本日 16:57BS朝日 新必殺仕置人 現金無用 放送 | 俺の命はウルトラ・アイ

本日 16:57BS朝日 新必殺仕置人 現金無用 放送

『新必殺仕置人 現金無用』

 (『新・必殺仕置人 現金無用』)

 (しんひっさつしおきにん 

 げんなまむよう)

 

 

 テレビ映画 トーキー 54分 カラー

 昭和五十二年(1977年)二月四日放映

 製作国 日本

 製作言語 日本語

 放送局 朝日放送系

 

 のさばる悪を  なんとする

  天の裁きは  待ってはおれぬ

  この世の正義も あてにはならぬ

  闇に裁いて  仕置する

  南無阿弥陀仏

 

ー感想記事ではドラマの核心をネタバレ

します。残酷な暴力シーンについての

記述があります。

 未見の方・十八歳未満の方はご注意

くださいー


 旗本沖田政勝邸門前で中間太吉が妻菊

を奪われたことを恨んで自刃し、政勝自身

が介錯する。

 

 菊がかけつけて、夫の後を追って自害す

る。政勝の後添いお梶の方が詫びを入れ

る。

 

 家来堀内新兵衛は絵草子を届けに来た正

八に出直すようにと言い渡す。

 

 じっと若様政高と身の回りの世話をする小女

ふみが見ている。

 

 寅の会では政勝の仕置が競りにかかり、鉄

と柔術使いの仕置人玄達と仕置人伊三郎が

争うが、伊三郎が競り落とす。

 

 

 主水や松は仕置が無理な状態に不満を唱え、

寅の会からの脱退を勧めるが、鉄は虎の会か

ら抜ければ仕置されると注意する。

 

   主水「てめえ、何時からそんな腰抜けにな

      った?」

 

   鉄「恨みがましい目で見るなって」

 

 

 だが、沖田政勝当人が心臓発作で急死する。

 

 虎は標的が死亡したこともあり、頼み人に三

百両を返す。頼み人はお梶の方であった。

 

 死神は「不審」な点があり、虚偽があった場合

は、「落とし前としてお命頂きます」と告げる。

 

 墓穴を掘った死神が調査すると、死因は背骨

を折られて亡くなっていたことと判明する。

 

 骨はずしを仕置の技とする鉄に裏切りの嫌疑

がかかる。

 

   死神「お前は裏切った。沖田政勝を殺した」


 

   鉄「何言ってるんだ。なんで俺が殺さなきゃ

     ならねえんだ?」

 

 

   死神「証拠がある。沖田の死因は背骨折り

       だ。虎の元締がつけて下さる。」


 

   鉄「三日待ってくれ!」

 鉄は三日以内に疑いを晴らさないと虎に仕置

されることを主水・松・おてい・正八に話す。

 

 沖田邸

 

 

 おふみが若様政高を助け起こす。

 

tomoko
 

 正八が政高におふみのことを「好き?」と

聞くと、政高は「うん。大好き」と語る。

 

 死神の疑いを晴らすため、鉄は柔術家の

玄達が怪しいと睨む。


 

  中村家ではせんとりつが富くじを買いに

行って、人ごみの中で将棋倒しにあって怪我

をした。

 

   せん「人間とは色々な試練に遭って、生き

      る望みが湧いてくるもの」

 

  主水が仕置人として玄達を召し捕るが、身柄

を保証する者としてお梶の名があがり、お梶の保証

で玄達は解き放たれ、主水は高井に叱責される。

 

 正八の調査で、梶が用人新兵衛と通じて、二人

の不義によって妊娠した子を跡継ぎにするために、

玄達に仕置を依頼していたことが判明する。


 

 更に梶は玄達しに依頼して毒薬を得て、沖田

政高を毒殺しようとしていた。


 

