ウルトラセブン  海底基地を追え | 俺の命はウルトラ・アイ

ウルトラセブン  海底基地を追え

『ウルトラセブン 海底基地を追え』

テレビ 25分 トーキー カラー

放映日 昭和四十三年(1968年)二月二十五日

 

製作国 日本

製作言語 日本語

放送局 TBS系

 

監修 円谷英二


プロデューサー 末安昌美

脚本 赤井鬼介

 

撮影 鈴木清

美術  成田亨

     岩崎致躬

照明  新井盛

音楽 冬木透

録音 松本好正

効果 西本定正

操演 平鍋功

機電 倉方茂雄

編集 柳川義博

光学撮影 中野稔

助監督 山本正孝

      円谷粲

制作主任 熊谷健

制作担当者 塚原正弘

 

東京現像所 

キヌタラボラトリー

TBS映画社

 

協力 伊豆下田

    浜のホテル

 


出演

 

中山昭二(キリヤマ隊長)



 

森次浩司(モロボシ・ダン、ウルトラセブン声の出演)
菱見百合子(友里アンヌ)


 

石井伊吉(フルハシ・シゲル)
阿知波信介(ソガ)
古谷敏(アマギ)  

 

満田禾斉(ウルトラ警備隊隊員 声の出演)
勝部義夫(ウエノ隊員)
村越伊知郎(ミミー星人 声の出演)

川又由希夫

今井和雄

権藤幸彦
 

柳谷寛(川田船長)
佐原健二(タケナカ参謀)


 

上西弘次(ウルトラセブン スーツアクター)
浦野光(ナレーター)

 


特殊技術 大木淳


 

監督 鈴木俊継

 

制作 円谷プロダクション

    TBS
 ☆☆

 森次浩司→森次晃嗣

 菱見百合子→ひし美ゆり子

 石井伊吉→毒蝮三太夫

 満田 禾斉→満田かずほ

 ☆

 台詞の引用・シークエンスへの言及

は研究の為です。

 円谷プロ様・TBS様におかれましては

ご理解・ご寛恕を賜りますようお願い申

し上げます。

 ☆


 

 夜

 

 海上に浮かぶ第三黒汐丸において、
船長や船員は煌く流れ星を見る。


 

  船員「船長」

 


  船長「ん?」

 


  船員「よく星が流れますね。」

 


  船長「流れ星には色々不吉なことが
     あるよ。嫌なことが起きなきゃ
     いいが・・・」


  船員「あれは何でしょう?」

 


  海に飛沫が湧き立つ。


pict000004
 

  突如水面から、巨大な軍艦が浮かび上
 がる。


ウルトラアイは我が命-pict000005

  軍艦は、第三黒汐丸を攻撃し、黒汐丸は
 炎上する。


ウルトラアイは我が命-pict0000014


ウルトラアイは我が命-pict000004

ウルトラアイは我が命-pict0000013  

pict000008

  ウルトラ警備隊作戦室

 タケナカ参謀が厳しい表情で入室
する。

 

 キリヤマ隊長は、第3黒汐丸が行方
不明で海上保安部が捜索していること
を報告する。


 

  タケナカ「どうもおかしいな、最近の
       海難事故は。」

 

 南鳥島でもSOSが発信され、アマギが
ホーク3号で、調査に出発する。


pict0000018

ウルトラアイは我が命-pict000005

 

 ダンとアンは、車で基地に向かって
いる。二人が作戦室に帰室すると、タケ
ナカが声をかける。

 

  
   タケナカ「ご苦労、どうだった?」

 


   ダン「黒汐丸船長の御遺族に
      会ってきました。」


 

  タケナカ「何か事情はわかったかね?」

 


   ダン「沈没直前、海上からの緊急電話に
      よりますと、戦艦大和らしい姿が
      海上に現れたと言って電話が切れ
      たそうです。」


 

   タケナカ「何、戦艦大和が現れた?」

 


 アマギも帰室する。

 


   タケナカ「調査の結果は?」

 


   アマギ「SOS受信後、少なくとも30分以内に
       発信地点に到着してるんですが、
       ・・・」

 


   キリヤマ「駄目か?」

 


   アマギ「はい。遭難地点には油も破片も見
       当たりません。」

 


