ゴッドファーザー The Godfather 4K版 | 俺の命はウルトラ・アイ

ゴッドファーザー The Godfather 4K版

『ゴッドファーザー』

The Godfather

映画  177分 トーキー カラー

1972年3月14日 アメリカニューヨーク封切

1972年3月15日アメリカニューヨーク封切

1972年3月24日 アメリカ カナダ 封切

昭和四十七年(1972年)七月十五日日本封切

令和四年(2022年)二月二十五日日本4K版封切

 

製作国 アメリカ 

制作  パラマウント 

製作 アルバート・S・ラディ

 

原作 マリオ・プーゾ

脚本 マリオ・プーゾ

    フランシス・フォード・コッポラ
    ロバート・タウン

音楽 ニーノ・ロータ

衣装 ディーン・ダボウラリス

撮影 ゴードン・ウィリス

 

出演

マーロン・ブランド(ドン・ヴィトー・コルレオーネ)

 

アル・パチーノ(マイケル・コルレオーネ)

 

ジェームズ・カーン(サンティノ・“ソニー“・コルレオーネ)

リチャード・カステラーノ(クレメンツァ)

ロバート・デュヴァル(トム・へイゲン)

 

ジョン・マーレー(ジャック・ウォルツ)

リチャード・コンテ(ドン・バルツィーニ)

ダイアン・キートン(ケイ・アダムス・コルレオーネ)

 

アル・レッティエリ(ソロッツオ)

エイブ・ビコーダ(テッシオ)

タリア・シャイア(コンスタンツィア・“コニー“・コルレオーネ)

ジャンニ・ルッソ(カルロ・リッツィ)

ジョン・カザール(フレデリコ・“フレドー“・コルレオーネ)

モーガナ・キング(ママ・コルレオーネ)

 

サルバトーレ・コルシット(アメリゴ・ボナセラ)

レニー・モンタナ(ルカ・ブラージ)
トム・ロスキー(ロッコ・ランポーネ)

リチャード・ブライト(アルベルト・ネリ)

アレックス・ロコ(モー・グリーン)

 

シモネッタ・ステファネリ(アポロニア)

フランコ・チッティ(カーロ)

アンジェロ・インファンティ(ファブリッツィオ)

ジーニー・リネロ(ルーシ―・マンシーニ)

ジュリー・グレッグ(サンドラ)

コラード・ガイパ(ドン・トマシーノ)

サロ-・ウルツィ(ヴィテリ)

ヴィトー・スコッティ(ナゾリーネ)

ジョン・マルティーノ(ポーリー・ガット―)

アンソニー・ゴーナリス(アンソニー・コルレオーネ)

ソフィア・コッポラ(マイケル・フランシス・リッツィ)

カーマイン・コッポラ(ピアノ演奏者)


 

監督 フランシス・フォード・コッポラ

☆☆☆

ロバート・タウンはノークレジット

☆☆☆

平成十六年(2004年)七月六日

パラダイススクエアにて鑑賞

 

平成二十年(2008年)八月十六日

京都みなみ会館にてデジタル・リマ

スター版鑑賞

 

令和四年(2022年)二月二十五日

TOHOシネマズ梅田 別館シアター9

H列17席にて4K版鑑賞

 

 「アメリカは良い国です」

 
 イタリア系アメリカ人の葬儀屋アメリゴ・ボナセ

ラは仕事に懸命に取り組んでいた。

 だが、最愛の娘が、デートに誘われた際に、ボ

ーイフレンドの男達から、殴り倒され顎の骨を砕

かれ怒りに燃えている。
 加害者の若者達は父親が有力者ということもあっ
て、禁固三年執行猶予の軽い刑を受け、喜びのあ

まり、失望するボナセラに笑みを投げかけた。

 

 怨念をこめて、ボナセラは「正義の裁きを、ドン・コ

ルレオーネにお願いしたい」と絞るように語る。

 

 

 じっと話を聞いていた、ゴッドファーザーことド

ン・ヴィトー・コルレオーネはボナセラの望みを

聞く。膝には猫がいる。

 ヴィトーの長男サンティノ・コルレオーネと弁護

士で相談役コンシリエーリのトム。・ヘイゲンも

同席している。
 ボナセラは耳打ちし加害者を殺して欲しいと

頼む。

 

