関ヶ原 第一話 夢のまた夢(五)「孤を託す」 | 俺の命はウルトラ・アイ

関ヶ原 第一話 夢のまた夢(五)「孤を託す」

 『関ヶ原』 

 テレビ トーキー カラー(一部白黒) 390分 

 昭和五十六年(1981年)一月二・三・四日放送

 第一話 夢のまた夢 二日放送

 第二話 さらば友よ 三日放送

 第三話 男たちの祭り 四日放送 

 放送国   日本

 製作局   TBS

 原作    司馬遼太郎

 脚本    早坂暁

 音楽    山本直純

 演出    高橋一郎(一・三話)  

        鴨下信一(二話)


 

☆☆

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 関ヶ原 第一話 夢のまた夢(四)「戦は終わったとじゃ」 大友柳太朗百五歳


  加藤清正は太閤豊臣秀吉の墓で泣き、

北政所に挨拶に行く。「虎之助、只今帰り

ました!」の声をねねは喜ぶ。大老徳川家

康が墓参帰りに北政所を尋ねていた。


 清正は、ずっと戦っていたことを、北政所

が喜んでくれていることに、感謝する。奉行

石田三成への憎悪から「彼を斬りたい」とい

う心を語り、家康からその憎悪の強さを感心

されつつ私闘は禁止であることを注意され、

清正は残念がる。


  三成は福島正則を始めとする大名と縁戚

関係を結び、秀吉の遺言を破ったことを問罪

使に糾弾された家康が、「忘れた」ととぼけた

ことに怒り心頭に達する。島左近は家康暗殺

を提案し、三成は「嫌だ!」と否定する。


 


 三成は秀吉公の遺児秀頼様を守護する正義

の戦いで暗殺という卑劣な手段は用いたくない

と強調した。理想主義に燃える三成には、左近

の現実的な作戦に乗れない。



 

 初芽がその会話を聞いたことに左近は、

用心するが、三成は彼女を愛していること

を語る。

 

 

   左近「頭は良いが、心は童のようで

       ござるな。」


  伏見城で前田利家は秀頼公の大坂城入りを

語る。茶々は待って欲しいと進言するが、利家

は太閤殿下のご遺言であることを強調する。


 家康は伏見城で大老として残る。


 豊臣家諸大名との距離が出来る。三成の策を

家康と正信は確かめる。


 

 左近は前田利家様に働きかけるようにと進言

する。


   三成「可以託六尺之孤

      (もってりくせきのこをたくすべし)

      『論語』の言葉でございます。」


   利家「わしゃ、『論語』等読む暇が無かった

       でな。」


   三成「私も学者の受け売りでございます。」

 


 君子とは、幼い子を託し、政治を任せることが

できる存在のことだ。この言葉を聞き、利家は

秀吉との義を想い起こし、家康の野望から秀頼

を守りきることを決意する。


   三成は徳川殿を呼びつけるようにと利家に

頼む。


   利家「儂の最後の合戦じゃ。」

 

   ナレーター「三成が頼みとする前田利家

          は重い老人性結核であった。」


 だが、利家は病に倒れてしまった。愛妻まつ

に「はよ、こいや」と言い残す。

 まつは、経帷子を縫い、「お前様は戦で沢山

の人を殺したから」経帷子を着て極楽に行って

欲しいと願う。

   利家「わしゃ、一度も不義の戦をしたこ

       とではないでな。儂が地獄に行く

       ことはにゃあで。それ着てお前も

       はよこいや。」


 利家は刀を抜き、秀頼と家康を思い、目を

見開いたまま倒れた。まつが夫の目を閉じた。
tatumi sawamura




 慶長四年閏三月三日(1599年4月27日)。

前田利家六十二年の生涯を閉じた。

 

 ☆☆☆「孤を託す」の教え☆☆☆

 辰巳柳太朗郎が忠義の人を熱演する。

前田利家が慶長四年に六十二歳で死去

したことが豊臣政権の屋台骨を揺るがす

大事件であったことが窺える。


 ドラマは清正の忠義を尋ねる。彼なりに

秀吉への忠誠に燃えていて、「君側の奸」

と見た三成を除こうとしている。北政所は

息子として包み、家康は私闘禁止を注意

する。

 母性的な存在に励まされ、家康に見つめ

られ、清正はその根本的希望と全く違うこ

とになるとも知らず、豊臣政権打倒に手を

貸していくことになる。

 家康の奸智が武骨者清正を鮮やかに利用

して暴れさせる。


 三成は秀吉が遺言で大名間の婚姻関係

の成立を家康が破り、「忘れておった」と白

々しくとぼけたことに怒り心頭に達する。

 この門罪使の糾弾をかわす家康の台詞を

森繁久彌が鮮やかに語る。


 加藤剛の正義感に燃える三成の熱さも

忘れられない。


 三船敏郎の左近が家康打倒の暗殺を進言

する。軍師として左近はなりふり構っていられ

ないほど、秀頼守護が難しくなっていることを

指摘する。

 

 だが、三成は暗殺が卑怯な方法であること

から、秀頼様守護の義戦には用いられない

ことを強調する。


 三成の正義は甘いが、そこに彼の魅力が

ある。勝敗よりも義への心を重んじてしまう

彼の気性がある。


 前田利家に『論語』の言葉を伝える三成。

第一話の名場面のひとつだ。


 「可以託六尺之孤(もってりくせきのこを

たくすべし)」


 以て六尺の孤を託すべし。君子は幼い孤

児を託し政治を任せられる人のことを言う。

 太閤秀吉は竹馬の友であった利家をその

君子と見たのではなかったか?利家はその

事を三成に問われ、秀頼守護の義に燃える。


 ドラマは利家が余命を秀頼への忠義に燃

やそうとした時に病に倒れるという悲劇を鮮

やかに示す。


 長男利長は泣き、妻まつは経帷子を縫う。


 利家は不義の戦は一度もしたことがないか

ら地獄に落ちることはないと確かめ、刀を抜く。


 抜刀したまま息絶える利家。


 大名優辰巳柳太郎の名演は、前田利家の

義を教えてくれた。


                   文中敬称略


 キャスト


 石田三成 加藤剛

 初芽    松坂慶子

 茶々    三田佳子


 

 前田利家 辰巳柳太郎



 加藤清正 藤岡弘 
 浅野長政   稲葉義男

 前田利長  長谷川哲夫
 増田長盛 平田昭彦
 長束正家  森塚敏
 前田玄以  庄司永建

  豊臣秀頼  岩瀬浩規


  北政所 杉村春子
 芳春院 沢村貞子


 徳川家康 森繁久彌


 本多正信 三國連太郎 

 島左近  三船敏郎



 能  観世栄夫             
 銕仙会
 振付 杉昌郎
     花柳糸之                  
 
  殺陣 国井正廣
              
  ナレーション 石坂浩二

  原作 司馬遼太郎


  脚本 早坂暁

  音楽 山本直純
  美術監修 高津年晴
 

  制作 大山勝美
 
               
  演出  高橋一郎



  ☆☆☆

 藤岡弘→藤岡弘、

 ☆☆☆
     
 参考資料・台詞・画像出典 

  『関ヶ原』DVD  

 

 


 (6月19日更新記事に21日加筆しています)

 

 

                  合掌