脱走兵から医師へ 半世紀の道 | 俺の命はウルトラ・アイ
50年に渡って監督と俳優達が組んで
フィルムに物語を刻む。
ファンの夢が叶いました。
『瞳をとじて』は歴史を包む活動大写
真です。過去からの呼び声を現代におい
て聞く。現代の言葉は過去によって紡が
れてきたものであることを確かめる。
失踪した友を探すことによって、作家ミ
ゲルは2シーンのみ撮って製作中断となった
自作『別れのまなざし』フィルムを見つめま
す。
自身の家族への愛情が呼び起こってくるこ
とを実感します。
上是下非・高是低非観点のベストワン等で
は到底顕彰することは成り立ちません。
映画祭の賞を千兆個贈っても讃嘆しきれま
せん。
勿論藝術対娯楽の二元二極優劣比較観念、好
悪感情等で測れるものではありません。
「映画は娯楽ではなく藝術である」という
事実を立証するだけでなく、生命を生きてい
ることを、『瞳をとじて』は明示しています。
映画館閉館の機会に最終上映作品として鑑
賞したい作品であると感じました。
個人的意見ですが、一生の最後に『瞳をとじ
て』を改めて映画館で鑑賞したいという希望を
抱いています。
勿論まだまだ人生を生きて行きたいですよ。
命を大切にするからこそ、自身の映画館鑑
賞のファイナルは『瞳をとじて』であって欲
しいという欲があるのです。
『ミツバチのささやき』に1973年に主演
したアナ・トレントが50年ぶりにヴィクト
ル・エリセ監督と組み、『瞳をとじて』に出
演し美術館職員アナ・アレナスを演じた。
2月9日9:30に京都シネマ・シネマ1J列1
番で鑑賞し全身全心で震えました。エリセ映画
にアナがアナ役で帰ってきた。胸がいっぱいに
なりました。
『ミツバチのささやき』と『瞳をとじて』は
通じ合い呼びかけ合っている。
50年の時を超えてアナがアナを演じている。
歴史的瞬間を見聞し感激のみならず強く打たれ
ています。
『ミツバチのささやき』に出演した役者でもう
ひとり、『瞳をとじて』に出演している名優が
います。
ホアン・マルガリョ(フアン・マルガージョ)
Juan Margallo です。
ホアン・マルガリョ(フアン・マルガージョ)は19
40年9月24日、スペインに誕生しました。
『ミツバチのささやき』ではアナに助けられる脱走
兵を繊細に演じた方です。
『瞳をとじて』においてガルデルを診察する医師ベ
ナビデス博士を重厚に演じました。
童女アナが精霊を探す小屋で林檎をあげて手当をし
た、兵士役の方です。
82歳でガルデルを診察した脳神経化の医師ベナビ
デス博士を深く繊細な演技で勤めています。
「髭面男前のフアンさん、おじい様になられたな
あ」と50年の歴史を思いました。50年を経てフアン・
マルガリョがビクトル・エリセ映画に出演してくれた
ことに深謝します。
アナ・トレントのインタビューがインターネ
ットに掲載されました。
この映画は、子ども時代の私がどんなふう
に世界を見ていたかについての確固たる証
明だと感じます
(『GINZA』HPより引用)
『ミツバチのささやき』について、アナ・ト
レント自ら確かめた言葉です。
くどいようですが、『ミツバチのささやき』
におけるアナを1940年代当時の純粋な若者世
代の象徴、イサベルを狡猾な国粋主義者の象徴
と決める意見には反対しています。
アナもイサベルもそれぞれに唯一無二の存在
です。
他者を世代を象徴する題材としか見ないのは
生き生きと輝く童女の無垢な心や妖艶な童女の
蠱惑的な魅力を見失う事になります。
何よりもヴィクトル・エリセ監督がフィルム
に語った詩情を聞き逃してしまう。
アナ・トレントが、子供時代の自身が「どんな
ふうに世界を見ていたのかについて確固たる証拠」
と語ったことに心の底から感嘆しました。
ヴィクトル・エリセ監督のシナリオではヒロイン
は別の名前でしたが、アナ・トレントが演技で他人
を演じることに疑問を持ち、「私はアナなのに何故
別の名前で呼ぶの?」とヴィクトル監督に問い、映
画のヒロインの名前もアナになったことを語ってく
れました。
ヴィクトル・エリセ監督が『瞳をとじて』
日本封切に当たって、ヴィデオメッセージを
語ってくれました。
「おはようございます」「元気でな」と日
本語で語ってくれた。
嬉しいです。
『瞳をとじて』は、映画・フィルムが命の記
録であり、生涯を包み取るものであることを示
しています。
総合的な感想は後日書きます。
美術館職員アナは息子がいることを語ります。
つまりフリオ・アレナスにとっては孫です。この
アナの息子は作品に登場しませんが、不在の存在
感を示しています。
アナ・トレントは初老美人、ホアン・マルガリョ
は老紳士になられました。
半世紀にわたるV・エリセ映画への出演に敬意を
表します。
今日の命に感謝します。
合掌