ウルトラセブン  セブン暗殺計画 前篇 | 俺の命はウルトラ・アイ

ウルトラセブン  セブン暗殺計画 前篇

『ウルトラセブン』「セブン暗殺計画 前篇」

テレビ トーキー 30分 カラー

放映日 1968年6月30日

 

 

製作国 日本

製作言語 日本語

放送局 TBS系


 

監修 円谷英二

 

プロデューサー 末安昌三

脚本 藤川桂介
 

撮影  永井仙吉

美術  岩崎致躬

照明  新井盛

音楽  冬木透

 

録音  松本好正

効果  泉典彦

編集  柳川義博

助監督 安藤達己

製作主任 高山篤

 

特殊技術

撮影 鈴木清

美術 池谷仙克

操演 平鍋功

照明 小林哲也

光学撮影 中野稔

助監督 円谷粲

製作主任 熊谷健

 

東京現像所 

キヌタ・ラボラトリー

TBS映画社

 

 

出演


中山昭二(キリヤマ隊長)


 

森次浩司(モロボシ・ダン)
菱見百合子(友里アンヌ)


 

石井伊吉(フルハシ・シゲル)
阿知波信介(ソガ)
古谷敏(アマギ)  

 

岡田敏宏

西京利彦(アロン・ガッツ星人 スーツアクター)

池島美樹(ガッツ星人 スーツアクター)
佐原健二(タケナカ参謀)

 

上西弘次(ウルトラセブン スーツアクター)
浦野光(ナレーター)

 

特殊技術 高野宏一


 

監督 飯島敏宏

 

制作 円谷プロダクション

    TBS

森次浩司→森次晃嗣

菱見百合子→ひし美ゆり子

石井伊吉→毒蝮三太夫

 台詞の引用・シークエンスへの考察は、

研究・学習の為です。

 円谷プロダクション様・TBS様におかれ

ましては、ご寛恕を賜りますようお願い申

し上げます。

 ☆


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 「セブンは、身長50メートルの巨人にも、豆粒程
 にも小さくなれる。」


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  「セブンは、ジャンプすることは勿論、空を飛び
   回ることも可能だ。」


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  「これが、セブンのウルトラビームだ。その熱
  線はあらゆる金属を貫き通すだろう。」


 「セブンの透視力、普通の物質ならば、簡単に見透
  かしてしまうのだ。」


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 「アイスラッガ―。
  エメリウム光線と共に、セブンの万能武器の一つだ。」



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 「セブンの活動限界を示すビームランプだ。あれが
 点滅し始めたら、セブンは活動不能になる。」


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 「我々の狙うセブンは、

 実はウルトラ警備隊のダン隊員なのだ。」

 


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 「だったら、ダンを倒してしまえば、簡単ではないか?」

   


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  「いや、セブンを倒さなくては、我々の目的は成功
  しない。セブンを倒せば、人類はたちまち降伏する
  に違いないからだ。」


  「我々は、アロンを使って、セブンの能力を分析した。
   これを基にすれば、必ず勝てる。」


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 「これから地球の引力圏へ入る。」
 

 遊園地。通報を受けて出動した、フルハシ・アマギ両隊員が調査
をするが、どこにも怪しい雰囲気は無かった。今回を含めて4度も
ウルトラ警備隊は、「出動するも異常なし」の結果を体験し、更に
カップル達の仲良い様子を見て、フルハシは、悪戯への怒りと恋人
に会えない苛立ちで、怒りを覚える。

 


  二人が、作戦室に戻ると、アンヌが小包をさっと背に隠す。

 


  キリヤマ「どうだった?」

 

  フルハシ「異常ありません。」

 


  アンヌ「はい、フルハシさん、小包が届いているわ。遙か
      アフリカからよ。」


 

  フルハシ「アフリカから?」

 


  アンヌ「(手紙を読む)『フルハシさん、お元気ですか?』」

 

  フルハシ「(アンヌから手紙を取って、自身で読む)私が
       サファリラリーに参加したおりに、土地の有力者から
       頂いた物です。珍しい宝石なので、半分お分けします。
       あまり高い宝石ではありませんが、原住民の人が首飾
       りにしています。フルハシさんはどんな風に使うかし
       ら?」


 

  ソガ「上手くやりましたね?するとその女性はですね?
     先輩の・・・?」
  


  フルハシ「その人はね、僕の妹の友達なんだよ。」


 

  アンヌ「妹さんの友達?なるほど、なるほど、それで?」

 


  フルハシ「そう、しつこく聞くなよ。」

 


 警報が鳴る。

 


  ダン「第3地区だな。」

 

