おもちゃ | 俺の命はウルトラ・アイ

おもちゃ

『おもちゃ』

映画 トーキー 111分 カラー

平成十一年(1999年)一月十五日公開

製作国 日本

製作会社 東映

     ライジンングプロ

配給 東映

 

企画 佐藤雅夫

   平哲夫

   深作欣二

プロデューサー 豊島泉

        春日たかし

        小柳憲子

 

原作 新藤兼人

脚本 新藤兼人

美術 西岡善信

 

撮影者 木村大作

音楽 天野正道

編集 園井弘一

 

撮影効果 板野友宣

装置   梶谷信男

装飾   玉井憲一

音楽プロデューサー おくがいち明

録音 佐俣マイク

整音  伊藤宏一

音響効果 竹本洋二

     和田秀明

照明   安藤清人

衣裳  松田孝

監督補佐 原田徹

スクリプター 田中美佐江

スチール 野上哲夫

     溝縁ひろし

 

 

 

 

出演

 

宮本真希(時子)

 

南果歩(照蝶)

魏涼子(君竜)

喜多嶋舞(染丸)

 

柴田善行(吉川順一)

六平直政(香山)

松村康世(時子の母)

野口貴史(時子の父)

竜川剛(時子の兄)

坂本真衣(時子の妹)

市村貴俊(時子の弟)

梅本直輝(ミチコの子)

京子:安岡真智子(京子)

谷口高史(大学の先生)

大木晤郎(徳さん)

月亭八光(山下)

北村祐子(美恵)

丸平峯子(住人)

高良隆志(若い男)

小野順一(製材所社長)

踊りの師匠:富美蝶(踊りの師匠)

清水綋治

 

三谷昇(三上)

加藤武(田村)

 

岡田茉莉子(花万の女将)

 

野川由美子(ミチコ)

 

津川雅彦(吉川嘉一郎)

 

富司純子(里江)

 

監督 深作欣二

 

深作欣二=ふかさくきんじ

 

宮本真希=斐貴きら

 

野口泉→野口貴史

 

沢村マサヒコ→津川雅彦=マキノ雅彦

 

藤純子→富司純子

鑑賞日時 場所

平成十五年(2003年)八月二十五日

シネ・ヌ―ヴォ

 

 時子は貧困に喘ぐ家計を思い家族を

助ける為に京都花街置屋藤乃屋に奉公

している。

 時は1958年(昭和三十三年)売春禁

止法が施行されつつあった。

 

 時子は舞妓として飛翔したいという

夢を熱くし雑用の勤務おちょぼに精進

している。

 

 女将里江は昔藤千代の名で人気を博

した。男からモテる照蝶・君竜・染丸

という三人の芸妓を指導し、呉服屋の

旦那吉川嘉一郎の愛人でもある。

 

 吉川が月20万円を里江に貢いでいる

ことが本妻にばれてしまったようだ。

 照蝶に息子順一が誘惑されたと吉川

は怒る。これは嘘で里江との関係を終

える為に作った口実だった。

 

 時子が舞妓になる日は決まった。しか

し、莫大な資金が要る。吉川という後ろ盾

を失った里江は吉川のライバルであった

三上に相談する。

 

 「君を抱きたい」と三上は里江に迫り

一夜の関係を持ってくれたら資金援助を

すると約束する。

 

 里江は涙を飲んで三上の提案を承知

する。

 

 時子の水揚げの相手は北山の大尽田村

と決まる。

 

 花方の女将からおもちゃの名を貰った

時子は田村の部屋に向かう。

 

 ◎時子おもちゃの輝き◎

 

 深作欣二は昭和五年(1930年)七月三日

茨城県東茨城郡に誕生した。

 日本大学芸術学を経て昭和二十八年(195

3年)に東映に入社した。

 昭和三十六年(1936年)六月九日初監督作品

『風来坊探偵 赤い谷の惨劇』が公開される。

 

 平成十五年(2003年)一月十二日七十二歳

で死去した。

 