   キリヤマ「普通の遭難とは、思われません。」

 


   ダン「何者かの攻撃でしょうか?」

 


   タケナカ「まさか」

  


   キリヤマ「参謀、徹底的に、捜査してみる
        必要があると思われますが」


   タケナカ「うん。」

 

 パリ本部から連絡が入り、地中海や
大西洋での行方不明の船舶が続出して
いるという。

 

 

   キリヤマ「タケナカ参謀。」

 


   タケナカ「ん。」

 


   キリヤマ「極東海域の厳重な捜査が
        望まれますが。」

 


   タケナカ「ん。キリヤマ隊長にご苦労
        願おうか。」


 

   キリヤマ「はい。」

 


   タケナカ「唯一の手がかりは、黒汐丸
        の船長の電話だ。大和を見た、
        という。」
  

 

   キリヤマ「徳之島付近から、始めて
        みましょう。」


 

   タケナカ「ん。」

 
   
   キリヤマ「フルハシ・アマギ、ハイド
        ランジャーで出発!」


   
   フルハシ・アマギ「はい」

  二人の隊員は、ハイドランジャーでの海底
 調査に向かう。


ウルトラアイは我が命-pict000003


   キリヤマ「ハイドランジャー1号・ハ
        イドランジャー2号、スタ
        ンバイ、よいか?」


 

   フルハシ「ハイドランジャー1号、
        スタンバイOK!」

 


   アマギ「ハイドランジャー2号、
        スタンバイOK!」

 


   キリヤマ「発進!」

 

 フルハシ・アマギ両隊員は、それぞれ、
ハイドランジャー1・2号に乗って、徳之
島付近の海底捜索を開始する。


   キリヤマ「ハイドランジャー1号は
        大和の沈没地点徳之島西
        方32キロに進路を取れ。」    
  

   フルハシ「了解」

 

   キリヤマ「ハイドランジャー2号」

 


   アマギ「ハイドランジャー2号、
       只今、徳之島南方の海底
       を捜索中。」

 


   フルハシ「ハイドランジャー1号
        より隊長へ!
        ハイドランジャー1号
        より隊長へ!」


 

   キリヤマ「こちらキリヤマ」

  

 

   フルハシ「隊長、大和が見当た
        りません。」

 

   キリヤマ「何、大和が見当たらない!?」



 

  海底で、フルハシはヒトデ型の怪船を発
 見する。追跡すするが見失い、アマギに追
 跡を依頼する。
  だが、アマギはヒトデ型の船にとらわ
 れてしまう。

 


  キリヤマ「ハイドランジャー2号、応答
       せよ。フルハシ、2号、応答
       なし。こちら、ホーク1号で
       海上調査をする。」

 


  フルハシ「了解!」


 


 一方下田港に、大和とよく似た軍艦が

現れる。


ウルトラアイは我が命-pict00006

 黒汐丸を沈めた軍艦だ。



ウルトラアイは我が命-pict000004

  ダン「何、怪物が海に戻った!?
     で、場所は?下田港だな。
     参謀!」


  タケナカ「よし、ダンはホーク3号
       スタンバイ!」

 


  ダン「はい。」

 

  タケナカ「ソガ・アンヌは、ポインター
       で住民の救援に当たれ!」


  ソガ・アンヌ「はい」


  
  タケナカ「キリヤマ隊長、伊豆に怪物
       すぐに、帰投して貰えないか?」
 
ウルトラアイは我が命-pict0000021

 
  ホーク1号で海上を調査していた、キリ

 ヤマ隊長は、タケナカ参謀の要請を受け

 て、帰投することを、フルハシに告げる。

  フルハシは、アマギの救援に向かうが、

 彼もヒトデ型の怪船に捕まる。



ウルトラアイは我が命-pict000001

  大和に似た軍艦は、下田の町に艦砲射

 撃を行い、住民は恐怖する。ソガ・アンヌ

 が応戦する。

 

  ダンが乗ったホーク3号は、軍艦に撃墜

 されてしまう。


ウルトラアイは我が命-pict0000019
 ソガ「ダン!」

 

 アンヌ「ダン!」

 
 大和に似た軍艦は、動きを止めた。


 

