十六時五十七分 BS朝日 新必殺仕置人 解散無用  放送 | 俺の命はウルトラ・アイ

十六時五十七分 BS朝日 新必殺仕置人 解散無用  放送

鉄 41

 

『新必殺仕置人』「解散無用」

(『新・必殺仕置人』「解散無用」)

 テレビドラマ トーキー 54分 カラー

 放映日 昭和五十二年(一九七七年)十一月四日

 製作国 日本

  製作言語 日本語

放送局  朝日放送系

 

 のさばる悪をなんとする

 

 天の裁きはまってはおれぬ

 

 この世の正義もあてにはならぬ

 

 闇に裁いて仕置きする  

 

 南無阿弥陀仏   

 

 

 歌舞伎『藤娘』の舞台が上演されている。

 仕置人己代松は役者を狙撃し殺害した。

 

 その直後に潜んでいた同心諸岡佐之助が

配下の者達に己代松を囲ませ捕えた。

 

 諸岡「己代松。神妙にしろ」
 

 正八は松つあんが奉行所に捕えられたこ

とを知り、直ちに仲間の念仏の鉄・おていに

知らせる。鉄は正八に注意するように指示す

る。

 

 おていと松は恋仲だったことが明かされた。

 

 鉄は「俺達の稼業わかってるだろうな?」と

問い、おていは何時松が獄門首になるかわから

ないことを確かめる。

 

 それでも惚れた男の安否が気になるのが

人情だ。

 

 もう一人の仲間南町奉行所同心中村主水

が現れ、尾行者を気にして、同心としておて

いに「掏摸の嫌疑で奉行所に来い」に強く

命じて奉行所に呼び諸岡に虐待されている

松を見せる。

 

 「せめて一目松に引き合わせてやりたい」と

いう主水の心遣いであったが、おていは恋人

松が諸岡の残忍な拷問に痛み苦しむすがた

を見て胸が張り裂けそうになる。

 

 サディストの諸岡は拷問を楽しむ。

 

 寅の会。

 

 元締虎は「本日をもって寅の会を解散」すると

厳かに宣言する。

 

 鉄は仲間が奉行所に捕えられたので、落とし

前をつけるようにと要求し、仕置人辰蔵は「鉄

さんの言う通りだ」と語り、虎にけじめをつける

事を求める。

 

 

 虎の腹心の部下吉蔵は「辰蔵さん、言葉が過

ぎるぜ」と辰蔵の野心を看取して牽制する。

 

 虎は「私がつけると言ってるんだ」と改めて語っ

た。

 

 辰蔵は「俺が辰の会を作ったっていい訳だな?」

と語り野望の計画を語り始めた。

 

  吉蔵「あんたが何を考えているか、元締はお見

      通しだ」


 

  虎「金の為に見境無く人殺しをする外道は許さ

    ねえ。そのことはわかっているぜ、辰蔵さん」

 

 辰蔵は野心を見透かされ、悔しさを表情に見せる。

 

 鉄が石段を降りていると、辰蔵とその配下の者が

接近し、辰蔵は「おめえさんが承知してくれれば、松

を解き放つことも出来るんだが」と呼びかける。

 

 鉄は虎のけじめを見守る心を述べた。

 

 虎は長屋で子供達と遊んでいた。鉄が尾行し

家の中に入って行くと、虎は木像を彫っていた。

 

 虎は「とうとう見られましたね」と語った。

 

 元締として仕置した人間達を弔い、哀悼の心をこめ

て木像を彫っていた。

 

 「例え悪党でも、死ねば仏です」

 

 「私は仕置人の外道は許さない」

 

 元締虎の言葉は、鉄の心に深く響く。


 

 虎は諸岡の元に自首して、「己代松の身柄を引き

取りたい」と願い出て、「私をお縄にして下さい」と

申し出て頼むが、諸岡は茶を地べたに捨て拒絶す

る。

 

 鉄・正八・おてい・主水は対策を相談する。正八は

「辰の会に入るのならば、松を助けてやる」という辰

蔵の提案に乗るべきだと主張しするが、煙管で煙草

を吹かす鉄は「気取る訳じゃないがな、俺は外道に

だけはなりたくないんだ」と自己の生きる道を語る。

 

 

 鉄は辰蔵のもとに行き、「辰の会に入るから松を

助けてくれ」と頼むが、辰蔵は「鉄さんと松さんと

刃物を使う仕置人」の三人全員が揃わないとこの

話はご破算だと語り、鉄の申し出を断る。

 

 鉄は仲間の主水を辰の会に巻き込むことを避け

た。主水は鉄にとって最後の切り札であった。

 

 元締虎の家に何者かが侵入し、虎を襲撃した。


 

  鉄がかけつける。


 

  虎「鉄さん。外道を頼む。」


 

