『ロミオとジュリエット』 Romeo and Juliet フランコ・ゼフィレッリ監督作品(一) | 俺の命はウルトラ・アイ

『ロミオとジュリエット』 Romeo and Juliet フランコ・ゼフィレッリ監督作品(一)

『ロミオとジュリエット』

Romeo and Juliet

映画 138分 トーキー カラー

1968年3月4日 イギリスロンドンプレミアム上映

1968年10月8日 アメリカ合衆国公開

1968年10月19日 イタリア公開

昭和四十三年(1968年)十一月二十三日日本公開

製作国 イギリス・イタリア・アメリカ合衆国

原作 ウィリアム・シェイクスピア

製作 ジョン・ブレイボーン

    アンソニー・ヘイブロック・アラン

脚本 フランコ・ゼフィレッリ

    フランコ・ブルサーティー

    マソリーノ・ダミコ

音楽 ニーノ・ロータ

撮影 パスクァリーノ・デ・サンティス

編集 レジナルド・ミルズ

プロダクションデザイン ロレンツォ・モンジャルディ—ノ

美術 エミリオ・カルカーノ

    ルチアーノ・プッチーニ

衣装 ダニロ・ドナティ

 

出演

 

レナード・ホワイティング(ロミオ)

オリヴィア・ハッセー(ジュリエット)

 

マイケル・ヨーク(ティボルト)

ジョン・マケナリー(マーキュシオ)

パット・ヘイウッド(乳母)

ロバート・スティーヴンス(エスカラス)

ロベルト・ビサッコ(パリス)

ブルース・ロビンソン(ベンヴォ―リオ)

 

ポール・ハードウィック(キャピュレット)

ナターシャ・パリ―(キャピュレット夫人)

アントニオ・ピエルフェデリチ(モンタギュー)

エスメラルダ・ルスポーリ(モンタギュー夫人)

ミロ・オーシャ(ロレンス神父)

 

ローレンス・オリヴィエ(ナレーター)

 

監督 フランコ・ゼフィレッリ

 

2010年5月16日TOHOシネマズ二条にて鑑賞

 イタリアの都市ヴェローナではキャピュレット家とモンタ

ギュー家が激しく対立していた。キャピュレットの甥ティボ

ルトはモンタギュー家の家来を相手に暴れまくる。両家の

殴り合いの喧嘩・闘争ににヴェニス大公エスカラスは頭を

悩ませ、争いを続ければ両家の者達を死罪にすると厳し

く言い放つ。

 モンタギュー夫人は息子ロミオが争いの場に不在でよ

かったと夫と語り合う。ロミオが帰宅した。彼は優しい美

少年であった。

 キャピュレット家の十三歳の令嬢ジュリエットに貴族パリ

スが恋し彼女の父親に求婚の希望を強く伝える。キャピュ

レットは娘が幼い事から二年は待って欲しいと頼むが、パ

リスの気持ちは熱い。

 ジュリエットは明るい美少女だ。乳母が彼女を優しく包み

込んでいる。母キャピュレットは娘ジュリエットにパリス様が

求婚したいと望んでくれていることを伝え、お前の年齢でわ

たしはお前を生みましたと経験を確かめる。ジュリエットは

返事を待つ。

 

 夜に機知豊かな友マーキュシオが饒舌に語る。ロミオは

彼の言葉をじっと聞く。

 

 キャピュレット家では舞踏会が盛大に開催される。当主

キャピュレットは上機嫌だ。ティボルトはロミオの来館を

見つけ敵愾心を覚える。

 

 ロミオは舞踏会でジュリエットを見て、その絶世の美しさ

に感激して一目惚れする。

 

   今夜初めて本当の美しさを見た

 

 その純な恋心はダンスと共に熱くなる。両手を振って

踊る男女。

 ロミオとジュリエットがダンスで向き合った。ジュリエットは

マスクを着けているロミオの清潔な瞳に心惹かれる。二人

の恋を予感したティバルトは愛しい従姉妹ジュリエットの心

が奪われつつあることを直感し、叔父キャピュレットにロミオ

への怒りを語るが諫められる。ロミオとジュリエットは華麗に

踊り惹かれあう。

 青年レオナードが歌う。

 

 ロミオは壁越しにジュリエットの手を掴む。ジュリエットは

仮面を外したロミオの美しい顔を見て、恋を確かめる。二人

は恋し合いキスを交わす。

 舞踏会は終わった。ロミオは乳母にジュリエットがキャピ

ュレット家の令嬢と聞き、実家との敵対関係に悩む。

 ジュリエットは帰宅しようとするロミオを見て、彼の名を

乳母に聞き、乳母は怒れるティボルトからモンタギュー家

のロミオと聞き、深い悲しみを覚える。恋人たちは家と対立

する宿敵の若者にそれぞれ恋してしまったのだ。

 

 夜のキャピュレット家のバルコニー。

 

 ジュリエットは「ロミオ。貴男はどうしてロミオなの?」と

問う。モンタギュー家の人という事が愛し合うことの障壁

になっている。ロミオという名でなくて「恋人」であってくれ

れば愛し合えるのに。その声を秘かに聞いていたロミオ

は恋に嬉しい確証を得る。

 

  What 's in a name?

   that which we call a  rose

  By any other name would  sell as sweet.

  名前って何なの? 

