ウルトラセブン 明日を捜せ  | 俺の命はウルトラ・アイ

ウルトラセブン 明日を捜せ 

『ウルトラセブン』「明日を捜せ」

テレビ 25分 トーキー カラー

放映日 昭和四十三年(1968年)三月十日

 

製作国 日本

製作言語 日本語

放送局 TBS系

 

監修  円谷英二


プロデューサー 末安昌美

脚本 上原正三 

    南川竜

 

撮影 永井仙吉

美術  岩崎致躬

     成田亨

照明  新井盛

音楽 冬木透

録音  松本好正

効果  西本定正

編集  柳川義博

助監督 安藤達己

制作主任 高山篤

制作担当者 塚原正弘

 

特殊技術

撮影 佐川和夫

美術 深田達郎

操演 沼里貞重

照明 小林和夫

光学撮影 中野稔

助監督 東條昭平

 

東京現像所 

キヌタラボラトリー

TBS映画社


出演


中山昭二(キリヤマ隊長)

 

森次浩司(モロボシ・ダン

       ウルトラセブン 声の出演)
菱見百合子(友里アンヌ)



 

石井伊吉(フルハシ・シゲル)
阿知波信介(ソガ)
古谷敏(アマギ)  

 


上田耕一(シャドー星人 スーツアクター 声の出演)
佐藤千枝子(シャドー星人 声の出演)
大島マリ子(シャドー星人 スーツアクター)
鈴木邦夫(ガブラ スーツアクター)

勝部義夫
 

宮川洋一(マナベ参謀)
木田三千雄(安井与太郎)


 

上西弘次(ウルトラセブン スーツアクター)
浦野光(ナレーター)


特殊技術 的場徹


監督 野長瀬三摩地

 

制作  円谷プロダクション

     TBS

 ☆☆

 南川竜=野長瀬三摩地

 森次浩司→森次晃嗣

 菱見百合子→ひし美ゆり子

 石井伊吉→毒蝮三太夫
 ☆☆

  今回はストーリーを結末まで紹介して、

  ネタバレします。未見の方はご注意下
  さい

  台詞の引用・シークエンスへの言及

  は研究の為です。

 円谷プロ様・TBS様におかれましては

 ご理解・ご寛恕を賜りますようお願い申

 し上げます

 ☆☆

 

 
 ダンプカーが暴走して、初老の男性を追い
回している。男性の名は安井与太郎。職業は
占い師だ。
 
 
 
  

  「助けてくれい!」

 


 彼は、大声で救助を求めながら、必死に逃

げる。

 


  ナレーター

   「逃げる、逃げる、只管に逃げる男。

    追われる。この男、罪を犯した訳

   でもないのに何故追われるのか?」

 


 ダンプカーの運転手は、黒い覆面を被り

表情はわからない。

 

 逃げる安井は、キリヤマ隊長とフルハシが

乗るポインターの前に立ち止まり、ポインター

は、急ブレーキで停車する。


 

  キリヤマ「危ないじゃないか!」

 


  安井「マルサン」

 


  キリヤマ「マルサンって何のことだ?」

 

   

  安井「マルサン倉庫、爆発」

 


  キリヤマ「何、マルサン倉庫が、爆発する

        というのか?」

 


  安井「助けてくれ、殺される、助けてくれ!」

 

 ダンプカーは執拗に安井を追い、黒覆面を被っ

た運転手は、ナイフを投げてヤスイの足に刺す。

 

 キリヤマ・フルハシは犯人を追うも取り逃がし、

安井をウルトラ警備隊に保護する。

 

ウルトラ警備隊メディカルセンター

 

 傷の手当を受けた安井はじっと水晶玉を見つ

める。

 


   安井「占ってるんです、この玉

      で。未来を映してるんですよ。」

 

 

 安井は、水晶玉の中にマルサン倉庫爆発

とスーツ着用のキリヤマ隊長が負傷する映

像を見る。


 

  安井「その時にですね、隊長さんも

       怪我をしますよ。お気をつけに

       なったほうがいい。」

 


 フルハシやソガは、安井占いを信用しない。
だが、キリヤマ隊長は予言に深い関心を持つ。

 

