必殺仕掛人 仕掛けて仕損じなし 昭和四十七年九月二日放送 林与一・緒形拳・山村聡主演作品 | 俺の命はウルトラ・アイ

必殺仕掛人 仕掛けて仕損じなし 昭和四十七年九月二日放送 林与一・緒形拳・山村聡主演作品

 『必殺仕掛人』「仕掛けて仕損じなし」

 

 テレビドラマ 54分 トーキー カラー(一部白黒)
 製作国 日本

 製作言語 日本語

 放送局 朝日放送系

 放映日 昭和四十七年(1972年)九月二日

   ◎

 感想文ではドラマの核心に言及します。

 未見の方は御注意下さい。

 

 ◎


  はらせぬ恨みをはらし

  許せぬ人でなしを消す

  人呼んで仕掛人

  いずれも人知れず

  仕掛けて仕損じなし

  人呼んで仕掛人

  ただしこの稼業

  江戸職業づくしには

  のっていない

 

 

 口入屋音羽屋の密室では、商人伊勢屋勝

五郎が主半右衛門に、「仕掛」の依頼をして

いる。

 

   伊勢屋「どうでしょうね、元締?引受け

        ちゃもらえませんか?礼金のほ

        うは辰巳屋のほうが五十両。御

        作事奉行のほうも始末して頂け

        れば、その方は百両。お恥ずか

        しいがこれが屋台骨の傾いた

        伊勢屋の出来る洗いざらいです。」

 

   音羽屋「わしの裏の稼業を御存知の貴男

         の事だ。固い事は申しません。そ

         ういう事と次第ならばお引き受け

         も致しましょうが、わしはね、この

         世の中に生きても仕方がねえ、生

         かしても仕方がねえ人でないと、

         殺しませんよ。」

 

   伊勢屋「わかっております。だから元締にお

        願いするのです。」


 

   音羽屋「だから誰を使ってどう仕掛るのかは

        こっちに任せてもらいます。それと何

        時殺るかだが、こいつはかかってみ

        ないとすぐにはわかりません。」


 

   伊勢屋「そりゃそうですが、注文つける訳じゃ

        ありませんが、辰巳屋には良い折が

        あるんで。」

 

 永代橋門前の二軒茶屋で開催される商売仲間

の寄り合いが暮六つに開かれ、八つに御開きに

なるのだが、妾おぎんの宅に向かう辰巳屋は一人

になる。

 

 夜。一人になった辰巳屋を黒服を着た鍼医が

見つめていた。

  仕掛人藤枝梅安である。



    「妾通いの一人歩き。やっぱり

     女ってのは命取りだな。お互い

     に気をつけなくっちゃいけねえ」

 

 口笛が鳴った。 辰巳屋の前に草笛を銜えた

武士が現れた。



 浪人西村左内である。

 

  左内「町人」

 

  辰巳屋「へえ」

 

  左内「気の毒だが命を貰う」

 

  辰巳屋「お武家さま!お金ならこの通り」

 

  左内「銭金ではない。済まぬがこれが俺の

      病でな。」

 

  梅安は「せっかくの獲物を横取りされてたまる

か!」と怒り鍼を投げる。左内も切り返す。辰巳屋

は逃げる。

 梅安の衣装の一部が斬られ、左内の草鞋に鍼

が突き刺さった。

 

  左内「恐ろしい奴」

 

  タイトルが表示される。



 必殺仕掛人

 

 仕掛けて仕損じなし

 

 梅安は長屋に帰り、町人達から挨拶を受ける。

懸命に働く娘お初が洗い物している光景を見て、

彼女の健闘を労いつつ、その父で下駄屋の金蔵

の容態を気にする。

 

 金蔵は隠れて大好きな煙草を吸ってくらくらして

いた。お初が注意して止めさせようとしたら、尚も

金蔵は煙草を吸う。そこへ梅安が現れ、金蔵の頭

を叩き、煙管を折った。



 梅安は叱って背中を出させて鍼治療をする。

人の腰巻を洗って稼いでる娘を思えば罰が

当たるぞと注意する。


   梅安「今度煙草なんか飲みやがったら、

      てめえまちがいなく地獄行きだぞ」

 

