北陸代理戦争  | 俺の命はウルトラ・アイ

北陸代理戦争 

『北陸代理戦争』

Proxy War in Hokuriku

北陸代理戦争

映画 98分 トーキーカラー
昭和五十二年(1977年)二月二十六日公開
製作国 日本
製作   東映京都
製作言語 日本語


企画   日下部五朗
      橋本慶一
      奈村協
脚本   高田宏治
音楽   津島利章
撮影   中島徹
美術   井川徳道
編集   堀池幸三


出演


松方弘樹(川田登)


野川由美子(仲井きく)


伊吹吾郎(竹井義光)
高橋洋子(仲井信子)



地井武男(仲井隆士)
矢吹二朗(花巻伝)
中原早苗(安浦あさ)

天津敏(元村武雄)
織本順吉(谷中政吉)
中谷一郎(吉種正和)

曽根将之(大崎軍次)
牧冬吉(能田孝雄)
榎木兵衛(梁文男)
小林稔侍(朴竜国)
片桐竜次(黄東明)
 

平沢彰

鈴木康弘(波川)

有川正治(河島平吉)

野口貴史(植村厚志)

白川浩二郎(西本昭)

 

片桐竜次(黄東明)

五十嵐義弘(岸達之助)

成瀬正(村田国平)

阿波地大輔(守田一夫)

蓑和田良太(富山刑務所の看守)

 

秋山勝俊(利本保治)

笹木俊志(神明松男)

野中徹三(松本泰郎)

広瀬義宣(小泉邦彦)

 

国一太郎(日下部警部)

高並功(橋口京一)

木谷邦臣(赤土良男)

勝野賢三

司裕介(山下)

 

奈辺悟(津賀忠)

福本清三(押坂仙吉)

藤長照夫(幹部)

小田正作(布施静雄)

小峰一男(隅田祥一)

 

藤沢徹夫(桑原長吉)

岩尾正隆(杉谷洋)

紅かおる(ウェイトレス)

奥村裕子(あんま)

宮城幸生

 

森谷譲

志茂山高也(佐藤)

白井孝司(上原)

山田良樹()

矢部義章

森源太郎

酒井哲(ナレーター) 


西村晃(安浦富蔵)
遠藤太津朗(岡野信夫)
成田三樹夫(久保利夫)

ハナ肇(万谷喜一)


千葉真一(金井八郎)



応援監督  中島貞夫



監督     深作欣二




曽根将之→曽根晴美

 

前田禎穂=千葉真一

      =和千永倫道

       =JJサニー千葉

       =JJ Sonny Chiba


中島貞夫はノークレジット

 平成十五年(2003年)九月十七日 シネ・ヌーヴォにて

鑑賞

 

 残酷な暴力シーンについての記述があります。女性の

方・十八歳未満の方はご注意下さい。

 北陸の豪雪地帯で、雪の中に埋められて首だけ出さ

れる安浦親分から、子分の川田登に競艇の利権を譲

るように脅された。

 

 低姿勢を示して安浦は何とか一命を取り留めて子分

衆に看護され風呂に入る。

 
 狂暴な川田を恐れる安浦は、浅田組の大物金井に

相談し北陸の地に呼ぶ。
 

 関西の大物やくざ金井が来ると聞いて川田は用心

する。女房きくへの愛を確かめた川田は、金井を尋ね

て、申し開きをする。

  金井は川田の闘魂と度胸を評価した。

 

   川田「金井さん、巧いもんでも食って

      いって下さい。女もとびっきり

      の用意します」


 しかし、野心家の川田は「今日日は医学が発達しとっ

て年寄が中々死におらん」と語って反乱の動きを起こし、

安浦とその舎弟万谷を苦しめる。

 

 逃亡先で登は、妻きくの妹信子と愛し合う。

 

 きくは弟隆士が優柔不断な面があることを叱っていた。

 

  浅田組の幹部岡野ときくは愛人関係になる。

 

 隆士は登と敵対することを決め、彼を誘き寄せる為に

妹信子を騙して、三人のやくざ梁文男・朴竜国・黄東明

に強姦させる。信子は裏切り者の兄隆士を刺殺する。

 

 

 登と兄弟分の竹井は、梁文男・朴竜国・黄東明を捕え

配下にして、岡野の店で暴れさせた。

 面会謝絶の病室で万谷はお子様ランチを食べていた

が、入室した岡野から、「万谷はん。わたいの店でチン

ピラが暴れましてん」と糾弾される。

 

 川田からも「叔父貴の事ぶち殺さなきゃいかんようにな

りますよ。」と脅され、万谷は悲鳴を挙げる。

 

