必殺仕掛人 仕掛られた仕掛人 | 俺の命はウルトラ・アイ

必殺仕掛人 仕掛られた仕掛人


『必殺仕掛人 仕掛られた仕掛人』

テレビ トーキー 54分 カラー(一部白黒)
放映日 昭和四十七年(1972年)九月十六日
 

   はらせぬ恨みをはらし

   許せぬ人でなしを消す

   人呼んで仕掛人

   いずれも人知れず

   仕掛けて仕損じなし

   人呼んで仕掛人

   ただしこの稼業

   江戸職業づくしには

   のっていない

 

 藤枝梅安は櫓の万吉の手引で蝋燭問屋

の豪商辻屋久兵衛の部屋を天井裏から覗く。

若く美しい妻お照を久兵衛は溺愛している。

 お照は仕掛ける対象で、梅安は「いい

女だ」と呟く。

 老身の久兵衛はお照が浮気をするの

ではないかと心配でたまらない。お照の

計画では久兵衛の隙を見て盗人仲間を

手引きして押し込み強盗に入れて財産を

強奪する計画だ。

 

 半右衛門はおんな殺しを梅安に頼む。
 

 左内は複雑な心境だ。
 

 梅安先生は落ち着いている。

 

 久兵衛に身体に危機があると警告し、左内

にも「梅安先生は有名な鍼医」と喧伝させて、

信用させて懐に入る。久兵衛に治療が必要と

意識を喚起させる。

 

 梅安はお照を刺殺するのが任務だが、彼女

の美貌に惹かれ、口説こうとして、罠に嵌り、

お照の手下に捕えられ、殴る蹴るの暴行を受け

拷問に遭う。

 

 お照の手下安蔵は梅安がよく知っている仕掛

人で、梅安の腕を警戒している。梅安は厳戒体制

の隙をついて、盗人の一人を捕え、人質に取る。

 

 盗人一党の頭領孫八は、「足手まといになる

奴だから殺ってもかまわねえぜ」と大胆に語り、

自身の手で刺殺したうえに、なんと梅安を放ち

「仕掛けの勤めを果たせ」と督励さえするのだ

った。

 

 梅安は読んだ。お照の仕掛を頼んだ存在は

情夫の孫八だったのだ。

 

 お照にとっても孫八は脅威で、彼の仕掛けを

半右衛門に頼んだ。

 

 脱出した梅安は蔵の中でお照を襲撃し鍼で

喉を刺す。悪女だが哀れに思い、刺殺した後

手厚く葬る梅安。

 

 孫八の元に半右衛門が現れ、仕掛を宣言し

宣戦布告する。

 

 左内が孫八の部下達を斬り、竹林で孫八と

対決し刺殺する。

 長屋で梅安は女性の身体に赤い斑点が出来る

ぞと健康を注意するが、「俺の女房に何をする」

と亭主に怒られ、水を蹴飛ばしてしまう。


 

 ☆☆☆悪女と盗賊 愛憎の関わり☆☆☆

 

 「仕掛られた仕掛人」は名匠安倍徹郎の第一回

『必殺』シリーズ脚本作品である。緻密な構成と

重厚なドラマで視聴者を引き付ける名作である。

 

 お照は安倍徹郎が描いた魅惑的なヒロインだ。

 お照のセクシーさに溺れる老いた夫久兵衛。

梅安は殺し屋であるにも関わらず、お照の美貌

に魅了され、口説いて罠に嵌り拷問に遭う。

 

 脱出して音羽の元締に「藤枝梅安。骨身に染み

ました。ただしこの病治りそうにありません」と危険

に遭っても美女を追うのは諦められないと男の

本性を自覚する。

 

 愛した女もターゲットであり、蔵でお照を襲う

シーンは怖い、エンディングでこのシーンが紹介

されるようになる程、迫真の名場面だ。

 

 弓恵子が男心を刺激する可愛い悪女を鮮やか

に勤める。

 

 彼女の芸名を名付けた人は伊藤大輔である。

 

 安倍徹郎作品にとって弓恵子は悪女役・聖母の

ような女性役と様々なおんなを生きる女優さんで

あり、本作は記念すべきコラボ第一作だ。

 

 孫八役には名優小池朝雄。凄みと迫力は圧巻

である。

 

 本作では左内、映画『必殺仕掛人 梅安蟻地獄』

では小杉十五郎と、林与一の二役の仕掛人に斬ら

る二役を勤めた方は、小池さんだけではなかろうか?

 

 悪女と盗賊が恋人どうしで互いに命を狙い合う。

 

 両者の頼みを叶える仕掛人。

 

 久兵衛は命が助かるが最愛の妻の正体を知らぬ

まま、彼女を失くす。その悲しみを思うと切ない。

 十朱久雄が老いらくの恋を熱演する。

 

 安蔵役で大塚吾郎が『必殺』初出演。

 

 緒形拳との息の合った演技が、『必殺必中仕事屋

稼業』の源ちゃんの原点となる。

 

 第三話は女の怖さを鋭く語るドラマだ。

 

  キャスト

 

 林与一(西村左内)


 

 緒形拳(藤枝梅安)


 

 太田博之(櫓の万吉)


 

 松本留美(美代)

 岡本健(彦次郎)

 

 西山恵子(お初)

 茶川一郎(武士)

 

 九条ひろ子(おつる)

 小林泉(さと)

 山村弘三(吉五郎)


 

 十朱久雄(久兵衛)


 

 大塚吾郎(安蔵)

 林与二郎(音吉)

 藤竹修(清吉)

 

 坂田多恵子(そば屋の女)

 岩田正(竹蔵)

 曽呂新(おつるの亭主)

 南部彰三(医者)


 

 弓恵子(お照)


 

 小池朝雄(孫八)


 

 山村聡(音羽屋半右衛門)



 

 スタッフ
 

 製作 山内久司

     桜井洋三

 

 原作  池波正太郎

 

 脚本  安倍徹郎

 

 音楽 平尾昌晃

 撮影 石原興

 

 製作主任 渡辺寿男

 ナレーター 睦五朗

 監督  三隅研次

 

 制作  朝日放送

      松竹株式会社

 

  小池朝雄 没後三十三年・三十四回忌 御命日

  平成二十九年(2017年)三月二十三日

 

  令和三年(2021年)五月三日に記事を再編して

  いる
 

                            合掌