藤純子 引退記念映画 関東緋桜一家(参) | 俺の命はウルトラ・アイ

藤純子 引退記念映画 関東緋桜一家(参)

『藤純子 引退記念映画 関東緋桜一家』

純子 健 文太 京介

映画 トーキー 102分 カラー

昭和四十七年(1972年)三月四日公開

製作国 日本

製作   東映京都

 

製作 岡田茂

 

企画 俊藤浩滋

    日下部五朗

    武久芳三

 

脚本 笠原和夫

 

撮影 わし尾元也

照明 増田悦章

美術 冨田治郎

編集 宮本信太郎

音楽 木下忠司

 

録音 渡部芳丈

助監督 清水彰

記録 牧野淑子

美粧結髪 東和化粧

スチール 木村武司

演技事務 伊駒実麿

衣裳  松田孝

擬斗  上野隆三

舞踊振付 藤間勘五郎

進行主任 渡辺操

 

出演

 

 

藤純子(鶴次)

 

鶴田浩二(旅清)

 

高倉健(倉元信三)

 

若山富三郎(東風斉呑竜)

 

菅原文太(由次郎)

 

木暮実千代(お勢)

工藤明子(小照)

南田洋子(お志乃)

 

待田京介(銀次)

伊吹吾郎(秀吉)

山城新伍(藤助)

 

長門裕之(新吉)

水島道太郎(河岸政)

嵐寛寿郎(新堀辰五郎)

石山健二郎(大黒屋利兵衛)

金子信雄(警察署長)

 

遠藤辰雄(鬼鉄ことカジキ鉄ゴロウ)

名和宏(常吉)

藤浩(土手八)

潮健児(ヤス)

天津敏(大寅ことサンタマドウジ)

笠置シヅ子(お金)

 

八名信夫(ドブ辰) 

楠本健二(出刃徳)

林彰太郎(放火するヤクザ)

平沢彰(鬼鉄一家子分)

五十嵐義弘 

丘路千 

国一太郎
野口貴史(勘蔵) 

中村錦司(老番頭)

 

高並功(猪吉) 

川浪公次郎 

蓑和田良太 

村居京之輔 

堀正夫(頭取)
阿波地大輔 

西田良 

熊谷武 

矢奈木邦二郎(頭取)

市川祐二(彦助)

 

木谷邦臣 

川谷拓三(鬼鉄一家の若い衆)
松田利夫 

大城泰 

藤沢徹史 

成瀬正孝(喜久次) 

有島淳平(久平) 

高谷舜二 

和田昌也
山下義明

 

東竜子(お貞)

丸平峰子(おかつ) 

星野美恵子 

浅松三紀子(おたね) 

牧淳子 

日暮郷子
長良俊二 

青木卓司 

鳥巣哲生 

秋山勝俊 

宮城幸生(巡査)

 

 

藤山寛美(福太郎)

 

 

片岡千恵蔵(に組組頭倉元吉五郎)

 

 

監督 マキノ雅弘

 

☆☆☆

藤純子→寺島純子=富司純子

 

若山富三郎=奥村勝=城健三朗

 

遠藤辰雄→遠藤太津朗

 

嵐寛寿郎=嵐長三郎

 

片岡千恵蔵=植木進=片岡十八郎=片岡千栄蔵

 

マキノ雅弘=マキノ正博=牧野正博=マキノ正唯

       =マキノ陶六=牧陶六=牧野正唯

       =牧野正雄=牧野陶六=マキノ雅広

 