   金蔵「脅かしちゃいけませんや」

 

   梅安「脅しだと思うのか?」

 

   金蔵「すみません。もう二度と一生煙草

       は吸いません」

 

 お初は父の治療をしてくれたことに礼を言う。

梅安は過労のお初を心配し、「無理して身体

壊さねえようにな」と声をかける。

 

 梅安は老婆が待つ自宅に帰るが、婆さんは

既に帰った後で、仕掛のつなぎ役をしている岬

の千蔵が来ていた。

 

 二人は美味しそうな鍋料理を食べる。千蔵は

表稼業は人助けの鍼医だが、裏稼業は仕掛人

の梅安の生き方を不思議に思う。梅安は仕掛人

で稼ぐから美味い物も食えるし、貧乏人の病も

療治できると語る。

 銭金に困れば金持ちの病に頭を下げざるを

得ないと状況を解説する。千蔵の質問を受け、

辰巳屋襲撃は邪魔が入って失敗したことを語る。

 

 半右衛門は表稼業で千蔵を使いながら、口

入れ仕事を指示する。妻のおくらが女中の女

の子が欲しいと頼んできた。千蔵はお初を想起

するが、父の金蔵の治療もあり、四両の借金を

大岩親分にしていることを語る。

 

  おくらは大岩に掛け合い、四両の借金を払

った。ところが大岩は半年前の約束であり、諸

経費を入れて三十六両貰うと証文を見せる。お

初を奉公と称して辰巳屋の妾にしようという魂胆

なのだ。

 

   おくら「おい!大岩さん。黙って聞いてりゃ

       いい気になりおって。四両の借金が

       半年で三十六両やて!アホ抜かす

       のもええ加減にせえ!卵飲んだ青

       大将みたいなけったいな面しやが

       って!」

 

 音羽屋が現れ、妻を制止し、言い過ぎを大岩

に謝罪し、男同士で話し合おうと提案する。

 

    大岩「借金は元利三十と六両だ!女中の

        前貸にしちゃ大金過ぎるんじゃねえ

        のか?」

 

 

    音羽屋「さあね。期限は何時だ?まだ四、

         五日ある。ゆっくり考えさせてもらい

         ましょうか?」

 

    大岩「よし。その代わり、期限の日は間違い

        なく片を付けてもらうぜ!」

 

 半右衛門は千蔵から梅安が仕掛に失敗した事

を聞き、作事奉行の仕掛もあり、凄腕の仕掛人を

もう一人雇いたいと計画を立てる。

 

 大岩が源兵衛長屋で立ち退きを迫り、住民を苦し

めていた。妻美代から民衆を助けてあげてと言われ、

息子彦次郎が大岩に怯えても、左内は立ちあがらな

かった。

 半右衛門が現れ、釣りに誘ってきた。小舟の上で

左内は乞食同然の親子三人を救い出してくれた半

右衛門がどういうつもりなのかと問う。音羽屋は下心

があるかと仰るのならば図星であり、西村様の腕に

頼みたいことがあると仕掛人になって欲しいという

真意を語る。

 

   半右衛門「先夜は邪魔が入ってしくじっておいで

          だが、貴男は既に三人の人を斬って

          おいでだ!」

 

 左内が刀を構える。半右衛門は自室に左内を

招き、百両近い報酬もある仕事だと語り、親子三

人が喰っていけると生活の安定を確約する。

 

   左内「嫌だと言ったら?」

 

 襖が開き、梅安が現れ、「楽な暮らしが出来る

のに無理して断ることはないでしょ」と声をかける。

 

 左内は「やはりお主も」と語る。

 

 梅安・左内はそれぞれ鍼・刀を抜き、相手の身

体の寸前で止めた。

 

 

  梅安「何故止めなすったね?」

 

