仁義なき戦い 頂上作戦 (十七)警察署 | 俺の命はウルトラ・アイ

仁義なき戦い 頂上作戦 (十七)警察署

『仁義なき戦い 頂上作戦』

映画 101分  カラー

昭和四十九年(1974年)一月十五日公開

製作国  日本

製作    東映京都

 

企画   日下部五朗

手記   美能幸三

原作   飯干晃一

脚本   笠原和夫


 

撮影   吉田貞次

照明   中山治雄

録音   溝口正義

美術   井川徳道

音楽   津島利章

編集   宮本信太郎

 

助監督    土橋亨

記録     田中美佐江

装置     近藤幸一

装飾     松浪邦四郎

美粧結髪  東和美粧

スチール  中山健司

演技事務  上田義一

衣装     松本俊和

擬斗     上野隆三

進行主任  伊藤彰将

協力     京都八瀬かまぶろ温泉

 

 

出演


 

菅原文太(広能昌三)

 

 

梅宮辰夫(岩井信一)

 

 

加藤武(打本昇)

鈴木康弘(捜査主任)

芦田鉄雄(県警本部長)

酒井哲(ナレーター)

 

 

監督 深作欣二

 

☆☆☆

美能幸三はノークレジット

☆☆☆

 画像・台詞出典 『仁義なき戦い 頂上作戦』DVD

☆☆☆

  台詞の引用・シークエンスの考察は、研究・

 学習の為です。 
 東映様にはおかれましては、ご理解・ご寛

恕を賜りますようお願い申し上げます。

 平成十年(1998年)八月十六日新世界東映

 平成十二年(2000年)十一月四日十三東映

 にて鑑賞

 ☆☆☆

  広能昌三は、警察署の便所で面会に来た岩井信

一と出会った。

 

  岩井「昌ちゃん」

 

  広能「信ちゃん」

 

 岩井は煙草を授け、広能はすまんのうと語って一

服し、看守も黙認する。

 

  岩井「義西会の藤田が殺られおった。」

 

  広能「藤田が!?」

 

  岩井「殺ったんは川田組のチンピラや。同士討ち

      や。もう義西会もなんもバラバラや。もう儂

      の手でどうにもならん。それになあ、神戸の

      本家は兵庫県警の仲立ちで神和会と手打ち

      しよってな。儂にも引き揚げぃ云うてきよる

      んや。昌ちゃん、すまんが手引かせてくれ。」

  

   広能「信ちゃんの気持ちはよう分かるけん。これ

       迄ようやってくれたのう。」

 

   岩井「今打本にも会うてきたが、豚箱に入って

       ほーっとした言うとったよ。」

 

   広能「それくらいのことよ。」

 

 看守が「おい」と合図する。広能は吸殻を便器にほる。

看守が広能を連れて行く時がきた。岩井は広能の手を

取る。

 

    岩井「世の中変わった言うても、呉・広島だけが

        住処ちゃうで。神戸に来たらええ。待ってる

        さかいな。」

 

 取調室では県警本部長と部長刑事が打本昇を詰問

する。

 

   県警本部長「やくざを続けるのか?事業を続ける

           んか?どっちや。それによってあんた

           の事業免許を取り消すこともできる

           んで。」

  

    打本「儂もずっと考えてきとったんじゃが、極道

        しとったら鎧着て生きにゃならんのじゃけ

        ん。口にゃ出せんじゃない。」

 

 

    部長刑事「打本会を解散するのか?せんのか?」

 

    打本「ほいじゃけん。此処に入って覚悟は決まった

        いうとるじゃないの!」

 

 

  ☆抗争の始末☆

 

  広能幸三と岩井信一の警察署対面シーンには切なさが

ある。岩井から藤田暗殺を聞かされ、昌三はショックを受け

る。神戸明石組本家から引き上げを命じられ、岩井も帰らざ

るを得なくなる。義西会は分裂し広能組への応援も無理と

なったことを詫びる岩井に、広能は感謝する。

 

 シナリオでは岩井が神戸に盃かえして広島に残るかと対応

に悩んだことが書かれている。

 

  岩井「あんなもん担いで。昌ちゃんで出直してくれい。」

 

 これがシナリオの岩井の最後の台詞だが、本編では

引用の言葉になっている。広能の「それくらいのことよ」

は笠原和夫の脚本にはない。

 

 戦友として共に協力してきた広能と岩井のこれまでの絆

を集大成する会話だ。

 二人のモデルは美能幸三と山本健一である。

 

 菅原文太と梅宮辰夫は哀感と切なさを深く表す。

 

 打本は刑事に詰問されるが、極道には鎧が必要と述べて

やくざか事業かの二者択一から逃げようとする。

 鎧は佐々木哲彦(第一作の坂井鉄也のモデル)が極道生

活を例えた言葉だ。

 刑事は許さず、厳しく難詰する。芦田鉄雄はやわらかく

ねちねちと締め上げ、鈴木康弘はビシビシ畳みかける。

 

 打本は泣き声で「覚悟は決まった」と極道の抗争は止める

ことを語る。臆病で細工や工作は全て裏目に出て失敗ばか

りするが愛嬌としぶとさで打本は生き残る。

 

 強かさと粘りを笑いで演じきった加藤武の芸力は凄い。

 

 広能・打本は警察署で捕らわれの身と成り、裁きを受け

抗争の後始末をすることとなった。笠原和夫の脚本は、壮

大な抗争物語の終焉を静かに語る。

 

                           文中敬称略

 

 

 

 

                               合掌

 

 

                         南無阿弥陀仏

 

 

                               セブン