必殺仕置人 塀に書かれた恨み文字  | 俺の命はウルトラ・アイ

必殺仕置人 塀に書かれた恨み文字 

松平 鉄

 『必殺仕置人』第六話「塀に書かれた恨み文字」

 テレビ  トーキー 60分  カラー

 昭和四十八年(1973年)五月二十六日放映

  放送局 朝日放送・TBS系

 

 のさばる悪をなんとする

 

 天の裁きはまってはおれぬ

 

 この世の正義もあてにはならぬ

 

 闇に裁いて仕置きする  

 

 南無阿弥陀仏    

 

 ☆

  物語の要約・台詞の引用は、研究・学習の為

です。

 朝日放送様・松竹様におかれましては、御理解・

ご寛恕を賜りますようお願い申し上げます。

 画像は『必殺十五年の歩み』、台詞は『必殺仕

置人』DVD vol.2より引用させて頂きました。

 

  棺桶の錠の棺桶作りの音が夜に響く。彼の家で

眠る念仏の鉄は怒り抗議する。

 

  鉄「眠れねえじゃねえか!」

 

 おしまの父と妹が江戸に来て、女郎の職業を隠

し髪結いで奉公し、おきんを髪結いの女主人にす

るという嘘に錠は怒っている。

 

  錠「生身を売ってるほうがよっぽど人間らしい

    や。」

 

 鉄は世間体を重く見ているんだと語り、嘘も方便

だと語る。

 

 おしまの父と妹は畑仕事もあるので、夜に帰ると

いう。

 だが、二人はその道中において徳川将軍家の親

戚である大名松平忠則に見つかり、辻斬りで斬殺

される。家臣の新田と戸浦は主人忠則同様残忍

な男で、斎藤市蔵は無残な辻斬りに目をそむけ

たいという思いを抱いていた。家老の北上帯刀は

主人忠則様の乱行を知り、頭を痛めていた。

 

 父と妹の無残な斬殺死体を見て、おしまは泣く。

恋人鉄に仕置人の存在を知り、女郎奉公の年期を

増やして頼み料を稼いだ。

 

 おしまの無念を思い、鉄・錠・おきん・半次・主水も

仕置を決意するが、相手は将軍家ゆかりの大名で

ある。

 忠則は「治にいて乱を忘れず」を主題にしていた。

襲われる者にも手練れの浪人居て苦戦することもあ

ったが、何とか斬った。だが、この乱行が幕府・奉行

所にも知れ渡るようになってきた。誰かを牢に送らね

ばならない。

 

 忠則は家臣三名を見て、「斎藤。お前が行け」と

命じた。牢内で斎藤は忠則が後で助けてくれるとい

う言葉を頼りにしていた。天神の小六は殿様はお前

を見捨てて罪を着せて殺す気だと事情を告げる。

 「酷過ぎるではないか」と抗議する斎藤だが、主人

は家来に罪を擦り付けて逃げるものだと親分は言う。

 

 忠則は遊里で新田・戸浦と遊び「上下抜き」の場

ではないかと上機嫌で陶酔する。「お殿様は女ごろし」

と半次は忠則様のモテ方を讃え、「お殿様のお好きな

やつ」と美人の花魁が待っていると告げて誘いだす。

 忠則も酔いと上機嫌で外に出る。だが現れたのは

花魁ではなく鉄だった。鉄は骨はずしで忠則を眠らせ

る。目が覚めると忠則は囚人の衣服を着せられ、牢に

入れられていた。主水はこの新入りにご牢内の作法を

親切に教えてやれと囚人達に伝える。囚人たちは忠

則にしごきを厳しく課す。

   

  「余は松平右京大夫忠則なるぞ」と忠則は威嚇しよ

うとするが、他の囚人達は、「何松平」と笑い尻を叩き、

厠の掃除を綺麗になすように「磨け」と命じた。

 

 主水と小六は笑う。

 

 早朝に忠則は元の衣服に着替え松平屋敷に戻るが

北上よりもはやお入れすることは出来ず、寺において

髪を切って僧になられ、殺した者達への罪滅ぼしに祈

られいと告げる。

 

 忠則は落胆する。

 

 北上は戸浦・新田・斎藤に「死ね。武士らしく腹を斬れ」

と厳しく命じた。

 

 半次は殿様と一緒に辻斬りをした侍達が切腹させら

れるそうですぜと鉄に報告し、「これで俺たちもすっと

するね」と気持ちを語る。

 

 だが鉄は「まだすっとしねえよ」と語り、「あんな奴ら

に侍らしく切腹なんかさせられるかい!」と不満に思う。

 

 切腹の夜。斎藤は新田と戸浦に「すまん」と詫びて、

逆上した二人に斬殺される。二人はこのまま勢いで

北上をはじめ斬って斬って斬りまくろうと計画を語る

が、鉄・錠が現れる。鉄・錠は激闘を為して新田と戸

浦を仕置する。二人の逃走を聞いて松平家の侍が追

おうとするが北上は制した。

 

