刑事コロンボ 美食の報酬 | 俺の命はウルトラ・アイ

刑事コロンボ 美食の報酬

『刑事コロンボ 美食の報酬』

COLUMBO

Murder Under Glass

 

 

 

テレビ トーキー 90分 カラー

1978年1月30日 アメリカ放送

昭和五十三年(1978年)五月二十七日 NHK総合にて

日本語吹替版放送

製作国 アメリカ合衆国

制作  ユニヴァーサル映画

オリジナル版製作言語 英語

放送局 NBC

 


 

出演

ピーター・フォーク(コロンボ警部)

 

ルイ・ジュールダン(ポール・ジェラード)

 

シーラ・ダニーズ(イヴ・プラマー)

リチャード・ダイスハート(マックス・デュヴァル)

マコ(ケンジ・オヅ)

マイケル・V・ガッツォ(ヴィットリオ・ロッシ)

ラリー・D・マン(アルバート)

フランス・ニューエン(ミス・チョーイ)

アンソニー・アルダ(マリオ)

トッド・マーティン(バーク刑事)

フランス・ニュエン(ミス・チョーイ)

マイク・ラリー(野菜果物店販売員)

 

日本語吹替版

 

小池朝雄(コロンボ警部)

 

金内吉男(ポール・ジェラード)

 

田島令子(イヴ・プラマー)

高木淳一(マックス・デュヴァル)

原田一夫(ケンジ・オヅ)

藤岡重慶(ヴィットリオ・ロッシ)

雨森雅治(アルバート)

徳丸完(マリオ・デルカ)

増岡弘(バーク刑事)
 

日本語吹替版 追加ヴォイス

銀河万丈(コロンボ警部)

森田順平(ポール・ジェラード)

 

原案 リチャード・レヴィンソン

    ウィリアム・リンク

脚本 ロバート・ヴァン・スコイク

製作 リチャード・アラン・シモンズ

音楽 ジョナサン・タナック

 

監督 ジョナサン・デミ

 

マコ=マコ岩松

 

 ミス・チョーイは自身の広東料理の店で

友人のマックス・デユヴァル、ヴィットリオ・

ロッシと食事をしながら、テレビ番組『世界

味自慢』を視聴する・この番組において料

理評論家ポール・ジェラードは「日本では生

きたままの海老をタレに付けて食べます」

と解説してエビを食べた。

 

  「よく、あんな真似ができるわね。まる

  で道化だわ!」

 

 チョーイの酷評にデユヴァルは、わしらも

恩恵を蒙っていると庇うが、ヴィットリオは

厳しく儂はもう降りると強く語った。

 

 河豚について解説するポールは猛毒であ

り、生死紙一重の料理であると軽快に述べ

た。

 

 

 番組が終わるとポールは自宅のロケで

テレビカメラの前で味がなければ人生は

寂しいと軽やかに語り、カメラマンが「あと

一枚」と画を欲しがることを語り、笑いを呼

ぶ。

 

 オフィスでスケジュールを秘書・愛人のイ

ヴに聴くポールは友人のオヅが定刻通り

到着する予定と聞き、彼女の仕事を完璧と

讃える。

 

 イヴは銀行でアイリーン・デマイロと名乗る

芝居をすることに強い反発を語る。ポールは

私達の為と語り、恋愛は今序曲だよと述べて

芝居を頼む。

 

 ポールは自室のキッチンで河豚の猛毒を

取り出して保管する。

 

 20時にヴィットリオの店にポールは食事

に行く。

 シェフのアルバートの腕前をポールは讃

える。甥のマリオをヴィットリオは厳しく指導

する。

 

 ポールは食事を楽しんで全てを水に流そう

と提案する。ヴィットリオは「しがない我がレ

ストランにようこそ」と挨拶し、「一流評論家

ポール・ジェラード大先生」に「電話で警告した

ことを分っとらんようだ」と見て、テレビでも雑

誌でも褒めてもらわんでもいいが、お前の汚

いやり口を暴いてやると糾弾する。

 

