日本女侠伝 血斗乱れ花(弐) | 俺の命はウルトラ・アイ

日本女侠伝 血斗乱れ花(弐)



 『日本女侠伝 血斗乱れ花』

  昭和四十六年(1971年)四月三日公開

  製作 東映京都
  
  企画 俊藤浩滋
     日下部五朗

  

  脚本 野上龍雄

  音楽 渡辺岳夫
  美術 石原昭
  撮影 山岸長樹
  録音 溝口正義
  編集 宮本信太郎

  出演 藤純子(平野てい)


     津川雅彦(平野藤吉)
     山本麟一(貝山平吉)
   
  
     天津敏(村井仁平)
     内田朝雄(庄兵衛)
     水島道太郎(吉岡銀蔵)
    

     遠藤辰雄(笹倉勘蔵)
     大木実(大島儀十)


     高倉健(吉岡幸次)

  監督 山下耕作
  
  ☆
  藤純子→富司純子

  津川雅彦=沢村マサヒコ=マキノ雅彦

  遠藤辰雄→遠藤太津朗
  ☆  

  
☆平成十二年(2000年)五月十四日
   日劇会館にて鑑賞☆

 ☆平成二十六年(2014年)十一月三十日
  発表記事を再編している☆


 
 明治時代の大阪。

 呉服屋の娘平野ていは、藤吉と結婚し店の仕事に
精進していた。藤吉は「石炭で一山当てよう」と情
熱を燃やし、友人平吉とともに北九州で夢を追って
いた。夫の夢の大きさを察しつつもていは北九州に
行き、石炭掘り当ての危険をも思って話し合いに向
かう。

 藤吉は見事炭層を掘り当てたが落盤事故で死ぬ。

 ていは夫の夢を継いで北九州で炭鉱の仕事を始め
る。

 川船頭の吉岡幸次は、初日ということで従業員に
早あがりを許すていの手法を甘いと注意する。

 幸次は直言することで秘かに慕うていを支える。

 ていも実直で真面目な幸次に惹かれる。

 ていの精進が実り、平野炭鉱が旗揚げする。

 しかし、芦屋の問屋組合長大島はていに横恋慕し、
平野炭鉱を奪おうと狙い、ていの理解者仁平や幸次
の父銀蔵を殺害する。

 大島とその部下勘蔵の非道に幸次の怒りが爆発す
る。



 山下耕作は昭和五年(1930年)一月十日鹿児島
県に誕生した。
 任侠映画の巨星で花の映像に心を映した。平成
十年(1998年)十二月六日六十八歳で死去した。
  
 藤純子主演『日本女侠伝』シリーズ第四作である。
人妻・未亡人の純子のヒロインを、健さんの船頭・侠
客が支える物語だ。

 呉服屋の御新造が夢見る夫を支え、夫は夢の炭層を
掘り当てた直後に事故で急死しその志を継ぎ、北九州
筑豊で炭鉱を守り、妨害に耐えて耐え抜く。

 ていの忍耐を純子姐が凛と勤める。

 夫の夢を継いで筑豊で炭鉱を守り切る女性の生き方
を、野上龍雄が重厚な脚本で描く。

 津川雅彦が夢に全てを賭け尽くしてしまう繊細な
「夫」を好演する。

 高倉健の幸次が一本気で逞しい。

 男の優しさを深く明かす。

 山下将軍は「花」の演出家だ。

 勘蔵がていを威嚇するシーンで花を綺麗に撮る。


 本作の特徴は、山本麟一と天津敏が善玉役で出演
していることであろう。悪役の大名優が一徹で暖かい
男達の役において観客の涙を呼ぶ。

 平吉のていの片想いが切ない。

 仁平の重厚さが忘れられない。

 ていを苦しめる勘蔵には遠藤辰雄。憎たらしさは
圧巻である。

 その勘蔵のボスである大島を、大木実が深く演ずる。

 悪の探求を極め尽くした名演である。

 健さんの幸次がていを守ろうとして斬り込んで傷つ
血を流す。

 大詰に切なさが極まる。

 藤純子のていは美しい。


                文中一部敬称略

                      
                    合掌