☆☆☆

 一部資料に出演者に渡瀬恒彦・桜町弘子・山本

麟一・汐路章の名があるが、本篇には出演してい

ない。ウィキペディアで林彰太郎の役名は富松と

されているが、同サイトの汐路章の役名バカ熊が

林の役である。

 シナリオ未読なので、役名は放火するヤクザと

する。

 ウィキペディア等で『純子 引退記念映画 関東

緋桜一家』と表記されるが、本篇では『藤純子 引

退記念映画 関東緋桜一家』である。

 平成三十年(2018年)十二月八日十三時・十七時

 京都文化博物館フィルムシアターにて鑑賞

 平成三十年(2018年)十二月十八日・令和三年

(2021年)五月九日記事を再編している。


 明治柳橋。車引新吉はやくざ鬼鉄一家の若い衆出

刃徳とその仲間二人と衝突する。ヤクザが「バ、馬鹿

もん」と罵り、新吉が応戦し噛みつくが殴られ、「あっし

じゃさまにならねえや。姐さん、頼みます」と車の中の

人物に解決を頼む。

 中から現れたひとは、美女の芸者鶴次だ。鶴次は

鬼鉄一家のやくざに穏便にするように頼むが、喧嘩を

仕掛けられ、撃退する。通行人達が鶴次に掛け声を

かける。

 

 タイトル『藤純子 引退記念映画 関東緋桜一家』

(本篇に二重鍵括弧は無い)。

 

 帳面に墨字で記され、スタッフらしき人物が一枚一

枚めくって行き、スタッフ・キャストの名が表示されて

行く。

 

 鶴次が芸者の仕事で見事な踊りを見せる。馴染

の客大黒屋利兵衛がじっと踊りを見せ、芸を見る

までは一滴も飲めぬと酒を飲まずに見聞し、鶴次

の踊りに「おめえの張」に感動したと緊張感を讃え、

「張を失っちゃおしめえよ」としみじみと語る。

 

 鶴次は女将のお勢に「大黒屋の旦那、元気が

無いの」と心配し、お勢は旦那は博奕の失敗がも

とでお店を手放すことになったそうよと案ずる。

 

 鶴次の父河岸政(かしまさ)は火消の頭で、大黒屋

の借金問題を案じ、娘に事情を聞いてくるようにと

指示する。玄関先で鶴次は剣術の師の講釈師東

風斉呑竜に出会い、師匠から「やくざを懲らしめた」

のかと問われ、「先生聞いたの?」と返事し出かけ

て行く。

 弟子鶴次の美貌に感嘆する呑竜に、河岸政は居合

を習い「売れ口が無くて困ってるぜ」と苦情を言う。

 北辰一刀流の達人呑竜は売れ口が無いなら師匠の

儂のもとに来ればよいと師弟一緒に講釈を為すべきだ

と語り、玄関先で「頃は元禄十五年十二月十四日」と語

り出す。河岸政は「忠臣蔵は暮のうちだわな」と小遣いを

渡す。呑竜は旅館金柳館のどぶに猫の死骸があった

ので清掃して欲しいという言伝を語った。

 火消たちは溝清掃を行う。ヤスは母親から、「精出して

働かんと、女のケツばっかり追っかけ取ったら、ここの

若旦那みたいなアホになるで」と注意する。ヤスは母の

厳しい注意を聞きながら、その若旦那福太郎が来ている

ことを知らせる。慌てて母親は若旦那みたいな偉い人に

成る為には働くようにと申しましたとつくろうが福太郎は

「べんちゃら言わんとき」と注意して、大阪から来たお父

ちゃんが偉かったんやと確かめる。番頭の藤助は河岸

政たちにご祝儀を用意していたのだが、福太郎は別に

大金を出しご祝儀として渡すようにと指示する。

 

 鶴次はかつて愛し合った許嫁倉元信三と一緒に柳の

木に名を彫ったのだが、その木を見に来ていた。福太郎

が現れ、愛する鶴次にかつて好きな人が居ったと聞き、

「ああ切な」と片想いを語る。若旦那は指輪を出し、鶴次

に贈る。高い贈物を喜びつつ、どうやって若旦那が得たの

かと鶴次は疑問に思う。福太郎は鬼鉄の賭場に通って

いたのだ。鶴次は危険性を指摘するが、福太郎は鶴次

への贈り物に巨大なダイヤモンドを買いたいと望み喜喜

として鬼鉄の賭場に出かけて行く。

 