 ドン・ヴィトー・コルレオーネは「駄目だ。娘は

まだ生きている」と語り拒絶する。ボナセラは

「懲らしめて下さい」と望む。ドンはボナセラが

友情を誓わないことが依頼を受けれないことの

根拠に挙げ、友情さえ誓ってくれれば、娘さん

に暴力を振るった若者達に制裁を加えると語

る。

 

 恐れながらボナセラは、友情を誓い、ドンの

手に接吻する。ドンは友情に報いることを確約

する。

 

 

 1945年のこの日、ドン・ヴィトー・コルレオー

ネの邸内で、娘コニーことコンスタンツィアと若

者カルロ・リッツィの結婚披露宴が華やかに行

われた。

 

 大幹部のピーター・クレメンザは踊り、テッシ

オは靴に少女の足を乗せてワルツを踊り、ヴィ

トーの妻ママ・コルレオーネが歌う。

 

 ヴィトーはイタリアに生まれ、幼年時代に両
親と兄を地元のドンに殺害され、単身アメリカ
に移住し、裸一貫から懸命に働き、アメリカの
中でも最大級の力を持つファミリーのドンの位
置に立った男である。

 

 邸宅の書斎ではブラインドが閉じられ、暗く
重い雰囲気の中、ヴィトーは友のパン屋ナゾ

リーネから娘の恋人エンツィオの兵役免除の

歎願を聞く。

 ゴッドファーザーは「名付け親」の意味であ

る。イタリアでは娘の結婚式に持ち込まれた

頼み事を、「ゴッドファーザー」は拒絶出来な

い。ヴィトーはどんな希望の実現をナゾリーネ

に確約する。

 

 

 サンティノは、「ソニー」の愛称で呼ばれている。

頑強な肉体を持ち、短気で気性の激しい彼は、

プレイボーイでもある。相談が終わるや、ブライ

ンドの隙間から妹コニー(コンスタンツィアの愛

称)の友人ルーシー・マンシーニに見とれ、ヴィ

トーから口笛で注意される。

 
 披露宴には、来賓として招かれたヴィトーの

ライヴァル、ドン・バルツィーニの姿もあった。

 

 ヴィトーの次男フレドーは優しく、純粋な気性

の持ち主だが、臆病で気が弱い。彼は兄ソニー

と共に、父のファミリーの仕事を手伝っている。

 

 ファミリーの殺し屋ルカ・ブラージがヴィトー

への祝辞を練習する。


 

 ヴィトーの三男のマイケルは、真面目な美青年

である。彼は大学を卒業した後、第二次世界大

戦では海軍を志願し、戦功を称賛され、勲章も

授与された。
 だが、彼はヴィトーのファミリーの仕事に嫌悪

感も持っている。

 赤のドレスを着た美しい恋人ケイ・アダムスを

伴って現れる。

 書斎のブラインドからヴィトーは愛息マイケル

を見つけ喜ぶ。優秀なマイケルだけは家業の

極道を継がせず、将来議員や知事を目指せた

いと望んでいる。

 

 人気歌手・俳優のジョニー・フォンテーンが

登場しコニーと抱擁し喝采を浴びる。

 

 ケイが驚く。マイケルは過去にジョニーがバ

ンドを組んでいた時代に独立を希望したが果

たせず、ヴィトーがルカを伴い拳銃を突きつけ

バンドリーダーに承諾させたことを語る。

 

 吃驚するケイに、「それが僕の家族さ。僕は

違うよ」とマイケルは確約する。

 

 ジョニーは新作映画で演じたい役があるが、

プロデューサージャック・ウォルツが嫌がらせを

して役を与えてくれないことを嘆く。

 

 トムがハリウッドに行き、ウォルツに交渉する。

ウォルツは、トムを自宅に招き、愛馬カトゥーム

のすばらしさを見せ、食時で金の卵と惚れこんだ

美少女スタア候補生の女性がジョニーに口説か

れ姿を消し笑いものにされたことを根に持ち、拒

絶する。

 

 翌朝ウォルツは、自身のベッドが血に染まって

いることに驚愕し叫び声を挙げる。


 
 麻薬のビジネスをの拡大を企図しているバージ

ル・ソロッツオが、資金面・法的保護を求めヴィトー

に協力を依頼する。ヴィトーは拒絶するが、サンティ

ノが関心を示す。ソロッツオが去った後ヴィトーは

息子を叱り、ルカを呼び、内応者を装ってソロッツ

オを探れと厳命する。

 

