この世界の片隅に | 俺の命はウルトラ・アイ

この世界の片隅に

『この世界の片隅に』

映画 アニメーション
トーキー 129分 カラー
平成二十八年(2016年)十一月十二日封切
製作国 日本
製作言語 日本語 広島弁
製作会社 MAPPA
製作 真木太郎
製作総指揮 丸山正雄
原作 こうの史代
   『この世界の片隅に』
脚本 片渕須直
撮影 熊澤祐哉
編集 木村佳史子
音楽 コトリンゴ
主題歌 コトリンゴ『みぎてのうた』
 
 
出演
 
のん(浦野すず後に北條すず)
 
細谷佳正(北條周作)
小野大輔(水原哲)
尾身美詞(黒村径子)
稲葉菜月(黒村晴美)
藩めぐみ(浦野すみ)
牛山茂(北條円太郎)
新谷真弓(北條サン)
岩井七世(白木リン)
小山剛志(浦野十郎)
津田真澄(浦野キセノ)
大森夏向(浦野要一)
京田尚子(森田イト)
目黒末奈(マリナ)
佐々木望(小林の伯父)
塩田朋子(小林の伯母)
瀬田ひろ美(知多)
たちばなことね(苅谷)
世弥きくよ(堂本)
三宅健太(ばけもん)
栩野幸知(憲兵)
萩野沙織(女学生)
桜奈里彩(女学生)
巴奎依(女学生)
広瀬ゆうき(女学生)
水希蒼(女学生)
八木菜緒(アナウンサー)
渋谷天外(警官)
 
 
 
監督 片渕須直
 
のん=能年玲奈

鑑賞日時

平成二十九年(2017年)二月七日Tジョイ京都

 
 浦野すずは広島に誕生した。父十郎と母
キセノの子供として生まれたすずは温厚な
性格の女性で兄と妹がいる。
 昭和十八年(1943年)すずに縁談の
話が来た。
 草津の祖母の家で海苔すぎの手伝いを
為していたすずは青年北條周作と出会っ
た。
 
 昭和十九年(1944年)周作とすずは結
婚した。二人は呉の北條家で暮らしている。
 すずは周作と過去に出会った記憶がある
のだが思い出せない。
 のんびり屋で温厚なすずは失敗を繰り返
し、北條家に帰ってきた小姑(周作の姉)
黒村径子に失敗を叱責される。しかし、径
子の娘晴美はすずに好感を持ち二人は仲良
しになる。晴美の軍艦への好意を知り、す
ずは軍艦の絵を描く。
 しかし空襲の猛威が広島を襲い始めた。
 
 義父円太郎は空襲で怪我をする。
 
 すずと晴美は円太郎の見舞いで病院に行
く。
 
 空襲が起こった。
 
 爆撃に晴美は殺され、すずは片手を失う。
 
 径子は娘を亡くしすずを責める。
 
 愛してた義理の姪を亡くし守り切れなか
ったことですずは悩む。
 
 生きる気力を無くしかけていたすずを夫
周作が懸命に守護する。
 
 八月六日広島県に原子爆弾が投下される。
 
 呉市に暮らすすずは巨大な雲を見つめる。
 
 八月十五日裕仁が連合国に降伏することを
ラジオで発表する。
 
 玉音放送と呼ばれる敗戦決定の放送が流れ
る。
 
 長く不明瞭に聞こえる放送に径子は苛立ち
を隠せず、放送終了後「やっと終わった」と
安堵する。
 
 周作・すず夫妻は広島で原爆投下の様子を
見る。
 
 少女が右手を失ったすずのもとに駆け寄
ってきた。
 
 すずと周作はこの少女と生きることを決
意し、三人の暮らしが始まる。
 
 
 ◎空と自然と祈り◎
 
 
 こうの史代の漫画『この世界の片隅に』
のアニメーション映像化作品である。
 
 昭和四十三年(1968年)九月二十八日
広島県広島市に誕生したこうの史代は豊
かな表現を静かに語り、平和の尊さを読者
に教えてくれている。
 
 『夕凪の街 桜の国』を読んだ時は震え
た。
 
 映画『この世界の片隅に』に前述の通り
平成二十九年(2017年)二月七日Tジョイ
京都客席で出会い、衝撃を受けた。
 
 片渕須直(かたぶち・すなお)は昭和三
十五年(1960年)八月十日大阪府に生まれ
た。
 こうの史代の漫画を読み衝撃を受けアニ
メーション映像化の希望を述べ許諾を貰う
が製作資金をクラウドファンディングで集
め、豪華な声優陣とスタッフ共に平和祈念
のアニメを書き描き語り表した。
 