 大黒屋利兵衛が拳銃自殺した。喪に服す妻お貞に

河岸政は商売の事を思い、ご病死として発表されては

と勧める。鬼鉄が現れ、利兵衛が生前賭場の借金で

千円残されたので、払ってもらえませんかと催促する。

 鶴次が注意し、出刃徳が怒り、同じく鬼鉄子分の剣の

達人大寅が屏風を斬るが、鶴次に衣類を斬られる。

 鶴次はピストルを出して鬼鉄を撃退するが、父親に

叱られる。

 やくざ新堀一家大親分辰五郎は河岸政と兄弟の仲

だ。二人は賭場を出すまいと誓っていたのだが、代貸

常吉が秘かに裏切り、鬼鉄と通じて賭場を出して儲け

ていたのだ。辰五郎は常吉を叱り、大黒屋さんの千円

は必ず払うと語るが、身体は病に苦しめられていた。

 鬼鉄は大寅を派遣し、深夜に河岸政を暗殺させる。

呑竜がかけつけるが、河岸政は既に斬殺され、下手

人は剣の使い手と見る。

 河岸政の葬儀が勤められ、鶴次はに組組頭で信三

の父吉五郎に跡目に立ちたいと願い出る。吉五郎は

鬼鉄の暴挙に対する町の人々の守護は女のおめえ

じゃ無理だと止める。小頭由次郎が後見をすると言う

事で、吉五郎は鶴次の跡目継承を承諾する。

  お勢は「あんたの息子信三は何処に行ったんです

か?」と問い、吉五郎は「言うな」と注意する。

 信三はかつて鶴次とデート中に、通行人に冷やか

され、喧嘩になってしまい、刃物を抜いた男ともみ合

って刺してしまい、姿を晦ましてやくざになっていた。

 鶴次は跡目を継ぐが、自身の部屋に福太郎が彼女

の寝巻の着物を着ているので驚く。福太郎は鬼鉄の

賭場で金柳館の権利証を賭けて敗れ、全財産をスッ

てしまった。

 柳の木の下で鶴次と信三は再会し愛を確かめ合う

が、「火消は刃物を持っちゃいけねえ」という教えに

反し人を刺してしまったことに信三は苦悩し再び姿を

消す。

 鬼鉄の子分のやくざが金柳館に放火するが、信三

に捕えられ、その身柄は鶴次のもとへ送られる。若旦

那福太郎が姿を晦まし由次郎が探しに行く。

 鬼鉄の賭場に鶴次が現れ、放火魔のやくざの身柄を

示し、「あの人と金柳館の権利証を賭けて欲しい」と

提案する。鬼鉄は「新堀の客人を呼んで来い」と部下

に命ずる。

 やくざ旅清が現れると、鬼鉄はサシの勝負をやって

くれと頼む。「勝負は時の運や。勝つとは限りまへん

で」と旅清が注意するが、鬼鉄は「やってくれと言って

るんだ」と執拗に依頼する。花札で鶴次と旅清が勝負

する。旅清は、信三と兄弟の仲で事情を知っており、

勝ちを鶴次に譲り、放火魔の身柄を受け取る代わり

に金柳館の権利証を返して「落とし前をつけたげなは

れ」と鬼鉄に語る。

 「どういう事だ、客人!」と鬼鉄が激怒すると、旅清は

「勝負は時の運や。ワイは止めとけ言うた筈やで」と

確かめる。

 鶴次は二人になると旅清の優しさに感謝する。

 

 辰五郎は新堀一家の後見を旅清に託して病死する

が、跡目に立った常吉は鬼鉄との悪事に走る。

 

 鬼鉄に売られた妻志乃は息子を道連れに自殺しよう

とするがに組銀次に助けられる。鬼鉄は妻を売ったが

子供は要ると語って息子のみ奪い返す。鬼鉄の愛人

小照は志乃への義理から息子を志乃のもとに返そう

と手引きする。

 銀次から事情を聞いた信三は「お志乃さんは俺が見

請けした」と語って、彼女の息子に声をかけて「一緒に

行こう」と誘う。息子が承知すると鬼鉄は許さず、常吉

も加わり、信三と対立する。

 

  信三「代貸。おめえさんも渡世人なら恥知りなせえ。

      こんな外道とつるんで任侠道外すっての

      は!」

 