 「儂が全てを明かしたらお前の名声など終わり

だ」と警告するヴィットリオに、「何か忘れてるよ」

とポールは告げ、「証拠か?」と問うヴィットリオ

に、「ワインが欲しいな」とポールは頼む。

 

 ヴィットリオはマリオに持ってこさせる。彼の怒

りを聞き、「こういう別れ方をしたくなかった」とポ

ールは語り、「わが友よ」とヴィットリオに呼びか

けて店を出る。母国語イタリア語しか話せない

マリオがジェラード先生を出口まで送る。

 

 ヴィットリオはワインを飲む。キッチンに帰っ

きたマリオに指導について話す。マリオは叔父

が突然苦しみだして倒れたのを見て懸命に看

護する。だがヴィットリオは急死した。

 

 夜ポール・ジェラードは事件現場に来るよう

にと警察から連絡を受けて現れた。

 コロンボ警部がアルバートに作ってもらった

料理を美味しそうに食べている。

 ポール・ジェラードに会ったコロンボは、批評

を拝読していますと報告し、ファンであることを

語る。

 「ヴィットリオが殺された!それも毒で」とポー

ルは驚いたふりを巧みになして、「私も居たんで

す」とコロンボに告げた。体調をコロンボが案じる

が、ポールは何ともありませんと報告する。

 「アルバートさんのお料理の美味いのなんの

って」とコロンボは述べ、ポールが彼の犯行で

ある可能性を問うと、コロンボはアルバートさん

に聴くと怒って残りの料理を全部食べちゃいま

したと述べる。給仕のマリオについてポールが

問うと、コロンボはあの坊やは何も食べていま

せんと語る。

 

 アルバートはジェラード先生に「ヴィットリオは

良い人だった。代わりにあんたが死ねば良かっ

た」と怒り、ポールは「おいおい」と諫める。

 

 コロンボはポールに店をでてからの行動を問

い、「空港に友人を迎えに行き、警察から連絡

を受けてすぐに来た事」をポールは答えた。ソー

スの作り方を知りたいコロンボは、「あんたを絶対

に逃がしゃしません」と笑顔で語り、ソースへの

強い関心を示す。

 ベシャメルソースは簡単ですから製作方法を書

いてお渡ししますとポールは述べて帰宅する。

 

 

 コロンボはデュヴァルの厨房でヴィットリオは事

件当日激しく怒っていた事を教わる。

 

 ポールが優雅な昼食を外で取っているとコロンボ

が現れ、ヴィットリオの死因はワインによる毒殺で

貴方が店を出てから飲んだもので、容疑者のリスト

から外れましたよと報告する。二人は野菜・果実店

で買い物をする。ポールはヴィットリオが殺虫剤か

何かを誤って自分で飲んでしまった可能性はないか

と問うがコロンボはないと答える。

 

 ポールは自室で恋人イヴにアイリーン・デマイロ

と名乗らせ芝居を強要した事を謝りつつ、「もう一

度だけ頼む」と懇願し、「いや」と嘆くイヴに、「私

は忙しいのでまず君がヨーロッパに食べ歩きに

行ってくれ。後で私も合流する」とプランを語り、イ

ヴを口説く。

 

 コロンボはヴィットリオの店でマリオ&アルバート

と事件の現場検証を為し、アルバートから栓抜き

についての解説を受ける。怒っていたヴィットリオ

は乱暴に引き出しを開けたとマリオに教わったコ

ロンボが引き出しを調べると大量に小切手支払い

記録が出てきた。

 

 ヴィットリオの葬儀にポールからの花束が届い

ている。

 アルバートはヴィットリオの遺言で彼の可愛い

甥マリオを一流のシェフに仕込むことを約束し、

コロンボ警部に捜査中はひもじい思いをさせま

せんと確約する。

 

