仁義なき戦い(五) 刑務所出口における出会い | 俺の命はウルトラ・アイ

仁義なき戦い(五) 刑務所出口における出会い

『仁義なき戦い』

 

映画 99分 カラー

昭和四十八年(1973年)一十三日公開

製作 東映京都


企画   俊藤浩滋

      日下部五朗


手記   美能幸三

原作   飯干晃一

脚本   笠原和夫



撮影   吉田貞次

照明   中山治雄

録音   溝口正義

美術   鈴木孝俊

音楽   津島利章

編集   宮本信太郎


助監督    清水彰

記録     田中美佐江

装置     近藤幸一

装飾     山田久司

美 粧結髪   東和美粧

スチール   藤本武

演技事務  上田義一

衣装     山崎武

擬斗     上野隆三

進行主任   渡辺操



出演



菅原文太

(広能昌三)





 松方弘樹(坂井鉄也)




 田中邦衛(槇原政吉)

 川地民夫(神原精一)

 三上真一郎(新開宇市)

 名和広(土居清)

 高宮敬二(山方新一)

 曽根晴美(矢野修司)

 大前均(野方守)



 金子信雄(山守義雄)






 監督 深作欣二



  ☆

  美能幸三はノンクレジット

  名和広→名和宏

  ☆


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 刑務所の前。


 山守組の若者達が、トラックの荷台で友人の

出所を待ち構えている。


  「おお」



 彼らの仲間広能昌三が出てきた。



 山守組の若者達が祝福する。昌三が着流しの

やくざを射殺した時は、怖くなって逃げた山守組の

若者達だが、身代わりとして刑のお勤めをした昌

三に対して義理と友情と恩義を感じ、出所を祝う

者となった。


   槇原「良かったの、昌ちゃん」


 槇原は広能に煙草を吸わしてやる。


  坂井「昌ちゃん。保釈金を出してくれた山守の

      親父さんが迎えに来ておられるんじゃ。」


 広能は山守義雄親分を見る。


 山守義雄は「はっはっは」とにこやかにほほ笑む。


 優しく温和な笑顔に広能も心を打たれる。



  広能「どうもすみません。お借りしたぶんは

      そのうち働いて返しますけん」



  山守「何言うんなら。元々うちの若いもんの身

      代りになってくれたんじゃけん。もっとは

      ようわかってればの。この土居さんが相

      談に見えられての」


 土居は刑務所・鎮静房の中で若杉寛が世話に

なったことに感謝し広能に礼を言い、土居組組員

若松が祝いの酒を贈呈する。


第一作

 山方「大したもんよのう。土居の親分に迎えに

     きてもらえるては昌ちゃんぐらいのもんじゃ」


 「さ、行こう」


 広能は仲間達と山守組のトラックに乗る。



 広能昌三と山守義雄の出会いが刑務所の表で

成り立つ。二人の出会いのシーンである。


 

 笠原和夫の脚本の緻密さと完璧さに改めて感嘆

する。


 後に命をかけて戦う広能と山守が初対面では笑

顔で親しく挨拶を交わす。



 この家庭的で暖かいシーンを見て、後に親分が

乾分を裏切り、乾分が怒りを拳銃にこめて糾弾す

ると誰が想像するだろう。


 あったかくて優しい関わりが崩壊して、血で血を

洗う激闘・闘争になって行く。


 人間関係の大きな変化を描くことにおいて、笠原

和夫は驚異的な執筆力を見せる。



 このシーンが暖かくて優しいからこそ、後の対立の

悲劇が一層強く響くのだ。


 金子信雄は大正十二年(1923年)三月二十七日東京

市生まれ。


 山守役に選ばれたが、撮影前に高熱を出し、東映が

代役候補で西村晃を探していることを知り、「この役を

演らせてくれ。死んでも演る。」と宣言し、高熱の身体

で勤める挑戦心をスタッフに伝えて演じきった。


 金子信雄にとって、山守義雄は生涯の当たり役であ

ると思う。


 初登場の笑顔は魅力豊かで大きい。


 山守組の若者たちが肩を組み、モク吸わしてあげ

るシーンにも青春の情熱が燃えていた。この若者達

が利害関係から対立していこうところにドラマの深さ

がある。


 広能と土居の挨拶も暖かい。後の戦いを思うと切ない。


 固い絆で結ばれていた山守組組員と広能がトラック

に乗るシーンに友情と青春が溢れ後の悲劇と対照に

成っていることを実感した。


 菅原文太の広能昌三には青春の夢と情熱があった。



                             合掌



                       南無阿弥陀仏



                           セブン