 常吉「やかましいやい!」

 

 旅清が現れ、義理ある新堀一家の跡目に傷はつけ

られへんと語り、親友信三と一触即発の事態となる。

 そこへ吉五郎が現れ仲裁し、常吉に賭場を立てたい

のなら鬼鉄と手を切るようにと注意する。鬼鉄と常吉

は深夜に大寅に吉五郎を襲わせるが呑竜が助けに

来る。吉五郎を逃がし、大寅の構えを見て、河岸政

暗殺の下手人と見破った呑竜は見事に応戦するが

鬼鉄一家刺客の銃弾に撃たれ、「眠いぜ」と語って

死ぬ。

 

 師匠を殺され、鶴次は悲しみを覚える。鬼鉄・常吉

の悪事は拡大し、旅清は懸命に常吉を諌めるが腹部

を刺され、「お前との義理もこれまでやな」と語って常

吉を斬り、一人で鬼鉄のもとへ向かった。瀕死の旅清

が鬼鉄一家に斬られ危機に遭う。そこへ信三、そして

鶴次が助けに来た。

 

 ☆任侠スタア女優の花道☆

 

 藤純子は東映任侠映画の大スタア・一大ヒロインで

ある。歌舞伎役者四代目尾上菊之助後の七代目尾上

菊五郎との婚約により女優引退を発表した。東映は

純子引退企画としてオールスタア出演の超大作を企画

した。

 ウィキペディアによると、監督は当初山下耕作が予定

されていたそうだが、大ヴェテランマキノ雅弘となった。

 脚本は巨匠笠原和夫が書いた。芸者・火消の活動へ

の綿密な取材が基盤にあることが窺える。

 音楽は名匠木下忠司で、テンポの良いテーマ曲が

ワクワクさせてくれる。

 

 美人芸者で火消頭という設定でヒロイン鶴次が描か

れる。

 藤純子の清潔感豊かでそれでいて妖艶な美貌が鶴

次に輝く。

 数々の任侠映画で相手役を演じた鶴田浩二はヒロ

インを父親のように見守る旅清役だ。

 

 鶴次の相手役信三は、純ちゃんの恋人を演じてき

た高倉健さん。

 昭和六年(1931年)二月十六日生まれ。本名小田

剛一。平成二十六年(2014年)十一月十日に死去し

た。

 健さん・純ちゃんは東映任侠映画で沢山の恋物語

を演じてきたが、本作は全てを締めるものとなった。

 

 剣術師匠の呑竜先生は、若山先生。

 信三兄貴への義理もあってか寡黙に徹し、恐らくは

彼も鶴ちゃんを慕っていたと思われるが、そこはじっと

堪えて隠し尽くす小頭由次郎に文太師。

 お母さんの女将お勢に木暮実千代。

 番頭藤助に山城新伍はん。昭和十一年(1936年)

十一月十日生まれ。本名渡辺安治。平成二十一年

(2009年)八月十二日に死去した。本作は三十五歳

の作品である。「封印切。成駒屋の」の台詞はアドリ

ブと思われるが、素晴らしい。

 

 一徹な父親の河岸政に水島道太郎。

 

 大親分辰五郎に寛寿郎御大。重厚な貫録に圧倒され

る。

 悪役陣はボス鬼鉄に遠藤辰雄、参謀格の常吉に名和

宏、刺客大寅に天津敏、子分に八名信夫・楠本健二・

川谷拓三とこちらも豪華だ。林彰太郎が吃音の放火魔

やくざを粘り強く演じる。

 善良なアホボンの福太郎に寛美師匠。至芸に感嘆

する。一昔前の綺麗な大坂弁を語ってくれる。

 組頭吉五郎の片岡千恵蔵は、愛息信三に対する

厳しい愛情表現の台詞が渋い。吉五郎は再会した信三

に「そこなお人」「若い衆」と呼び、本名で語りかけない。

 火消でありながら、人を殺傷した息子は事実上勘当し

ているが、内心に深い愛情がある。

 千恵蔵御大の厳しいまなざしと健さんの一礼が、父子

の心の交流を沈黙のうちに語っているのだ。

 

