必殺仕置人 いのちを売ってさらし首 一 | 俺の命はウルトラ・アイ

必殺仕置人 いのちを売ってさらし首 一

『必殺仕置人 いのちを売ってさらし首』

 テレビドラマ トーキー 55分 カラー

 放映日 昭和四十八年(1973年)四月二十一日

 製作国 日本

 製作言語 日本語

 放送局 朝日放送系

 

 

 オープニングナレーション

 「のさばる悪を なんとする

 天の裁きは 待ってはおれぬ

 この世の正義も あてにはならぬ

 闇に裁いて 仕置する

 南無阿弥陀仏」


 

 

 大雨の降る刑場。囚人が「助けてくれ!俺じゃ

ねえ!死にたくねえ!助けてくれ!」と泣きなが

ら命乞いをする。

 

 

 北町奉行所の役人的場弥平次は、囚人長次

郎に対して、強盗殺人の罪科により死罪に処す

ることを冷厳に申し渡す。長次郎は「闇の御前」

と名のっていた盗賊であった。

 

 長次郎と呼ばれる罪人は、「自分には身に覚

えなのないことで、自身は長次郎でないこと」を

強調し、助命を願うが、役人達に取り押さえられ

る。的場は命乞いを嘆願する囚人を処刑する。

 

 囚人は長次郎として斬首の処刑をされ、無残に

もその首が晒される。

 

 葉から露がおちる。

 

 郡山から江戸に働きに来た娘お咲は、さらし

首にされた首を見て


 

  「おとう」

 

 と呼んだ。

 

 お咲にとって、長次郎として処刑された囚人の

首は、父松造の首だったのだ。

 

 

 観音長屋。

 

 瓦版屋のおひろめの半次が竹馬で遊んでいる。

八丁堀がやってきたので、長屋の住人に知らせる。

 

 北町奉行所同心中村主水だ。

 

 主水「おい、これどこで手に入れた?

    これ、先月、室町の越後屋で

    盗まれたもんだぞ」

 

 主水は住人たちの市で、「盗品を売っているのでは

ないか?」と問いつめ、袖の下を要求している。

 

 

 賄賂の変わりに鋭い指が、主水の手の平に当たっ

た!


てつ  もんど

 
 

坊主頭の骨接ぎ師念仏の鉄だ。

 

 鉄「あんまりガツガツしてると今にやられるぞ」


 

 主水「よせよ、念仏。おめえの指はやばくて

    いけねえ」


 

 鉄「ま、気をつけるこったな」


 

 主水「いいか、お前らがこうしてお天道様の下

    を歩けるのも俺が目こぼししてやってる

    からだぞ」


 

 鉄「ケッ」


 

 棺桶屋の青年錠が、的場の部下に襲われてい

たお咲を助ける。

 

 お咲は刑場で晒されたのは自身の実父だと主張

する。その言葉を聞いた錠は、鉄・半次と長屋の

住人鉄砲玉のおきんととともに、獄門台に行くが既

に首は無かった。


 

 主水は、牢名主天神の小六の協力で、的場の庇

護を受けている豪商浜田屋庄兵衛こそ、「闇の御前

」こと長次郎であることを確かめ、お咲の父まつぞう

は身替りに処刑されたことを知る。


 

 鉄・錠・おきん・半次・主水の調査で、浜田屋を

助けたのは牧野備中守であったことが判明する。

 

 将軍家お側衆の役職を狙う備中守は、浜田屋の

命を助け、まつぞうを犠牲にして身替りにして処刑

した。浜田屋に恩を着せて、お側衆就任の為の資

金・賄賂の献金を命じる。

 

 錠は、お咲を頼み人に三十両の金が頼み両とし

て出たので、備中守・的場・浜田屋を仕置する計

画を鉄・主水・おきん・半次に持ちかける。

 同意する四人。だが、お咲は三十両の金を持っ

ていない。「金で復讐をすべきではない」と思う錠

が自身の判断で言った事柄だった。


 

 備中守・的場・浜田屋の密会の談合を聞いた

鉄・錠・主水は、鳥居の下を歩みながら仕置への

思いを語り合う。


 

 錠「どうにもこうにも我慢できねえ。何をもたもた

   してんだ。さっさとバラしゃいいじゃねえか?」

 

 主水「それだけじゃ足りねえよ」


 

 錠「細切れにして肥溜めにぶちこむとか」


 

 主水「まだまだ」


 

 鉄「病×持ちの夜●、○かして、鼻×けにして

  やるってのはどうだ?」


 

 主水「まだまだ」


 

 鉄「畜生、体中ゾクゾクしてきやがる。

  生きてるってのも満更悪かねえな。

  あの外道共をどうしてくれようかい?」


 

 主水「男三十越えていい恰好しようたぁ、

    落ち目になった証拠だぜ」


 

 備中守は錠に拉致され、鉄に背骨をはずされ、

言葉が語れなくなる。鉄・おきん・半次はすぐに

備中守の命を奪わずに、恥辱・苦痛を与える罰

を思いついたのだ。

 

 

 仕置人五人は、まつぞうの無念さとお咲の恨

みをこめて、的場とその護衛と浜田屋にも闇の

裁きである「仕置」を為すことを決定する。




 ☆熱く激しい炎が燃える☆

 