  フルハシ「ほっとけ、ほっとけ、どうせデマだろ?」

 


  キリヤマ「フルハシ、そう簡単に決めつけてはいかん。例え
        千回の通報が千回ともデマでも、出動するのが、
        我々の義務じゃないか?」

 


  フルハシ「は、軽薄でした。」

 

  キリヤマ「ダン・アンヌ!」


 

  ダン・アンヌ「出動します。」

 

 夜。第3地区。

 ダン・アンヌが見たところ、何も変わった様子はない。


  と思ったら、車が数台近づき、ダン・アンヌのポインターを囲む。

 


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 なんと、運転者がいない。ダンが透視すると、ドライバーは

宇宙人であった。

 

  ダン「誰だ!君は?」


  宇宙人、姿を現す。


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宇宙人「我々は、如何なる戦いにも負けたことが無い、
     無敵のガッツ星人だ!」


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 ポインターで、ダンとガッツ星人の問答を見た、
アンヌは、動揺する。


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  アンヌ「駄目、駄目、しかっりしなきゃ、よおし!」


 アンヌ、ダンの元に駆けつける。


  ダン「アンヌ、君は逃げろ!」


  ガッツ星人「ダン、我々の挑戦を受けるか?」

 

  ダン「我々?」

 

  ガッツ星人「そうだ!」


 

  ダン「つまらないことは、やめろ!
     アンヌ、君は、基地へ報告するんだ。」
 

  アンヌ「だめ、だめ、あたしだって大した腕前なのよ。
       見くびらないで。」


  ダン、「さ、早く!」


 ガッツ、ダンを撃つ。ダン、弾丸を素速くよける。

 

  アンヌ「ダン、ダン、大丈夫?」

 

  ダン「基地へ報告するのが先決だ。さ、早く!」


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  アンヌ「はい!」

 


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ガッツ星人「ようやく、我々だけになったようだな。」


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  ダン「ウィンダム、行け!」


 ダン、カプセルを投げて、ウィンダムを放つ。


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  アンヌは、キリヤマ隊長に事態を報告する。

 


  アンヌ「隊長、ガッツ星人に囲まれて、身動きが取れなく
      なりました。」


 一方、ビル街でウィンダムが、ガッツの変幻

自在の術に幻惑され、苦戦する。


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ガッツはウィンダムを嘲笑する。

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 ガッツ星人「貴様等、相手にならん!」


  円盤が飛翔する。


  ダン「ウィンダム、戻れ!」

 

 円盤から光線が放たれ、ウィンダムは倒され、炎が炎上する。


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ガッツは巨大化し、ダンに襲いかかる。

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  ダン「何かがおかしい、罠かもしれない。」


 

  ガッツ星人「我々の力を甘く見ると、余計な被害者に出す
        ことになるぞ!もう、どうにもならないのだ!」

 

  ダン「来たぞ!」



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 ホーク1号が現れ、ダン・アンヌを乗せたポインターを保護し、
救出する。


 作戦室

  フルハシ「そうか、昨日からの悪戯は、きっと奴等の仕業
       だったんだ。そうだろ?」


  ソガ「先輩、そんなことは、みんな、もう、とっくに
     わかってるんですよ。問題は、一体奴等が何を
     しようか、ということなんですよ。わかる?」

 


  ダン「(独白)ソガ隊員がパトロールに出た時も異常は
     無かった。
     フルハシ・アマギ両隊員が出て行った時も、何ら、
     変化は無かった。
     それなのに、アロンに狙われたのも、ガッツに
     襲われたのも、僕が出て行った時だ。すると敵の
     狙いは僕だ。しかし、何の為に僕を狙うんだ?」

 ホーク3号でアンヌと共に偵察していたアマギ隊員は、泉ヶ丘
上空に何かが存在していることを感じ、やがて姿を現したその

何かが飛行物体であることを、キリヤマ隊長に報告する。


 ダン・ソガも泉ヶ丘に到着して、ウルトラ・ガンを構える。


 謎の飛行物体から声が響く。

 

  「待て、そんなもので、ガッツ星人に立ち向かえると思って
   いるのか?」

 

 ガッツは、ソガ隊員を拉致する。ダンはセブンに変身して、
ソガを救出したいが、彼に自分の正体を知られてしまうので、
キリヤマ隊長に事態を報告し、救出を要請し、ポインターに
乗って、円盤を追う。


 だが、ダンの乗ったポインターが橋にさしかかかった時、
橋は、ガッツによって爆破される。


 ダンは、難を逃れ、セブンに変身して、地上に姿を現した、
ガッツに対峙する。



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  ガッツ「やっとセブンになったか!待ってたぞ!」



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 セブンは、アイスラッガ―、エメリウム光線、
ワイドショットを放つが、ガッツは巧みに分身
の術を用いて、かわす。
 

