新必殺仕置人 王手無用  本日番組四十歳誕生日 | 俺の命はウルトラ・アイ

新必殺仕置人 王手無用  本日番組四十歳誕生日



 『新必殺仕置人 王手無用』

 テレビ映画 トーキー

 54分 カラー(一部白黒)

 昭和五十二年(1977年)二月十八日放映

 

  のさばる悪を  なんとする

   天の裁きは  待ってはおれぬ

  この世の正義も あてにはならぬ

   闇に裁いて  仕置する

  南無阿弥陀仏

  ☆☆☆
  演出の考察・シークエンスへの言及・台詞

の引用は研究・学習の為です。


 松竹様・朝日放送(ABC)様におかれましては、

お許しと御理解を賜りますようお願い申し上げま

す。

 感想では物語の核心について言及します。未

見の方はご注意下さい。

 ☆☆☆

 

 絵草子を読もうとする子供達を注意する正

八。旗本疋田兵庫が将棋の本に夢中になる。

買うと言ったものの料金を払わず屋敷に取り

に来いと命じられ正八は現金払いを求める。

 

  兵庫は「天下の旗本を愚弄する気か!」と

怒り正八を打擲する。


 おてい姐さんが疋田からしっかり掏った。

 

 疋田は金を浪費する旗本で将棋に入れこ

んでいた。

 

 棋士初津と将棋を指す。

 

 仲間の旗本小出・横池・神尾たちが応援す

るが、疋田の完敗であった。

 

   初津「積でございます。」

 

   疋田「もう一番」

 

   初津「無駄でございます。大駒を落とした

       らまだしも平手ではとても将棋には

       なりません。今夜はこれで失礼しま

       す。」

 

 雪辱戦を頼むが断られ、逆恨みした疋田は

「無礼者」と叫び仲間と共に初津を惨殺する。

 

 主水は初の遺体を見て、王将を握りしめて

いたことに注目する。

 

    主水「将棋の駒と女か。妙な取り合わ

       せだぜ。」

 

 初津の遺体を引き取りに将軍家将棋指南の

棋士伊藤宗看が現れた。

 

 主水はどうやって奉行所に入ったと糺問す

る。将軍家将棋指南と聞き、土下座する。

 高井は主水に無礼を叱り、下手人を取り逃

がしたら、そのほうの首だけでなく、儂の首も

お奉行の首も飛ぶぞと警告する。

 

 疋田兵庫・神尾・横池・神尾らは遊里で男娼

を見つけると「男がいるぞ!」と怒り、男かどう

か詮議すると言って、遊女たちの着物を脱がす

等乱暴狼藉を働く。

 

 寅の会で疋田兵庫とその仲間達の仕置が

句にかけられ鉄が競り落とす。

 

 

 風呂で神尾に親しく話しかけた鉄は、よく

お遊びと見て、背後に回って背骨を外して

殺害する。

 

 主水は鉄と伊藤が密談している光景を見

て鉄に外されたことを抗議する。

 

 上役の浅田は兵庫・小出・横池に謹慎を

申しつける。

 

 小出は立小便をしている最中に、屋根から

己代松の竹鉄砲で銃殺される。

 

 兵庫は小出の死を悲しむ。横池は友の死体

に恐怖する。その時鉄が、横池の背後に回って

背骨を外して殺す。

 

 横池が死体となって倒れ込んで来て兵庫

は吃驚する。

 

 仲間を殺され、謹慎している兵庫は只管将棋

の手を見ていた。

 

 正八から詰めの紙を見せられ、謎が深まり、積

への道を教えろと求める。

 

 詰め寄られた正八は「宗看先生がお教えします」

と夜に誘う。

 

 一室に案内された疋田兵庫は、伊藤宗看が「煙

詰め」を教授され、瞠目する。「煙詰め」はあまりの

完璧さに幕府が禁じたという。

 

  だが、兵庫は見せられても、どうすれば。「煙詰

め」を習得できるかがわからない。

 

   宗看「この玉は貴方の命だ。」

 

 兵庫が驚くと宗看は去っていた。その時潜んでい

た鉄が現れ、疋田を捕え、障子の前に立たせる。

 

 主水は「疋田さん。あんたはやり過ぎた」と語り、

障子の紙ごと刺殺する。

 

 疋田兵庫が切腹していると見た奉行所は自殺事

件と見る。

 

 豆腐屋で主水は鉄かた宗看が初津の恋人で、仇

討であったことを知らされる。鉄が去ると主水は鍋

の豆腐が全て食べられてしまい、菜っ葉のみ残って

いたことを知る。

 

  ☆☆☆ドラマの王将☆☆☆

 昭和五十二年(1977年)一月二十一日。テレビ

ドラマ『新必殺仕置人』が始まった。句会で仕置の

依頼が読まれ、殺し屋達が競り落とす。厳格な組

織寅の会で元締虎とその用心棒死神の厳しい視

線を思いつつ、生き残る為に戦う仕置人達の戦

いの日々を描いたドラマである。


 

 その凄絶さ・生々しさにおいて、『新必殺仕置人』

は空前絶後の大傑作である。

 

 第五話「王手無用」は将棋ファンでもある安倍徹

郎が書いた傑作ドラマである。

 

 『十三人の刺客』の工藤栄一監督、菅貫太郎悪

役のチームが『必殺』において復活した。

 