 辰蔵の家では寅の会から内応してきた者に、諸

岡と辰蔵が声をかける。

 

 諸岡「悪党だな」

 

 辰蔵「この人は俺の片腕ですよ」

 

 主水は鉄に辰の会に入り、顔を晒すと述べた。

 

 主水「俺はおめえが辰蔵の元に何しに行ったかわか

     ってるぜ」


 

 鉄「おめえは切り札だ。俺がしくじった時はおめえ

   に任すぜ」


 

 鉄は単身辰蔵の家に潜入し、厠から出てきた辰蔵を

脅し、「己代松を渡せ!さもねえとおめえをぶっ殺すぞ。

どうなんでえ?」と迫るが、辰蔵はこの襲撃を計算して

いた。待っていた部下達がに鉄を襲い拉致監禁して拷

問にかけて納戸で右腕を焼く。

 

 鉄が気を失って倒れると諸岡が現れ、松が

遷延性意識障害の状態になったことを述べた。

 

 辰蔵「鉄も己代松も仕置人としてはもうおしま

     いですな」

 

 正八は鉄が捕まり拷問にあった状況を見て、

匕首を取りに行って、辰蔵への報復を企てる

が、主水から「てめえみたいなガキに何ができ

る」と叱られ注意される。


 

 主水は中村家でせん・りつに「離縁して頂き

たい」と述べる。りつは夜に不満がないことを

述べ、せんは注意しつつ貴方のような頼りない

婿がいてくれたからこ長生きできたと告げ離縁

を思い留まるように頼む。主水は「石よりも鉄

よりもカチカチに固い」と離縁の意志を述べ歩

みだした。

 

 拷問に遭う松・鉄を思って主水は決死の覚悟

で戦いを挑む。

 

 奉行所で主水は「諸岡様の御命令」と称して

己代松の身柄を引き取るが、松は遷延性意識

障害で仲間の主水が誰であるかもわからなかっ

た。

 

 正八とおていが松を大八車に乗せた。

 

  主水「己代松のこと、頼むぞ」

 

 正八「松つあんもつれて行ってやってくれよ。

     仕置人なんだからさ」

 辰蔵の家に主水が現れ、諸岡に「己代松に逃げ

られました」と伝えた。
辰 諸岡

 諸岡「おめえ夢でもみてるんじゃねえのかい。

    己代松は生ける屍だ」

 

 辰蔵は三人目の仕置人が逃がしたかもしれ

ませんと述べ、諸岡の注意を呼び起こした。


 諸岡は同意し家の外にでる。

 

 諸岡「待て待て中村、お前どうして俺がここに

    いるとわかった?まさかお前・・・・・・?」

 

あんたの

 

 主水「そう、あんたの思った通りだよ。

    諸岡さん。」

 

 主水は諸岡に戦を挑む。

 

 その剣の壮絶さに恐怖を抱いた辰蔵は

納戸に逃げるが、そこには右腕を焼かれた

鉄が居た。

 

 匕首を振るう辰蔵。

 

 念仏の鉄は命を捨てる決意で辰蔵に挑む。

 

 

 

鉄 最後の戦い

 男が仲間を救うために、自身の命を犠牲

にして戦う。

 

 念仏の鉄の集大成ドラマです。

 

 村尾昭先生の脚本。

 

 平尾昌晃さんの音楽。

 

 原田雄一監督の演出。

 

 全てが完璧でした。

 

 昭和五十二年十一月四日。わたくしはこの

ドラマを見て緊張し驚きました。

 

 

 

 ドラマの中の出来事を心の中で繰り返し

反芻しました。

 

 「好き」なんて感情は微塵も覚えない。そ

んな素敵な心地じゃない。

 

 ただ、ただ、恐ろしくて怖かった。夜のベ

ッドの中で震えていた小学四年生男子児童は

翌1977年11月5日学校に通いつつ番組の衝撃

で緊張していました。

 

 仲間の松を守る為に、辰蔵の匕首と戦い、

命を捨てる決意で、黒焦げの右手で骨外し

に全てを賭ける鉄さん。

 

 匕首で左手を刺されても辰蔵を離さず、

技をかける。

 

 

 外道にだけはなりたくない。

 

 仲間の松を助けることが成り立てばそれで

よい。

 

 辰蔵が逃げてきたことで、鉄は主水の襲撃を

察知し、自身が辰蔵を倒せば、主水の役に立て

ることを察知したのだと思います。

 

 死闘の後、鉄は背後にやってきた主水と口を

きかず、傷口を抑えて遊郭に行きます。

 

 主水は静かに鉄の歩みを見守ります。

 

 涙一滴流すことなく、最初の殺し屋仲間との

道を確かめる。

 

 佐藤慶氏・清水糸宏治氏の冷酷演技に震えます。

眼光は光っていました。

 