 薔薇と呼んでいる花を

 別の名前で語るとしても

 甘い香りに違いは無い筈

 

 ロミオは姿を現し、「そう致します。恋人と呼んで下さい。」

と宣言する。「誰?話を聞いていた人は?」と驚くジュリエット

だが、大好きな人と分かりその想いを語る。「じらそうと思った

けれども」と語りつつ、胸の想いを聞かれたことから、愛を語り

ジュリエットは翌日の結婚を提案する。

 

 ロミオは喜び承知し、木を登ってバルコニーのジュリエットに

キスする。

 

 二人は恋をいのち全体で確かめ合った。

 

 ☆美少年美少女のロミオ&ジュリエット☆

 

 『ロミオとジュリエット』は悲恋物語の戯曲である。少年ロ

ミオと少女ジュリエットが短い期間に愛し合い、その恋に生

命の全てを燃やし、命を絶って想いを貫く。悲しいドラマだ

が、恋人達の代名詞になる程その名は知られている。

 原作者ウィリアム・シェイクスピアが1595年頃に書いたと言

われている。

 

 フランコ・ゼフィレッリ Franco Zeffirelliは1923年2月12

日イタリアトスカーナ州フィレンツェに誕生し、映画監督・

脚本家として活躍し、2019年6月15日96歳で死去した。

 ウィリアム・シェイクスピア戯曲映画化の巨星でもあった。

フランコはロミオ役にレナード・ホワイティング、ジュリエット

役にオリヴィア・ハッセーを抜擢し、『ロミオとジュリエット』を

映像化し1968年に発表した。

 

 レナード・ホワイティング Leonard Whitingは1950年6月30

日イギリスに誕生した。

 オリヴィア・ハッセー Olivia Husseyは1951年4月17日アル

ゼンチンに誕生した。

 レナード17歳、オリヴィア16歳という実際の美少年・美少女

の配役を得て、戯曲の美少年・美少女を映像に息吹かせるこ

とが生き生きと具現した。

 

 フランコ・ゼフィレッリ監督の演出の素晴らしさにイタリアでの

ロケーションがある。パスクァーレ・デ・サンティスが映し出す

世界はヴェニスの街並みの素晴らしさを陽光の輝きで捉える。

 

 原作の序詞役(コーラス)は本作ではナレーションのみで登場

し、大名優ローレンス・オリヴィエが深く静かに語る。

 家の争いで若き恋人たちが命を散らしてしまう悲劇であること

がはじめに告げられる。

 序盤のキャピュレット家・モンタギュー家の闘争シーンは激し

いアクションで描かれる。マイケル・ヨークが怒れるティボルト

を力強く演じる。ティボルトはロミオの恋敵であり、ライバルで

もある。

 ロミオ登場シーンはニーノ・ロータの甘美なメロディと共に映

る。レナード・ホワイティングの美男が光る。

 後に『アデルの恋の物語』でピンソンの冷酷さをじっくりと出

すブルース・ロビンソンがロミオの友ベンヴォ―リオ役で出て

いる。

 キャピュレット家のパリスの求婚シーンも印象的だ。ロベル

ト・ビサッコは原作大詰でロミオに斬られるシーンが無い為

出番が少ないのは気の毒ではあったが、ロミオ恋敵の存在

感を出した。ポール・ハードウィックは太った体躯で人の良い

キャピュレットを熱く勤める。

 キャピュレットは窓から元気いっぱいの娘を見る。オリビア・

ハッセーの絶世の美しさは光り輝いている。ナターシャ・パリ

ーがジュリエットの母を風格豊かに演じる。パット・ヘイウッド

の乳母がオリヴィアのジュリエットのお尻をポンと叩き、二人

の母子的な絆が描写される。

 

 ジョン・マケナリーのマーキュシオは皮肉と哀愁が溢れて

いる。

 

 舞踏会シーンは、ロミオとジュリエットの出会いであり、二人

の純真無垢な恋が清潔にかつ絢爛と描かれ、不滅の美しさ

を見せる。ニーノ・ロータの甘美なメロディに包まれ、観客の

心に、恋の炎の熱さを灯す。

 壁腰にジュリエットの腕を握るロミオ。家の対立を越えて恋

を成就したいという若者の心を反映している。二人のキスシ

ーンに美しさが極まる。レナード&オリヴィアも美しい。ロミオ

とジュリエットも美しい。ゼフィレッリの演出も綺麗だ。私生活

ではゲイで師匠のルキノ・ヴィスコンティとも恋仲だったと噂

されているゼフィレッリは、本作では男女の純粋な恋を清らか

に映し出す。原作者のウィリアム・シェイクスピアも男性との

恋はあったと噂されているし、詩にはその同性愛と女性への

愛の両方が描かれていることは過去の記事で尋ねた。

 

 シェイクスピアの時代は女優が禁止され、男優二人がロミオ

とジュリエットを演じた訳だが、1968年の映画版では男性レナ

ードと女性オリヴィアの配役を得て、原作の文字が記す少年

少女の純朴な恋が生き生きと映し出され演じられ、不滅の輝き

を放っている。

 

 バルコニーでジュリエットが愛を語り、ロミオの名がモンタギ

ュー家のものであることを歎き、恋人と呼びたいという想いを

確かめる。その言葉を聞いたロミオは歓喜する。二人は熱い

恋を語り合ってバルコニーでキスを交わす。ラブシーンとして

の美は完璧である。

 

 二人の愛が清らかで、恋は美を見せる。その純粋すぎる恋

は止まることなく走り、思わぬ行き違いを呼び起こし、痛ましい

悲劇と成っていく。だがロミオとジュリエットは命を捨ててでも

その恋を貫いた。一途で清らかな生き方死に方である。その

一本気な生命の在り方を、レナード&オリヴィアの清純な演技

が鮮やかに描き出している。

 

 

 2010年5月16日TOHOシネマズ二条で本作の銀幕鑑賞の夢

を達成し胸に熱い感覚を実感した。

 

 

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 その日劇場前に咲いていた躑躅の花である。

 

 レナード・ホワイティングのロミオとオリヴィア・ハッセーの

ジュリエットは、1968年のスクリーンに咲いた愛の華である。

 

 

                               合掌