 山﨑努は昭和十一年(1936年)十二月二日

に誕生しました。

 三十六歳で主演したドラマ『必殺仕置人』は

永遠の傑作です。

 念仏の鉄は当たり役です。
 

 昭和四十八年四月二十一日、朝日放送・松竹

株式会社の制作により、『必殺仕置人』は始ま

りました。

 

 

 「必殺シリーズ」の第二弾に当たります。

 

 主人公は坊主頭の骨接ぎ師念仏の鉄です。か

つては坊主で檀家参りもしていました。仕置の頼

み両を受け取って、法の網をくぐってはびこる

悪を裁闇の処刑人です。仲間に棺桶職人の錠・

掏摸のおきん・瓦版屋の半次・北町奉行所同心

中村主水がいます。

 

 女好きの怪力坊主念仏の鉄。

 

 正義感が強く一本気な若者棺桶の錠

 

 逞しい姉御の鉄砲玉のおぎん。

 

 明るくて繊細な情報屋のおひろめの半次

 

 参謀的な役割を荷う智恵者の同心中村主水。

 

 

 五人のチームは最強です。

 

 「仕置人」は怨念のドラマを深く探求しました。

怨念を底の底まで尋求し、理不尽さや不合理の為

に泣かされ犠牲にされている存在の悲しみと痛み

を確かめました。

 

 怨念は何故起こるか?第一話を尋ねると愛する

父親を無残に殺害された娘の怒りが描かれます。

何の罪咎もない男が殺人鬼の汚名を着せられて

無残に処刑されたうえに斬られた首を晒される。

 

 

 父の無念と痛みを思って、娘は怒りと悲しみを確

かめる。恨みが起こってくる源には、殺された父親

への愛がある。

 

 

 怨念のドラマを極め尽くすことによって、恨みの

根にある大切な存在への「愛」を尋ねていったの

ではないかなと思うのです。
 

 第一話「いのちを売ってさらし首」は仕置人五人

のチームが誕生する物語を描きます。

 

 被害者の怨みを感じた仕置人は加害者を苦しめ

虐め抜いて罪の重さを知らせる。残酷な仕置は、

視聴者からも賛否両論を湧き起こしました。加害

者の悪人も尊い生命を生きていることを逆説的に

知らしめるものともなっています。

 

 鉄が仕置をなし続けていくことを決め、主水が

「ワルのそのまた上行くワル」として自己確認を

します。

 

 悪党が弱者を苦しめ犠牲にして私腹を肥やして

いる非道を裁く仕置人。しかし、仕置人は悪党よ

り悪い大悪人である。

 

 「極悪人」として生きることを自己確認する主人

公達の生き方は強烈な存在感を放ちます。

 

 悪のヒーロー・ヒロインの誕生がありました。

 

 『必殺仕置人』は、悪に徹して生きる仕置人を描

く物語として誕生しました。


 

 日本のテレビドラマ史は勿論の事、日本映像史に

おいても、この1973年4月21日に、新たな歴史が開

かれることとなったのです。


 キャスト 

 

 山崎努(念仏の鉄)


 

 沖雅也(棺桶の錠)


 

 野川由美子(鉄砲玉のおきん)


 

 白木万理(中村せん)


 

 大滝秀治(浜田屋庄兵衛 松造)

 今出川西紀(お咲)

 

 三島ゆり子(お島)

 菅貫太郎(牧野備中守)


 

 津坂匡章(おひろめの半次)



 

 近藤宏(的場弥平次)

 生井健夫(田口)



 

 高松英郎(天神の小六)


 

 黛康太郎(喜助)

 新屋隆弘(与吉)

 成田幸雄(孫八)


 

 菅井きん(中村せん)


 

 藤田まこと(中村主水)


 

 スタッフ

 

 制作    山内久司

       仲川利久

       桜井洋三


 

 脚本  野上龍雄

 

 

 音楽  平尾昌晃

 撮影  石原興

 

 

 

 美術 倉橋利韶

 照明  中島利男

 録音  二見貞行

 調音  本田文人

 編集 園井弘一

 

 助監督 家喜俊彦

 装飾  稲川兼二

 記録 野口多喜子

 進行 黒田満重

 特技 宍戸大全

 

 

 装置 新映美術工芸

 床山結髪 八木かつら

 衣装 松竹衣装

 現像 東洋現像所

 

 制作主任 渡辺寿男

 殺陣  美山晋八

 題字 糸見溪南

 

 主題歌「やがて愛の日が」

 作詞 茜まさお

 作曲 平尾昌晃

 編曲 竜崎隆路

 唄   三井由美子

 ビクターレコード


 

 オープニングナレーション作 早坂暁

 エンディグナレーション 野上龍雄

 

 ナレーター   芥川隆行

 

 制作協力 京都映画株式会社



 

 監督 貞永方久


 

 制作  朝日放送

      松竹株式会社

 

 ☆

 山崎努=山﨑努

 

 今出川西紀=久保にしき

 

 津坂匡章→秋野太作

 

 桜井洋三=櫻井洋三

 

 大滝秀治の役名で松造はノークレジット

 

 早坂暁はノークレジット

 

 野上龍雄 エンディングナレーション作は

 ノークレジット

 ☆


 『必殺仕置人』三十九歳誕生日

  平成二十四年(2012年)四月二十一日

 

 平成二十四年(2012年)四月二十一日発表記

事に令和四年(2022年)四月二十三日に加筆し

ています。

 

               南無阿弥陀仏