 冷徹な登は、梁文男・朴竜国・黄東明を雪の日に首ま

で埋めて落とし前を三人だけにつけさせる。裏切られた

ことを知った三人は登に怒るが、利用価値が無くなるとポ

イ捨てすることは登は決めていた。

 

 その制裁は惨たらしいものできくは思わず目をそむける。

 

 岡野は川田の恐るべき所業を警戒する。

 

 川田は不敵に「殺すことは出来なくても刺し違えること

はできますよ」と岡野に対して闘志の言葉を語る。

 

 ☆松方弘樹の川田役の闘魂☆

 

 北陸やくざの恐ろしさを描く傑作である。

 

 日下部五朗は菅原文太主演で『新仁義なき戦い 北陸

代理戦争』として企画した。文太から出演を拒否され、松方

弘樹が主演を受けた。

 竹井義光役は渡瀬恒彦が演じていたが、演技中に事故

に遭い降板し伊吹吾郎に交代した。

 

 松方弘樹の粘りの演技と太々しさの表現は圧巻であった。

 

 親分を雪に埋める。

 

 強敵をブルドーザで潰す。

 

 利用したチンピラを雪に埋めて跳ね殺す。

 

 

 やることは残虐非道そのものである。

 

 強大な岡野に闘志を燃やす。

 

 妻きくとその妹信子との三角関係は鋭い。二枚目スタア

の魅力も生きる。

 

 残酷で冷徹な暴力殺人を犯す川田だが、その言動には

喜劇味と愛嬌があり、黒い喜劇にもなっている。松方弘樹

の喜劇味もたっぷりと反映している。

 

 野川由美子が鉄火姐さんの美貌と凄みを見せる。

 

 川田と岡野に惚れられるヒロインの心を繊細に表現する。

 

 登・きく・岡野の男二人女一人、登・きく・信子の男一人姉妹

二人の二重の三角関係が共に語られる。

 

 高橋洋子が信子を体当たりで演じる。裏切った兄隆士を刺殺

するシーンは迫力豊かだ。

 

 地井武男が妹を利用し、自滅する隆士を哀れさも漂わせながら

見せる。

 

 伊吹吾郎が川田の名優竹井義光を凄み豊かに演ずる。

 

 西村晃が登に雪に埋められながら利権を渡して助かり、強かに

生き延びる安浦を深い芸で演ずる。

 

 ハナ肇が、登にいたぶられる万谷の悲しみを繊細に演じる。病室

でお子様ランチをほおばるシーンなど喜劇味は豊かである。

 

 千葉真一は金井八郎役で強烈な凄みを見せる。今回は静の演技

で大組織の大幹部の存在感を見せる。

 

 梁文男・朴竜国・黄東明の三やくざを榎木兵衛・小林稔侍・片桐

竜次が渾身の名演で見せる。雪の中に埋められ首だけで出される

寒さは凄まじかったと思う。

 

 遠藤太津朗の岡野のモデルは菅谷政雄と言われている。重厚な

存在感は圧巻である。

 

 川田にとって挑戦したいという野望を燃やす幹部の大きさがある。

岡野に挑戦の言葉をかける川田には野心がギラギラと燃えている。

近畿の浅田組(モデルは山口組)が威圧してくると、北陸やくざの

登は利用した三人のやくざの粛清で自分たちの闘魂を見せる。

 

 男達ときくの心が雪に刺激される。

 

 川田・きく・岡野の男二人女一人の三角関係の繊細な描写は、

『天井桟敷の人々』に恋愛ドラマを学んだ深作欣二の見事な研究

の足跡と自分は頂いている。

 

 菅原文太の降板・『新仁義なき戦い』シリーズと別作品にされた

事等から記録的不入りになってしまったと言われている。

 

 昭和五十二年(1977年)四月十三日本作の主人公のモデル

となった川内弘が射殺された。

 亡くなられた事に哀悼の意を表する。

 

 本作『北陸代理戦争』は東映実録路線は終幕の因の一つと

なる。

 

 映画物語としてはその暗黒喜劇・実録凄惨さ・大人の恋愛という

問題において傑作である。

 

 中島貞夫が応援監督としてノークレジットで参加している。これ

は京都市内の地下鉄車内で監督に偶然お会いした時にお聞きし

確認した。

 

 中島貞夫監督

 ありがとうございます。

 

 松方弘樹にとって、実録路線の代表作である。

 

 福本清三七十九歳誕生日

                      令和四年(2022年)二月三日

                    

 

                                      合掌