御誂次郎吉格子(二) 三十石舟で出会ったふたり
『御誂次郎吉格子』
映画 無声 白黒
昭和六年(1931年)十二月三十一日公開
製作国 日本
製作 日活太秦
監督 伊藤大輔
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平成二年(1990年)七月一日
平成二十四年(2012年)十月二日
京都文化博物館にて鑑賞
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☆三十石舟で出会った二人☆
『御誂次郎吉格子 一九三一年 大河内傳次郎主演
伊藤大輔監督作品(一)』 http://amba.to/1e1qR4U
江戸から伏見への三十石舟。
客は大勢いる。母は幼い娘の頭を撫でる。
猿回しは猿を元気に踊らせる。
僧侶は目を閉じて声明を為している。
女郎は仕事の疲労感を隠せなかったようだ。
名はお仙。演ずるは伏見直江である。
この三十石舟の人々が生き生きと輝いている描写
に、伊藤大輔演出の深さがある。
この場にしか出ない人々が、鮮やかな存在感を発揮
しているのだ。
治郎吉は眼帯をして変装している。演ずるは大河内
傳次郎だ。
お仙に惹かれる治郎吉。
そのお仙は疲労で眠っている。
僧が声明をしながら、秘かにお仙の財布を狙って、盗もう
とする。
坊主の掏摸を見破った治郎吉が、坊主を制止し、お仙の
危機を救う。
声明しながらも、眠っている存在の金も狙う僧の金銭欲の
激しさを鋭く抉った描写でもある。
お仙治郎吉の出会いは、疲労と逃走に在った女と男が舟
で巡り合った出来事であった。
厳しい環境で助け合う二人。
恋の始まりとしても素晴らしい場面だと実感する。
合掌