田舎刑事 まぼろしの特攻隊 | 俺の命はウルトラ・アイ

田舎刑事 まぼろしの特攻隊

 土曜ワイド劇場

 『田舎刑事 まぼろしの特攻隊』

 放映日 1979年7月7日

 

 制作 テレビ朝日、テレパック

 

 脚本 早坂暁

 

 出演

 

 渥美清(杉山刑事)

 

 宇津宮雅代(幸子)

 

 浜村純(山中刑事)

 

 西村晃(深沢)

 

 高峰三枝子(真理子)

 

 監督 森崎東

 

 三十四年と一日前の今日昭和五十四年(1979年)七月

七日にこの番組が放映されました。

 

 それから四年後の昭和五十六年(1981年)十二月十二日

に再放送されていますね。

 

 1979年の本放送か1981年の再放送か、どちらであったか

視聴時期の記憶は定かではないのですが、昭和時代に一

度見ています。

 

 衝撃を受けました。

 

 脚本早坂暁、主演渥美清・西村晃・高峰三枝子、監督森崎

東という重厚なスタッフ・キャストによって制作された推理・反

戦ドラマの名作です。

 

 映像は残っているようで、再放送もされているそうです。

 

 

 物語の要約では、性の問題・暴力の問題に関するの記述も

ありますが、真剣に問うた作品ですので、お許し下さい。

 

 女子高生が殺害される事件が起こり、杉山刑事が捜査します。

 

 被害者の身元を調査するうち、女性は生徒ではなくて、ブルー

フィルムの撮影に参加して被害に遭ったことが推理されました。

 

 特攻隊として戦場に赴く青年が、出征前夜に、マリアと名乗る

女子生徒と情を交わすという内容の物語のブルーフィルムが

制作されていることが明かされます。

 

 製作者は深沢で、「特攻隊の生き残り」と主張していました。

 

 深沢にとって、「マリアの物語」は猥褻なブルーフィルムとして

しか評価されないことが悔しい出来事でした。

 

 お国の為に死ぬことを強いられて特攻隊として出撃する青

年の為に、情を交わした「マリア」の少女の慈悲のような母性

愛への感謝と、死んでいった戦友たちへの追悼の気持ちで、

平和希求のドラマとして、『マリアの物語』を撮影していたの

でした。

 

 「マリア」であった真理子は現在は、生花の家元をしていて、

深沢が彼女の過去を脅迫していると思っていました。

 

 

 深沢は特攻隊の整備士で、特攻隊兵士の軍服を調達して、

特攻隊として出撃する兵士に変装して、マリアに近づき、彼

女と情を交わしてしまったのでした。

 

 彼には、仲間やマリアに対しても、苦悩とお詫びの気持ちが

ありました。

 

 杉山の調査で、女子高生の制服を着た女性の殺害事件に

おいても、深沢が大きく関わっていたことが推理され、彼が容

疑者として浮かび上がります。

 

 

 痛ましくて悲しいドラマでした。

 

 特攻隊として出撃する兵士たち。

 

 出撃の前夜に、「この世の思い出」として、自ら兵士と情を交

わすことを決意した女性。

 

 彼女に近づくことが目当てで、戦後生き残ってしまって悩む男。

 

 映画女優になれると聞いて、夢を見て、ブルーフィルムと知って

驚愕する女性。

 

 悲しみが交錯する物語でした。

 

 西村晃さんはご自身、特攻隊の生き残りということもあって、

壮絶な演技でした。


 

 高峰三枝子さんも貫録がありました。

 

 若い人は、「ブルーフィルム」と言われてもよくわからないと思

います。

 

 現在でいうところのAVと似ているものです。

 

 猥褻目的で撮影されたフィルムです。

 

 森崎東監督は昭和四十三年(1968年)六月十五日公開の映画

で山田洋次監督作品で『吹けば飛ぶよな男だが』の脚本を山田

監督と共に書いています。

 

 現代の大阪駅で、チンピラのサブは、家出娘のカオルに話しか

け、中華料理をおごって信用させて、「映画撮影の仕事」と称して、

彼女に女子高生の制服を着せます。

 

 サブの仲間の男は学生服を着て、突然カオルを襲います。

 

 カオルを騙して、性暴力を実際に為して、ブルーフィルムを撮影

するという恐ろしい計画だったのです。

 

 しかし、泣き叫ぶカオルの声を聞いたサブは、罪の痛みもあって

か、突然仲間に対する怒りが湧き、仲間を殴り倒し、カオルを救っ

て逃走します。

 

 チンピラサブと家出娘カオルとの間に純愛が産まれていきます。

 

 平成二十四年(2012年)九月六日、南座でこの名画を鑑賞して、

劇場で見ることが成り立ちました。

 

 山田氏・森崎氏は「お若い頃、凄い映画を撮ってはったんやなあ」

と思いました。

 

 この映画の直後に、原作・脚本山田洋次、脚本森崎東、主演渥美

清のスタッフ・キャストで、テレビ版『男はつらいよ』が制作されます。

 

 お客さんの年配の女性達では、「女の子を喰いもんにする悪い奴

がおるなあ」「駅におるチンピラ、怖いなあ」と仰っていた方々もいら

っしゃいました。

 

 「ブルーフィルム撮影がドラマの展開において重要な鍵を占めて

いる」という点において、映画『吹けば飛ぶよな男だが』は、テレビ『田

舎刑事まぼろしの特攻隊』の原点になったのかなとも思いました。

 

 現在慰安婦問題が政治家によって語られています。

 

 政治家も市民も語る際は慎重な配慮と丁寧な学習が必要でありま

す。

 

 『まぼろしの特攻隊』は、出征する兵士の為に、出征前夜に身を捧

げる女性のこころを尋ねました。

 

 彼女の優しさにつけこんでしまった男が戦後、痛みと悩みを抱きな

がら、フィルムを作成する歩みで、新たな罪を犯してしまう悲劇を描

いたものです。

 

 若き日のマリアと深沢が出会うシーンは幻想的でした。

 

 青年・少女のシーンは、西村さん・高峰さんではなくて、若い男女

の俳優さんが演じていました。その方々のお名前は存じません。

 

 渥美清さんの昭和五十年代のテレビの代表作です。

 

 映画版『男はつらいよ』シリーズでは積極的に問えなかった問題

を問うた作品であるとも申せましょう。

 

 現代では、フィルムで映像を作ることが困難になっています。

 

 フィルムの記録性ということでも考えさせられる作品です。

 

 このドラマはビデオで撮影されました。

 

 真剣に作られた作品で、興味本位の猥褻な作品とは違います。

 

 DVD化を希望しています。

 

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 2024年1月25日に記事を再編しています。 

 画像はインターネットよりお借りしました。

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                                    合掌