 コロンボが小切手を参列者に回すと、デユヴ

ァルは怯え、チョーイは破り捨てた。

 チョーイの店で餃子をごちそうになったコロン

ボは料理協会を故ヴィットリオやデュヴァルと結

成したが失敗し預金は175ドルしかない筈と解説

する。コロンボは10万ドルの支払い記録がある

ことを告げる。店を去る際にメアリーに辻占を勧

められたコロンボは「海の魚は一匹だけじゃない」

という言葉に注目する。

 

  ポール・ジェラードは美しい愛人・秘書のイヴ

と共に日本から来た友人オヅ・ケンジに豪華な

日本料理を振る舞う。芸者二人が三味線を弾き

オヅは感嘆する。

 

 河豚刺身をポール自身が調理しオヅに見せる。

オヅはロスで河豚料理に出会えたことを喜ぶ。

 

 コロンボが現れ、イヴが話を聞き、和室に通す。

ポールはコロンボにオヅと芸者を紹介し、和食を

出す。河豚は猛毒があるが、一流のシェフの裁き

なら大丈夫とイヴに聞かされ、コロンボは注目す

る。オヅは日本ではフグ料理にライセンスが要る

とコロンボに教える。

 

 コロンボは「海の魚は一匹じゃない」という辻占

について嬉々として語った。

 

 料理協会の銀行預金についいてコロンボは銀行

で解説を聞きに行き、支払い先の預金はミス・デマ

イロが引き出した事を調査する。

 

 ポールからレストラングランプリの晩餐会に夫婦

で招待されたことをイヴに問われたコロンボは、楽

しみにしていることを告げる。「そのころ私は空の上」

とヨーロッパ旅行に行く事をイヴは語る。

  「ミセスデマイロ?」とコロンボが問うと、イヴは

「なあに?」と返事をしてしまう。偽造した名前で口座

を作った事で捜査を受ける事をイヴが問うとコロンボ

は頷く。

 

 晩餐会当日ポールはヴィットリオへの哀悼の言葉

を述べ、グランプリに彼の店が輝いたことを発表し、

甥のマリオに賞を贈る。

 英語が殆ど喋れないマリオはコロンボに通訳を頼

み、コロンボはマリオにとって叔父さんを殺した犯人

を捕まえる事はアメリカで成功するとともに大切な事

でしょうが、これは明日には果たします」と聴衆に確

約する。

 

 ヨーロッパに行く筈だったが行けなくなったイヴが

ポールの隣席に座り、「お芝居に飽きたの」と厳しく

告げて彼を振って立ち去る。

 

 失意のポールの隣に座るコロンボは、この事件も

解決に近付き、もうお会いすることもないだろうし、

明日ヴィットリオの店の厨房で二人で料理を作りませ

んかと提案し、ポールは快諾する。

 

 夜に自身のキッチンでポールは河豚の毒を取り

出した。

 

  翌朝ヴィットリオのレストラン厨房を借りてコロン

ボは牛肉のバター焼きを作っている。

 ポールが河豚の毒を持って現れる。

 

 ☆美味しい傑作☆

 

 Louis Jourdan ルイ・ジュールダンは1921年6月

19日にフランス・マルセイユに誕生した。

 知的な二枚目俳優として、母国フランス映画と

共にイギリスやアメリカの映画でも活躍した。

 ミュージカルGigi『恋の手ほどき』ではガストン役

で二枚目の魅力を見せる。

 

 

 冷酷な殺人鬼だが、優雅な魅力を豊かに見せる

二枚目料理評論家ポール・ジェラードはテレビの

当たり役だろう。

 

 2015年2月14日93歳で死去した。

 

 『刑事コロンボ 美食の報酬』は、ルイ56歳の作

品だが、彼の華麗なムードが開花しドラマの気品

を香豊かに伝えている。

 

 極悪人でありながら、視聴者は優雅な物腰で

知的に語るポール・ジェラードに魅力を感じてし

まうのである。

 

 ロバート・ヴァン・スコイクのシナリオは緻密な

構成の元に料理界犯罪ドラマを鮮やかに語る。

ジョナサン・スタックの音楽は流麗に響く。

 

