女の園  | 俺の命はウルトラ・アイ

女の園 

 『女の園』

 

 映画 141分 トーキー 白黒

 1954年3月16日封切

 制作  松竹大船

 製作国 日本

 製作言語 日本語

 原作  阿部知二(『人口庭園』)

 音楽  木下忠司

 撮影  楠田浩之

 

 出演

 高峰三枝子(五條真弓)

 高峰秀子(出石芳江)

 岸惠子(滝岡富子)

 久我美子(林野朋子)

 田村高廣(下田参吉)

 東山千栄子(校長)

 毛利菊枝(学長)

 金子信雄(平戸喜平)

 浪花千栄子(下宿のおばさん)

 

 脚本・監督 木下恵介

 

 ☆鑑賞日時 場所

 2014年9月24日 京都文化博物館

 ☆

 ポスター画像はインターネットより拝借引用

 しています。

 ☆

 

 木下恵介監督が昭和1954年に撮った群像

劇の名作を2014年9月24日京都文化博物館

で観れた。

 

 昭和時代にVHSで見て感動したのだが、劇場

で見直したいと思っていた。

 

 名門正輪女子大学で学生達が、自殺者に対する

悲しみの声をあげ、彼女を追い詰めた学校の理不尽

な在り方に怒りを表明する。

 

 字幕では「学生は学び、学校は研究の場」である

ことが確かめられ、何故両者の間に争いが起こる

のかが問われる。

 

 オープニングでクライマックスの悲劇を示し、

「何故事件が起こったのか?」を尋ねて行く手

法である。

 

 正倫女子大では厳格な校則が決められ、道徳・

倫理を墨守するレディになることが求められて

いた。


 

 芳江は元銀行員の学生で数学が苦手でよく怒

られていた。何とか自習して勉強に追いつこう

とするが、厳格な寮母五條先生は夜の勉強を禁

止し彼女をいじめる。

 

 無理難題を課して取り組む時間も奪って

苦しめるハラスメントである。

 

 お嬢様の朋子は自身の実家が学校を経済的に

支援していることから、特別扱いを受けている

ことを知り、五條から「共産党関係の運動に参

加しないで」とたしなめられるが自分なりの信

念で社会運動に取り組む。

 

 富子はリボンを怒られるが、屈しない性格で

テニスでストレスを発散させている。

 

 学生指導の平戸は五條に頭があがらない。

 

 恋人下田との文通が厳しく規制され、彼との

結婚を夢見る芳江は五條の虐めに耐えかねて溜

まるストレスに圧迫されていく。

 

 小説家・翻訳家・思想家・ウィリアム・シェ

イクスピア研究家阿部知二(1903-1973)の

小説を木下恵介が重厚に映画化した。

 

 虐めに苦しみ悩む芳江を高峰秀子が熱演する。

 

 見ていて、劇でありながら、辛さが観客の心

に迫る。

 

 いじめは受けたら逃げるのが大事だが、芳江

の置かれている環境は、逃げられない環境なのだ。

 

 全寮制で下宿も夜の自習も許されず、嫌みと

虐めを受けて苦悩・苦悶が募っていく。

 

 彼女の力になろうとして守り切れなった下田を

田村高廣が悲しみをこめて演ずる。

 

 岸恵子の美しさは光っている。

 

 久我美子は華族のお嬢様という自身の出身を反

映した設定を理解し、貴族と庶民の両者を思う女

性の優しさを明かす。

 

 高峰三枝子が厳格・冷酷な五條真弓を重厚に

勤める。

 

 真弓もかつては果たせなかった恋愛がありそ

の過去を朋子に握られている。

 

 冷酷な性格の奥に潜む涙を高峰三枝子が鋭く

表現する。

 

 高峰三枝子と高峰秀子の同姓二大女優の競

演作品としても歴史的であり貴重だ。

 

 真弓を恐れて言う事を聞いてペコペコする

平戸先生を金子信雄が鮮やかに演ずる。長髪

のネコさんが観れるのも嬉しい。

 

 毛利菊枝・東山千栄子・原泉・浪花千栄子

と重鎮の女優達の至芸は圧巻である。

 

 いじめによって人が死を選んでしまうことへ

の悲しみを語る傑作である。

 

 高峰秀子・岸惠子・久我美子は美しき女子

大学生である。

 

 岸惠子は九十歳になられたが、今夏トーク

ショーに出演されたことをツィッター情報で

聴いた。

 

 虐げられる女性の悲しみと抑圧に抵抗する

女性の抵抗を木下恵介は繊細に語った。

 

 東山千栄子 生誕百三十二年

 

 2022年9月30日

 

                 合掌

 

女の園