  左内「お主が鍼を止めたからだ」

 

 人足達が汗をかいて労働している。大岩は辰巳

屋に「手いらずの生娘なんで手間暇かかりますが

あと、四、五日で大願成就ってことで」でお初を奉公

させる道を語り、辰巳屋は喜ぶ。


 

 作事奉行伴野が現れ、伊勢屋の入札を却下し、

辰巳屋の入札を許可する。辰巳屋の賄賂をつき

返し、町人に化けていた浪人を叱責・打擲して、彼

が逆上して切りかかってくると返り討ちにして斬殺

した。


 

 左内は浪人を惨たらしく殺した伴野に怒りを

覚える。

 

 梅安は千蔵の手引きで辰巳屋の妾宅に潜入し、

妾おぎんの美貌と身体に惹かれて、彼女の犬

かくに鍼を一刺しして刺され傷に遭ったと見せて

おぎんが狼狽して医師を探すと、鍼医として現れ

治療をし、おぎんに揉み療治をして誘惑する。

 

 そこへ辰巳屋が現れ、鉢合わせを恐れたおぎん

は梅安を釜の中に隠す。

 

 辰巳屋が洗顔に現れ梅安が手ぬぐいを渡す。

驚く辰巳屋を取り押さえた梅安は鍼で殺害する。

 

 おぎんが辰巳屋の倒れた身体を見て驚くと

梅安は何喰わぬ顔で脳卒中だと診断し、二人

は合掌しつつ、おぎんは次の逢引の機会を尋ね

た。

 

 左内は半右衛門配下の万吉の働きで伴野

の前に暴動を起こさせ、彼を一人にして、草

笛を吹き、決闘を挑み、斬殺する。
与一 室さん

 

 

 雨の日。伊勢屋は大喜びで源兵衛長屋取り

壊しを進める大岩の手腕を評価する。

 

 音羽屋は「辰巳屋のようになりたくなければ」

と釘を刺し、席から去り、伊勢屋は怯える。

 

 橋で半右衛門は大岩に会い、「例の三十六

両の期限は今日だが、何か良い思案はついた

かい?」と聞かれ、「まあね」と返事する。

 

 二つの傘がすれ違う。大岩は「ひい」と声を

あげ、背に衝撃を受ける。

 

 伊勢屋の席に大岩が現れるが倒れ込み、背に

は大刀が刺さっていた。

 

 雨の中。

 

 音羽屋半右衛門はゆっくりと歩んだ。

 

 

 キャスト

  

 林与一(西村左内)

 

 

 緒形拳(藤枝梅安)

 

 

 津坂匡章(千蔵)

 

 太田博之(万吉)

 

 松本留美(お美代)

 岡本健(彦次郎)

 

 浜田寅彦(勝五郎)

 富田仲次郎(辰巳屋)

 

 

 野川由美子(おぎん)

 

 

 梅津栄(金蔵)

 高品格(大岩)

 

 室田日出男(伴野)

 西山恵子(お初)

 

 山本和子(おすみ)

 岩尾正隆(大岩の子分)

 横堀秀勝(大岩の子分)

 西崎健(浪人)


 

 中村玉緒(おくら)

 

 

 山村聡(音羽屋半右衛門)

 

 スタッフ

 

 制作   山内久司

       桜井洋三

 

 原作   池波正太郎

 

 脚本   池上金男

 

 音楽   平尾昌晃

       渡辺音楽出版K.K.