 将棋に負ければ勝者初津を斬殺し、男娼がいるこ

とを理由遊里で暴れ狼藉を働く。その兵庫には、家

の重みが迫り暴徒と化した。

 

  他の俳諧師達が躊躇する中鉄は仕置を競り落

とす。

 

 神尾は風呂場で鉄に、小出は夜に用を足している

最中に射殺される。神尾や小出や横池の急死を、疋

田兵庫は深く悲しむ。人としての反省や悔恨をこころ

を持つ人物でもある。安倍徹郎脚本は細かい。

 

 宗看役を棋士の伊藤果が勤めた。

 

 「煙詰め」は貴重なシーンである。この詰めも完璧

と思うが、安倍徹郎の脚本も完璧である。

 

 疋田兵庫は、「煙詰め」に熱い関心を持つが解き方

がわからない。伊藤宗看は深い視野を抱いている。

 

 「煙詰め」を最後に見せることは仇であっても、将棋

愛好者としての宗看の配慮がある。

 

 鉄に抑えられ、主水に斬られる疋田兵庫。

 

 豆腐を食べつつ、宗看の亡き初津への愛を主水

は鉄から教えられる。

 

 宗看は疋田兵庫一党に念の入った復讐を為し、

「この玉はあなたの命だ」と頭領兵庫に宣言する。

 

 鉄が抑える。山崎努と菅貫太郎は『必殺仕置人』

『新必殺仕置人』のサーガで念仏の鉄と悪役牧野

備中守・疋田兵庫で共演することとなった。

 

 「王手無用」は将棋を愛する者達の人間関係で

起こった悲劇である。被害者の恋人は、敵を追い

最後の積となる王手をみずからの手でかける。

 

 主水の兵庫への台詞には哀れみの心があると

思う。

 

 工藤栄一の演出は素早さと重厚さの両面を見せ

つつ華麗に物語を語る。

 

 『新必殺仕置人』四十歳誕生日。

 

 おめでとう。

 

 (2015年2月18日に一部書いた記事を2017年

1月21日に加筆し再発表しました)


 

                      文中敬称略

 

                          合掌

 

 


 

 キャスト

                   

 藤田まこと(中村主水)

 

 

 中村嘉葎雄(己代松)


 

 

 火野正平(正八)

 

 

 中尾ミエ(おてい)


 

 河原崎建三(死神)

 

 

 菅貫太郎(疋田兵庫)

 伊藤果(伊藤宗看)

 

 横山リエ(初津)

  小島三児(目明し金次)

 辻萬長(与力高井)

 


 

 藤村富美男(元締虎)

 

 

 唐沢民賢(旗本小出)

 武周暢(旗本横池)

 重久剛一(旗本神尾)

 

 永野達雄(浅田)

 伴勇太郎(文造)

 北村光生(吉蔵)

 石原須磨男(弥造)


 

 小柳圭子(内儀)

 戸城泰人(男娼時次郎)

 浜田雅史(同心森川)

 下元年世(与力)

 

 北原将光(駒屋番頭)

 淀神勝利(風呂の客)

 松尾勝人(金次の手下)

 広田和彦(金次の手下)

 

 瀬下和久(俳諧師)

 阿井美千子(俳諧師)

 藤沢薫(俳諧師)

 原聖四郎(俳諧師)

 堀北幸夫(俳諧師)

 

 

 菅井きん(中村せん)

 

 

 白木万理(中村りつ)

 

 

 

 山崎努(念仏の鉄)

 



 


 スタッフ
 

 

 制作      山内久司(朝日放送)

         仲川利久(朝日放送)

         桜井洋三(松竹)

 

 

 

 脚本          安倍徹郎
 

 音楽          平尾昌晃

 編曲          竜崎孝路

 

 撮影          石原興

 製作主任       渡辺寿男

 

 美術          川村鬼世志

 照明          中島利男

 録音          木村清次郎

 調音          本田文人 

 編集          園井弘一


 

 助監督        高坂光幸

 装飾         玉井憲一

 記録         杉山栄理子

 進行         黒田満重

 特技         宍戸大全

 
 

 装置          新映美術工芸

 床山結髪       八木かつら

 衣装          松竹衣裳

 小道具         高津商会

 現像          東洋現像所


 

 制作補         佐生哲雄

 振付           藤間勘眞次

 殺陣           美山晋八

               布目真爾

 題字           糸見渓南

 

 ナレーター       芥川隆行

 

 オープニング 

 ナレーション作     早坂暁

 予告編ナレーター   野島一郎

 

 主題歌          あかね雲

 作詞           片桐和子

 作曲           平尾昌晃

 編曲           竜崎孝路

 唄             川田ともこ

 東芝レコード


 

 

 

 監督           工藤栄一



 

 制作協力        京都映画株式会社

 

 

 

 制作            朝日放送

                松竹株式会社

 

 

 ☆☆

 

 藤田まこと=はぐれ亭馬之助

 

 中村賀津雄→中村嘉葎雄

 

 二瓶康一→火野正平

 

 中尾ミエ=中尾ミヱ

 

 河原崎建三=河原崎健三

 

 

 白木万理=松島恭子=白木マリ

 

 山崎努=山﨑努

 

 

 

 早坂暁・野島一郎はノークレジット

 ☆☆

 「己代松」の表記は本編字幕に依った

 ☆☆

 

 (画像出典

  『新必殺仕置人』DVD vol.2)

 

                    

                  南無阿弥陀仏