 ふみは、梶の恐るべき陰謀を聞き、政高を

何とか守りたいと願っている。

 おていが掏摸をして頼み料を貯めるという

筋書で玄達の財布から胴巻を掏ってわざと

捕まり、己代松を仕置したいと話す。

 

 玄達は百両で仕置人に話をつけてやると

語り、頼み料を取る。

 

 沖田家ではお梶が毒入りの膳を無理矢理

政高に食べさせようとしていた。

 

 おふみは政高が気に入ったかぐや姫の絵

草子を正八に返す。

 

 お梶に毒入りの膳を食べさせられそうになっ

っていた政高をおふみが救うが、新兵衛の刃が

彼女を遅う。

 

 絵草子の中には手紙とニ両が内包されており、

おふみは「あたしにもしものことがあったら、恨み

を晴らして下さい」と正八に伝言していた。

 

 正八の頼みを受けて、鉄が寅の会の競りにか

けてもらうように頼む。

 松が捨身の行為を為し、玄達の背骨折の

技にあえて襲われ、鉄に救出される。この光

景を死神が見届け、裏切り者が玄達である

ことが判明する。


 

  鉄「あばらが折れてる」

 

  己代松「前にお前に右やられて、今度は

       左かい。釣り合いが取れていいぜ」

 

 寅の会

 

  死神「寅の会番外としてお集まり頂きました。

      掟を破る裏切の事実があったからで

      す。この裁きは虎の元締自ら仕置され

      ます。」

 

  仕置人達が下を向く。玄達は怯え震える。

 

 


 

 虎のバットが大きく振り下ろされる。

 


 

 

  ☆鉄の危機 松の捨身 虎の制裁☆

 

 念仏の鉄が語る虎の会に対する恐怖の大きさ

が描かれる。

 第三回「現金無用」は村尾昭の怨念のドラマの

凄絶さが滲み出た傑作である。

 

 主水が脱退を勧めるが、鉄は虎の会の掟が

厳格で離れれば一党全員粛清されることを述べ

る。

 

 死神に裏切りの疑いをかけられた鉄の追い

詰められた心情に緊張感が鋭く走る。念仏の

鉄が内心で抱く「身の証を立てねば、粛清され

てしまう」という恐怖感を、第三話は重厚な脚

本・演出で描く。

 

 

 後室お梶の方によって沖田家の家督を巡る恐ろ

しい陰謀が張り巡らされ、若様政高が狙われる。

幼い若様政高を守ろうとするおふみの忠義に泣

かされる。

 

  毒入りの食事で若君を殺害し、忠義の小女子

が身を犠牲にして守り切る。元ネタになった物語

は『伽羅先代萩』の千松の忠義だと思う。

 

 主題歌歌手川田ともこがおふみを熱演する。政

高を愛する母性が暖かい。

 

 松野宏軌は伊藤大輔の指導を受けた演出家であ

る。虐げられた存在の悲しみを尋ねる。伊藤大輔

譲りの悲しみへの眼差しが松野宏軌演出の基底に

ある。

 

 玄達役の今井の健二の凄みは強烈である。今月

三十一日に九十一歳になる今井健二は昭和・二十

世紀における日本映画・テレビの悪役名優である。

 玄達役では元締虎に睨まれる恐怖感も表現して

いる。


 

 色っぽい悪女と言えば、この時代本阿弥周子の

当たり役であった。

 

 虎がバットで裏切者玄達を粛清するシーンに、阪

神タイガース時代の藤村富美男の映像が引用・紹

介される。


 

 素人俳優でありながら、藤村富美男の名演は凄い。

強烈な存在感と圧倒的な凄みは視聴者の心に強烈

な印象を与える。

 

 

 

 

 冷酷非情ではあるけれども、我が子可愛さから迷

い、野望と陰謀に燃えて、自らも破滅してしまう悪

女の哀れさを本阿弥が鮮やかに見せる。

 

 

