直撃!地獄拳 (三) | 俺の命はウルトラ・アイ

直撃!地獄拳 (三)

『直撃!地獄拳』

The Executioner

映画 トーキー 87分 カラー

昭和四十九年(1974年)八月十日公開

製作国 日本

製作  東映東京

 

企画 矢部恒

    坂上順

脚本 石井輝男

 

撮影 山沢義一

録音 小松忠之

照明 川崎保之丞

美術 藤田博

音楽 鏑木創

 

編集    祖田冨美夫

助監督  橋本新一

記録    山内康夫

擬斗    日尾孝司

スチール 加藤光男

進行主任 東一盛

忍法指導 初見良昭

装置    井保国夫

装飾    米沢一弘

美粧    入江荘二

美容    石川靖江

衣裳    長谷稔

演技事務 山田光男

現像    東映科学

協力    ホテルマウント冨士

 

 

出演

 

千葉真一(甲賀龍一)

 

佐藤允(隼猛)

西条正三(ブレーザー西山)

中島ゆたか(恵美)

 

津川雅彦(マリオ水原)

郷鍈治(桜一郎)

水島道太郎(甲賀白雲斎)

 

名和宏(親分)

白石襄(ジャガー光田)

室田日出男(ボス)

安岡力也(ローンウルフ)

芹明香(ボスの情婦)

日尾孝司(陳文昌)

土山登志幸(手下)

下沢広之(甲賀龍一 少年時代)

 

原田力(クレイジーハーディー)

斎藤一之(毛)

河合絃司(日本真伝拳館 館長)

伊達弘(監守長)

青木卓司(監守)

中条文秋(刑事)

沢田浩二(監守)

 

ジョージ・ユリキアン(レオーネ)

ヤン・ハーマンソン(コンドル)

ウィーリー・ドーシー(ルーイン)

ユセフ・オスマン(マフィアの一員)

ジューン・フェロー(カリー)

バート・ヨハンソン(カリーネ)

アネット・ブリンガー

リィットワ・ブリオ

ジャパンアクションクラブ(JAC)

 

 

亀山達也

高月忠(子分)

大泉公孝(子分)

工藤武

横山繁(子分)

溝口久夫(子分)

木村修(警官)

清水照夫(子分)

比良元高

畑中猛重(子分)

城春樹(子分)

宮地謙吾(刑事)

 

栗原敏(手下)

井上誠吾(手下)

高橋健二

山田光一(警察幹部)

美原亮三(警察幹部)

 

 

倉田保昭(倉山田)

 

 

池部良(嵐山)

 

 

監督 石井輝男

 

 

☆☆☆

千葉真一=JJ Sonny Chiba=サニー千葉=ソニー千葉

      =和千永倫道

 

津川雅彦=マキノ雅彦

 

 

下沢広之→真田宏之=真田広之

      =Duke Sanada=Henry Sanada

 

ユセフ・オスマン=オスマン・ユセフ

平成十一年(1999年)十一月十四日 千日会館にて鑑賞

平成三十年(2018年)一月二十二日発表記事・

令和三年(2021年)八月二十日発表記事を再

編している

 

 嵐山は元警視総監である。彼は麻薬組織との戦いに命を

賭けていた。退職後も麻薬撲滅に賭ける情熱は全く衰えを

見せず、姪の恵美に調べさせた三人の強者を雇い、彼等の

力によって、麻薬組織打倒を狙った。

 

 恵美はその三人の勇敢な男達の名を叔父に告げる。

 

 甲賀龍一。幼くして両親に死別したが、祖父白雲斎に忍法・

武術を厳しく指導された勇者。甲賀流忍法第二十四代宗家。

少年の龍一は祖父白雲斎に竹の上を飛ぶように命じられ、

次には刀の上を飛ぶように命じられ、怪我をして叱責された。

 

 白雲斎は科学万能の時代でも科学は全てではないと教え

た。

 青年になった龍一は、心眼で見ることを祖父に教えられ、

眼を瞑ってでも投げつけられた凶器を破壊できるほどの拳

法達人に成長していた。

 

 隼猛。元警視庁麻薬捜査第一課長。現在はやくざとなり、一

匹狼の殺し屋として活動している。

 標的の親分が愛人と戯れていると猛が現れ、五竜会会長に

三百万円で雇われたと正直に話す。ボスは六百万円出すから、

五竜会を殺してくれと頼みこむ。仕事に硬い猛はボスを殺害す

るが、命乞いする情婦の「誠意」を受け取り、彼女に三百万円

を渡して、五竜会会長に報告する。

 会長が笑って報告を聞くと、猛は「死んだ仏さんとの約束の

事なんだ」と新たな仕事を告げ、会長が「からかうのよしなよ」

と怯えると、彼を殺害する。

 

 桜一郎。日本伝合気道師範。好色の上性格粗暴。殺人を

犯し死刑判決を受け服役中。恵美は百万の報酬で桜脱獄を

頼むが、彼女の色気に魅了された龍一は承知し、見事桜を

脱獄させる。

 

 桜も恵美の美貌に感嘆して、ズボンが強烈に盛り上がる程

×起する。

 

  恵美は叔父嵐山の元に三人の勇者を集める。嵐山はマフ

ィアマリオ水原が南米の大使の娘の力を使って麻薬を密輸し

ていることを話す。猛は元は嵐山の部下で仲間と捜査してい

たが、仲間は水原一味に殺害され、違法捜査を隠す為に猛と

嵐山は退職していたのだった。

 

