にっぽんのお婆あちゃん(弐) | 俺の命はウルトラ・アイ

にっぽんのお婆あちゃん(弐)

  『にっぽんのお婆あちゃん』

 題名別 表記

 『喜劇 にっぽんのお婆あちゃん』

 映画 トーキー 95分  白黒

 昭和三十七年(1962年)一月三日公開

 製作国      日本

 製作    M.I.Iプロダクション

 製作    市川喜一

 脚本    水木洋子

 音楽    渡辺宙明

 撮影    中尾駿一郎

 
kitabayasi

 出演

 北林谷栄(くみ)

 ミヤコ蝶々(サト)

 

 飯田蝶子(花)

 浦辺粂子(わか)

 原泉(はつ)

 岸輝子(かく)

 東山千栄子(末野)

 

 斎藤達雄(安西)

 渡辺篤(鈴村)

 織田政雄(曽我)

 殿山泰司(象水)

 上田吉二郎(大川)

 菅井一郎(多田)

 左卜全(関)

 中村是好(三谷)

 柳谷寛(お巡りさん)

 山本礼三郎(杉山)

 

 十朱幸代(店員昭子)

 市原悦子(寮母青木)

 沢村貞子(栄養士)

 

 渡辺文雄(亭主達二(サトの息子))

 渥美清(捜索願を受付けるお巡りさん)

 小沢昭一(副園長小野)

 三木のり平(大道掛軸屋)

 木村功(セールスマン田口)

 

 田村高廣(純情園長さん福田)

 伴淳三郎(酔っぱらいじいさん兼井)

 

 監督 今井正

 

 ☆

 京都文化博物館にて鑑賞

 ☆

 2016年8月4日発表記事を再編している。

 ☆

 

 浅草に於いて老婆のくみとサトは、橋幸夫

のレコードの歌声を聞く。二人は意気投合して

共に歩む。

 

 くみは老人ホームでドラ焼きを盗んだ疑いを

かけられたことに激怒してホームを出た。

 サトは息子達二とその妻との仲が険しくなり、

自殺を決意して家を出た。

 悲観的だったサトは、チンピラと口論になって

も一歩も引かぬくみの闘志に驚く。

 くみとサトは、優しい鳥飯屋の少女昭子の親切

に感動する。

 口の巧いセールスマン田口の話術に驚くが、後

に田口が交通事故で急死したことを知り、命の無

常を痛感する。

 

 サトはくみの力強い姿勢に教えられ、一度思

いつめていた自殺の計画を止めて、生きる決意

を回復する。

 だが、帰宅するとまたしても息子夫婦との口論

をしてしまう。

 

 今井正と水木洋子が描く、老人の悲しみの物語

である。喜劇と言ってもブラック・コメディの個性が

強い。

 谷栄・蝶々の二人が「老い」の悲しみを深く表現

する。

 

 老人ホームのお婆さんに、東山千栄子・浦辺粂

子・岸輝子・飯田蝶子・原泉・村瀬幸子、お爺さん

に斎藤達雄・渡辺篤・左卜全・中村是好・殿山泰司・

山本礼三郎・伴淳三郎という超豪華なキャストだ。

 

 老人ホームの園長に田村高広・寮母に市原悦子、

栄養士に沢村貞子、副園長に小沢昭一、巡査に柳

谷寛・渥美清、化粧品のセールスマンに木村功、昭

子に十朱幸代とオールスターキャストである。

 

 老人達のフォークダンスで北林が老いをギャグに

する演技が凄まじい。

 

 園長役の田村高廣の抑えた演技が渋い。

 

 木村功が田口役で、命の有限性を鋭く示した。田

口の死体のシーンもあり、無念さを視線・表情で示

していた。

 

 達二役のナベさんが光っている。母サトを愛して

いるのだが、どうしても喧嘩してしまう息子の気持ち

を鋭く勤めた。作品を締めくくる達二を、コミカルさ

も含めて鮮やかに表現する。

 

 車寅次郎に出会う前の渥美清が、巡査役で強烈

な存在感を示す。

 

 豪華キャストの留めに表示される伴淳三郎がよっ

ぱらい爺さん兼井役で強烈な印象を与えてくれる。

 

 北林谷栄満年齢五十歳。ミヤコ蝶々満年齢四十一

歳。この若さで老婆の悲しみを勤め演じた主演二人

の芸力の凄まじさに感嘆した。本当に「お婆ちゃん」

に見えた。
 

 老人の悲しみと苦悩を繊細に見つめる水木洋子

脚本と今井正演出は、優しさが人間の生の営みに

不可欠であることを教えてくれる。

 

 喜劇を語って、老人の悲痛な心を尋ねる今井正演

出は深い。

 

 伴淳三郎 没後四十年・四十一回忌御命日

 令和三年(2021年)十月二十六日



 

                            合掌