 キリヤマ「こちら、キリヤマ。アンヌと
      ソガは残って、しばらく様子を
      見てくれ。」

 


 ソガ「了解」

 

 パリ本部から連絡が入り、大和に似た
 軍艦は、実は巨大な爆弾ロボットであ
 ることが判明した。
  
ウルトラアイは我が命-pict000009

  ナレーター

  「怪物はアイアンロックスと呼ばれ、沈没
   した戦艦などの、無限の鉄屑などを利
   用した強烈な爆弾ロボットとわかった。
   欧州各国の基地が狙われ、停止してか
   ら15分後に爆発することが知られたが、
   敵の基地はわからなかった。」


  

  タケナカ「キリヤマ隊長、隊員達の行方は?」


  
  キリヤマ「は」

 

  タケナカ「アイアンロックスを危険
       のない、海に持っていく
       ことは出来ないか?」

 

  キリヤマ「あの重量では・・・それに
       時間は・・・」


 

  タケナカ「爆発迄、あと何分だ?」


 

  キリヤマ「20時35分の予定ですから、
       あと、13分です。」


   時計の音は、無情に一秒の歩みを

 刻んでいく。


 夜の下田港。

 
ウルトラアイは我が命-pict0000011

  アイアンロックスが、不気味に動き出し

 艦砲射撃を始める。

 


ウルトラアイは我が命-pict000003

  ソガ「隊長!アイアンが再び動き出し
     ました。
      何とかしないと!」

 

  キリヤマ「君達は、安全な所へ逃げて
      くれ。」

 

  一方深海のホーク3号にいたダンは、覚醒
 し、セブンに変身する。


ウルトラアイは我が命-pict000002

  ダン「デュワ!」


ウルトラアイは我が命-pict000003

  セブンは、アイアンロックスに対峙する。
 
ウルトラアイは我が命-pict0000010

 

  アイアンロックスから、不敵な笑い声が
 聞こえてくる。


pict000009

  声「ハハハ!来たか、セブン。君は我々
    の力を知らなさ過ぎる。」

 

  セブン「何?」

 


a7

7 act

ウルトラアイは我が命-pict0000012

  声「我々は、海底をめぐる、この豊富な
    資源。
    それも地球人が利用しないものを
    頂いたのだ。」


  セブン「何だ!?」

 

  声「総攻撃で、ミミー星人の威力を見せて
    やるのだ!」

 

  ミミー星人は、アイアンロックスから、
 鎖を放ち、手枷でセブンの両手を縛り
 上げる。

 


ウルトラアイは我が命-pict0000018


ウルトラアイは我が命-pict000009


ウルトラアイは我が命-pict0000018

ウルトラアイは我が命-pict0000016


ウルトラアイは我が命-pict0000017

ウルトラアイは我が命-pict0000020

  セブンもろとも、自爆する作戦かもしれ
 ない。


ウルトラアイは我が命-pict0000015

  セブンは何とか、鎖を断ち切りり、エメリ

 ウム光線を放つ。

 

  光線を受けたアイアンロックスは、爆発す

 る。


pict000004
 


ウルトラアイは我が命-pict000008


ウルトラアイは我が命-pict0000016

  搭載されていた爆弾の爆発前であったの
 か、アイアンロックス爆破による被害もなく、
 下田港はセブンに救済された。


  深海のハイドランジャー内で、フルハシ・
 アマギが覚醒する。

  ミミー星人のヒトデ型の円盤宇宙船が逃走
 を図り、水中から上空へと移動する。


  ハイドランジャー1・2号宇宙船を追って、
 水上へ現る。


ウルトラアイは我が命-pict000005

  ミミー星人の円盤を撃墜するハイドラン
 ジャー1・2号。

 

 フルハシ「やった!」


 アマギ「やった!」

 

  朝

 ダンは眩しい朝日の光を受けながら、
 海を見つめる。

 


ウルトラアイは我が命-pict0000012

 

 ☆鎖に繋がれたウルトラセブン☆

 