 ソロッツオとブルーノ・タッタリアはルカの申し出

を聞きつつ、彼を急襲し絞殺する。

 

 ヴィトーは息子フレドーの運転で帰宅する途中

好物のオレンジを買う。その時刺客に襲われ狙撃

される。フレドーは号泣する。


 クリスマス。

 ソロッツオはトムを拉致し、ヴィトー狙撃し、ドンの

死後ソニーを説得し商談に乗せて欲しいと頼む。

トムは甘受する。ところがヴィトーがまだ生きている

情報が入り、ソロッツオはトムを釈放しつつ怒りを

燃やす。

 

 映画鑑賞の後、家族へのプレゼントを買って、デ

ートを楽しむマイケルとケイ。イングリット・バーグ

マンよりも「君がいい」と愛を重ねて告白し、誓っ

てキスするマイケル。だが、ケイは夕刊の号外

を見て驚愕する。


 

 「ヴィトー・コルレオーネ狙撃さる」

 

の見出しが紙面に大きく掲載されているではない

か。マイケルは紙面を鷲掴みにして、「父が死ん

だ」と書かれていないことに一筋の希望を見出す。


 

 常時は暴力や威嚇といった手法を用いていた

父に反発していたマイケルだったが、父が重態と

聞いて、潜在していた愛情が一挙に湧出した。


 マイケルは、ケイの心配と悲しみを感じながら

も、家族を守る為に、戦いと暴力の世界に身を

投じていく。


 

 ☆以下の感想では更に詳しいネタばれを含み
  ます。未見の方・午前十時の映画祭12で鑑賞

  予定の方はご注意下さい☆

 



 1968年、パラマウント社はマリオ・プーゾの
『マフィア』という小説の映画化の権利を買い
取った。プーゾは『マフィア』を『ゴッドファーザ

ー』と改題して発表、小説はベストセラー
となった。
 映画化に当たって、パラマウントは、「マフ
ィア」「コーザ・ノストラ」といった言葉を使
わないことを確認する。

 

 フランシス・フォード・コッポラ Francis Ford

Coppolaは1939年4月7日に誕生した。父は音

楽家カーマイン・コッポラ、妹はタリア・シャイア

である。
 
 監督にイタリア系アメリカ人のフランシス・フ

ォード・コッポラを起用し、彼とプーゾに脚本が

依頼される。低予算のアクション映画を期待し

ていたパラマウント社に対して、若き監督コッ

ポラはイタリアロケの必要性を強調、更にプー

ゾがヴィトー役に想定していたマーロン・ブラ

ンドの起用に共鳴し、この配役も求めた。当

時ブランドは映画界で「過去の人」の印象を

持たれていただけでなく、自己中心的な役者

と見られていたこともあり、パラマウントは難

色を示した。

 

 だが、コッポラはブランドがヴィトーに扮した
テスト・フィルムをパラマウント首脳に見せて、
その圧倒的な存在感を感じさせ、彼の主演起

用を納得せしめたのであった。


 

 現在では、アル・パチーノと言えば、誰も認め
る世界最大の名優兼スターの一人だが、当時

は有名ではなかった。

 

 後にアル自身が「今ではすべて笑い話だが、

当時ロケを見に来たパラマウントの重役から

『準主役に客の呼べない役者を起用しやがって」

と嫌味を言われたと語っている。
 

 
 音楽は、イタリア映画界の巨匠ニーノ・ロータが
担当した。彼の深く奥行きを持ち、哀切感あふれる
テーマ・ミュージックが世界の観客の心を打った。
「メインテーマ」は魂の根底から響き渡る切なさ
が聞く者を熱く感動させる。

 

 抒情的で情熱的な音楽「愛のテーマ」は、『ゴッ
ドファーザー』という映画や小説を知らない人でも
聞いたことはある、という程著名なメロディーとし
て人々の記憶に刻み付いている。


 撮影監督ゴードン・ウィリスの功績も大きい。彼
は室外を明るくして、室内を暗くするという手法を
用いた。「自由の国」を表面的には名乗っているア
メリカにおいて、「闇の世界」に生きるマフィアの
力がいかに大きいかを象徴的に示すことに成功

