大相撲名勝負 昭和五十二年九州場所千秋楽 輪島対北の湖
(画像出典 『大相撲名力士風雲録8 輪島』)
輪島大士(わじま・ひろし)
本名 輪島博
昭和二十三年(1948年)一月十一日石川
県七尾市生まれ。日本大学在学中に二度
学生横綱に成る。
昭和四十五年(1970年)一月日本大学在
学中に花籠部屋に入門して、同年初場所幕
下付出で初土俵を踏んだ。
昭和四十六年(1971年)初場所に新入幕。
昭和四十八年(1973年)名古屋場所に第五
十四代横綱と成る。
幕内最高優勝計十四回。
昭和五十六年(1981年)春場所引退する。
引退後花籠親大嗣・花籠大士親方となり、
昭和六十一年(1986年)にプロレスに入門し
て、六十三年(1988年)までレスラーとして活
躍する。
レスラー引退後は評論家・タレントとして
活動し、現在に至る。
今日は横綱全盛期の昭和五十二年(1977
年)九州場所の優勝十二回を達成した一番
を尋ねます。
大相撲名勝負
昭和五十二年九州場所千秋楽
1977年11月27日
福岡九電記念体育館
輪島対北の湖
昭和五十二年は初場所・名古屋場所横綱輪島、春場所・秋
場所横綱北の湖、夏場所大関若三杉が優勝しました。
輪湖の両横綱がそれぞれ二回優勝し、一年納めの九州場
所で年三回目の優勝を成すべく切磋琢磨していました。
前年の昭和五十一年(1976年)は、初・夏・九州は北の湖、春
・名古屋は輪島が賜杯を抱きました。秋は魁傑がV2を果たしま
した。
初場所十二勝二敗、九州場所十三勝一敗で、共に北の湖が
勝ちました。輪島ファンの自分は悔しい思いをしました。昭和
五十一年年間最多勝七十七勝十三敗の大記録を輪島は達成
しました。
しかし、優勝二回で初場所初日・九州場所千秋楽共に負け
て、両場所共に千秋楽結びの一番相星北の湖に寄り切られ
残念無念でもありました。
昭和五十二年初場所千秋楽結びの一番に十二勝二敗で
輪湖が激突しました。一年前と全く同じ星での対決でした。
先場所昭和五十一年九州に続き二場所連続千秋楽結びの
一番での輪湖決戦でした。
輪島大士 昭和五十二年初場所十回目の優勝 本日六十九歳誕生日
輪島が北の湖の腰が砕けた瞬間を見逃さず身体を預け
て浴びせ倒しました。
十回目の優勝です。
名古屋場所は十一回目の優勝を全勝で具現しました。
この場所は十四勝の輪島と十三勝一敗の北の湖が千秋楽
結びの一番で激突し、輪島がすくい投げで熱戦に勝ちまし
たが、北の湖を投げた瞬間自身も土俵に倒れ込み、しばらく
起き上がれませんでした。
九州場所。十三勝一敗どうしで千秋楽結びの一番に輪湖
が激突しました。二年連続で初場所十二勝二敗、九州場所十
三勝一敗で輪湖が戦います。ファンにとってはたまらない展開
でした。
年間最多勝は北の湖でした。十四日目を終わった時点で八
十勝九敗の大記録を達成していました。当時は大鵬の八十一
勝九敗が史上最多で、九州場所結びの一番に勝てば史上最強
タイになるという流れでした。
輪島は七十四勝十五敗でした。
大横綱二人が、誇りと意地を賭けて、熱き闘魂で、優勝を目
指して九州場所千秋楽にぶつかりました。
立ち合い、両者共に左を差しました。北の湖は右上手、輪島
は左下手を十分に引きます。北の湖は左下手もぐっと引くのに
対して、輪島は右上手を取れません。輪島が右上手を引くと、
北の湖は吊ります。輪島は堪え、右手を宙において拳を握り
攻める機会を待ちます。
北の湖が寄ると、輪島は堪えて、北の湖の左手を右からか
かえます。
北の湖が怒涛の寄りで攻めると、輪島は左から強烈な下手
投げを打って残します。右おっつけを経て上手を引く輪島。
北の湖の左手を右から絞る輪島は、再び左下手投げを打ち
ます。北の湖も懸命に堪えて、左差し右上手の体勢を取りま
す。
輪島は右上手を引き、両者胸を合わします。
北の湖は腰を割って吊ろうとしますが、輪島も堪えて粘りま
す。
ぐっとまわしを引く北の湖。再び腰を降ろし、渾身の力で吊り
に行きます。腰が入り過ぎていたようです。
輪島の左足は、北の湖の右足を切り返すと、北の湖は仰向け
に倒れました。
輪島 切り返し 北の湖
千秋楽結びの一番横綱どうしの相星決戦は、輪島が制して
十四勝一敗の成績で十二回目の優勝を達成しました。
双葉山定次の大記録に、輪島大士が並びました。
輪島大士年間成績七十五勝十五敗です。
北の湖敏満八十勝十敗の大記録で年間最多勝を成し遂げま
した。
二年連続初十二勝二敗、九勝十三勝一敗で千秋楽結びの
一番で両横綱が戦い、五十一年は北の湖、五十二年は輪島
がそれぞれ勝ちました。
北の湖対輪島の千秋楽結びの一番相星決戦はこの四番で
すが、二勝二敗で、この五十二年九州が最後の千秋楽相星決
戦となりました。
昭和五十二年は、テレビ『新必殺仕置人』『花神』『横溝正史
シリーズ』『涙 じっと見つめる目』といった大傑作が放送され
ました。映画『北陸代理戦争』が公開されました。
十一月は歌舞伎座・中座で『仮名手本忠臣蔵』が上演されて
います。
芸術・娯楽の黄金の時代でもありました。
大相撲においては輪湖両横綱が君臨し、熱闘を繰り広げま
した。
輪島が鋭い攻めで、北の湖の剛腕と戦い、年三度の優勝
を成し遂げました。
昭和五十二年という時代の締めに相応しい名勝負であった
と思います。
輪島は相撲史の大英雄です。
合掌