 第21話「海底基地を追え」は、1968年
(昭和43年)放映時における、円谷プロ
の、「苦衷の中の探求」が窺えるドラマ
である。


 第11話「魔の山を飛べ」で医師役で出
演した、宮崎英明の『セブン』脚本第1作
である。
 昭和7年(1932年)生まれの氏の芸名・
脚本家名は赤井鬼介。

 

 放映当初は、30%の高視聴率を記録し
ていた『セブン』であったが、シリーズ
中盤になると、20%に落ち込み、スタッ
フの悩みは深まる。

 現代ならば、20%は凄い数字だが、昭
和43年という時代は、カラーテレビが普及
した頃で、現在のようにインターネットや
携帯電話などはなく、人々が家庭で味わ

う娯楽は、まず、テレビだったのだ。
 人気番組は、視聴率30%を超えること
は多かった。
 更に『セブン』スタッフにとっては、前作

『ウルトラマン』が40%という驚異的な視

聴率を挙げて、大人気を誇ったことも、焦

りに繋がった訳だ。


 

 山田輝子著『ウルトラマンを作った男
金城哲夫の生涯』によると、円谷英二は、


 

  「見せ場が弱く物足りない。
   ウルトラマンのイメージを
   追っている子供には不満なのか」
   (1)


 

と日記に記したという。そこには、傑作を

製作しても視聴率が上がらぬ、という現

場の苦悩が深く表れている。

 

 『ウルトラセブン』は内容的には傑作と
絶賛されていたのだが、量的な問題、視

聴率では低迷し、製作現場では経費の

切り詰めが深刻な課題になってきたのだ。

 いつの時代も、量・数はのしかかってく
る。

 感動を呼び起こす名作を産み出しても、
量的な面で失敗したら、厳しい評価に晒さ
れる。

 

 興業の問題では、多数の観客・視聴者

に見て貰えるかどうかが、いつも問われ

てくる。

 

 現在の21世紀のテレビ界では、視聴率

追求が一層激しくなり、人権無視や差別

やいじめなどを為して、視聴者の笑いを

取って、視聴率を稼ごうとするバラエティ

ー番組が溢れかえっている。
 嘆かわし限りだ。

 

 テレビ界の人々にとって、視聴率稼ぎは
生活問題だし、大事な課題であることは察
するが、無茶苦茶なことまでして稼ごうと
するのは、単に倫理の問題ではなく、日

本のテレビの未来にも関わることなので、

じっくり熟慮・再考して欲しい。

 

 それを思えば、1968年における『ウルト
ラセブン』の製作現場における低視聴率

時での葛藤には、苦しみながらも誠実な

歩みがあった、と自分は思う。

 1968年、視聴率欲しさに無茶な真似を

せず、『セブン』のドラマを深く追求し続け
たスタッフの熱意に敬意を表したい。

 

 そうした情熱が評価されているとはいえ、
本第21話は、ファンの先輩方から厳しい

評価を受けている。
 やむを得ないことだとも思う。


 低視聴率で製作予算が厳しかった円谷

プロは、東宝から譲ってもらった戦艦大和

のミニチュアをアイアンロックスにしたいと
提案した。

 

 これがウルトラシリーズを支えてこられ
た、特殊美術担当の成田亨(1929年9月3

日-2002年2月26日)を怒らせてしまった。

 この回における大和ミニチュア使用が、
成田先生の降板につながってしまったよう
だ。

 

 太平洋戦争において日本の敗色が濃厚

になった1945年4月、連合艦隊から沖縄に

向かうことを命じられた大和は、同月7日、

アメリカ軍航空隊の攻撃を受けて炎上し、

沢山の兵士が戦死した。

 

 大日本帝国が行った戦争。それは近隣

諸国の人々の尊い命を奪った冷酷な侵略

の戦いであり、日本の若者の尊い命も奪っ

た無謀な戦いでもあった。

 『ウルトラセブン』は戦後22・23年に製
作されたドラマということもあり、反戦平
和のテーマは、ドラマで熱く語られてい

る。

 その『セブン』において、大和に酷似し
たロボットを、主人公と対決するキャラク
ターとして描いてしまったことは、残念
である。

 諸先輩がこの点を指摘しておられるが、
自分も同感である。
 

 この点に関しては、スタッフに熟慮して
欲しかった。


 こうしたウィークポイントは確かに多々
ある。数多の弱点を晒しながらも、第21話
は不思議な魅力を伝えてくれている。

 本感想では、「この魅力の源は何か」
を探っていきたい。


  冒頭の夜の海上の場面は神秘的だ。
流れ星が、不安な空気を船長・船員に知

らせる、という導入も、視聴者に恐怖のド

ラマを告げる見事な導入だと思う。

 