 本作は六十九歳で発表した監督作品である。

 

 新藤兼人の脚本『おもちゃ』の映画化に深作

欣二が挑んだ。

 

  体を売ることで自分の生活の場を作ること

  に主人公がなんの疑い持たず、恥ずかしい

  とか罪の意識とか全然感じていないという

  扱い方が、すごく面白かった。

  (深作欣二・山根貞男共著『映画監督 

    深作欣二』481頁 

    平成十五年七月十二日第一刷 

    ワイズ出版)

 

 新藤兼人は明治四十五年(1912年)四月

二十二日広島県佐伯郡石内村に誕生した。本

名は新藤兼登である。平成二十四年(2012年)

五月二十四日百歳で死去した。映画監督・脚本

家として日本映像界を支えた。

 

 おもちゃは溝口健二監督作品『祇園の姉妹』

のヒロインの名前である。新藤兼人は尊敬し

師事している溝口健二への敬意をこめてオマー

ジュシナリオを書いた。

 

祇園の姉妹

 

 深作欣二は溝口健二作品を「あんまり好き

じゃない」と『映画監督 深作欣二』インタ

ビューで語り、若い時期は吉村公三郎・黒澤明・

木下恵介の作品にときめいたことを確かめて

いる。

 

 宮本真希は昭和五十二年(1977年)十二

月十二日愛媛県に生まれた。宝塚歌劇団を

経て映画・テレビで活躍している。アメーバ

ブロガーでもあらせられる。

 時子後におもちゃを明るく演じた。ヌード

シーンも為した。水揚げのシーンで宮本真希

が衣類を取り裸身を魅せた瞬間性欲だけでな

く厳かな道を感じた。天使の煌めきを宮本真希

の清澄さに感じた。

 

 時子は舞妓として羽ばたいたと実感した。

 

 富司純子は昭和二十年(1945年)十二月

一日和歌山県に生まれた。出生名は俊藤純子

である。父はプロデューサー俊藤浩滋である。

藤純子の芸名で東映任侠映画のヒロインとして

活躍し大スタアとなった。

 

 昭和四十七年(1972年)四代目尾上菊之助

後の七代目尾上菊五郎と結婚し引退した。本

名は寺島純子となった。昭和四十九年(1974

年)寺島純子で芸能界に復帰し、平成元年富

司純子に芸名を改めた。

 

 深作欣二にとって俊藤浩滋は鍛えて貰った

プロデユーサーであった。

 

 任侠映画の華あった富司純子と実録路線の

代表であった深作欣二が舞妓映画で組むことに

なった。

 

 撮影木村大作、美術西岡善信が参加し

芸妓達の世界が瑞々しく示された。

 

 時子が通天閣を歩み日立パソコンの広告

が映っても深作欣二は構わない人なのだ。

1998年の撮影風景が映ってもドラマ時代

は1958年と作さんは自由に歩む。

 

 現代2022年舞妓へのハラスメントが社会

問題になっている。嫌がる事を強いてはいけ

ない。

 

 『祇園の姉妹』は女性の哀しみを語ってい

る。

 

 『おもちゃ』は買春されることを受容し舞

妓の道を歩む女性の物語である。意見は分か

れるだろう。男性深作欣二ファンの自分は女性

の感性や意見はわからないので聴くしか学び

の道はない。

 

 里江は舞妓やおちょぼを支える女将さんで

富司純子の母性と強さが光った。

 

 南果歩・喜多嶋舞・魏涼子は姉さんの貫禄

があった。

 

 野川由美子・津川雅彦という近畿出身の

名優達の存在感は流石だった。

 

 岡田茉莉子は迫力豊かであった。

 

 三谷昇が三上の執念を鋭く見せる。

 

 加藤武が静かに大尽の重さを示す。

 

 宮本真希の可愛さを銀幕に光らせて舞妓

青春物語を深作欣二は爽やかに明かした。

 

 

                合掌