   

   ナレーター

   「マルサン倉庫には地球防衛軍の開発

    基地があり、惑星間長距離ミサイルな

    どの開発が行われていた。」

 

フルハシ・ソガ・アマギが調査した結果、倉庫
に爆発物らしきものはなかった。三人は安井の
予言にも冷たく接する。

 


   アマギ「命を狙われてるってのも怪しくな

        ってきたぜ。」

 


   安井「とんでもない、わたしゃ、本当に狙

        われてる、宇宙人にですよ!」

 

安井は水晶玉の中に、富士見が原に円盤が

降りる映像を発見する。

 


 安井の予言を重視するキリヤマの意向もあっ
て、ウルトラ警備隊隊員は富士見が原の調査を
するが、円盤らしき影さえ発見できなかった。

 


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 マナベ参謀は、二度の捜索が実りをあげな
かったことについて、「君らしくない」と、
キリヤマ隊長に注意する。

 


 安井は「皆さん、信じて下さい。私は本当に

見たんです。」と力説するが、フルハシは、深

く信じようとしない。


 キリヤマも、安井の言葉に深く関心を持ち
ながらも、

 

  「君の協力には感謝する。今日のところ

   はひとまず、引き取ってくれないか?」

 

と、帰宅を安井に勧める。

 

     安井「隊長さん、わたしゃ、宇宙人に

        狙われてんですよ、それでも

        『帰れ』って!倉庫は必ず爆発

        しますよ、円盤は必ず来ますよ。」

 


   アマギ「もうよせ」

 


   安井「いえ、今日が駄目なら、明日だ!

      そうだ、明日を捜せばいいんですよ。」

  

 

   キリヤマ「君の命は私が責任を持って守る。

         だから安心して帰りたまえ。」

 


   安井「そう仰らずに置いてくださいよ。わた

        しゃ、心配なんですよ。助けて下さい

        よ。」

 


   フルハシ「君の後ろにはウルトラ警備隊がつ

         いてるんだ。」

 


 結局安井は帰宅することになった。ポインターが

彼を自宅近くまで送って去った後、安井を見つめる

黒覆面の男がいた。

     
キリヤマ隊長はマナベ参謀に休暇願いを
提出する。

 


   マナベ「どうするつもりだ?」

 


   キリヤマ「その男を信じたついでに、
         あの男が言っていた明日を
         捜しに行きます。」


   マナベ「相変わらず頑固だな。」

 


参謀は、隊長に護身用の武器として拳銃を渡す。

 


  ナレーター「その頃、モロボシ・ダン隊員は
         一週間の宇宙パトロールを終えて
         帰還した。」


 ダンはアンヌ・フルハシ・ソガ・アマギから、隊
長が休暇を取ったことを聞かされる。

 


   ダン「明日を捜しに・・・」

 


   フルハシ「隊長は責任感が強いからな。」

 

  
   ソガ「その予言者の為に、やれ、マルサンだ、
       円盤だっていいように扱われたよ。」

 


   アンヌ「でも隊長はまだ信じているわ、だか
        ら休暇を取ったのよ。」

 


 何かを感じたダンは「キリヤマ隊長を捜してきます
」と同僚達に告げて、隊長のもとへ向かう。


 夜

怯える安井老人は鞄を持って走る。女性の泣き声

が聞こえてきた。親切な安井が声をかける。

  

 

    安井「どうしたんです?
       気分でも悪いんですか?」
        

 


 女性が顔を上げると、なんと、宇宙人だった。慌て

てガソリンスタンドに入って救助を求める安井。だが、

スタンドの店員も宇宙人であった。慌ててタクシーに

乗った安井は、運転手に「どこでもいいからやってく

れ」と大声で伝える。

 


  運転手「どうしたんです、お客さん?」

 


  安井「宇宙人に追われてるんだ。」

 


  運転手「そりゃ、大変だ。」

 


 だが、安井が運転手の顔を見ると、彼も又、宇宙人
であった。


   



 

 夜のマルサン倉庫。

 

 キリヤマ隊長は、安井老人の予言が

気になって調査のためにこの地に来た

のだ。

 