 ☆死なない首魁☆

 

 第六回の特徴は、悪の首魁である松平右京大夫忠

則が牢内で尻を叩かれ便所掃除を命じられ、大名と

しての地位を剥奪され、僧侶になって贖罪をするよう

にと命じられ、生きたまま罪の苦悩を味わうというドラマ

であろう。第一話から第五話で極悪人を苦しめ抜いて

虐め抜いて嬲り、命を奪うというドラマに新展開を表現

した。

 放送当時から極悪人を苦しめぬいて仕置するドラマ

に様々な意見が寄せられていたことは聞いている。第

六回では悪の頭領を仕置人が殺さず、罪を実感させる

という筋を打ち出したが、これで制裁になっているのか

という疑問もある。無残に斬殺されたおしまの父・妹や

浪人の痛みと苦しみを思えば、虐殺者忠則が尻を叩か

れ、便所掃除を命じられるという「罰」では甘いようにも

思われるのだが。しかし、そうした違和感も含めて視聴

者に様々な感覚を覚えさせ、従来の五回とは違う展開

を見せてはっとさせる。

 国弘威雄脚本と松野宏軌演出の狙いもそこにあった

のだろう。

 

 中尾彬の松平忠則の残忍さ・冷酷さは光っている。

サディストで血に飢えた虐殺者の冷酷を緻密な演技

で憎たらしさ全開で表現する。斎藤に罪を着せて遊

里で上機嫌になる心地も印象的だ。ご牢内の仕置

の恐怖も濃厚に勤めてくれた。殿様が牢内で罰を受

ける物語は、中尾彬の名演によって成り立った。

 

 佐々木功が斎藤の哀れさをしみじみと勤める。善良

な斎藤が犠牲になることに、「必殺」の悲しみのドラマ

がある。

 

 忠則の乱行に頭を痛め、仕置人の「罰」を介して

お家から追放し、罪を近習に着せて、その者達の

処刑人である仕置人をも逃がす家老北上は、この

ドラマで一番の悪党かもしれない。

 

 鈴木瑞穂が北上を風格豊かに演じる。

 

 大滝秀治・松下達夫に続き劇団民芸の名優鈴木

瑞穂が重厚な存在感を見せた。

 

 仕置を終えて疾走する鉄と錠。

 

 山﨑努と沖雅也は永遠のヒーローだ。

 

 

 

 

  

 キャスト
 

 山崎努(念仏の鉄) 

 

 沖雅也(棺桶の錠)  

 

 野川由美子(鉄砲玉のおきん)  

 

 白木万理(中村りつ)  

 

 鈴木瑞穂(北上帯刀) 

 佐々木功(斎藤市蔵)  

 

 大村文武(新田内膳)  

 千葉敏郎(戸浦多三郎)  

 

 

 津坂匡章(おひろめの半次)  

 

 瀧義郎(囚人)  

 徳田実(囚人)  

 島田茂(山野)  

 

 

 高松英郎(天神の小六)  

 

 寺島雄作(茂助)  

 なかつかかずよ(おしず)  

 

 酒井靖乃(おいと)  

 比嘉辰也(源次郎)  

 

 菅井きん(中村せん)  

 

 中尾彬(松平忠則)  

 

 

 藤田まこと(中村主水)  

 

 

 スタッフ   

 

 制作     山内久司         

         仲川利久         

         桜井洋三   

 

 脚本      國弘威雄

 

 音楽      平尾昌晃   

 撮影      石原興   

 

 助監督     松永彦一   

 装飾      稲川兼二   

 記録      野口多喜子   

 進行      黒田満重   

 特技      宍戸大全  

 美術      倉橋利韶  

 

 照明      中島利男  

 録音      二見貞行  

 調音      本田文人  

 編集      園井弘一  

 装置      新映美術工芸  

 床山結髪   八木かつら  

 衣裳      松竹衣裳  

 現像      東洋現像所  

 製作主任   渡辺寿男  

 

 殺陣     楠本栄一 

 題字     糸見渓南  

 

 

 ナレーター  芥川隆行  

 

 オープニングナレーション作 早坂暁 

 エンディングナレーション作 野上龍雄  

 予告篇ナレーション   野島一郎  

 

 制作協力   京都映画株式会社  

 

 主題歌 「やがて愛の日が」  

 作詞   茜まさお  

 作曲   平尾昌晃  

 編曲   竜崎孝路  

 唄    三井由美子 

 ビクターレコード  

 

 

 監督    松野宏軌  

 

 制作    朝日放送        

       松竹株式会社  

 

 

 ☆

 山崎努=山﨑努  

 

 

 佐々木功→ささきいさお  

 

 

 津坂匡章→秋野太作  

 

 早坂暁・野上龍雄・野島一郎はノークレジット  

 ☆              

 

 沖雅也六十八歳誕生日

          令和二年(2020年)六月十二日

 

 

                    南無阿弥陀仏