新幹線大爆破 | 俺の命はウルトラ・アイ

新幹線大爆破

『新幹線大爆破』

映画 トーキー カラー(多様な色彩表現あり)

152分

昭和五十年(1975年)七月五日公開

制作国 日本

製作言語 日本語

製作 東映

配給 東映

 

出演

 

髙倉健(沖田哲男)

 

千葉真一(青木運転士)

 

山本圭(古賀勝)

郷鍈治(藤尾信次)

織田あきら(大城浩)

竜雷太(菊地)

 

 

宇津宮雅代(富田靖子)

藤田弓子(秋山医師)

多岐川裕美(スカンジナビア航空係員)

志穂美悦子(国鉄本社電話交換係)

 

渡辺文雄(宮下義典)

福田豊土(田代)

藤浩子(事務員)

松平純子(ウェイトレス)

久富惟晴(広田)

青木義朗(千田)

 

千葉治郎(救援列車の運転士)

原田清人(三宅)

浜田晃(長田)

中井啓輔(哲ちゃん)

山本清(高沢)

矢野宣(南)

近藤宏(松原刑事)

 

田中浩(堤刑事)

中田博久(新幹線東京運転所係員)

林ゆたか(中やん)

横山あきお(あかね荘管理人)

浅若芳太郎(乗客)

植田峻(平尾修一)

松野健一(小宮)

田島義文(佐々木)

 

田坂都(平尾和子)

十勝花子(乗客)

片山由美子(ホステス)

渡辺耐子(古賀の兄嫁)

津波美里ん(あかね荘の住人)

森みつる(田口洋子)

風見章子(靖子の母)

 

庄司肇(乗客)

阪脩(テレビアナウンサー)

佐伯赫哉(野口)

福岡正剛(杉村)

岩城滉一(東郷あきら)

小林稔侍(森本運転士)

片岡五郎(佐原)

仲野力永(大阪商人)

日尾孝司(機動隊長)

 

伊達三郎(商人風の男)

藤山浩二(広岡)

滝沢双(河村)

佐藤晟也(乗客)

仲原新二(警視庁公安一課長)

森裕介(畑)

佐藤和男(小野)

岡本八郎(山ちゃん)

阿久津元(警視庁刑事)

黒部進(後藤刑事)

 

河合絃司(部長刑事)

土山登志幸(岩上刑事)

相川圭子(ウェイトレス)

小田登志恵(女性清掃作業員)

山下則夫(清水)

須賀良(男)

山本相時(電話局係員)

松沢勇(電話局係員)

山本緑(乗客)

久地明(消防士)

相馬剛三(刑事)

 

山田光一(乗客)

木村修(記者)

五野上力(上野)

高月忠(浜松駅係員)

城春樹(食堂車コック)

畑中猛重(貨物5790列車機関士)

浜田勇(歌手)

清水照夫(救援車作業員)

亀山達也(救援車作業員)

山浦栄(食堂車コック)

田辺進三(閉所恐怖症の男)

青木卓司(乗客)

 

佐川二郎(野上駅荷物扱所係員)

中条文秋(乗客)

菅原靖人(富田健一)

秋山幸輝

河口真佐幸

岡久子

伊藤慶子(乗客)

美原亮三(乗客)

宮地健吾(貨物5790列車機関助士)

長岡義隆(若者)

打越久寛(志村駅長)

祝真一(武田伸夫)

 

渡辺義久(ナベちゃん)

泉水直子

新倉文男

前田美智子

篠ゆたか

藤本あけみ

菊地正孝(刑事)

横山繁(航空会社係員)

大泉公孝(埼玉県警刑事)

高島志敏(空港の刑事)

宇野静代

藤井秀之

エンベル・アルテンバイ(空港の外国人)

泉福之助(救援列車作業員)

 

 

 

志村喬(国鉄総裁)

山内明(内閣官房長官)

永井智雄(国鉄新幹線総局長)

鈴木瑞穂(花村)

 

 

宇津井健(倉持運転司令長)

 

丹波哲郎(須永警察庁刑事部長)

 

北大路欣也(空港で古賀を張りこむ刑事)

川地民夫(佐藤刑事)

田中邦衛(古賀の兄)

 

監督 佐藤純弥

 

企画 天尾完次

    坂上順

 

原案 加藤阿礼

 

脚本 小野竜之助

    佐藤純弥

 

撮影  飯村雅彦

 

 

編集 田中修

 

音楽 青山八郎

 

特殊撮影 成田亨

千葉真一=JJサニー千葉

      =JJ Sony Chiba

             =Sony Chiba

          =ソニー千葉

      =和千永倫道
 

植田峻=うえだ峻

 

千葉治郎=矢吹二朗

 

