男はつらいよ 寅次郎ハイビスカスの花 二題 | 俺の命はウルトラ・アイ

男はつらいよ 寅次郎ハイビスカスの花 二題

 『男はつらいよ 寅次郎ハイビスカスの花』

 映画 104分 カラー

 昭和五十五年(1980年)八月二日公開

 製作国 日本

 製作 松竹

 

 出演

 

 渥美清(車寅次郎)

 

 倍賞千恵子(さくら)

 

 

 下條正巳(竜造)

 三崎千恵子(つね)

 前田吟(博)

 

 

 太宰久雄(社長)

 中村はやと(満男)

 佐藤蛾次郎(源公)

 津嘉山正種(知念)

 谷よしの(よもぎ売りのおばさん)

 

 新垣すずこ(山里かおり)

 間好子(国頭フミ)

 伊念堂正子(病院の老婆)

 伊念堂恵子(看護師)

 笠井一彦

 羽生昭彦

 木村賢治

 篠原靖夫

 喜田晋平

 

 一氏ゆかり(カップル女性)

 光石研(カップル男性)

 土田桂司

 高木信夫

 秩父晴子

 後藤せつこ

 酒井栄子

 川井みどり

 

 江藤潤(国頭高志)

 笠智衆(御前様)

 

 

 浅丘ルリ子(リリー)

 

 

 脚本     山田洋次

         朝間義隆

 

 音楽     山本直純

 撮影     高羽哲夫

 美術     出川三男

 装置     小島勝男

 装飾     町田武

 録音     鈴木功

 調音     松本隆司 

 照明     青木好文

 編集     石井巌

 スチール  長谷川宗平

 衣装     松竹衣装

 現像     東京現像所

 進行     玉生久宗

 製作主任  峰順一

 協力     日本航空

         沖縄県

         沖縄観光連盟

         琉球映画貿易

         柴又神明会

 

 主題歌    『男はつらいよ』

 作詞      星野哲郎

 作曲      山本直純

 唄        渥美清

 

 

 原作・監督  山田洋次

 

 ☆

 平成二十七年(2015年)三月三日

 京都文化博物館にて鑑賞

 ☆

 感想文では物語の核心に言及します。未見

の方はご注意下さい。

 

 ☆

 

 徳川期の江戸。義賊鼠小僧寅吉は生き別

れた妹さくに金子を与える。二人の兄妹愛が

語られる。

 

 

 夢から覚める寅さん。柴又とらやに帰ると

車一家は水元公園に遊びに行こうとしてい

たのだが、隠して寅さんの機嫌を損ねて喧

嘩になってしまう。

 寅さんが出て行こうとすると、リリーから手

紙が届き沖縄で倒れ、「もう一度寅さんに会

いたい」と書かれていた。

 

 

 リリーが血を吐いて沖縄で治療していると

聞き、寅さんの心は逸るが苦手な飛行機を

思うと怖い。だが、綺麗なキャビンアテンダ

ントを見て惹かれ、飛行機に乗って、沖縄の

病院に行く。

 寅さんとリリーは感動の再会を果たす。二

枚目寅さんは美人リリーを懸命に看病する。

 

 

 献身的な看護を寅さんが続け、リリーは体

調を回復して行く。

 

 海洋博でいるかの世話をする女の子たち

と寅さんは仲良くなる。

 

 一方魚を捕り、真面目に働いている青年国

頭高志はリリーに憧れている。

 寅さんが沖縄に対して否定的な言葉を語る

と、車を運転していた高志は「寅さん、沖縄の

悪口言うなら降りてくれ」と厳しく注意する。

 

 リリーは女の子と仲良くする寅さんを見て

心が揺らぎ口論の際に職探しをしない寅さん

の呑気さに対して怒りをぶつける。

 

 寅さんも言い返して口論になり、高志が止

めに入って、彼の思いを見た寅さんは「てめ

え、リリーに惚れてるな」という嫉妬もあって

ますます激怒する。

 

 リリーは去る。

 

 柴又に帰った寅さんは、リリーとのことを

語り、さくらと博は謝って思い切って告白す

べきだと語る。

 

 寅さんはとらやを尋ねてきたリリーを見て

歓喜する。二人は再会を喜び合い、沖縄の

日々を確かめ合う。リリーは幸せだったと

語る。寅さんは「俺と所帯持つか」と思い切

って語る。

 リリーは寅次郎を振る。

 

 

 

 御前様が、「お経はありがたいところのみ

お願いします」と言われて、

 

   善導独明仏正意

 

 

 と読むが、これは『正信念仏偈』の終わりの

ほうで大部分をカットした声明で笑わせる。

 

 寅さんとリリーは恋愛と友情を兼ねている。

 

 

 

 『男はつらいよ 寅次郎ハイビスカスの花 特別篇』

 

 映画 104分 カラー

 平成九年(1997年)十一十二日公開

 製作国 日本

 製作 松竹

 

 出演

 

 渥美清(車寅次郎)

 

 倍賞千恵子(さくら)

 

 吉岡秀隆(諏訪満男 青年期)

 

 下條正巳(竜造)

 三崎千恵子(つね)

 前田吟(博)

 

 

 太宰久雄(社長)

 中村はやと(諏訪満男 少年期)

 佐藤蛾次郎(源公)

 津嘉山正種(知念)

 北山雅康(三平)

  鈴木美恵(加代)

 谷よしの(よもぎ売りのおばさん)

 

 新垣すずこ(山里かおり)

 間好子(国頭フミ)

 伊念堂正子(病院の老婆)

 伊念堂恵子(看護師)

 笠井一彦

 羽生昭彦

 木村賢治

 篠原靖夫

 喜田晋平

 

 一氏ゆかり(カップル女性)