 鶴田の親父さんは後半からの登場なのだが、全てを

さらっていく。自己を犠牲にして任侠道を貫く旅清は、

鶴さんの芸道そのものではないかとも思った。

 

 遠藤辰雄の鬼鉄、名和宏の常吉の悪役コンビは光り

輝いている。いかに鶴田親父さん・純子姐鶴ちゃん・健

さん信三がカッコいいと言っても、悪役の憎たらしさが

ないとヒーロー・ヒロインは輝かない。観客に本気で「憎

たらしい」と痛感せしめる至芸。それが遠藤太津朗・名和

宏・天津敏の名演なのだ。

 

 自分にとって唯一の不満は、終盤で福太郎が改心して

吉五郎に「すんまへん」と謝罪することだ。最後までアホ

ボンで通して欲しかった。斬り込みがあっても、「鶴ちゃん

何処にいまんの?」と夢見心地の鷹揚さを失わないのが

上方のボンボンだと思う。

 『明治侠客伝 三代目襲名』の仙吉なら讃え、アホボン

の福太郎はお笑いとして軽視するなら、それは偏見で

ある。福太郎の純粋無垢なアホボンをしみじみと熱演

する。ここに寛美師匠の至芸がある。文博の上映にお

いても場内大爆笑であった。

 

 興行的に大ヒットした本作は、娯楽任侠映画の事実上の

集大成でもあった。

 『関東緋桜一家』は、『明治侠客伝 三代目襲名』『博奕

打ち 総長賭博』『緋牡丹博徒 お竜参上』『博奕打ち い

のち札』のような芸術任侠大傑作とは明らかに違うのだ。

 これは娯楽超大作である。両方大事なのだ。

 

 だが、スタッフ達には忸怩たる気持ちがあったようで

ある。

 

 マキノ雅弘は、「純子の引退作品で報いてやれなかっ

た」と嘆き、映画の演出を引退し、テレビの監督になって

行く。

 

 笠原和夫は、鶴田浩二・高倉健両者をヤクザ役に

することは反対し、長門裕之の新吉の車引きの設定

を健さんに考えていたが、俊藤浩滋が「鶴田も高倉

もヤクザ役にしよや」と提案し、マキノ雅弘が始め「

俊藤の言う事聞くな」と共感していたのに、土壇場で

俊藤に組し落胆し、「マキノさん。これが貴方の最後の

映画監督作品になりますよ」と怒りの警告を語ったと

いう。

 

 娯楽映画として手に汗握り、面白く、何度見ても緊

張興奮するが、雅弘先生や和夫師の苦渋も感じる。

 

 娯楽映画の名作として讃えるも、スタッフの無念も

察したい。これが自分の意見である。

 

 任侠映画初のハッピーエンドと呼ばれてはいるが、

鶴次・信三を救うという事は、に組ことに吉五郎が

斬り込みの罪を背負うという事でもあり、ここにも

東映任侠映画の伝統を見ている。

 

 大詰における千恵蔵御大の無言の芝居が重厚で

圧倒される。

 

 ラストに一礼する鶴次。藤純子は東映で任侠映画

の黄金期を築き、見事に幕を引いた。

 

 高倉健と藤純子は、斬り込みの後に分かれて心

と心の絆で愛し合う。刑務所に行く相手と残る人は

想い合いつつ別れなければならない。この切なさが

観客の胸を熱くした。本作はパターンを完全に覆し

初のハッピーエンドになった。

 藤純子は観客に御礼を言って去っていく。

 

 後に寺島純子・富司純子として芸能界・映像に

復帰するが、この名前では引退・集大成を飾る

終わり方を示した。

 

 マキノ雅弘にとっても最後の劇映画となった。

 

 平成三十年十二月八日の京都文化博物館フィルム

シアターでは十三時・十七時の二度の上映において

二回共ラストの後には拍手の音が鳴り響いた。

 

山城新伍八十五歳誕生日 

高倉健没後七年・八回忌命日

             令和三年(2021年)十一月十日

 

                           

 

                        文中敬称略

 

 

                            合掌