人影の気配だ。隊長は拳銃を抜く。

 

 だが、やってきた人物は部下のダンで

あった。

 


   キリヤマ「ダンじゃないか。」

 


   ダン「隊長」

 


   キリヤマ「どうしてこんな所に?」

 


   ダン「隊長と一緒に明日を捜したくな

      りましてね。」

 


   キリヤマ「そうか、聞いていたのか。

         安井君が何処にもいない

         んだ。無事でいてくれるといい

         んだが・・・」

 


   ダン「大丈夫ですよ何処かに隠れて

       いるんでしょう。」

 


   キリヤマ「そうであって欲しい。私は古い

         タイプの人間かもしれないが、

         人間の予知能力・霊感といった

         ものを否定出来ない性質でなあ。」

 


 ダンは、何かを感じる。

 


   キリヤマ「どうした?」

 


   ダン「人の気配がします、どうやら予言は

      的中ですよ。」


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 紅い光を放って、火の玉が倉庫に激突、

倉庫は炎上する。

 

キリヤマ隊長は負傷する。


 安井の予言は的中した。



 

メディカルセンター

 

 負傷したキリヤマ隊長は手当てを受ける。

ソガとフルハシがキリヤマの不安を笑って

いたことを詫びる。


 

   ソガ「安井さんはやっぱり宇宙人に?」

 


   キリヤマ「彼の予言通りだとすると、私の判断
         が甘かった。」

 

  

   フルハシ「追い出したのは我々の責任です。」

 


   キリヤマ「『殺されるから助けてくれ』と頼んで

         きたのに、それを私は断った。『窮鳥

         懐に入らば猟師もこれを撃たず』、
         それなのに私は懐に飛び込んだ窮

         鳥をみすみす死のジャングルに追い

         やってしまった!」


 

 アマギがダンに新しい武器を届ける。透明の

存在も見通せる機械だ。キリヤマは、フルハシ

を基地に残して、他の隊員を連れてヤスイ救出

作戦を開始する。

 


 安井を監禁している宇宙人は、シャドー

星人で、彼らは老人を拷問台に縛り上げ

ていた。

 


   安井「殺さないでくれ。俺は何も知

        らないんだ。殺すのだけはや

        めてくれ。」

 


  

   シャドー「では我々の命令どおりにする

         か?」


 

  安井「どうすればいいんだ。」


 

   シャドー「出鱈目な予言をするんだ。そ

         うしておいて、ウルトラ警備隊

         の注意力を引きつけておく。」


 

   安井「なるほど、そうしておいて地球防衛

       軍基地をドカーンと・・・」


 

 

   シャドー「ん?」

 


    安井「私は何もしりません、忘れました。」


 

    シャドー「恐ろしい奴だ。」

 


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 富士見が原に到着したダン・アマギは見張りのシャ

ドー星人を倒し、基地に潜入する。

 


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 シャドー星人のリーダーは二人に気付き、基

地に繋がっている円盤を飛ばす。基地はゆれ

土砂に埋まり、アマギは気を失い、ダンはセブン

に変身する。

 


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10話12

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 セブンは、円盤を叩き落とす。円盤から、シャ
ドーが許しを乞う。

 

 

  シャドー「降伏する。
       これ以上乱暴しないでくれ。」

 

 だが、円盤が爆発すると、シャドー星人の部下

の怪獣ガブラが現れた。

 

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 セブンとガブラの激闘が、展開する。


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 セブンは、アイスラッガーでガブラの首を切る。


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シャドー星人は「降伏する、安井ヤスイを返す

から許してくれ」と哀願し、安井老人を解放する。
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   セブン「怪我はないか?」

 


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    安井「それよりも油断しちゃ駄目だぞ、

        奴らは決して降伏したんじゃない

       んだから」

 


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  ガブラの首が、セブンを襲う。

 


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    安井「セブン、危ない!」



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ガブラの首は、セブンの肩に噛み付く。

 


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    安井 「そいつの針は毒があるぞ、早く
        はがせ、そうだ、円盤をやっつけ 
        ろ。その首は円盤から操作して
        るんだ!」
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 セブンが円盤を倒すと、ガブラの首も消える。

