必殺仕置人 力をかわす露の草 | 俺の命はウルトラ・アイ

必殺仕置人 力をかわす露の草

『必殺仕置人』第八話「力をかわす露の草」

テレビドラマ トーキー 55分 カラー

放送日 昭和四十八年(1973年)六月九日

放送局 朝日放送 TBS系

製作国 日本

製作言語 日本語

 

 

 のさばる悪をなんとする

 

 天の裁きはまってはおれぬ

 

 この世の正義もあてにはならぬ

 

 闇に裁いて仕置きする  

 

 南無阿弥陀仏    

 

 ☆

 

 物語の核心に言及します。未見の方は

ご注意下さい。

 物語の要約・台詞の引用は、研究・学

習の為です。

 

 

 朝日放送様・松竹様におかれましては

御理解・ご寛恕を賜りますようお願い申

し上げます。

 画像・台詞は、『必殺仕置人』DVD vol.

4より引用しています。

 ☆

 若年寄内藤直忠の妻ぬいの方は勝気・冷淡

な美人だ。姉が将軍家側室で寵愛を受けている

のでどのような無法も罷り通り直忠は一言も

注意できない。

 

 ぬいは愛犬美鈴を溺愛している。「美鈴様に

冷たい思いをさせた」咎によりおみつはぬい

の命令により大男雲衛門に掴まれ池に漬けられ

る。

 

 おみつの後任で美鈴の世話を命じられたお

志乃は美鈴を見失い首を括ろうとして念仏の

鉄に介抱される。女将お仙と良い仲の鉄は彼

女の船宿にお志乃を匿う。お仙は鉄が冷たい

事に不満で志乃を浮気相手かと疑ってしまう。

 

 美鈴行方不明で志乃の父佐助を糾弾するお

ぬいは雲衛門に佐助を責めさせる。

 

 鉄砲玉のおきんやおひろめの半次が抗議す

る。棺桶の錠が雲衛門と戦うがぬいに狙撃さ

れ腕に負傷する。

 

 隠れ家の小舟でおきんは怪我をした錠の無

念を思い貯めた十五両で仕置を鉄や中村主水

に提案する。

 

 「情に流されちまったら俺達おしまいよ」と

鉄は制止する。主水は発砲でぬいを追い込める

かもしれねえと見る。

 

 半次は乗り気で、おきんは雲衛門みたいな大

男と一度寝てみたかったら誘惑して仕置でき

たら一挙両得と計画する。

 

 だが雲衛門は警戒しておりおきん・半次は

歯が立たない。

 

 船宿女将の旦那が帰り志乃は出され美鈴が

死亡していたことを知る。鉄は危険を察知し

佐助・志乃を逃がすが、佐助は目明し文吉か

ら情報を得た雲衛門に殺される。

 

 鉄は雲衛門に捕らえられ拷問に遭う。おきん

は鉄は拷問で死ぬ男じゃないと力説するが、怪

我を治した錠は「いくら念仏でも打ち所が悪け

りゃ死ぬぜ」と警戒する。

 

 鉄は格子を開け縄を解き自身の身体を骨外し

で細め激痛を堪えて脱獄する。

 

 

 ぬいに虐待された腰元達の怨みを思う商人

吉田屋から相談を受けた鉄は江戸には金を貰

って人の怨みを晴らす仕置人の噂を伝え金を

預かる。

 

 大怪我をした志乃やおみつも息を潜めて

鉄の対応を隣室で聴く。

 

 

​​​​​

 直忠はぬいを注意するが、ぬいは「殿の御子を

産めぬこの身体が忌まわしゅうございます」と語

り「別腹でお世継ぎを作り遊ばせ」と直忠に注意

する。

 

 門番の注意を半次・おきんが引き、鉄・錠が内

藤邸に入る。

 

 鉄は雲衛門と戦う。

 

 ぬいは鉄砲で鉄を撃とうとするが屋根から錠が

飛び降り手槍で刺殺しぬいの指は最期に空間に発

砲する。

 

 鉄は雲衛門を骨外しで倒し錠と逃げる。

 

 主水は御用提灯をかざし直忠に発砲を問う。

 

 直忠は不審を抱かれるのは迷惑千万と怒る。

 

 白昼に仕置人達が語り合う。おぬいは病死と届

けられた。直忠が安堵し喜んでいることを主水は

告げる。

 

 狂ってるのは幕府のご政道で「俺達は今頃獄門

台」と鉄は確かめ命拾いを噛みしめる。

 

 

 キャスト
 

 山崎努(念仏の鉄)

 

 

 沖雅也(棺桶の錠)

 

 

 野川由美子(鉄砲玉のおきん)

 

 

 柳生博(安藤直忠)

 大前均(雲衛門)

 

 津坂匡章(おひろめの半次)

 

 和田恵利子(志乃)

 丘夏子(おみつ)

 香月京子(お仙)

 

 池田忠夫(佐助)

 北原将光(土屋)

 森章二(同心)

 

 暁新太郎(侍)

 新海なつ(老女)

 内田真江(芸者)

 

 

 

 安田道代(ぬい)

 

 

 藤田まこと(中村主水)

 

 

 

 

 スタッフ

 

 制作      山内久司 

          仲川利久 

          桜井洋三

 

 脚本      猪俣憲吾

 

 音楽      平尾昌晃 

 撮影      石原興

 

 美術      倉橋利韶

 照明      中島利男

 録音      二見貞行

 調音      本田文人

 編集      園井弘一

 