 片渕須直の絵は広島の麗らかな空と息吹
いている自然を豊かな色彩で描いてくれる。
 
 この緑豊かな地が戦争に襲われる。
 
 のんは平成五年(1993年)七月十三日に
誕生した。
 本名・旧芸名は能年玲奈である。二十三
歳で戦時下広島県の女性すずの悲戦の心を
語った。
 
 若く美しく優しい女性すずが北條家に花
嫁さんになり夫周作と愛し合いながら日常
を生きる。
 
 厳しい小姑径子に失敗を咎められながら
もその娘晴美と軍艦の絵で心と心を繋ぐ。
 
 のん(能年玲奈)の清らかで澄み切った
声がすずの心を静かに語る。
 
 径子役の尾身美詞の凄み豊かな声も強烈
だった。
 
 やさしいすずと厳しい径子の対照が描か
れるが、二人は共に戦時下の広島を生きる
女性である。
 
 こうの史代の漫画を読んでいて細かい生
活描写に瞠目するが、片渕版アニメーション
においてもその繊細な描写に息を飲んだ。
 
 丁寧に描かれた絵に感嘆する。
 
 円太郎が空襲で避難する際に晴れ渡った
空が印象的だった。
 
 戦争は澄み切った空気と晴れた日にも
起こる。
 
 民は突然命を襲われる。
 
 円太郎は命を取りとめるが、見舞に行っ
たすずと晴美は空襲に遭い、すずが右手、
晴美が命を奪われる。
 
 幼い晴美が空襲に爆殺されたことに観客
も悲しみを覚える。
 
 老人や女性や児童が戦争に巻き込まれる。
 
 径子は空襲に最愛の娘を殺され、やり場
のない怒りをすずにぶつける。
 
 尾身の迫真の演技に震える。
 
 義理の姪を守れなかった苦悩をのんが繊
細に語る。
 
 八月六日に広島県に投下された原爆に改
めて震えた。
 
 呉で爆撃を感じたすずの衝撃をのんが鋭く
語る。
 
 八月十五日の裕仁の放送を聞いた径子が
「やっと終わった」と語るシーンに思わず
笑ってしまった。
 
 「昭和天皇が戦争を終えて民を救って下
さった」等と言う観念は嘘であり戦後捏造
されたものだ。
 
 日中戦争を起こして南京の人々を殺した
犯人は裕仁である。
 
 朝鮮人女性が慰安婦にされ日本軍兵士に
強姦された事件において責任者は裕仁であ
る。
 
 敗戦必至で降伏後の自身の延命が分からず
降伏受諾を裕仁は遅らせた。
 
 この逡巡によりハリー・トルーマンは広島
に原子爆弾を落とし日本在住地球人を殺した。
 
 晴美の爆死や原子爆弾の投下には、裕仁に
責任がある。
 
 径子の「やっと終わった」の語りは、大日
本帝国統治者裕仁の卑劣さを糾弾している。
 
 
 右手を失い義理の姪の死に責任を感じ、戦
に痛みを感じるすずは夫周作と広島市の少女
と生活を確かめる。
 
 広島県原子爆弾投下から七十七年九日が経
った。
 
 ウクライナではロシアとの戦いが続いて
いる。
 
 世界各国各地でコロナワクチンによる薬害
が起こっている。
 
 戦争と薬害が地球から無くなり平和が実現
することを祈る。
 
 増補版の映画『この世界の(さらにいくつ
もの)片隅に』はまだ見聞していない。
 再上映を希望する。
 
 日本国憲法第九条の戦争放棄を守護し、国
民主権・基本的人権を墨守し、危険薬物接種
強制を可能にする緊急事態条項独裁を阻止す
る。これは現代の日本在住地球人の課題であ
る。
 
 『この世界の片隅に』は反戦映画というよ
りも悲戦映画である。
 
 全ての戦争・暴力・薬害を悲しみ、戦の無
い地球が成就することを祈る。
 
 すずの眼差しは現代日本・世界・地球を見
つめている。
 
 戦争を悲しみ平和を祈ったすずの心は、一日
一日の命の尊さを教えてくれている。
 
 
 大日本帝国大東亜戦争・日中太平洋戦争・
第二次世界大戦敗戦降伏記念日
     令和四年(2022年)八月十五日
 
 
                  合掌