 



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 だが、セブンも負傷し、地に倒れ込んで、ダンに
戻る。


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 基地ではダン・アマギがキリヤマ・ソガに救出

される。


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  メデイカルセンター

 

 肩を負傷したダンは、治療を受けている。

 


 フルハシは安井に、運勢を占ってもらおうと

するが、安井は「超能力がなくなっちまった」と

残念そうに語る。

 

 だが、安井は自問し、やがて驚喜する。

 


   安井「なくなっちまった。
俺は、もう逃げずにすむぞ!」

      


 

  ナレーター

   「予感・テレパシー、人間誰しも多少の予知能力

   はあるものです。もし、あなたに予知能力があ

   ったとしても宇宙人来襲の予言だけはしない

   で下さい。命を狙われては元も子もありません

   からね。」


 


 キリヤマ隊長は、安井老人と部下達のやりとりを
見聞して笑顔を浮かべる。



 

  ☆三摩地監督が尋ねる、「安」の道☆

 
 昭和六十二年(1987年)1月12日、野長瀬三
摩地監督は、本第23話について、次のように
語っておられる。
 


  ウルトラセブンの「明日を捜せ」は、小泉
  八雲氏の「怪談」をモチーフにしました。
  不気味な怪奇色、ファンタジーがうまく出
  たと思いました。(1)

 

  
 第23話『明日を捜せ』は、自分にとって幼年
期から繰り返し、見ているが、見る度にドキド
キ緊張させてくれるドラマである。


 時の歩みと共に深まり行く恐怖感、次から次
へと迫って来る危機。


 上原正三・南川竜脚本の緻密な構成、野長

瀬三摩地監督の奥行きの深い画作り。

 

  「明日を捜せ」を見て、私は大いなる感動を

賜っている。だが、このドラマに 「ベストワン」と

いう位置付けは、果たして妥当であろうか?


 寧ろ、「天上天下唯我独尊」の意味において、
いのちのが「オンリーワン」であることを伝え
てくれているのが、「明日を捜せ」のテーマで
はなかろうか?

 

 その意味で、「明日を捜せ」を自分は、「大地

のドラマ」と呼びたい。

 

 「マルサン倉庫」の設定に、マルサンソフビと

「ウルトラ」の深い関わりが窺える。


 冒頭、安井老人が、ダンプカーに乗る、謎の
刺客に襲われる場面は、恐ろしい。

 

 ナレーションと共に、「このご老人は何故狙
われるのか?」という問いを視聴者に与えるも
のとなっている。


 警備隊に保護された老人。彼の職業は占師。
水晶玉に見る未来の光景。神秘的な空気が画

面に漂う。

 
 視聴者の心身をぐいぐいと引きつける、野長
瀬演出の力と働きは凄い。

 

 安井老人の予言が、気になってマルサン倉庫
でキリヤマ隊長が爆破を警戒する場面の緊迫感
も凄い。暗闇において、キリヤマとダンが再会
して信頼を確かめ合うシーンも感動的だ。

 

 神秘的で幻想的なムードは、まどかにドラマ
を包み込んでいる。


 シャドー星人の名は、英語のshadow、「影」に
由来することは確かであろう。shadowの言葉それ
自体に、「幽霊」「亡霊」の意味がある。

 

 他星を侵略する野望や、他者を攻撃したり、
誹謗したりするシャドー星人。その在り方は、「他

者と共存するのが嫌だ。他者を隷属させたい」と

いう人間の根本的なエゴイズムと自己愛を、象

徴している、と言えよう。


 安井が、シャドー星人の罠に陥って捕らえら
れるシーンは、勿論「のっぺらぼう」からの引
用である。


 予知能力を持ち、未来を言い当てるヤスイの
力を恐れ、彼の命を奪おうとするシャドー星人。
地球侵略の計画を暴露されることを恐れて、口
封じを画策していたのである。

 


 

 シャドー星人は、冒頭の安井氏襲撃では、人
間体だが、顔を隠している。

 