  撮影   石原興

 

 美術   川村鬼世志

 照明   中島利男

 録音   二見貞行

 調音   本田文人

 編集   園井弘一

 

 助監督    長谷川洋

 装飾      稲川兼二

 記録      牛田二三子

 進行      鈴木政喜

 殺陣      楠本栄一

 

 

 

 

 装置      新映美術工芸

 床山結髪   八木かつら

 衣裳      松竹衣裳

 現像      東洋現像所

 

 

 

 

 製作主任   渡辺寿男

 ナレーター  睦五郎

 題字      糸見渓南

 

 

 制作補   岩田耕治

 制作協力  京都映画株式会社

 

 

 監督  深作欣二

 

 

 ◎

 津坂匡章→秋野太作

 

 山村聡=山村聰

 

 池上金男=池宮彰一郎

 

 睦五郎→睦五朗

 

 深作欣二=ふかさくきんじ

 ◎

 必殺シリーズ開幕

 ◎

 

 林与一は昭和十七年(1942年)二月十四日に

誕生した。

 父は林敏夫、母は北見禮子である。祖父は林

又一郎、大叔父は二代目中村鴈治郎である。お

くら役の中村玉緒は、父敏夫の従姉妹である。

 関西歌舞伎を経て、長谷川一夫に学び、演劇・

映画・テレビに活躍する大スタアである。

 

 

 令和元年(2019年)九月二日、林与一は

ツィッターで三十歳で演じた西村左内を語っ

た。

 令和二年(2020年)九月ファンに

『必殺仕掛人』DVDマガジン三巻・五巻

にサインをして頂いた。

 

 林与一丈

 

 ありがとうございます。

 

 緒形拳は昭和十二年(1937年)七月二十日に

誕生した。本名は緒形明伸(おがた・あきのぶ)

である。

 平成十年(2008年)十月五日七十一歳で死去

した。

 新国劇を経て映画・テレビで凄み豊かな名演

を発表し日本映像界を牽引した。

 

 山村聰は明治四十三年(1910年)二月二十四

日に誕生した。

 本名は古賀寛定(こが・ひろさだ)である。

本作字幕クレジットでは山村聡名義で表示され

る。東京帝国大学を経て演劇界に歩み、映画ス

タア・名優・監督として日本映画の歴史を支え

た。溝口健二・伊藤大輔・山本薩夫の作品でも

重厚な名演を明かした。

 平成十二年(2000年)五月二十六日九十歳

で死去した。

 

 

 

 昭和四十七年(1972年)九月二日二十二

時、三大名優主演のドラマが放送された。そ

の名を『必殺仕掛人』という。日本のテレビ

のドラマ道に大きな一歩が踏み出された。

 

 「金を貰って人を殺す」という殺しの稼業を

生業とする殺し屋の物語がテレビドラマとし

て映像化されたのである。

 当時TBS・朝日放送の系列でドラマ制作が

なされていたのだ、フジテレビのドラマ『木枯し

紋次郎』(主演中村敦夫)が内容的に傑作で

視聴率も好調で強敵であったのだ。

 朝日放送プロデューサー山内久司は、内容

数字共に「打倒紋次郎」の課題を果たすべく

新たな企画を練った。

 

 池波正太郎が殺し屋仕掛人を主人公とする

小説『殺しの四人』『殺しの掟』を書いた。

これらの作品を基盤として物語が練られた。

 

 仕掛人の鍼医藤枝梅安と剣客西村左内を音

羽屋半右衛門のチームに所属する仕掛人のチ

ームを主人公とする筋である。

 池波は殺し屋たちを主人公とする物語のテレビ

化の許可を、山内から頼まれて、吃驚したという。

 

 当時映画では殺し屋を主役とする傑作は数多く

制作・公開されていたものの、テレビでは未知の

領域であったと見ていいだろう。

 

 時代劇の主人公は、決闘で敵や悪役やライバル

と戦って斬殺するのだが、義憤にかられた決戦や

やむにやまれぬ闘争であって、職業として金をもら

って、標的を殺すという物語はテレビでは中々映像

化されない題材であった。


 

 当初松竹と共に東映制作のテレビ化も考案され、

脚本を巨匠結束信二に依頼する予定もあったと

いう。

 『必殺シリーズ』において結束脚本は無かった

と思うが、これは見たい企画であった。

 

 山内久司は現代的な時代劇を制作したいと考え

スピーディーな演出リズムと映画に匹敵する重厚

な映像の両立を模索した。


 

