懲役太郎 まむしの兄弟 | 俺の命はウルトラ・アイ

懲役太郎 まむしの兄弟

『懲役太郎 まむしの兄弟』

懲役太郎

 映画 トーキー 92分 カラー

 製作国   日本

 製作     東映京都

 昭和四十六年(1971年)六月一日公開

 製作  俊藤浩滋

      橋本慶一

 脚本  高田宏治

 撮影  赤塚滋

 音楽  菊地俊輔

 美術  冨田治郎

 編集  神田忠男

 録音  中山茂二

文太 昇

 出演  

      

 菅原文太(政太郎)

      

 

 川地民夫(勝次)

 佐藤友美(上月さや子)

 

 三島ゆり子(花江)

 女屋実和子(洋子)

 山田圭子(野島ゆき)

 

 葉山良二(梅田和三郎)

 諸角啓二郎(辰市)

 矢奈木邦二郎(瀧花喜三郎)

 

 広瀬義宣(才八)

 川谷拓三(新川東吾)

 比嘉辰也(野島正)

 山下千栄(野島まり子)

 中村錦司(支配人)

 

 高並功(吉松清)

 秋山勝俊(島本次郎)

 森谷譲(瀧花組若衆)

 松田利夫(胴元)

 峰蘭太郎(若衆)

 平沢彰(若衆)

 白川浩二郎(若衆)

 松本泰郎(若衆)

 木谷邦臣(若衆)

 

 林彰太郎(友枝安彦)

 山岡徹也(陳永世)

 片桐竜次(賭場の客)

 奈辺悟(賭場の客)

 西田良(早崎の若衆)

 福本清三(組員)

 白羽大介(金五郎の弟子)

 岡島艶子(遣り手婆)

 谷村昌彦(原警部)

 

 天津敏(山北達平)

 河野秋武(金五郎)

 

 安藤昇(早崎雄吉)

 

 監督 中島貞夫

 

 ☆☆☆

 平成二十七年(2015年)三月十七日 

 新文芸坐にて鑑賞

 ☆☆☆

 

  神戸の地に兄弟分のやくざ二人が再会した。

兄貴分のゴロ政こと政太郎は前科十二犯で十二

回目の懲役を終え、弟分の勝次がお勤めを終えた

兄貴を迎えに来た。

 二人はトラックの荷台に乗り、国道43号を通過す

る。戦災孤児であった二人。闇市時代からの暴れ

ん坊だった政は、サーカスに在籍し抜け盗みをし

ていた不死身の勝を助けたのだった。

 

 新開地では瀧花組と山北組の対立が激しくな

っていたが、まむしの兄弟政・勝はパチンコ店で

暴れまくる。

 

 レストランに入った政と勝は空腹であったが、ア

ルファベットで書かれたメニューが読めず、政は「英

語ばっかりやないけ!」と怒る。支配人は「フランス語

でございます。シャトーブリアン」と説明する。

 「肉持ってこんかい」と政は命じ、肉を食べ、酒を飲

む。

 近くの席で美しい女性が微笑んでいて、勝は喜ぶ。

 

  「ハクいスケや」と小躍りする勝は、金を出して、

「姉ちゃん、ワイの兄貴と寝たってんか?」と頼むが、

政は「アホ」と一喝する。

 

 ト×コに現れた政と勝はここでも大暴れする。だが

勝は「兄貴が一発×つまでは儂は女子に手を出せへ

んのや」と自身に厳しく課すルールを墨守する。

 

 二人は風俗嬢の花江・洋子と親しくなる。

 

 屋台の少女ゆきは懸命に働き幼い弟妹を養ってい

るが、食べにきたまむしの兄弟は無銭飲食する。

 ゆきを助けたいと思い相談に乗ろうとする女性は、

レストランの客であった上月さや子で、彼女は警官

であった。

 

 政と勝はゆきに謝罪し、さや子の美貌に惹かれな

がらも、彼女の善意に反発する。

 

 山北組の親分達平はまむしの兄弟に、滝花組幹部

黒田の暗殺を依頼するが、黒田の腕っぷしは強く、ま

むしの兄弟は貫録負けする。

 七友会幹部早崎の出現で、その存在感に圧倒され

たまむしの兄弟は、なんとか彼を倒そうとするが、眼力

の凄まじさに圧倒される。

 

 さや子は何と、早崎と恋愛関係にあった。

 

 黒田は達平の陰謀に嵌り暗殺される。

 

 政は彫師の金五郎に刺青を彫ってもらい、早崎のよう

な貫録を身に着けたいと望む。

 

 早崎は山北達平に襲われ殺される。

 

 雨の日、山北一味に、まむしの兄弟が刺客として

斬り込んだ。

 

 ☆☆神戸のまむし☆☆

 

 菅原文太主演、川地民夫準主演で神戸を舞台に

大暴れするまむしの兄弟を描くシリーズの第一作で

ある。

 

 野獣のように暴れるが、優しい心も持っており、傷

つけた人には尽くす純情男の政。

 

 お調子者で明るく、暴れん坊でありつつ兄貴思いの

弟分勝。

 

  文太の野良犬の凄みと男の暖かさ。

 

  民夫の軽快さと愛嬌。

 

  二人の魅力が爆発する名作アクション・人情物語で

 ある。

 

  民夫の勝が、谷村昌彦の原警部に「拇印を押すんや」

と言われて、「ボイン」とつや子の胸にセクハラして、原に

「アホ!」と叱責されるシーンに、荒くれ男の爆走を感じた。

 

  中島貞夫監督は二人が戦災孤児であったという過去

を確かめ、激動の戦後を不良少年・青年として逞しく生き

て暴れまくって自己確認する道を重厚に深く語り描く。

 

  知性的な美人警官さや子を華麗に演ずるは佐藤友

美。

  上品な美貌は輝いている。

 

  文太 友美

 

 まむしの兄弟の荒くれ純情に触れて警官さや子が自身を

見つめ直す筋が鋭い。

 

  公開当時三歳十か月六日の幼稚園児であった自分

にとって、本作に映る神戸に懐かしい空気を思い出す。

 しかし、少女ゆきが幼い弟妹を養うという社会的問題

は、この時期の自分にはまだ学んでいない事柄であっ

た。

 

 中島貞夫監督が見つめ映される神戸は、鋭い映像

となって兵庫出身のファンの自分に響く。

 

 文太・民夫コンビが港にす巻きにされて放り投げら

れるシーンは強烈であった。

 

 

 早崎役の安藤昇が重厚で深い存在感を見せる。

 

 本物の迫力は凄い。

 

 三島ゆり子・女屋実和子の花江・洋子コンビは、お

嬢さま警官さや子の対極にある風俗嬢ヒロインとして

登場する訳だが、まむしの兄弟政・勝にとっては、遊び

相手だけでなく、二人をしっかり包み取り励ます存在で

ある。

 ゆり子・実和子の母性愛が暖かい。

 

  天津敏・林彰太郎の悪役の憎たらしさは完璧で

ある。

 

 河野秋武の彫物師の爺さん金五郎が渋い。

 

 

 

 大詰の雨中の泥まみれの決戦は中島貞夫監督の

アクション演出が光る。

 

  佐藤友美様

 

  お誕生日おめでとうございます。

 

 

 

                                合掌