戦争と人間 第二部 愛と悲しみの山河(一)本日滝沢修百十一歳誕生日 | 俺の命はウルトラ・アイ

戦争と人間 第二部 愛と悲しみの山河(一)本日滝沢修百十一歳誕生日

『戦争と人間 第二部 愛と悲しみの山河』

映画 トーキー  カラー
昭和四十六年(1971年)六月十二日公開  

製作国     日本

製作      日活株式会社
配給      日活株式会社

 

出演

岩崎信忠(趙延年)

井川比佐志(朴)

石津康彦(甘栗売り)

晴海勇三

波多野憲(武居弘通)

浜口竜哉

二木草之助

西村晃(狩野市郎)

本目雅昭

地井武男(徐在林)

大浜詩郎

大月ウルフ(イワーノフ)

織田俊彦

加藤剛(服部達夫)

河上喜史朗

桂小かん

鴨田喜由

田畑善彦

高原駿雄

高橋幸治(高畠正典)

高橋悦史(伍代英介)

高橋明

高橋英樹(柘植進太郎)

髙城淳一(特高刑事)

龍岡晋(趙大福)

玉井謙介

玉川伊佐男(相沢三郎)

玉村駿太郎(特高刑事)

滝沢修(伍代由介)

辻萬長(大塩雷太)

成合晃

中津川衛

中野十春

南原宏治(陣内志郎)

内田稔(刑事)

野村隆

久遠利三(防人会の男)

久野征四郎

草薙幸二郎(特高刑事)

矢頭昌宏

山田禅二(梅谷庄吉)

山内明(石原莞爾)

山本学(白永祥)

山本圭(標耕平)

前田昌明

牧野義介(看守)

深江章喜(佐官将校A)

藤岡重慶(板垣征四郎)

藤田陽一

藤田啓而

小泉郁之助

後藤陽吉

江原真二郎(灰山浩一)

榎木兵衛

相原巨典

浅若芳太郎

芦田伸介(伍代喬介)

斉藤誠

沢美鶴

坂口芳貞(李)

木島一郎

衣笠真喜男

北大路欣也(伍代俊介)

雪丘恵介

三国連太郎(鴫田源次郎)

宮原徳平

柴田新三

庄司三郎

白井鋭

弘松三郎(伍代本社総務部長)

光でんすけ

氷室政司

英原穣二

千賀拓夫

 

和泉雅子(梅谷邦)

吉永倫子(戸越ユキ)

吉永小百合(伍代順子)

栗原小巻(趙瑞芳)

浅丘ルリ子(伍代由紀子)

木村夏江(全明福)

岸田今日子(鴻珊子)

水戸光子(お滝)

鈴村益代

若原初子

佐久間良子(狩野温子)

 

 

鈴木瑞穂(ナレーター)  

 

協力

俳優座

文学座

劇団民藝

 

第一部 解説引用映像出演

伊藤孝雄(標拓郎)

井上昭文(荒木五郎)

二谷英明(矢次)

吉田次昭(標耕平)

中村勘九郎(伍代俊介)

青木義朗(佐川少佐)

清水将夫(市来善兵衛)

杉本孝次(若杉)

松原智恵子(高畠素子)

☆☆☆

中村勘九郎(伍代俊介)→十八代目中村勘三郎

三国連太郎=三國連太郎

☆☆☆

 

監督     山本薩夫

 

原作     五味川純平
脚本     山田信夫

        武田敦

 

 

企画     大塚和

        武田靖

        宮古とく子

 

撮影     姫田真佐久

照明     岩木保夫

録音     古山常夫

美術     横尾嘉良

        深民浩

編集     丹治陸夫

音楽     佐藤勝

助監督    結城良熙

        大沢豊

製作担当者  柴垣達郎

色彩計測   佐藤重明

         内田周作

史料考証   沢地久枝

言語指導   古場重幸

         宋元恩

軍事指導   木島一郎

特殊撮影   日活特殊技術部

特撮      成田亨

現像      東洋現像所

 


 