 松竹における制作が決まり、第一回の脚本に

池上金男、監督に深作欣二が選ばれた。

 池上金男は大正十二年(1923年)五月十六日

生まれた。作家名は池宮彰一郎である。

 平成十九年(2007年)五月六日八十三歳で死

去した。

 

 集団抗争時代劇の大傑作『十三人の刺客』や不

滅の大傑作『大岡越前』第一部第一話「大岡越前」

(稲垣俊と共同)の脚本を書いた巨匠である。

 

 深作欣二は昭和五年(1930年)七月三日茨城

県緑岡村生まれた。

 平成十五年(2003年)一月十二日七十二歳で

死去した。

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 『風来坊探偵 赤い谷の惨劇』でデビューを飾り

東映のアクション映画の若手として活躍し、『白昼

の無頼漢』で闘魂の物語を流動感漲る演出でダイ

ナミックに描き、日本映画の新しい風を吹かせた。

 『誇り高き挑戦』『ギャング対Gメン』『ギャン

グ同盟』『狼と豚と人間』『ジャコ萬と鉄』『脅迫』

『黒蜥蜴』『恐喝こそわが人生』『ガンマー第3号 

宇宙大作戦』『黒薔薇の館』『日本暴力団 組長』

『君が若者なら』『博徒外人部隊』『軍旗はためく

下に』『現代やくざ 人斬り与太』といった戦後史

問題・ギャング映画・兄弟葛藤劇・漁業ドラマ・推

理劇・妖艶ミステリー・禁断の愛・恐喝青年悲劇・

怪獣ドラマ・現代やくざ映画・ニューギニア戦線で

の処刑事件ドラマ・野良犬やくざ悲劇等、数多くの

傑作・問題作を熱い闘志とスピード感豊かな演出で

描いた。

 

 『軍旗はためく下に』においては残酷な上官の命

令で処刑される富樫勝男の痛みを語り、裕仁の戦争

責任を問うた。反戦平和映画の傑作なのだが、欣二

本人は、タブーに斬りこみ、戦争への痛みを語って

も、「反戦映画の旗手」と評価されることには違和

感を感じじていたという。

 

 『日本暴力団 組長』で初めて組んだ名優菅原文太

を主役沖田勇役に抜擢し、野良犬チンピラの暴走と

破滅を描いた傑作『現代やくざ 人斬り与太』は、時

代に衝撃を与えた。

 

 その深作欣二が池上金男と組んで語った殺し屋

ドラマが『必殺仕掛人』第一話である。闇の中に生き

る殺し屋達のハードなドラマが、作さんの激烈な演出

で鮮やかに語られた。

 

 当初西村左内には竹脇無我、藤枝梅安には天知

茂が想定されていたという。

 

 二人のバージョンも見たかったという気はするが、

結果論的とはいえ、林与一の左内、緒形拳の梅安

は当たり役の決定版になった。

 

 

 山内久司は「殺し屋に見えない人を殺し屋に起用

したい」と考えていたと言われる。NHK大河ドラマを

強く意識していたことが窺える。

時子・徳子・清盛・祇園女御

 『新・平家物語』において、中村玉緒は平時子、林

与一は木曽義仲、緒形拳は阿部麻鳥を勤めている。

 掛け持ちで出演していた訳だが、主演俳優達のハ

ードスケジュールに驚嘆する。

 

 『木枯し紋次郎』に主演中村敦夫は、1971年の

大河ドラマ『春の坂道』において石田三成(極悪

人として描かれる)を演じて人気を博した。これに

対して、徳川家康は泰平の世を開いた神のような

人物として描かれ、山村聰が勤めた。

剣禅一如 活人剣

 主人公柳生宗矩の妻烏丸順子を勤めた女優は、

松本留美である。

 

 中村敦夫主演『木枯し紋次郎』に対抗すべく、

山村聰に『必殺仕掛人』の元締半右衛門役を

依頼したことは、山内久司にとって、番組決戦

の関ヶ原が想定されたことは充分に窺える。

 

