将軍家光の乱心 激突
『将軍家光の乱心 激突』
映画 トーキー 111分 カラー
平成元年(1989年)一月十四日公開
製作国 日本
製作言語 日本語
製作 東映京都
配給 東映
企画 日下部五朗
製作 本田達男
逗子稔雄
中山正久
原作 中島貞夫
松田寛夫
脚本 中島貞夫
松田寛夫
音楽 佐藤勝
撮影 北坂清
美術 井川徳道
岡田一佳
照明 渡辺喜和
音楽 佐藤勝
出演
緒形拳(石河刑部)
二宮さよ子(お万の方)
加納みゆき(矢島局)
真矢武(堀田正俊)
織田裕二(砥部左平次)
浅利俊博(祖父江伊織)
荒井紀人(郡伝右衛門)
成瀬正孝(土門源三郎)
丹波哲郎(堀田正盛)
胡源強(猪子甚五右衛門)
茂山逸平(竹千代)
福本清三
長門裕之(多賀谷六兵衛)
京本政樹(徳川家光)
松方弘樹(阿部重次)
アクション監督・出演
千葉真一(伊庭庄左衛門)
監督 降旗康男
☆
長門裕之=沢村アキヲ
千葉真一=JJサニー千葉
☆
平成元年(1989年)京都市内の映画館
において鑑賞
☆
徳川竹千代は父の三代将軍家光に疎
まれ、渓谷の湯屋で父の命を受けた老中
阿部重次の刺客伊庭庄左衛門に襲われ
るが、石河刑部に救出される。
矢島局と刑部とその配下の多賀谷六
兵衛・祖父江伊織・郡伝右衛門・猪子甚
五右衛門は命がけで竹千代君を守る。
重次は妹お万を家光の側室に差し出し
ていた。刑部にとってはかつての主人で
もある。重次は竹千代君元服の知らせを
矢島局に告げる。
重臣堀田正盛はその屋敷から竹千代
君を連れて江戸に向かうが、伊庭の罠に
嵌り殺される。
だが、竹千代は石河と共に別のルートで
江戸に向かっていた。伊庭の執拗な追求
は鉱山に向かい正盛の息子正俊を捕らえ、
遂に竹千代の危機となる。
だが、刑部達の命がけの働きで若君は
難を逃れた。
父家光は顔が似ていないという理由で
自身の命を狙っていることを知った竹千代
は父と戦うことを決意する。
刑部は仲間達と竹千代を連れて、江戸に
向かうが、伊庭の襲撃に遭って仲間達は
戦死する。
竹千代・矢島・正俊・刑部・六兵衛・伝右
衛門は生き残るが宿場町に追い詰められ
た。
伊庭軍団が迫る。
刑部は伊庭に一対一の決戦を提案する。
伊庭は承諾する。
男と男が命をかけて対決する。
☆時代劇アクション巨編☆
緒形拳主演の一大アクション時代劇で
ある。若君竹千代君をお守りする武士石
河刑部を重厚に勤めている。刑部とその
配下は忍びの者でもあるようで、伊庭軍団
の凄まじい猛攻を受けても鮮やかに危機を
突破する。
幼い竹千代が父の暴君家光に理不尽に
憎まれ殺されそうになる。
アクション巨編だが、ドラマの核に父子の
深刻な不信感がある。幼い竹千代は父親に
憎まれる事実を確かめ、理不尽な父と戦おう
とする。その健気な心に打たれる。
竹千代君には子役時代の狂言師茂山逸平
が抜擢され、逸平が繊細な演技を見せる。
京本政樹がヒステリックな家光を鋭く表現
する。
刑部の集団には真矢武・浅利俊博・荒井
紀人・織田裕二・成瀬正孝・胡源強が揃い、
危険なアクションを体当たりで演じている。
長門裕之が副将格の多賀谷で重みを見せ
る。
丹波哲郎が命を捨てて若君を守る正盛を
貫禄豊かに演じる。伊庭の攻撃を受けて激痛
を堪えつつ死んでいく芸は壮絶だった。
中島貞夫・松田寛夫脚本と降旗康男演出
はどうなるか分からない筋を緊張豊かに見せ
る。
ハードアクションが破壊・闘争のドラマに激し
く展開し、観客は手に汗握る。
男性中心のアクション劇ではあるものの、
加納みゆきが竹千代を守る矢島の母性を
暖かく表す。
二宮さよ子のお万は気品があった。
竹千代の命を狙う重次を松方弘樹が深く
重く演ずる。今回は正統派の黒幕演技で凄
みを見せる。
ギャグや助平仕草は封印されている。
弘樹ちゃん(中島貞夫の呼び方)が時代劇
の敵役の風格を豊かに見せる。
準主人公ともいうべき伊庭にはJJサニー
千葉である。
暗殺集団の頭領であり、刺客の存在感を
迫力豊かに演じる。
千葉真一は本作においてアクション監督
も兼任しており、壮絶な破壊シーン、壮大な
激闘シーンを演出している。
Wikipediaによると、『十三人の刺客』
『ワイルドバンチ』『柳生一族の陰謀』映
画版・テレビ版へのオマージュを明かした
ようだ。
緒形拳の刑部と千葉真一の激闘が本編
最大の山場になっており、降旗康男演出
の緊迫感は極まりを示す。
長門裕之の多賀谷の火達磨シーンは怖
かった。
刑部が命がけで竹千代を守り、静止画像
になるシーンは『多十郎殉愛記』のクライ
マックスの原点になっている。
アクション巨編で省略を用いる中島貞夫・
松田寛夫は巧い。
家光と竹千代の相剋も迫力があった。
息子にとって父は壁であり、越えて行か
ねばならない存在だ。
重次切腹シーンは厳粛であった。
緒形拳が主役で、松方弘樹・千葉真一が
強敵を演じるという配役も決まり、アクシ
ョンも冴えた名作時代劇である。
松方弘樹没後四年・五回忌命日
令和三年(2021年)一月二十一日
合掌