令和二年(2020年)七月二十九日
出町座にて鑑賞
  夜の北海道夕張国鉄5790線。
古賀勝は煙草を一服吸い、行動を
起こす。
 
 朝。沖田哲男は煙草を一服吸い、
古賀から巧く行ったという報告を聞く。
だが、二人にとって藤尾信次が捕ま
ったという事が大きな問題であった。
 沖田は小さな工場の社長であった
が、会社は倒産した。古賀は革命家
で過激派に属していたことがあった。
 沖縄生まれの浩は集団就職で東京
に来たが、仕事を転々としていて沖田
に助けられた。
 
 国鉄東京駅ひかり109号清掃員大
城浩は先輩の女性と仕事をしている。
 ロックの人気音楽家東郷あきらに
女性ファンが声をかける。
 
 警察に護送される男藤尾信次と視線
が合い浩は俯く。信次もはっとする。
 
 浩は親父さんこと沖田哲男に電話し
計画は巧く行ったが、信次がひかり109
号に乗ったことを報告する。
 
 沖田はかまわんから計画通りに動く
ぞと宣言する。
 
 ひかり109号は運転士青木と森本が
運転する。
 
 司令室から倉持運転司令長が指示を
出す。
 新幹線は精巧な作りで少しでも異常が
あればATCによる自動停止装置が作動
する。
 
 宮下義典国鉄公安本部長の電話が
鳴る。沖田が公衆電話でかけていた。
 新幹線ひかり109号に爆弾を仕掛け
たという沖田の言葉に宮下は驚く。
 倉持は宮下から脅迫電話があったこと
を聞かされすぐに停車し検査しましょうと
語るが、宮下は停車できないという事情を
語った。
 犯人の言葉では新幹線が走行速度80
Km/hを下回ると爆発するというものである
事を告げた。
 
 倉持は運転士の青木にメッセージを送り、
109号に爆弾が仕掛けられた可能性があり、
運転速度を落とさず点検するようにと指示を
出す。青木の調査では爆弾らしきものは見
つからない。
 
 沖田は脅迫の証拠として夕張線5790の
貨物列車に爆弾を仕掛けたと告げる。同線
の運転士たちはメッセージを見て脱出する
と列車は沖田の予告通り爆発した。
 
 倉持は青木に犯人は本当に爆弾を仕掛
けた事を報告する。
 
 青木はスピードを落とさず運転しつつ爆
弾を見つけなければいけない。
 
 倉持は1500人の乗客の命を預かっている
事態を語る。
 
 公安管の菊地や田代車掌らスタッフは懸命
に爆弾を探すが見つからない。
 
 乗客たちは不審を感じる。
 
 商社マンの南はどうしても降りなければなら
ない。
 妊婦の平尾和子は緊張から産気を覚え
始める。
 
 沖田は公衆電話から500万ドルの身代金
をジェラルミンケースに入れて指定の場所
に渡せと宮下に指示する。
 
 国鉄総裁と官房長官は犯人の言う通り
にして、乗客の命を守ろうと方針を立てる。
 
 沖田の指定した身代金引き渡し場所に
警察は500万ドルの入ったジェラルミンケ
ースを置き、浩がバイクを用いて取りに
行くが、警察は逮捕に躍起になり、捕縛
しようとする。バイクで浩は懸命に逃げる
が警察の猛追を受け事故死する。
 
 沖田は沖縄から出てきた浩が沢山の
血を打って瀕死の状態になっていた時
に助けた事を想起する。二人の出会い
だった。職を転々としていた浩を引き取
ったが、沖田の会社が潰れた後は献身
的に支えてくれた。
 
 平尾和子は同乗していた女性医師秋
山に支えられ、出産しようとするが嬰児
は亡くなる。
 
 警察は古賀の身元を調べ、彼の兄や
同棲相手の女性を調べ出す。
 古賀は空港で自身を張りこむ刑事に
気付きすれ違う。身を潜めて行動してい
たが、遂に刑事に見つかり、逃走するが
足を銃で撃たれる。
 
 沖田は古賀を介抱する。
 
 「俺たちは誰も殺さず、誰も殺されない
完全犯罪をやろうとした」という目標を二
人は確かめ合う。警察・公安の捜査を受け
身辺に危機が迫っていることを察知する
沖田だがバイクで出動する。トラックを神
田の道路に停車させ、荷台に乗せていた
バイクで移動し、警察に身代金を道路の
車に乗せるように指示を出す。
 
 古賀のアパートに刑事たちが集まって
いた。足の重傷から逃げきれないと悟った
古賀は車で待つ沖田に視線で合図を送り、
ダイナマイトで自爆死する。
 
 沖田はスポーツ少年たちの健闘を見て
いる時に偶然出会った古賀と意気投合し
た事を思い出す。
 工場経営に失敗し美しい妻靖子に去られ
息子健一とも離れて暮らす沖田は寂しさを
感じていた。
 浩・古賀と実験を重ねて誰も殺さない完全
犯罪を企図したのだった。身代金を獲得し
た沖田はスカンジナビアへの逃走の為に
飛行機に乗る準備を慎重に為す。
 