 梅安・左内を助けるつなぎ役の仕掛人千蔵・

万吉には、津坂匡章後の秋野太作、太田博之が

起用された。



 辰巳屋の妾で梅安と良い仲になるおぎんに

を野川由美子が勤める。

 

 野川と津坂は、重い題材のドラマの中で、緊張

を和らげるコメディの空間を、深い芸で伝えてく

れた。

 

 二人は初期『必殺』四大傑作の顔となる。

 

 

 第一回「仕掛けて仕損じなし」は、池上金男脚本、

深作欣二演出の永遠不滅の大傑作である。

 

 伊勢屋の依頼を受けた半右衛門は「世の為人

の為にならねえ」悪党でないと「殺さない」と念を

押し、指令を受けた梅安が辰巳屋を狙うが、辻斬

り左内に邪魔をされて、鍼と剣で戦うが互角の腕

と確かめ合い、表稼業では金蔵・初親子を見舞

い、左内は半右衛門の勧誘を受けて仕掛人と

なり、梅安はおぎんを誘惑しつつ辰巳屋を仕留

め、左内は伴野を斬り、半右衛門は大岩親分を

斬って、伊勢屋に警告する。

 

 殺し屋達の存在感を示す重厚な物語が、緊張

感豊かな演出で描かれ、54分はあっという間に

過ぎる。

 

 悪役に富田仲次郎・室田日出男・高品格と豪華

な顔ぶれが集い熱い演技合戦を展開した。

 

 伊勢屋役の浜田寅彦の粘り強い名演も渋い。

 

 深く重く激しく鮮やかなドラマの決定版である。

 

 

 梅津栄は昭和三年(1928年)七月五日に誕生

した。『ウルトラセブン』『帰ってきたウルトラ

マン』においても重厚な存在感を示した。

 平成二十八年(2016年)八月六日八十九歳で

死去した。

 金蔵役では前歯一本の歯並びを見せていた。煙

草好きで歯磨きを怠り歯が抜け落ちた状態を見せ

る為に、歯を抜かれたのだろうか?役者魂の情熱

に敬意を表する。

 

 

 

 

 ラストにおいて背中で語る音羽屋半右衛門

の風格が心に強烈な印象を与えてくれる。

 

 山村聰の歩き方の風格に、元締の存在感

を感じた。

 

 『必殺仕掛人』は本作の後三十五話が製作・

放送されれた。

 脚本を國弘威雄・安倍徹郎・山田隆之・早

坂暁・松田司・山崎かず子・本田英郎・池田

雄一・鈴木安・石堂淑郎・津田幸夫が書いた

 監督は三隅研次・松本明・大熊邦也・長谷

和夫が担当した。

 

 深作欣二は第二話「暗闘 仕掛人殺し」

第二十四話「士農工商大仕掛け」の演出も

為している。

 

 

 

 昭和四十八年(1973年)四月十四日に最終

回三十六話「仕掛人掟に挑戦!」(脚本國弘維

雄、監督三隅研次)が放送された。

仕掛人 掟に挑戦!

 

 平成二十八年(2016年)九月二日にテーマ

深作欣二(ふかさく・きんじ)で投稿した記事

に加筆している。

 必殺仕掛人 仕掛けて仕損じなし

2016年9月2日放送の44年記念日に書いた記事

は画像を再編した。

 

 「必殺シリーズ」五十年史の出発点は本作で

ある。

 

念仏の鉄 棺桶の錠 中村主水

いのちを売ってさらし首

おしん 六

牢屋でのこす

松平 鉄

高橋幸治 山村聰 田宮二郎

助け人

緒形 岩下

感激して候

裏切無用

必殺15年の歩み

辰蔵 吉蔵 鉄

 

 『必殺仕掛人』

 「必殺シリーズ」

 

 放送五十年記念日

 五十歳お誕生日

 

 おめでとう

 

              文中一部敬称略         

 

 

               南無阿弥陀仏