 船長役は、東宝の名優柳谷寛(1911年11
月8日-2002年2月19日)である。
 山本嘉次郎監督が、豊かな大自然の中

での人と馬の交流を描いた名作『馬』(1941
年)を始め、数多くの映画・テレビにおい
て、リアルで渋い芸を見せて下さった名優
である。

 

 「ウルトラシリーズ」では、『ウルトラQ』に

おいて、第19話「2020年の挑戦」で宇田川

刑事、最終回第28話「あけてくれ!」では

沢村役と、2回にゲスト出演され、強烈な

印象を視聴者に与えてくれた。
 

 アイアンロックスは、登場シーンから、重

い存在感と不気味なムードを醸し出してい

る。黒汐丸への攻撃シーンも、迫力があり、
暴力の怖さが鋭く描かれている。

 実相寺昭雄監督が語っておられたように
実際の暴力には悲しみや怒りを感ずるが、
フィクションの映像として描かれたものを
見る時、人はそこに興奮を感ずるものなの
だ。

 

 第21話における黒汐丸炎上の特撮場面に
は、円谷プロの底力を感じる。

 鈴木俊継・大木淳両監督の、海上アクシ
ョンの演出も迫力に富んでいる。

 中盤におけるハイドランジャー1・2号発
進、及び深海での探索の場面は、視聴者の
心に緊張感と興奮をもたらす。
 深海を走りながら、水底に横たわる謎を
探っていく、という展開は、赤井脚本、見
事な流れである。

 
 ハイドランジャー1・2号が、ミミ-星人
のヒトデ型の円盤に見つかって捕らわれて
しまう展開も、ミステリアスで、恐怖感が
高まる。

 

 伊豆下田の漁港に現れるアイアンロック
スは恐ろしい。
 艦砲射撃の場面は、戦争の恐ろしさを伝
えるものとなっている。

 

 アイアンロックスが搭載している爆弾を
恐れて、20時35分という爆破の時間に向か
って刻一刻と進む時間の音を聞いて、無力
感を噛みしめる、キリヤマ隊長とタケナカ
参謀の表情にも、苦悩が深く現れている。

 

 クライマックスにおける、セブンとアイ
アンロックスとの激闘は、バトルシーンの
白眉である。

 『セブン』におけるセブン苦闘のバトル
シーンの中でも、強烈なリアル感と恐怖感
を呼び起こすものがある。
 視聴者は、思わず心の中で、「セブン、
頑張れ!」と声援を送ってしまう。

 

 ここでは、セブン・アイアンロックス両
者に、円谷プロの苦悶が投影されてい

るようにさえ感じられるのだ。

 

 鎖に繋がれ、手枷足枷をはめられ、動

きを封じられるセブンは、視聴率という難

題を課せられ、どのようにドラマを作ってい
けばよいか、苦闘する円谷の苦悩が色濃く
反映しているようにも思える。

 

 ここでアイアンロックスは、セブンに手枷

・足枷をはめて縛り上げて、船体から赤い

ランプを点けて、ミミー星人の声を伝える。

 部下のアイアンロックスを操っている、
ミミー星人は何処にいるのか?
 この素朴な疑問が湧く。やはり、ヒトデ
型の宇宙船に隠れて、遠隔操作でアイア

ンロックスに声を伝えていたのだろうか?