 北村光生氏の吉蔵ドラマの集大成でもあります。

 

 藤村富美男様の至芸に震えが止まりません。プロ

の俳優ではなく偉大な野球人ですが重厚な名演を発

表されます。

 

 唐沢民賢氏の悪役演技も光ります。

 

 

 主水の対辰蔵・師岡との決戦の前に『必殺仕置

人』の音楽が流れ、おていの己代松介護への言葉

で『助け人走る』の音楽が流れる。

 山﨑努が鉄役で主演したドラマとナレーションを

語ったドラマです。

 

 

 『新必殺仕置人』「解散無用」が本日16時57

分再放送されます。

 

 黒こげになった右手で骨外しに挑む鉄さん。

 

 

 仕置人が仲間の救出に命の全てを賭けた。

 

 キャスト

 

 藤田まこと(中村主水)

 

 中村嘉葎雄(己代松)

 

 火野正平(正八)

 

 中尾ミエ(おてい)

 

 佐藤慶(辰蔵)

 

 清水綋治(諸岡佐之助)

 山崎清三郎(田村十三郎)


 

 藤村富美男(元締虎)


 

 北村光生(吉蔵)

 唐沢民賢(道八)

 高並功(弥之吉)

 

 マキ(屋根の男)

 東悦次(義助)

 森みつる(女郎)

 

 平井靖(小者)

 伊波一之(侍)

 美鷹健児(侍)


 

 藤沢薫(闇の俳諧師)

 原聖四郎(闇の俳諧師)

 沖時男(闇の俳諧師)

 堀北幸夫(闇の俳諧師)

 秋山勝俊(闇の俳諧師)

 

 

 菅井きん(中村せん)

 

 白木万理(中村りつ)

 

 

 

 山崎努(念仏の鉄)





 

 プロデューサー

 山内久司

 仲川利久

 櫻井洋三


 

 脚本 村尾昭


 

 音楽 平尾昌晃

 編曲 竜崎孝路

 

 撮影 藤原三郎

 製作主任 渡辺寿男

 

 

 美術 川村鬼世志

 照明 中島利男

 録音 木村清治郎

 調音 本田文人

 編集 園井弘一

 

 助監督 服部公男

 装飾 玉井憲一

 記録 野口多喜子

 進行 静川和夫

 特技 宍戸大全

 

 装置 新映美術工芸

 床山結髪  八木かつら

 衣装 松竹衣装

 小道具 高津商会

 現像 東洋現像所

 

 殺陣 楠本栄一

    布目真爾

 題字 糸見渓南

 

 

 語り 芥川隆行

 

 

 主題歌

 あかね雲

 作詞 片桐和子

 作曲 平尾昌晃

 編曲 竜崎孝路

 唄  川田ともこ

 東芝レコード

 

 制作協力 京都映画株式会社
 

 監督 原田雄一

 

 制作 朝日放送

     松竹株式会社

 

 

 ☆☆

 山崎努=山﨑努

 ☆☆

 「己代松」の表記は本編字幕に

依った

   (画像出典

  『新必殺仕置人』DVD vol.11)

  

 

                   文中敬称略

 

 

 念仏の鉄物語の集大成です。

 

 辰蔵との激闘の後、鉄は重傷を隠して女郎と

遊びます。

 

 女郎役は森みつるさん。「裏切無用」のおしま

役です。

 

 おしまと「解散無用」の女郎が同一人物か

どうかは分かりませんが、同じ女性と見てい

ます。「裏切無用」でおしまは鉄に浮気したら

仕置人に頼んで仕置するわよと警告しました。

 

 仕置人として外道になれないと決めて辰蔵

と戦った鉄は傷を負いますが、気力を振り絞り

大好きな遊里で女郎と遊びます。おしまへの義理

を大事にしたと見ています。

 

 おしまが布団から飛び起きてみた鉄の様子。

 

 おていが己代松を守ることを誓う。

 

 正八が微笑む。

 

 

 観音長屋で賄賂を貰い損ねた主水は微笑みます。

 

 『必殺仕置人』「いのちを売ってさらし首」にお

いて賄賂を取って鉄に注意されました。

 

 「解散無用」ラストの主水の笑顔が不在の鉄を思

い出させます。

 

 『必殺仕置人』「いのちを売ってさらし首」と

『新必殺仕置人』(『新・必殺仕置人』)「解散

無用」は円を描き両手を合わせるように総合七十

一話を包み一つになります。

 

 

 

 

 村尾昭脚本・原田雄演出一は完璧完全なラストを

描きました。

 

 仕置人の男が危機の仲間を救うため強敵に挑戦

し戦いの後馴染みの女郎に笑顔で会いに行く。

 

 ここに念仏の鉄の生き方の集大成があります。

 

 

 山﨑努の鉄は史上最強の英雄です。

 

                   南無阿弥陀仏