いつかギラギラする日
『いつかギラギラする日』
映画 トーキー 108分 カラー
平成四年（1992年）九月十二日封切
製作国 日本
製作言語 日本語
製作会社 日本テレビ放送網
バンダイ
松竹第一興行
配給 松竹
製作者 奥山和由
企画 中川好久
プロデュース 杉崎重美
鍋島壽夫
斉藤立太
脚本 丸山昇一
撮影 浜田毅
美術 今村力
照明 渡邊孝一
整音 紅谷愃一
録音 信岡実
編集 川島章正
助監督 佐藤陸夫
初山恭洋
柏渕亘
松川貴志
菊地雄一
撮影応援隊 柳島克己
栢野直樹
図書紀芳
音楽 菱田吉美
小川尚子
長谷川智樹
選曲 石井ますみ
音響効果斎藤昌利
アクションコーディネーター 二家本辰巳
スタント&アクション アーバンアクターズ
ジャパンアクションクラブ
カースタント：カースタントTA・KA
ガンエフェクト BIGSHOT
火薬効果 テイクワン
特殊メイク 織田尚
山木綾子
製作管理 片岡毅允生
木村博人
現像 東京現像所
宣伝協力 週刊ヤングジャンプ
WOWOW
ロケ協力 室蘭市 函館市
製作協力 山田洋行ライトヴィジョン
出演
萩原健一（神崎）
木村一八（角町）
荻野目慶子（麻衣）
多岐川裕美（美里）
石橋蓮司（井村）
八名信夫（ヤクザ）
安岡力也（靴屋）
樹木希林（井村の妻）
六平直政（整形外科医）
真木洋子
木下ほうか
神尾直子
鈴木隆仁
賀川黒之助
ジャクスン・ジョーカー
西沢正浩
篠崎辰也
恩田快人
梅沢康博
原田芳雄（たっちゃん）
千葉真一（柴）
挿入歌 『WABDERER』『DO OR DIE』
ジャクスンジョーカー
『ラストダンスは私に』
萩原健一
監督 深作欣二
◎
前田禎穂＝千葉真一
＝JJ Sony Chiba
＝Sonny Chiba
＝和千永倫道
深作欣二＝ふかさくきんじ
◎
鑑賞日時 場所
平成十五年（2003年）九月十九日
シネ・ヌ―ヴォ
◎
神崎・井村・柴の三人が銃を発射する。
三人は凄腕のギャングだ。
柴の若く妖艶な恋人麻衣の色気たっぷりの
挨拶に神崎はベタベタした女は好かんと冷たく
告げる。
柴は麻衣ちゃんという若い嫁さんを貰って
若返ったと喜び膝に彼女を乗せ溺愛する。子供
が欲しいという柴にギャングの子供と麻衣は
冷笑し柴は怒る。
ロックを愛する青年角町の案で柴・井村・
神崎は現金輸送車を狙い警察官に扮して現
金を奪った。
5千万の現金を奪うが緊急で金を欲する井
村と角町は金を見て幻惑され対立する。井村
は金を奪おうとして失敗し謝罪し神崎が慰め
る。
角町は銃を乱射し井村を射殺し金を奪って
逃げる。
神崎は井村を救えなかった事を悲しみ宿敵
となった角町を追う。
柴は角町との争いの後銃に撃たれて死ぬ。
麻衣は過去に角町と会っていて彼の愛人で
あった。柴は捨てられ振られていた。
神崎対角町・麻衣カップルの争いにヤクザの
大ボス・殺し屋たっちゃんが絡み三つ巴の激戦
が展開する。
◎夢の企画に悔しさを◎
萩原健一（はぎわら・けんいち）
本名 萩原敬三
芸名別表記 KENICHI HAGIWARA
愛称 ショーケン Shohken
歌手・シンガーソングライター・俳優。
昭和二十五年（1950年）七月二十六日埼玉県
生まれ。
平成三十一年（2019年）三月二十六日東京都
において死去。六十八歳。
ザ・テンプターズメンバー
PYGメンバー
ソロ歌手
作詞家
作曲 俳優
萩原健一の神崎は華麗で輝いている。
男の色気が光っている。ダーティーヒーロ
ーの魅力は素晴らしい。惚れ直した。
『傷だらけの天使』の名コンビショーケン・
作さんが劇映画で遂に組んだ。