☆☆☆

首題  戦争と人間 第二部

尾題  戦争と人間 第二部 愛と悲しみの山河

☆☆☆

平成二十七年(2015年)九月七日

シネ・ヌーヴォにて鑑賞

☆☆☆

 台詞の引用・ストーリーの要約・

シーンの考察は、研究・学習の為

です。

 日活様におかれましては、何卒

ご寛恕・ご理解を賜りますようお願

い申し上げます。

  ☆☆☆

 第一部解説

  ナレーター

  「昭和三年初頭中国大陸。

  蒋介石を総帥とする南京の国民

  政府軍は、北京に進出してきた

  満洲軍閥張作霖を討つ為に四

  十万の兵を北に向けていた。

  この頃滿洲には日清日露両戦争

  で獲得した権益を守る為に日本の

  関東軍が駐屯していた。関東軍は

  時の田中内閣の対中国強硬路線

  を背景に満蒙を中国から切り離し

  日本の支配下に置こうと虎視眈々 

  その機会を狙っていた。

   新興財閥伍代家サロン。

 当主伍代由介は長男英介・実弟喬

 介らと今後の方針を検討していた。

 喬介は既に滿洲に乗り込み関東軍

 の強硬派と気脈を通じていた。

  伍代家の次男俊介は、標耕平と知

 り合った。耕平の兄拓郎は伍代産業の

 工場労働者であったが、この年の三月

 十五日に行われた左翼一斉検挙に連

 座して獄に繋がれていた。

  俊介は耕平や貧乏画家灰山浩一を通

 じて貧しい労働者の生活を知り、次第に

 社会の矛盾に目を向けて行くようになっ

 た。

  伍代家において俊介の唯一の理解

 者は長女の由紀子であった。由紀子

 は直情径行な青年将校柘植中尉を愛

 していた。

  一方滿洲の関東軍は張作霖を暗殺

 し混乱に乗じて一挙に武力占領する

 という陰謀を企んでいた。こうした中で

 滿洲の抗日運動は次第に広がってい

 った。

   朝鮮人徐在林は万歳事件で一家

  を虐殺した恨みから、中国共産党白

  永祥・滿人ブルジョアの娘超瑞芳は

  横暴な日本の侵略行為に対する怒り

  から抗日運動に参加していった。日本

  人の中にも批判的な者がいた。滿洲

  医大講師の服部、伍代公司の高畠達

  だった。

    関東軍の板垣参謀課長・石原参謀

  らは昭和六年九月十八日。関東軍は

  奉天柳条湖近くで満鉄列車を爆破、こ

  れを張学良の仕業だとして一斉攻撃を

  開始した。所謂滿洲事変である。この

  戦いの中で獄から出され、第一戦部隊

  に配属された耕平の兄拓郎は戦死した。

  昭和七年戦火は上海へと飛んだ。上海

  の第一線には柘植大尉の姿があった。

  こうして人々は好むと好まざるとに関わ

  らず戦争の大きな渦に巻き込まれて行

  ったのである。」

 

  メインタイトル『戦争と人間 第二部』

  出演者紹介のテロップ

 

   ナレーター

   「昭和七年三月一日  滿洲国建国宣言

    清朝廃帝宣統帝溥儀執政に就任

    同五月十五日 五・一五事件

    犬養首相 海軍将校らに暗殺さる

    同じ十一月十二日 東京地裁尾崎判事

    政治活動の疑いで検挙 以後司法官の

    免官各地に広がる

    昭和八年一月三十日 ドイツヒトラー内閣

    成立

    同二月二十四日国際連盟総会。滿洲国

    不承認を決議 日本国際連盟を脱退

    同五月十日 滝川事件 京大滝川教授

    左翼思想を理由に文部当局により処分

    京大法学部教授総辞職

    同七月十一日 神兵隊右翼クーデター

    未遂事件

    同十二月十五日 日本共産党中央部弾圧

    宮本顕治ら八百余名を検挙

    昭和九年三月一日 滿洲国帝政を実施

    執政溥儀 滿洲帝国皇帝となる

    同十一月二十日 陸軍青年将校士官学校

    生徒らクーデター発覚 士官学校事件

    昭和十年二月十八日美濃部達吉博士の

    〈天皇機関説〉議会で攻撃さる」

     

 

 昭和十年滿洲大石頭付近の雪山

で徐在林は恋人のレジスタンス全明

福や仲間たちと敵を襲撃し射殺する。

 

 東京の伍代邸では美青年になった

俊介と耕平が剣道の稽古で汗を流し

ていた。

 美少女になった順子が呼びかける。

 

   「俊介兄様。耕平さん。御茶が入

    りましたよ。」

 

  耕平は俊介が描いた美女のスケッチ

 を見つめる。

 

   耕平「誰だい?この人。」

 

   俊介「久慈さんというんだ。久慈温

       子さん。もっとも今では狩野

       という名に成ってるけどね。」

 

   耕平「綺麗な人だね。けれども幸せ

       そうじゃやないね。この絵の感

       じじゃ。」

 

   俊介「相談なんだけどな。君は伍代が

       出す学費じゃおかしくて学校に

       行けないかい?」

 