 

 アイアンロックスが、セブンを縛り上げ
て、「総攻撃で、ミミー星人の威力を見せて
やるのだ!」と威嚇するが、自爆型ロボット
なら、何故セブンを束縛した時点で、すぐに
自爆して自身もろとも、セブンを爆破しよう
としないのか、と先輩方が厳しく批評された
のは、もっともな指摘だと思う。

 

 更に、大詰めでセブンがエメリウム光線
でアイアンロックスを爆破するが、搭載さ
れていた爆弾の爆発前であったとはいえ、
爆弾を積んだ軍艦ロボットが爆破して、何
故、セブンが重傷もなく無事で、港や海へ
の深刻な被害が殆ど無いのだ、という先輩
方の厳格なご指摘も的を得ている。

 

 ひょっとしたら、セブンと戦ったアイア
ンロックスには爆弾は搭載されておらず、
ミミー星人が脅迫文句で威嚇していただけ
かもしれない、という疑問を抑えられない。

 こうした弱点は、本第21話のシナリオに
は、確かにある。

 

 繰り返しの表現をお許し頂きたい。

 赤井脚本は、矛盾や弱点を出しながら、
25分のドラマを一気に見せる。この語り
の表現は見事だ、と自分は思う。氏は
興奮・緊張させる、「見せ場」の描き方
が絶妙なのだ。

 

 『セブン』放映から数年後、大伴昌司
と共に、講談社の『たのしい幼稚園』の
『ウルトラ怪獣絵本』シリーズ(1970年
-1971年))において、『ウルトラマン』
『ウルトラセブン』のエピソードを児童
向けに新たに脚色した物語の監修・構

成を担当したのが、赤井であった。
 その語り口の素晴らしさは、同書で初
めて日本語の文献に接した自分にとって
は格別で、頁をめくる度に、神秘と感動
の世界に引き込まれていった幼年時代を
思い出す。
 
 第21話の勢いの良い赤井シナリオは、
後に氏が書く、『ウルトラ怪獣絵本』の
基盤になった、と言えると思う。    


 アイアンロックスが取った戦法「自爆」
攻撃には、アジア・太平洋戦争における
日本軍の「自爆」攻撃への悲しみがこめ
られている、と自分は思う。

 

 夜に自身を縛り上げていた強敵の鎖・
手枷・足枷を断ち切って、強敵を倒した
セブンは、ダンに戻って朝日の光を受け
る。

 

 大詰めからラストへ向かう展開には、
円谷が現在の苦境をなんとか脱出して、
ドラマ作りの光を見出したいという、意
欲と希望が現れていることが窺えよう。

 

 様々な欠点を持ちながらも、筆致のパ
ワーと見事な構成で視聴者の心を引きつ
けて離さない赤井脚本。このシナリオが
第21話を支える根本的な柱であろう。

 視聴率問題の重圧は、この後の『セブ
ン』の製作状況を厳しく圧迫続け、逆境
が、「怪獣の出ない三作」という傑作3本
を産み出すことにもなる。


 苛酷な問題に縛られながらも、希望の
光を見出そうとする円谷プロの製作意欲
を、セブンの苦闘に現す第21話は、複雑
で豊かな個性を魅せるエピソードでもあ
る。

 

 構成や筋の細かな点で矛盾や疑問は

あるものの、軍艦型ロボットの鎖で束縛

されたセブンが縛りを断ち切り、地球を

爆弾の危機から救うというドラマは一気

に見れて、緊張感豊かであった。

 

 ラストに於いて、ダンは朝日の光を受
ける。

 夕陽は、第8話「狙われた街」、第12話
「遊星より愛をこめて」、第15話「ウルト
ラ警備隊西へ 後編」において、それぞれ、
感動的に描かれていた。

 『ウルトラセブン』は太陽に平和を祈る
ことが重要なテーマとなっているドラマな
のだ。

 

 本第21話では、朝日がラストで映される。
無言の演技において、森次浩司のダンは、
美しい地球を守って行くことを、日の輝
きに確かめる。

 

 赤井脚本は、ラストにおいて朝日の光を
受けて輝くダンを描き、『ウルトラセブン』
の原点的主題を確認しようとしたのではな
かろうか?

 

 森次ダンの瞳の輝きは、素晴らしい。

 

 (2009年12月21日に発表した記事を、2016

年11月28日に改訂し、2008年2月25日付で

再発表します)


 

               文中一部敬称略

 

 

 

註・出典

 

(1)山田輝子著
  『ウルトラマンを作った男
   金城哲夫の生涯』 154頁
   1997年 朝日文庫
   


参考資料 『ウルトラセブン』 DVD vol.5


 

                       合掌


 

                  南無阿弥陀仏


 

                       セブン