 マリオ水原一味の麻薬取引を見張る龍一・猛・一郎。水原に

は屈強の用心棒がいる。黒人の用心棒が愛人と情を交わして

いると部屋に龍一が現れ、決闘して倒す。

 マリオは恐れをなして、ボスに危機を訴え、更に強力な用心

棒ローンウルフ・ブレイザー西山を部下とし、龍一を催眠ガス

で眠らせて拉致する。

 

  猛は空手道場で達人の後輩倉山田に協力を頼み、快諾

を受ける。

 

 麻薬買付の集いで水原は面白いショーと称して、大使の娘

の服を引き裂き、集まったボスたちは喜ぶ。西山は転がされ

ている龍一の相手は出来ないと拒否して、水原に目を切られ

る。

 龍一は覚醒して、水原一味の用心棒を倒し、西山は龍一を

讃えて死んでいく。

 猛と倉山田が水原のアジトに乱入して戦うが、倉山田は石

に当たって死んでしまう。

 龍一はローンウルフを倒して水原を追う。

 

 水原は大使の娘と共に逃げ崖に向かう

 

 龍一と猛は水原を追い詰める。

 

 ☆☆☆喜劇最強傑作☆☆☆

 

 千葉真一は昭和十四年(1939年)一月二十二日福岡県に誕

生した。本名を前田禎穂(まえだ・さだほ)と申し上げる。

 日本体育大学を経て、東映ニューフェイスに合格し、俳優座

で研修を受けた後、映画で活躍し、アクションスタアとしてその

存在感を光らせる。

 1970年代はブルース・リーのアクション映画が世界的にヒット

していた。東映は世界のアクションスタアサニー千葉こと千葉

真一の武道・空手・体操・アクションを基軸として、名匠石井輝男

に演出を依頼した。

 

 石井輝男先生は千葉の空手・武道・体操技術に加え、忍術も

加えて壮大なアクション映画を演出した。

 

 龍一が仲間の猛・一郎と組んで、麻薬組織と戦う物語だが、

石井はこのアクション大活劇を、豪快な喜劇として描いた。

 

 龍一が白雲斎に鍛えられるエピソードは真面目でもあり、それ

が笑いも呼ぶ。

 恵美の美しさに魅せられ、足にドキドキして仕事を請け合って

しまう気性。

 

 猛が五竜会会長を殺害するシーンでは、会長の目玉が飛び

あがる。残酷と御怒りの向きもあるかもしれないが、これは文楽

で人形の顔の半分が斬られるのと似た趣向であり、フィクションの

ブラックユーモアとして笑う場面だ。

 

 一郎は正直に男性の欲望を、恵美に現す。ズボンに紙の筒か

何かを入れているのだろうが、石井先生の強烈ギャグが場内の

爆笑を呼ぶ。

 

 千葉真一・佐藤允・郷鍈治の三人が銀幕狭しと暴れまくり、大

馬鹿に徹する。命がけの危険なアクションに身体を張って取り組

むが完成した写真は爆笑喜劇となっているところが素敵だ。壮絶

な撮影に果敢に身を投じて、完成した活動大写真でお客さんを

興奮・緊張させ、笑わせる。

 サニー・允・鍈治の三人も、石井先生も、活動屋の本領を発揮し

ている。

 

 中島ゆたかの妖しくセクシーな美貌に感嘆する。低音の声と気品

ある瞳と豊かな色気は、男性の心を鷲掴みにする。それでいてキュ

ートな小悪魔の少女の可愛さも出してくれるから、たまらない。

 

 名和宏・室田日出男・安岡力也は出番が多くないやられ役でも、

その存在感の大きさを打ち出している。

 

 下沢広之の直向さも印象的だ。

 

 西条正三はプロの役者ではなくて、元ボクシングフェザー級チ

ャンピオンで、本物のパンチを見せてくれる。敵対関係であっても

龍一を戦士として讃える勇士を鮮やかに見せてくれた。

 

 倉田保昭は当時空手・アクションスタアとして大人気を博して

いた。本作でも見事な空手を見せてくれる。倉山田が石に頭を

ぶつけて死んでしまう大詰には驚いた。

 

 津川雅彦が冷酷な悪役マリオ水原を鋭く見せる。色悪の魅力

が輝いている。

 

 池部良が嵐山元総監を渋く勤める。主役たち三人の爆笑の

対極にボス嵐山の渋さがあり、大スタア池部の重みが絶妙の

バランス感覚を成立せしめてくれている。

 

 龍一・猛・一郎の大喜劇・一大アクションは素晴らしい。完璧

であり、壮大な美を感じた。

 

 アクション喜劇として完全無欠の傑作である。

 

 これほど笑わせ喜ばせ元気付けてくれるシャシンは、他にな

い。

 

 本作は平成十一年『地獄』公開を記念して、大阪千日会館の

石井輝男特集で銀幕鑑賞をすることが成り立った。

 石井輝男先生がプログラムに寄稿されたことも有り難かっ

た。

 アクション喜劇として完全無欠であり、完成度は完璧な美しさ

を見せている。

 

 ウィリアム・シェイクスピア喜劇に通じる生命力を、石井輝男

先生の演出に感じた。

 

 千葉真一・佐藤允・郷鍈治の爆笑アクション三野郎は最強ト

リオである。日本映画史上最強の喜劇の一本として讃えたい。

 

 主役三人が亡くなったという事実は悲しい。

 

 だが、銀幕の中で三人のダイナミックな演技は嵐のような

笑いを観客の心に呼び起こしてくれる。

 

 危険なアクションを果敢に演じて、客席には爆笑を呼び

起こす。

 

 千葉真一の甲賀龍一は永遠のヒーローだ。

 

                          文中一部敬称略

 

 千場真一八十三歳誕生日

 

                令和四年(2022年)一月二十二日

 

 

                                  合掌