している。


 
 コッポラ演出は、ウィリスの卓抜した撮影技法を
用いて、オープニングにおいて、コルレオ―ネファ
ミリーの権力の巨大さを神秘的に見せることを成し
遂げた。


  冒頭の場面は、葬儀屋のアメリゴ・ボナセラ
の言葉から開幕する。

 サルバトーレ・コルシットが最愛の娘を殴られ

父アメリゴ・ボナセラの悲しみを深く表現する。

真面目に勤務していても社会矛盾にぶつかり、

巨悪は裁かれない。正義の裁きをドン・コルレ

オーネにお願いする。

 

 マーロン・ブランドの深い芸が、ゴッドファー

ザーの重厚さを厳かに示す。

 

 ドン・ヴィトー・コルレオーネは友情を誓ったボ

ナセラとナゾリーネとジョニーの頼みを叶える。

友情には友情で報いるという義を貫く。

 

 深さと重さの存在感という事において、マーロ

ン・ブランドは最強である。

 

 ソロッツオの情報を聞きつつ、ソロッツオが会談

の場にコルレオーネファミリー幹部に挨拶する。こ

の時間の二重写しにコッポラ演出が光る。

 

 好物のオレンジを購入中に、ヴィトーがソロッツ
オの刺客に狙撃され、フレドーが護衛しようとして
拳銃を落とし、横たわる父の前で号泣する場面に

緊張する。

 

 

 この時車から路上に崩れ落ちるアクションも、ワ

ンシーンで撮られていが、ブランドは果敢に演じき

っている。

 

 ドンを裏切ったポーリー・ガットーは親分ピーター・

クレメンザに粛清される。クレメンザが用を足す間

に子分のロッコ・ランポーネがポーリーを撃つ。

 

 何事も無かったように車に戻るクレメンザが「銃は

置いとけ、カリーノを取ってくれ」と語るシーンも名場

面だ。菓子カリーノを愛するクレメンザの名台詞は

リチャード・カステラーノのアドリブという説もある。

 

 アル・レッティエリのソロッツオ、レニー・モンタナの

ルカ、リチャード・コンテのバルツィーニ、アンジェロ・

インファンティのファブリッツィオと名優達の凄み豊か

な演技が光り暴力戦のドラマを盛り上げる。

 

 病院においてマイケルが父ヴィトーを必死に守護

する姿も感動的だ。

 

 ソロッツオに買収されたマクルスキー警部を

スターリング・ヘイドンが憎たらしさたっぷりに

演じる。このシーンで電車の音をコッポラは鮮

やかに用いる。

 

 マクルスキー警部に殴られ、マイケルの内部

の闇が起こる。


 

 アル・パチーノの演技は、マイケル・コルレオー

ネの生命を輝かせた。優しく涼やかで暴力嫌いだ

った青年が、父の危機に出会って、防衛の為とは

いえ、自己の内面の暴力性に目覚め、大親分に

なっていく。この壮絶な道程を、アルは、濃密な演

技で演じきる。

 

 ブルーノ・タッタリアを粛清した兄ソニーとトムと

クレメンザとの作戦会議で、休戦の申し出は形だ

けで、ソロッツオは必ず親父を狙うから、マクルス

キーと一緒に射殺しなきゃいけないとマイケルは

強調する。ソニーは大学出の坊やがどうしたんだ

と驚くが、マイケルの意志は固い。

 

 父と家族を守りたいという家族愛に目覚めた

マイケルは生き残る為ならば手段を選ばぬ男に

変貌する。


 

 ソロッツオとその仲間マクルスキー警部との休戦
会談に臨むことを受諾するマイケル。会談に赴くに
当たって、マイケルとソニーが抱き合うシーンは、
兄弟の絆が熱く描かれ感動的だ。

 

 


 マイケルがソロッツオ・マクルスキーをレストラン

で撃つシーンの演出も鋭い。パチーノは無言のま

まに瞳で、暴力の炎が燃え上がる男の魂を表現

する。

 

 

 ソロッツオは同じイタリア系で兄弟の仲じゃない

かと訴えてマイケルに射殺される。

 

 

 スターリング・ヘイドンが食べながら殺されるマ

クルスキーの無念を鋭く演じる。

 

 アル・レッティエリが打たれてテーブルに顔を

ぶつけるアクションも強烈である。

 

 夜の闇とマイケルの内なる凶暴さが呼応し、

レストランでの惨たらしい殺人になる。

 