 ひかり109号の通過地点で警察・公安は
爆弾仕掛けの箇所を撮影する。
 倉持は救援車の新幹線を発車させ二台
を連結させる短時間に爆弾のコードを切る
ように青木に指示を出す。救援車が来る。
二台は梯子で繋げられ、重い用具が輸送
される。青木は倉持の指示に従い、遂に
コードを発見する。
 
 
 
 ☆パニック映画の代表☆
 
 新幹線という科学技術の精緻を極めた
電車に爆弾を仕掛けて日本国と戦う事
を決めた三人の男性の生き方を描く。
 
 髙倉健は昭和六年(1931年)二月十六
日に福岡県に誕生した。
 
 本名は小田剛一である。日本映画の大
スタア・トップスタアとして大活躍し芸能界
を引っ張り大いなる名演を明かした。
 
 平成二十六年(2014年)十一月十日
に八十三歳で死去した。
 
 沖田役は犯人演技の傑作である。生活
苦という事情があったにせよ、何の関係も
ない1500人の乗客を人質に取って大金を
要求する沖田には冷酷さがある。その冷酷
で非情な個性を健さんが静かに深く勤めて
いることが本作の重要な個性となっている。
 
 小野竜之助・佐藤純弥の脚本は緻密で寸
毫の隙もない。出町座の客席に居て152分は
緊張感でいっぱいである。
 
 佐藤純弥の演出は重厚である。パニック映画の
名作がこの時期に世界の映画界から発表され
たが、本作は最強にして代表となるものであろう。
 
 ひかり109号に爆弾が仕掛けられるという設定
で、国鉄から撮影許可は降りなかった。
 
 東映岡田茂はアメリカのパニック映画の隆盛を
見て、日本における大型パニック映画を企図した。
 国鉄の協力が得られなかった事を受けて、新幹
線のゲリラ撮影と特撮を合わせた映像を打ち出す
作戦を出した。
 
 小野竜之助と佐藤純弥の脚本によりサスペンス
ドラマは緊張感豊かなものになった。
 
 ウルトラシリーズにおいて特撮で大活躍した成田
亨の出勤を得て精緻なミニチュアが製作され、想像
の中の新幹線大爆破の映像は観客の胸に強烈な
インパクトを与えた。
 
 ひかり109号に爆弾が仕掛けられ、停車できないと
いう危機感が観客にも緊張感を齎す。
 
 千葉真一が青木の苦悩を熱演する。
 
 上司の倉持に対し安全地帯から指示を出せる事に
怒るシーンは、死生ぎりぎりの場に立たされている者
の苦悩があった。
 
 宇津井健が新幹線と1500人の乗客の命を守る
倉持を熱く勤める。
 
 高倉と宇津井の二人の健さんの名演が光った。
 
 田坂都が危機の中で産気づくが愛児を死産し
てしまう母の悲しみを演ずる。
 
 因みに植田峻とはテレビドラマ『助け人走る』「裏
表大泥棒」においても夫婦役である。
 
 矢野宣が商用の為どうしても降りたいと懇願する
商社マン南を体当たりで演ずる。
 
 極限状況に置かれる1500人の乗客の苦闘を、佐
藤純弥は鋭く描く。
 
  浩と勝の死の直後に沖田が二人との出会いを
回想する構成に胸が熱くなる。
  
  工場経営が苦しくなり、妻靖子から無理心中を
持ちかけられたことを思い出す。
 
 沖田にとって仲間の浩・勝と完全犯罪を目論んだ
ことは人生の逆転を狙ったのだろう。
 
 志村喬の国鉄総裁、渡辺文雄の宮下、永井智雄
の新幹線総局長、鈴木瑞穂の捜査第一課長、丹波
哲郎の須永警察部長と大名優達が重厚な存在感
を見せる。
 
 名優達の攻防の演技合戦に観客は興奮を抑えら
れない。
 
 ひかり109号に爆弾が仕掛けられ、万一の場合は
北九州の工業地帯は重要なので山口県で爆破させ
ればよいと官房長官は冷酷に語る。
 山内明が民の命を軽視し経済利権に拘る政治家
の冷たさを粘り強く勤める。
 
 北大路欣也の刑事と山本圭の勝が空港で一瞬
すれ違うシーンは、『戦争と人間』三部作のファンに
はたまらない名場面だ。
 
 大詰めの沖田の逃走に緊張感が極まる。
 
 高倉健が追い詰められた沖田哲男の戦いを
熱く演じる。
  
                         
 
                             合掌