 ジョナサン・デミはミュージカルの華麗な魅力

を演出において奏でている。

 世界各国の料理を鮮やかに見せて視聴者の

心をときめかせる。食は生きることにとって必須

不可欠だが、美しい料理を見せられると食欲だ

けでなく視覚の喜びも刺激される。

 

 冒頭の海老料理、アルバートのイタリア料理、

チョーイの餃子、ポールの河豚刺身、晩餐会の

豪華料理、そして、クライマックスのコロンボの

薄切り牛肉のバター焼きと美食の展覧会の趣

を見せ、その豪華さは輝いている。

 

 デミ監督の優雅な演出により、ポールの完全

犯罪が描かれる訳だが、ドラマでは彼が河豚の

毒を用意したが、何時ヴィットリオの体内に入れ

るように仕組んだのかが序盤に描かれず、クラ

イマックスの厨房でのコロンボとの調理シーン

で少しずつ解明されるという構成を見せる。

 

 ヴィットリオはポールに店の批評で褒められる

事の代償に大量の金を強請られていた。この事

件の背景も、コロンボとポールの調理で明らかに

されていく。

 

 コロンボの「カミさん」は今回も台詞で語られる

のみで姿を見せないが、ピーター・フォークの美

しきカミさんシーラ・ダニーズが華麗にその魅力

を見せている。

 

 コロンボとイヴが「ミス・デマイロ」の存在につい

て語り合うシーンは鮮やかだ。

 

 日本語吹替版では小池朝雄の渋く鋭い声、金内

吉男の知的で流麗な声、田島令子の気品豊かな

セクシーヴォイスが光っている。

 

  「ミセスデマイロ?」「なァに?」の拙妙な会話が

堪らない。

 

 NHKでは『刑事コロンボ』のコロンボ&イヴの会話

名シーンは保存してくれているのに、この吹替から

2年後の1980年12月20日放送の『お気に召すまま』

のジェイクィーズ&ロザリンドの小池朝雄&田島令子

の名演は何で保存しなかったのだと悲嘆を抑えられ

ない。

『NHKシェークスピア劇場』日本放送日時


 二人は劇団雲の先輩後輩であり、共に福田恆存

にウィリアム・シェイクスピア劇演技の指導を受けて

いる。

 

 美人女優田島令子は声の豊かな色気も輝いて

いる。

 

 マイケル・V・ガッツオが一徹者の料理人ヴィットリ

オを重厚に演ずる。

 藤岡重慶の声も渋く、イタリア語台詞が聞ける事も

有難い。

 

 兵庫県出身の日系アメリカ人名優マコ岩松の

貴重なテレビ名演を伝えてくれているという点に

おいても『美食の報酬』は貴重である。

 

 「オヅケンジ」の役名は日本視聴者を微笑ませる

ものがあるが、デミ監督が日本料理を詳細に研究

していることに驚いた。

 

 マコ岩松のオヅの解説シーンは素敵だ。

 

 晩餐会のシーンの世界の美食珍味が映るシーン

に感嘆した。

 

 この後ポールがイヴに厳しく叱られ振られる

シーンとなり、冷血悪人であっても気の毒という

感覚を視聴者は覚えてしまう。

 

 クライマックスの厨房シーンでポールは河豚の毒

をワインに仕込んでコロンボを毒殺しようとする。

 

 「コロンボが殺されることはまずないだろう」という

予想を視聴者は抱くが、「どうやって毒害の危機を

突破するのか?」という問題が視聴者の心に響き、

画面に心を引き付けられる。

 

 ピーター・フォークがオリーブオイルとバター焼

きで調理する牛肉は美味しそうだ。

 

 「この美味しそう」の感覚を、ジョンサン・デミは

物語演出でたっぷりと感じさせてくれている。

 

 

 

 『刑事コロンボ 美食の報酬』は、喜びを豊かに

満喫させてくれるドラマだが、その味わいの感覚は

満腹感に近いものがある。

 

 

                           合掌