仁義なき戦い(二) 恐怖のMP | 俺の命はウルトラ・アイ

仁義なき戦い(二) 恐怖のMP

『仁義なき戦い』

公開日  昭和四十八年(1973年)一月十三日


制作   東映京都



企画   俊藤浩滋

      日下部五朗


手記   美能幸三


原作   飯干晃一


脚本   笠原和夫



撮影   吉田貞次

照明   中山治雄

録音   溝口正義

美術   鈴木孝俊

音楽   津島利章

編集   宮本信太郎


出演



菅原文太(広能昌三)



伊吹吾郎(上田透)

名和広(土居清)

高宮敬二(山方新一)

大前均(野方守)

平沢彰(屋代光春)

小林千枝(山城佐和)

川谷拓三(江波亮一)



梅宮辰夫(若杉寛)




監督 深作欣二



美能幸三はノンクレジット

名和広→名和宏


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菅原文太主演作品(一)』

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 昭和二十一年広島の闇市において事務

員風の女性山城佐和がアメリカ人兵士数名

に襲われ乱暴されるが、勇気ある復員兵広

能昌三・山方新一のふたりが救出に向かう。





 笠原和夫の脚本では、昭和二十年に日本

が太平洋戦争に敗れ、戦争という大きな暴力

は消え去ったが秩序を失った国土には新しい

暴力が吹き荒れ、若者たちが無法に立ち向か

うには自らの暴力に頼る他はなかったことが

ナレーションで語られる。



 小池朝雄の重厚で冷静な語りが、脚本の

深い心を尋ねる。


 続編『仁義なき戦い 広島死闘篇』の冒頭

のナレーションにおいて広能が復員してきた

のは昭和二十年だが、映画では広能・山方

が佐和を救うのは昭和二十年の設定にな

っている。


 前述の小池の語りも「敗戦より一年」と話さ

れている。


 テロップの誤植ではなくて、脚本の昭和二十

年の設定が、映画本編では昭和二十一年で

ある。

 


 広能が無法者のアメリカ人兵士を殴り倒し、

喧嘩になり、警官が制止する。


 シナリオでは米兵が警官も殴る設定になっ

ている。


 広能「バカたれ!早よ女逃がせえ!」


 映画版


 警官「おい。相手はもう死んどる!」


 シナリオでは米兵が態度を変えてチュー

インガムや煙草を差し出し、広能や山方を

懐柔する。


 映画ではMPが来て発砲し、広能が逃げ

るというシーンになっている。


 土居・若杉による上田制裁の場


 上田組の上田透が仲間の屋代と共にシ

ョバ代を徴収しているところを、土居組組長

土居清・若頭若杉寛・組員野方守・江波亮一

に見つかり、逃げようとするが、取り押さえ

られる。


 シナリオでは盆踊大会の神社の境内の

出来事である。


 映画では闇市の中の事件である。



 鈴木孝俊の美術は深くて緻密で、出演者

の熱気も熱い。

 

  土居「上田、わりゃボンクラのくせして、こ

      こらのカスリ取っとるげなのう。ここ

     は元から土居のシマじゃ。」


 上田・屋代は拉致され、若杉から制裁を受

ける。


   若杉「連れてこい!」


 上田は抵抗するが野方に抑えられる。若杉

は日本刀で上田の左腕を切断する。上田は

激痛を懸命に堪える。


  若杉「こいつは右腕じゃ!」


  屋代「堪えてつかい!」


 若杉は屋代の右腕を斬り、鮮血が飛ぶ。


 壮絶な暴力シーンである。


 屋代の哀願が悲しく響く。刀を突きつけられ、

腕を斬られようとする者の叫びには、「生きた

い」という切実な心が溢れている。


 その哀願もはねのけて制裁を断行する若

杉は怖い。


 若杉のモデルは「地獄のキューピー」「悪魔

のキューピー」と呼ばれた男大西政寛である。


 梅宮辰夫の演技は凄まじい迫力で、観客は

その凄みに圧倒される。


 

                       合掌