 ソロッツオは同じイタリア系で兄弟の仲じゃ

ないかと訴えてマイケルに射殺される。

 

 退院したヴィトーは、最愛のマイケルを求める

が、トムからソロッツォ射殺したのはマイケルで

国外に逃げていると聞き悲しむ。

 

 マイケルはヴィトーの故郷イタリアコルレオーネ

村に逃れ、父の源を探る。

 

 父の心配と息子の探求が、ニーノ・ロータの

「愛のテーマ」に乗って呼応する。

 

 マイケルはイタリア人女性アポロニアに出会い

惹かれ合い、結婚する。

 

 最愛の妹コニーが夫で自身の友人もあるカルロ

のDVに合って顔に大怪我を負い、妹を救出しようと

して高速道路の料金所で敵の罠に陥るソニー。彼

が刺客達に狙撃され、機関銃の銃弾を浴びせられ、

蜂の巣にされて殺害されるシーンの暴力描写の凄

まじさは、強烈な印象を観客の心に残す。

 
 悲しみに耐えられず酒を飲んで、悲劇を伝える勇

気を持とうとするトムから、愛息サンティノの訃報を

聞かされて、ヴィトーが「復讐はいかんぞ」と涙を堪

えながら語る夜の場面は、観客も感涙が極まる。

 

 幸福な結婚生活を送るマイケルにトマシーノがソ

ニーの訃報を伝え、マイケルは悲しむ。

 

 ファブリッツィオが逃げることに不振を感じたマイ

ケルはアポロニアに運転を制止するように呼び掛け

るが、アポロニアはエンジンを踏んでしまい爆殺さ

れる。

 

 暖かい陽光の中無垢な人妻が爆殺されるシーン

に悲劇美が光る。


 

 ヴィトーは対立している五大ファミリーに休戦を申

し入れ、イタリアに逃亡中のマイケルの安全が確

保されるならば、どのような提案でも飲む、と妥協

する。この会談の内容を聞き、ヴィトーはサンティノ
殺しの黒幕がバルツィーニであることを喝破する。

 

 マイケルは帰国し、ケイに音信不通を詫び、復縁
を願う。ケイは、マイケルが嫌がっていた暴力の世

界に入ってしまったことを悲しむが、彼への変わら

ぬ愛から、申し出を受けて結婚する。

 二人が並木道を歩む場面、詩情が溢れている。

 
 ヴィトーは引退し、マイケルを後継者にする。父

子は緑が豊かな庭で、語り合う。マイケルの愛息ア

ンソニーの成長を聞いて、ヴィトーは喜びつつ、ファ

ミリーの身近なものが、バルツィーニとの会談を申

し入れ、その席でマイケルを殺す魂胆だと警告する。

 マイケルは対応・応戦の準備は充分に出来ている

と悩む父に明言する。

 


 「お前にだけは継がせたくなかったんだ」

 

とヴィトーは最愛の息子マイケルを堅気の仕事につ

けたかった夢を語る。


 

  「わしは糸を持つ者の操り人形にならなかった
   が、お前の代では、糸を操る方になってくれ」


 

と自分では果たせなかった夢を息子に託す。
 

 この場面はノークレジットだが、脚本家ロバー

ト・タウンによって描かれた。老父が息子に伝え

る最後の教えが、遺言のように重い響きを以て

語られる。

 

 父子の絆は、ロータの哀切のメロディに乗って

しみじみと、繊細に描かれる。


 原作では、庭で倒れたヴィトーがマイケルの腕

の中で、「人生は美しい」と語って亡くなる。これ

は描写として「決まりすぎ」という感じだ。形式的

という印象さえ受ける。

 
 
 映画版では、ヴィトーは愛孫アンソニーと遊び

ながら、突然の発作に苦しみ、波瀾の生涯の幕

を閉じる。

 

 ゴリラに扮して急死するドラマは、マーロン・ブラ

ンドの提案だったようだ。

 

 「この人は最後にゴリラになるんだな」とコッポラは

感嘆したという。

 

 孫アンソニーと遊びゴリラに扮して発作で急死す

る。

 

 老いと無常を静かに教えてくれる。

 

 

 

 様々な研究によると、マイケルが元護衛で裏切

者のファブリッツィオを射殺するシーンは撮影さ

れたらしい。

 編集の都合で削除されたそうだ。

 