 安井氏拉致の場面は、前述の通り、「のっぺ
らぼう」の引用によって表現されるように、顔
を出したシャドー星人は、皆、同じ顔である。


 

 

 キリヤマ隊長は、ウルトラ警備隊に助けを必
死に求めてきた安井老人を帰してしまい、シャ
ドー星人に拉致されてしまったことに、激しく
苦悶する。
 

 守りきれなかったことへの反省が、キリヤマ

隊長における安井氏捜索・奪還の課題を呼ぶ。


 上原・南川脚本は、怪奇と神秘の世界を鋭く

尋ねる。


 セブンとガブラの戦いは、凄まじい迫力だ。
バトルシーンでも、その激しさは臨場感に富む。

 

 セブンに円盤を叩き落とされると、シャドー
星人は、泣き声で詫びを入れ、許しを乞う。
 「人間標本5・6」で怖いダダがウルトラマン
に倒されて、上司に泣きを入れる場面を思い出
す。

 

 野長瀬監督の怪獣・怪人の内面描写は素晴ら
しい。


 「許してくれ」と許しを乞うて、セブンの隙
を突いて執拗に攻撃するシャドー星人。

 

 シャドー星人の臆病で、卑劣な弱さは人間臭

くて、笑える。どこか憎めぬキャラクターで、「お

もろいやっちゃ」と呼びたい味がある。

 アイスラッガーで体を真っ二つにされても、
首だけでセブンを狙って噛みついてくるガブラ。

 

 ガブラの執拗さ・獰猛さに、野長瀬監督の怪
奇の探求が極まる。ここにも、人間の自己愛・
エゴの無限性がこめられているとも言えよう。


 セブンの危機を救うのは安井老人だ。かつて
ウルトラ警備隊に救助を求めた安井は、セブン
を救うことによって、ウルトラ警備隊隊員でも
あるダンをも救ったことになる。

 全く意識せざるところで、安井がダンの危機
を救う。救いを求めてきた者が、頼った者を
救う者となる。

 脚本の重層的な構造は圧巻である。


 ラストも印象的だ。安井は予知能力を失って
しまう。占師としては卓抜した能力を無くした
ことは痛手で、以後の仕事には辛い影響が出る
だろう。

 

 だが、安井は、能力を失ったことで、命が狙
われなくなった、という事実に驚喜し、感謝する。

 能力が無くなった際、能力に対する固執が解
けて、平々凡々たる日常に感謝して、そこに安
んじて生きる者となる。

 

 野長瀬監督のお名前の三摩地(さまじ)は、
仏教における「三摩地(さんまじ)」から名付
けられた。このことは以前も述べたが、反復

することをお許し頂きたい。「三摩地(さんまじ)

」とは、サマーディーの音写で、三昧(さんまい)

とも音写し、等持・定・正定・定意とも訳する。

 

 「等」とは、心の浮き沈みを離れ、平等で安

らかなこと、「持」とは、心を一つの対象に集中
して乱れぬ状態を意味する。

 

 様々な束縛や執着から解放されて、安らか
な状態である三昧を得た時、人は苦悩の中に

平常心を得るのである。


 ラストの安井の笑顔に、「三昧とはかくの如
き心境ではないかな」という実感を得た。

 安井が、自身の苗字の「安」の一字に目覚め、
日常に、「安」んじて生きる者となる。

 


 そのことは、監督ご自身が、御名の「三摩地」
の心根を確かめられている歩みとも呼応してい
るようにも思える。

 

 名にこめられた願いに目覚める時、人は自分
自身を発見し、安んずる心を喜びとして、得る
のかもしれない。

 

 ラストの木田三千雄の笑顔には、喜びが溢れ
ていて、素晴らしかった。

 

  

(2009年6月22日に発表した記事を2016年

11月28日に改訂加筆し、2008年3月15日付

で再発表します) 

  

            

 

                    文中敬称略  

  
参考資料

『ウルトラセブン』 DVD VOL.6


註・出典
(1)
『ウルトラマン大全集』 (1987年、講談社)244頁


 


                         合掌


 

                   南無阿弥陀仏


 

                        セブン
 




 

                    南無阿弥陀仏