勝新太郎 八十七歳誕生日
勝新太郎(かつ・しんたろう)
本名 奥村利夫
別名義 二代目杵屋勝丸
昭和六年(1931年)十一月二十九日生まれ。
平成九年(1997年)六月二十一日死去。
六十五歳。
勝新太郎は日本時代劇映画の大スタア・大名優
・名監督です。
代表作『座頭市物語』は勝新の剣技が光ります。
盲目の按摩市が居合において卓抜した太刀裁きを
見せます。飯岡助五郎親分のもとに身を寄せる市は
一家の政吉が侮蔑する言葉を語り抗議します。
政吉「市さんてのはそんなに腕が立つんですかい?
親分だけがその居合い斬りとやらを『凄え、凄
え』と言っておいでなさるがたががメクラじゃ
ありませんか、なあ、いくら強いったって」
市 「おう!ちょっと待ってくれ。
その言い草は文句があるぜ」
助五郎「おう市つあん、おめえ、さっきからそこに
居たのか?」
市 「俺はね、メクラとか片輪とかそんなこと言ったって
別に 文句は言いはしねえよ。その通りだもんな。
だけどね、『たかがメクラ』とか、『片輪のくせに』、
侮った言い方されると文句があるんだよ」
助五郎 「文句とは何でえ!?
開き直って何が言いてえんで?]
市 「てめえの事言うの、嫌ですけどね、あたしゃ座頭っ
ていう名前通り、三年前まで笛吹いて街を流してた
按摩でさあ。そう、随分侮りもされ、いじめられもし
たもんだ。別に泣きはしないが、
『こんチキショウ!目明きの野郎共、何とかして鼻、
明かしてやりてえ』
ってそう思って始めたのがこいつ(仕込み杖)だ。
針の修行極めても検校って高い位につくんだよ。
琴三弦の師匠にもなれるんだよ。
そんなこたあ、俺の性にも合わねえ。そんなこと
で目明き共の目ん玉ひん剥いて驚くことじゃねえ
やな。
おい、政吉つあん、おめえさんも立派な目明きだが、
こんなことが出来るかい?」
市は燃える蝋燭を投げて居合いで真っ二つに斬ります。
二つに斬られた蝋燭の芯は燃えたままです。
引用では差別用語を敢えてそのまま記しました。
差別と戦いながら居合を決める市つあん。
勝さんは大ヒーローです。
合掌