 助監督     松永彦一

 装飾      稲川兼二

 記録      野口多喜子

 進行      黒田満重

 特技      宍戸大全

 

 

 装置      新映美術工芸

 床山結髪   八木かつら

 衣裳      松竹衣裳

 現像      東洋現像所

 

 製作主任    渡辺寿男

 殺陣      楠本栄一

 題字      糸見渓南

 

 

 ナレーター  芥川隆行

 

 オープニングナレーション作 早坂暁

 エンディングナレーション作 野上龍雄

 予告篇ナレーション      野島一郎

 

 制作協力   京都映画株式会社

 

 

 主題歌 「やがて愛の日が」

 作詞   茜まさお

 作曲   平尾昌晃

 編曲   竜崎孝路

 唄    三井由美子

 ビクターレコード

 

 監督  松野宏軌

 

 

 制作    朝日放送

      松竹株式会社

 

 ☆

  山崎努=山﨑努

 

 大前釣=大前均

 

 津坂匡章→秋野太作

 

 

 安田道代→大楠道代

 

 山内久司=松田司

 

 平尾昌晃=平尾昌章

 

 

 早坂暁・野上龍雄・野島一郎はノークレジット

 ☆

 勝気美女と怪力大男

 ☆

 

 美しき冷酷非情の奥方ぬい。安田道代を想定

して猪又憲吾はシナリオを書いたのではないな

と思うほど当たり役・はまり役だ。

 

 安田道代は昭和二十一年(1947年)二月二十

七日中華民国天津市に誕生した。

 昭和三十九年(1964年)スカウトされて日活

でデビューを飾り後に大映でスタアになり、城健

三朗後に若山富三郎と恋におちたと言われてい

る。昭和五十一年(1976年)大楠裕二と結婚し

芸名も大楠道代に改めた。鈴木清順監督の傑作『

ツィゴイネルワイゼン』の靑地周子役の色気は

堪らない。

 阪本順治監督作品で大活躍している。

 

 ぬいは二十六歳で演じた。誇り高き悪女の

探求により視聴者に忘れられない印象を与えて

くれている。

 

 ぬいの美貌と気品はブラウン管に輝いている。

 

 冷酷なぬいは直忠の子を産めないという悩み

を抱いていて愛犬美鈴を愛する余り不満を感じた

腰元達を雲衛門に命じて虐待させる。

 

 冷酷さと哀感を安田道代が繊細に伝えている。

 

 大前均は昭和十年(1935年)十二月十九日岐阜

県に誕生した。

 平成二十三年(2011年)三月一日七十五歳で死

去した。

 巨体の存在感を生かして強烈なイメージを観客・

視聴者に与えた。

 『宮本武蔵 般若坂の決斗』における老獪な大

坊主に息を飲んだ。

 

 柳生博は昭和十二年(1937年)一月七日に誕生

した。先祖は柳生宗厳である。

 令和四年(2022年)四月十六日八十五歳で死去

した。

 気が弱くて冷酷な妻に頭があがらない直忠を繊細

に演じた。

 暴れ者だったぬいと雲衛門が仕置人に仕置されて

内心安堵し大喜びするという直忠は一番の巨悪であ

る。

 

 

 美鈴様の可愛い犬は『必殺仕掛人』「仕掛けて

仕損じなし」の角と同じ犬であろうか?

 

 アメーバブロガーであらせられる森章二は同心

役でレギュラー出演している。藤田まことの台詞

で「田口様」と呼ばれているが、この回は生井健

夫の代役だったのか?

 

 怪力大男で鉄をも殴り倒す雲衛門は大前均で

なければ勤まらない大役である。

 

 雲衛門はぬいの方のマッサージをするが関係は

持たない。

 

 山﨑努と大前均の坊主頭男二人の激突に緊張

する。

 

 

 鉄は馴染みのお仙からは彼女には少し冷たい。

志乃を助け弥助も逃がそうとして救えなかった。

自身ぬいの拷問に遭い、身体を痛めつけ細めて

脱獄する。多くの感情は語らず仕置に全てを集中

する。

 

 吉田屋の依頼を鉄が聴き、志乃が盆栽に鋏を

入れるシーンが絶妙である。

 松野宏軌監督の演出が光っている。

 

 

 鉄と雲衛門の戦闘は迫力豊かだ。

 

 山﨑努は雲衛門の猛攻に追い込まれる鉄の

戦いを鮮やかに表す。ねじ伏せられるが必殺

の指で鉄は難敵雲衛門を仕置する。

 

 錠がぬいを刺した後にかかえ遺体を支える。

悪女でも女性は女性として遇する錠の紳士的

配慮がある。

 

 主水が引き連れる御用提灯の描写に伊藤

大輔の弟子松野宏軌の演出の輝きを見る。

 

 

 御用提灯をかざす主水を注意し追い返すシ

ーンの直忠を柳生博が渋く演じる。

 

 妻を恐れる夫二人の直忠と主水だが、ワルと

ワルが腹で通じ合う道を柳生博と藤田まことの

芸が語り合う。

 

 ラストに獄門台行の身で助かっている境遇

を鉄が噛みしめ御政道の狂気に驚く。

 

 山﨑努の笑みに痺れた。

 

 『必殺シリーズ秘史 50年目の告白録』

 高鳥都著 

 令和四年(2022年)九月十六日発行

 立東舎

 「必殺シリーズ」50年記念にスタッフ・キャスト

インタビューを高鳥都が為した。番組の歴史を教え

てくれる名著である。

 

 山﨑努のインタビューと鉄ポーズに感激

した。

 

                南無阿弥陀仏