   耕平「育英資金が出来たのかい?君

       の所に?」

 

   俊介「そう考えてもらっていい。この家

       から通ってくれても構わないんだ

       よ。今の学校には学問なんかない

       と僕は思っている。三十年来主流

       を成してきた美濃部博士の憲法

       学説が天皇機関説として不敬罪

       で告訴される時代だからな。今学

       校にあるのは管制の枠だけだ。

       しかし、そんな学校でも出れば何

       らかの保証が付くんだ。君には必要

       なんじゃないのかい?その保証が?」

 

   耕平「好意は有り難いが君の一族に頭が

       上がんなくなるのは嫌だな。」

 

   俊介「そういうだろうと思った。伍代は君の

       兄貴をクビにして滿洲で戦死させた

       ようなものだからな。言わば仇だ。」

 

   耕平「そんな古めかしい考えは持っていな

       いがね。僕は今昼間働いて夜学校に

       通っているけれども一人で逆境を楽

       しんでいる訳じゃないんだ。自分の

       出来る所まで精一杯やってみようと

       思ってるだけなんだ。」

 

   俊介「よくは知らないけれど君は亡くなった

       兄さんと同じ道を歩いているのかも

       しれないな。だけど下手に動くなよ。

       命取りになりかねないかならな。」

   

   順子が部屋に入る。

 

   耕平「じゃあ失敬する。」

 

   順子「あら折角来たのに。」

 

   俊介「いいじゃないか。」

 

   耕平「すみません。友達と約束があるも

      んで。」

 

   順子「市電の停車場迄お送りしよ。」

 

  耕平は遠慮するが、順子が本を買いに

行くところだったのと微笑んで先に出て行く。

俊介は相談の火元が順子で彼女が父由

介を口説き落としたことを伝える。

 耕平が去ると、順子は「待って」と後を追

う。

 

  

 灰山と陣内志郎は特高警察から殴る蹴る

の拷問を受けていた。俊介は拷問を受けて

衰弱している灰山を見て、彼の名を呼ぶが

怪我で腕を怪我する。同行したお滝が手当

をする。

 「余計な物見るな」と刑事に叱られ、俊介は

無性に愛する人妻狩野温子に会いにいく。

 俊介と温子は深く愛し合う。

 

 英介は防人会から天皇機関説のビラ一万枚

を千円で買い取る。

 伍代家では英介が天皇機関説問題は回避

できませんと意見を述べる。

 

   由介「憲法論議と実業と何の関わりが

       ある?」

 

   英介「時代の潮流ですよ。」

 

  英介は軍部に皇道派と統制派の対立が

あることを述べる。

 

   由介「皇道派も統制派も長官連中の

       古狸たちが若い連中を利用し

       ておるだけだ。

       用は元老・重臣・財閥・官僚を

       倒して軍部内閣を作ることだ

       ろう。だが建設のプログラム

       は出来ているのか?生意気

       盛りの子供がちょっとばかり

       関心があって時計を分解して

       みる。しかし、一つしかない時計

       だから組立直しをやってみるが

       子供にはそれが出来ん。結局

       時計屋に持って行く。それでは

       困るぞ。」

 

 

 ☆☆☆演技の王☆☆☆

 

 『戦争と人間』第二部である。昭和七年か

ら十年までの軍国の流れが語りで確かめ

られ、昭和十年の抗日遊撃隊の襲撃から

日中戦争開戦までの歴史が山本薩夫監督

の重厚な演出によって描かれる。

 伍代由介役は五代目中村勘九郎から北

大路欣也、伍代順子役は佐藤萬里から吉

永小百合、標耕平役は吉田次昭から山本

圭へとバトンタッチされる。

 俊介と久慈温子、順子と耕平、達夫と瑞

芳、由紀子と進太郎の純粋な恋が、戦争に

よって脅かされ苦しめられる様を繊細に描く。

 

  徐が抗日遊撃隊で敵を襲撃し、捕虜を射

殺する衝撃のシーンから始まる。だが、敵には

冷酷な徐が恋人明福には優しさも見せる男と

して描かれることは印象的だ。

 

 第二部においても主役は伍代家当主伍代

由介であり、滝沢修が至芸で財閥の家長の

風格を見せる。

 滝沢修は1906年11月23日に誕生され、200

0年6月22日に死去された。

 その芸の深さは、巧いという言葉では到底

語り尽くせぬものがあり、芸道を探求された

歴史によって成り立つ人間探求が有り、演技

の王と申し上げたい。

 

 

                       合掌