 光石研(カップル男性)

 土田桂司

 高木信夫

 秩父晴子

 後藤せつこ

 酒井栄子

 川井みどり

 

 松村達雄(車竜造)

 船越英二(兵頭謙次郎)

 

 江藤潤(国頭高志)

 笠智衆(御前様)

 

 

 浅丘ルリ子(リリー)

 

 

 脚本     山田洋次

        朝間義隆

 

 音楽     山本直純

 撮影     高羽哲夫

 美術     出川三男

 装置     小島勝男

 装飾     町田武

 録音     鈴木功

 調音     松本隆司 

 照明     青木好文

 編集     石井巌

 スチール  長谷川宗平

 衣装     松竹衣装

 現像     東京現像所

 進行     玉生久宗

 製作主任  峰順一

 協力     日本航空

         沖縄県

         沖縄観光連盟

         琉球映画貿易

         柴又神明会

 

 主題歌    『男はつらいよ』

 作詞      星野哲郎

 作曲      山本直純

 唄        八代亜紀

 

 

 原作・監督  山田洋次

 

 ☆

  松村達雄・船越英二は回想シーンの

出演で本篇字幕に載らず。

 

 令和二年(2020年)十一月二十一日

 大阪ステーションシティシネマ

 シアター5にて鑑賞


 

 ☆

  諏訪満男は靴会社の仕事の出張で国府

津駅に来ていた。長く会っていない「伯父さん」

車寅次郎に会いたい気持ちが熱くなっている。

 反対側のプラットホームに、「おじさん」を見た

ような気持を抱く。幻影だったのかもしれない。

 電車の窓の側に煙草を置き、満男はおじさん

を思い出す。児童時代、おじさんは気が強くて

心が逞しく、息で素敵で華麗な美女に熱い恋心

を抱いた。

 

 女性の名はリリー松岡だ。歌唱力は豊かだ

が中々売れない。

 北海道で初めて出会った瞬間から寅さんと

熱い友情を確かめ合った。

 一度は寿司屋の女将さんになったリリーだが

離婚して、北海道で再会した寅さんと口論になり

冷たい言葉に傷ついた事があった。

 柴又とらやで寅さんは再会したリリーに謝罪

をする。

 お兄ちゃんとリリーさんが一緒になってくれた

らとさくらは望むが中々難しい。

 

 叔父寅次郎は沖縄でリリーと再会し恋が再燃し

失恋するが友情を確かめ合う。

 

 満男は叔父寅次郎の失恋友情物語を想い出した

後くるまを尋ね三平に挨拶する。

 

 

 

 ☆運命のひと☆

 

 『男はつらいよ 寅次郎ハイビスカスの花』

はシリーズ第二十五作にしてリリー篇第三作

である。

 

  夢のシーンの義賊鼠小僧と妹おさくの切ない

再会の物語に、伊藤大輔の傑作『御誂次郎吉

格子』の男女の愛の物語を思い出した。

 

 傑作揃いの『男はつらいよ』の中でも笑わせ

て泣かせるドラマで特に偉大な傑作の一本と

して讃えている。

 

 沖縄の豊かな大自然の中で寅さんとリリーの

熱き絆が語られる。

 寅さんとリリーの男と女の熱い友情に感動し

た。

 そして、友情を越えた愛の進展はあるのか?

山田洋次は繊細な語りで二人の愛の行方を見

守る。

 

 沢山の作品でタイトルにおいてサイレントで喧

嘩やトラブルのシーンで出演した津嘉山正種が

本作で故郷沖縄の医者知念先生で渋い存在感

を見せる。

 

 寅さんとリリーの啖呵の語りも素敵だ。二人

が惹かれ合い信頼しあっているが、友情から

恋へと踏み出そうとする時に様々な感情が交錯

する。

 

 一緒になれるのか、やはり無理なのか?この

瀬戸際の感覚が堪らない。

 

 敬愛の心で繋がり合っている寅さんとリリー。

 

 空腹の寅次郎が鰻を貪るように食べるシーンに

渥美清の至芸が光る。

 

 二人の出会いと別れと再会における会話の

リズムが素晴らしい。

 

 渥美清と浅丘ルリ子の台詞は音楽のように

流れる。

 

 『男はつらいよ 寅次郎ハイビスカスの花

特別篇』は平成八年(1996年)八月四日に

死去した渥美清への哀悼と敬意をこめて山田

洋次が大二十五作を再編した作品である。

 

 満男が叔父寅次郎の沖縄での物語を想い逢

いたい心を確かめる。

 

 山田洋次には寅次郎の映像を一切使用せず

満男やさくらを主役にして寅次郎の存在を感じ

させる映画を撮って欲しかったという想いが

自分にある。

 

 『靴屋満男物語』『小説家諏訪満男』『美人

お婆ちゃんさくら』等の題で寅次郎は電話をか

けてきてさくらや満男が受け答えして存在を感じ

させるという方法もあったのではないか?

 

 『男はつらいよ』はシリーズ四十八作目『男は

つらいよ 寅次郎紅の花』で完結にして欲しかっ

た。

 

 その気持ちはあるのだが、寅次郎が生きている

設定で満男が沖縄での淡く優しく熱い叔父の愛情

を思うドラマも情感豊かで素敵である。

 

 

 春は寅次郎に会いたくなる季節である。

 

 八年前の今日平成二十七年(2015年)三月三日

京都文化博物館で『男はつらいよ 寅次郎ハイビス

カスの花』を見聞し身も心もときめき熱くなった。

 

 ラストバス停で寅次郎とリリーは再会する。

 

 「こんないい女の世話」をしたでしょうかという

寅次郎のリリーへの問いはかっこいい。

 

                    合掌