冒頭の神崎・井村・柴の三者射撃に作さん
アクションの煌めきを見る。
井村の哀愁を石橋蓮司がしみじみと演じる。
逞しい初老柴は若い嫁を溺愛した果てに
捨てられ死ぬ。
サニーが老いらくの恋と落日を哀感豊かに
演じる。
たっちゃんの凄みを原田芳雄が重厚に示す。
荻野目慶子は昭和三十九年（1964年）九
月四日生まれ。本作公開当時二十七歳で妖艶
さは光っている。
前田禎穂は昭和十四年（1939年）一月二十
二日 福岡県に生まれた。
昭和三十四年（1959年）東映に入社した。
千葉真一の芸名でテレビ・映画に出演する。
深作欣二監督初監督作品『風来坊探偵 赤
い谷の惨劇』を第一回主演作品とする。
以後アクションスタアとして世界の銀幕で
大活躍を為した。
令和三年（2021年）八月十九日千葉県にて
死去した。八十二歳。
深作欣二は昭和五年（1930年）七月三日
茨城県緑岡村に生まれた。
平成十五年（2003年）一月十二日七十二
歳で死去した。
日本大学芸術学を経て昭和二十八年（1953年）
に東映に入社した。
昭和三十六年（1936年）六月九日初監督作品
『風来坊探偵 赤い谷の惨劇』が公開される。ス
ピーディーで鋭いリズムが作さんの写真に溢れて
いる。素早く鮮やかに物語を語る。だが、本作は
激烈なカーチェイスが展開されるものの、過去の
大傑作『白昼の無頼漢』や『新仁義なき戦い 組
長の首』の輝きを思うと明らかに劣っている。
軽妙永遠傑作『資金源強奪』『暴走パニック
大激突』の華麗なリズムを想起すると、『いつ
かギラギラする日』の鈍重な流れに首を傾げる。
「いま何でアクション映画を」（『映画監督
深作欣二』451頁（2003年7月12日発行 ワイ
ズ出版）という問いを深作欣二は覚えた。
奥山和由からの強い要請を受けて作さんは受
けた。
荻野目慶子の身体を無理矢理奪うと言う暴力
事件を深作欣二は犯してしまった。だが二人は
しばらく恋人関係で付き合った。
本作の中年男・初老野郎は光っている。
悪役の角町、妖艶悪女麻衣の人物像探求が物
足りない。
木村一八・荻野目慶子という花形役者を得な
がらキャラクター造詣に不足があった。これは
奥山和由・丸山昇一・深作欣二の失敗である。
荻野目慶子・木村一八は役不足で気の毒だっ
た。
悪の華ならば、『魔界転生』の沢田研二の天草
四郎のような冷酷美の探求が欲しい。
アニキファンの自分が言うと問題があるかもし
れないが、角町像や麻衣像で神崎に勝てるとは到
底感じられない。
熱き親父たちが冷酷若者に振り回される。
これまでの「野望熱き若者が老獪な中年男に
利用される」物語の在り方を変化反転させた。
作さんの試みは察する。
しかし、成功はしていない。
麻衣が男達の決戦に突入し「ロックンロール」と
叫び自爆的に撃たれる。男達を翻弄する妖艶女とし
て生き残って欲しかった。嫌ってた神崎がメロメロ
に惚れちゃうという筋もあったのではないか？
折角強かな若者を描く企画なんだから逞しい若者
像が欲しいよ。
神崎と角町の決戦は迫力があった。
部分的に輝きを感じつつも物足りなさを覚える
写真である。
熱い期待を寄せていたが結果的には残念だった。
口惜しい気持ちがある。
『傷だらけの天使』ファンとしては兄貴・作さん
コンビのアクション傑作娯楽大作にして欲しかった。
主役華麗・悪役造詣探求不足と言わざるを得な
い。
作品の質において贔屓はしない。
何故か？
兄貴に惚れてるから。
作品研究に自分の「好き」という主観は捨てる。
それだからこそ、エンディングに流れる萩原健一
『ラストダンスは私に』が一層強く心に染みる。
合掌