 鉄と松が、「仕置人 出陣」のテーマをバックミ

ュージックにして歩むシーンに男の渋さと色気が光る。
 

 悪女とはいえお梶は妊婦である。鉄は何の罪もない

胎児も共に仕置する。あまりの残酷さに悲しみが湧く。

 冷酷非情なお梶はともかく、胎児だけでも助けられ

なかったものかという問いが起こる。

 

 

 ここにも村尾脚本の強烈さがあるのかもしれない。

 

 

 「現金無用」の鉄の残虐さは、悪党より更に悪とし

ての存在を示しているのかもしれない。

 

 お梶を仕置する場の鉄は怖い。

 

 松を救出し新兵衛を斬る主水は、仲間を助ける

気持ちをダイレクトに現さない。


 

 鉄が疑いをかけられて、粛清される恐怖をくぐって

己代松・正八・おてい・主水の協力を得て、嫌疑を晴

らし、少女ふみの依頼を受けて政高を守る。

 

  「現金無用」は仕置人達の熱き絆を語る物語で

ある。

 


 

 

 キャスト

                   

 藤田まこと(中村主水)

 

 

 中村嘉葎雄(巳代松)


 

 

 火野正平(正八)

 

 

 中尾ミエ(おてい)


 

 河原崎建三(死神)

 

 本阿弥周子(お梶の方)

 川田ともこ(おふみ)

 

 大竹修造(堀内新兵衛)

 灰地順(喜平)

 辻万長(与力高井)

 

 

 藤村富美男(虎)

 

 柳原久仁夫(沖田政勝)

 宮ヶ原淳一(沖田政高)

 水上保広(太吉)

 嶋多佳子(お菊)

 

 瀬下和久(伊三郎)

 出水憲司(宇之吉)

 秋山勝俊(竜五郎)

 松田明(旦那)

 

 

 

 

 藤沢薫(闇の俳諧師)

 阿井美千子(闇の俳諧師

 原聖四郎(闇の俳諧師)

 堀北幸夫(闇の俳諧師)

 

 松尾勝人(葬儀屋)

 沖時男(医者)

 伊波一夫(中年の男)

 鈴木義章(人足)

 

 

 今井健二(玄達)


 

 菅井きん(中村せん)

 

 

 白木万理(中村りつ)

 

 

 

 山崎努(念仏の鉄)

 



 


 スタッフ
 

 プロデューサー   山内久司

              仲川利久

              櫻井洋三


 

 脚本           村尾昭
 

 音楽          平尾昌晃

 編曲          竜崎孝路

 

 撮影          石原興

 製作主任       渡辺寿男

 

 美術          川村鬼世志

 照明          中島利男

 録音          木村清次郎

 調音          本田文人 

 編集          園井弘一


 

 助監督        高坂光幸

 装飾         玉井憲一

 記録         杉山栄理子

 進行         黒田満重

 特技         宍戸大全


 

 装置          新映美術工芸

 床山結髪       八木かつら

 衣装          松竹衣裳

 小道具         高津商会

 現像          東洋現像所


 

 制作補         佐生哲雄

 殺陣           美山晋八

               布目真爾

 題字           糸見渓南

 

 ナレーター       芥川隆行

 

 オープニング 

 ナレーション作     早坂暁

 予告編ナレーター   野島一郎

 

 主題歌          あかね雲

 作詞           片桐和子

 作曲           平尾昌晃

 編曲           竜崎孝路

 唄             川田ともこ

 東芝レコード


 

 

 

 監督            松野宏軌



 

 制作協力        京都映画株式会社

 

 

 

 制作            朝日放送

                松竹株式会社

 

 

 ☆

 

 山崎努=山﨑努

 

 早坂暁・野島一郎はノークレジット

 

 ☆

 「己代松」の表記は本編字幕に

依った

 ☆



 

  (画像出典

  『新必殺仕置人』DVD vol.1)

 

             

               文中一部敬称略


 

 

                南無阿弥陀仏