 『ゴッドファーザー サガ』を見ると、ファブリッツ

ィオが爆殺で、マイケルの報復を受けるシーンが

ある。このシーンも本編ではカットされている。

 アンジェロ・インファンティは二度、ファブリッツ

ィオが制裁・粛清されるシーンを演じて、二度とも

本編カットに会っている。


 コニーの息子マイケル・フランシス・リッツィの

ゴッドファーザーとなることをマイケルは快諾し、

教会でビクターの洗礼式が厳かに行われる。

 

 乳幼児のソフィア・コッポラが男性ビクターを

演じる。

 

 式の進行と同時に、マイケルの密命を受けた

幹部クレメンツァとその部下達が、バルツィーニ

を始めとする五大ファミリーのドン達と、ファミリ

ー内部の裏切り者達を次々と粛清していく。


 この式におけるマイケルの誓いの言葉と、凄惨

な殺しの瞬間が交錯する場面は、コッポラ演出の

白眉であろう。

 

 宗教と暴力が交錯する。

 

 神の教えに学ぶと誓いながら、平然と虐殺を行う

マイケルをアル・パチーノが鋭い演技で生きる。

 

 マイケルは、義弟カルロを詰問し、兄ソニーを死
の罠にはめた裏切り行為を自白させ、クレメンツァ

に絞殺させる。この場面でのマイケルの表情は、

冷たい悪魔のようだ。

 

 妹コニーの糾弾、愛妻ケイの涙にマイケルは苦

悩する。
 
 家族を守る為に暴力を生き方として選び取ったが、
最愛の家族から厳しく糾される身となってしまう。

 

 

 ケイがマイケルに、「罪を犯したのか否か?」を

問う場面は切ない。マイケルの心に揺れが生じて

いくことがはっきりと伝わってくる。


 クレメンザと部下のアルベルト・ネリ、ロッコ・ラン

ポーネから、手に接吻を受けて、「ドン・コルレオーネ

」と敬愛されるマイケル。

 

 メインテーマが流れ、冷厳で強大な二代目ゴッドフ

ァーザーとなったマイケルが映る。


 アル・パチーノの目は彫刻のように澄んでいて、強

力な英雄の存在感が光っている。

 

 ケイがマイケルに、「罪を犯したのか否か?」を

問う場面は切ない。マイケルの心に揺れが生じて

いくことがはっきりと伝わってくる。


 マイケルのドンとしての「力」とケイの悲しみの「涙」

がフィルムに刻まれる。

 

 ネリはゴッドファーザーへの忠義をケイに隠し

ドアを閉める。リチャード・ブライトの抑えた存在

感が光る。

 

 ケイの驚きで物語は閉じられる。

 

 「夫はやはり虐殺者なのか?」という妻の悲しみが

広がり、この後ケイはどのように悲しむのかと、観客

の想像に訴えるところで物語は終わる。

 

 観客の心に無限に広がる。

 

 コッポラ演出は心憎い。 

 

 

 

 ヴィトーとマイケルの親子二代の道に暴力と

家族愛が示される。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 マーロン・ブランドのヴィトー役の深重の存在感

は永遠である。

 

 4K版の美しい映像を2月25日TOHOシネマズアネ

ックスで鑑賞し改めて大感激を覚えた。

 

 1972年の幼稚園時代を想い起した。

 

 自分が銀幕で『ゴッドファーザー』に出逢ったのは

前述の通り2004年36歳時だが、1980年に日本語吹替

版をテレビ放送で視聴した。

 

 

  ニーノ・ロータのメインテーマの切なさは、自分にと

って心の故郷である。

 

 少年時代から『ゴッドファーザー』に育てられている

ことを実感する。

 

 

 

 

 

 マイケルは父の狙撃を受けてファミリーを守

る為に、血を流し、強大な権力者への道を歩む

が、強敵との戦いに勝ちゴッドファーザーとなる。

 

 勝利者の冷酷さを耽美的に描くことにより、コッ

ポラは暴力の恐ろしさを逆説的に明かしたのだ。

 

 アル・パチーノがマイケル役で咲かせた悪の

華は、50年の時を経て今絢爛と咲いている。  

 

                      
  『ゴッドファーザー』50年

 

 おめでとうございます

 

 

 

                      2022年3月15日 

 

 

                            合掌



 

                       南無阿弥陀仏


 

                            セブン