常田富士男(政吉)

 

 神田隆(相模屋惣五郎)

 佐藤京一(藤七)

 

 

 瀬下和久(闇の俳諧師)

 藤沢薫(闇の俳諧師)

 原聖四郎(闇の俳諧師)

 堀北幸夫(闇の俳諧師)

 沖時男(闇の俳諧師)

 

 

 

 藤村富美男(元阪神タイガース)(元締虎)

 

 

 北村光生(吉蔵)

 北原将光(親爺)

 美鷹健児(六部) 

 鈴木義章(六部)

 横堀秀勝(六部)

 

 木下サヨ子(遣り手婆さん)

 町田米子(女郎)

 内田真江(女郎)

 倉谷礼子(女郎)

 末永直美(女郎)

 

 加茂雅幹(子分)

 新郷隆(子分)

 馬場義勝(子分)

 渡辺憲悟(子分)

 東悦史(子分)

 広岡和彦(子分)

 

 美樹博(子分)

 松尾勝人(子分)

 丸尾好広(子分)

 和田かつら(お久)

 伊波一夫(商人)

 

 

 菅井きん(中村せん)

 

 

 白木万理(中村りつ)

 

 

 

 

 山崎努(念仏の鉄)


 

 スタッフ

 

 

 制作 山内久司(朝日放送)

    仲川利久(朝日放送)

    桜井洋三(松竹)

 

 脚本      中村勝行

 

 

 音楽      平尾昌晃

 編曲      竜崎孝路


 


 撮影          石原興

 製作主任       渡辺寿男

 

 

 

 美術          川村鬼世志

 照明          中島利男

 録音          木村清次郎

 調音          本田文人 

 編集          園井弘一

 

 

 

 助監督        高坂光幸

 装飾         玉井憲一

 記録         杉山栄理子

 進行         黒田満重

 特技         宍戸大全

 

 

 

 装置          新映美術工芸

 床山結髪       八木かつら

 衣装          松竹衣裳

 小道具         高津商会

 現像          東洋現像所

 

 

 制作補         佐生哲雄

 殺陣           美山晋八

               布目真爾

 題字           糸見渓南

 

 

 

 ナレーター       芥川隆行

 

 

 


 オープニング 

 ナレーション作     早坂暁

 予告編ナレーター   野島一郎

 

 

 


 主題歌          あかね雲

 作詞           片桐和子

 作曲           平尾昌晃

 編曲           竜崎孝路

 唄            川田ともこ

              東芝レコード

 

 

 監督       松野宏軌


 

 制作協力 京都映画株式会社

 

 制作      朝日放送 

          松竹株式会社

 

 ☆

 藤田まこと=はぐれ亭馬之助

 

 中村賀津雄→中村嘉葎雄

 

 二瓶康一→火野正平

 

 中尾ミエ=中尾ミヱ

 

 白木万理=松島恭子=白木マリ

 

 

 山崎努=山﨑努

 

 

  山内久司=松田司

 

 中村勝行=黒崎裕一郎

 

 平尾昌晃=平尾昌章

 ☆

 

      

            文中一部敬称略

 

             南無阿弥陀仏