 ガッツの変幻自在の戦術に、セブンは惑わされ、
肉体が激しく、疲労する。

 

 円盤内部では、別のガッツ二人が、仲間達二人が

セブンを圧倒していることを喜ぶ。



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 「もう、間もなく、セブンのエネルギーは尽きるぞ。」


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 ガッツ星人は2体の姿を示し、セブンに向けて光線を浴びせる。

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 セブンは完膚無きまでに打ちのめされ、十字架ケースの中に

監禁される。


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一方、ソガは、ポインターで救援に来た、キリヤマ隊長や仲間
達に救われる。

 
  キリヤマ「ソガ、大丈夫か?ダンは?」


  ダン「わかりません。」


 ガッツの円盤が攻撃を始める。地球防衛軍の戦車隊が応戦する
が、全く歯が立たない。キリヤマは、警備隊全軍に、敵の強力な
バリアーに包囲されている現状を告げ、現在地より動かぬことを
命じる。


  ガッツ「無駄な抵抗はやめろ。このまま戦闘を続ければ、君
      達は全滅するだけでなく、地球防衛の切り札ウルトラ
      セブンも、我々の手中にあるのだ!」

 


 アンヌは、恋人ダンを懸命に探す。


  アンヌ「ダン、ダン、ダン」


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夕陽を背に、十字架ケースに、監禁されたセブンの姿を現れる。


  アンヌ「セブン!隊長、セブンが!」

 


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 ガッツ「地球の全人民に告ぐ。君達の英雄セブンは
      夜明けと共に処刑されるだろう!」

  作戦室


    ナレーター「天文班から、明朝の日の出は5時21分と報告
          された。セブンの処刑は、あと12時間足らず
          しかない。」

 

    フルハシ「畜生、どうしたら、セブンは甦るんだ?」


    アマギ「なにしろ、相手は宇宙人だからな。」


    アンヌ「さっきから、セブンのことばっかり言ってるけど、
        ダンはどうなるの?敵に連れて行かれたのよ。」

 

    キリヤマ「アンヌ、決して、忘れてる訳じゃない。ただ、
         ガッツ星人がセブンを夜明けに処刑するという
         意味を考えるんだ。」
       
    

    アンヌ「だって。」

 

    タケナカ「奴等は、我々の目前で、セブンを処刑し、地球
         人に心の依り処を失わせようとしているのかも
         しれない。そうすることによって、地球人は、
         彼等と戦う勇気を失い、服従を認めてしまうよ
         うになる。」

 

    フルハシ「セブンを見殺しには出来ない!」


    アンヌ「じゃ、ダンは犠牲になってもいい、と言うの?」

 

    タケナカ「アンヌ、ダンは、もう、殺されてる
         かもしれない。」

 

    アンヌ「え!」

 

    タケナカ「もし、生きていたら、尚更敵の基地は、叩く
         ことは出来ないだろう。」


 地球防衛軍通信隊員は、不思議な発信音をキャッチする。
この音は、宇宙ステーションからのものではなかった。


 キリヤマは、音の録音・分析を命ずる。


  ソガ「まさか、地球の危機につけこんで、新しい侵略者が
     のさばってるんじゃないだろうな?」

 


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 ナレーター「セブン救出に心を砕くウルトラ警備隊に、又、
        一つの謎が投げかけられた。あの発信音は、
        新たな侵略の前触れなのか?
      
        しかも、セブン処刑の時は刻々と迫っていた。

        明日は、我々人類の破滅の夜明けになるのだ
        ろうか?」

 

 

 

 ―セブン、最大の危機―


 

 飯島敏宏監督が演出した、『ウルトラセブン』は三本ある。本
第39話「セブン暗殺計画 前篇」。その続編にあたる、第40話同、
「後編」。更に前話第38話「勇気ある戦い」の三本である。


 

 放映順序は、「勇気ある戦い」が先であったが、制作されたの
は、この「セブン暗殺計画 前篇・後編」が前である。

 

 即ち、この第39話は、「ウルトラシリーズ」を支えてきた、巨匠

飯島敏宏の『ウルトラセブン』初演出作品である。先輩達は、こ

の第38・39・40話を飯島敏宏監督の、「ウルトラシリーズ」集大成

と見ている。自分もその意見に賛成である。

 

 

 飯島監督は、昭和七年(1932年)9月3日生まれ。少年期は、

戦争中の時代であった。青年期、劇作家加藤道夫への憧れか

ら、慶応義塾大学に進むが、合格直後に加藤が自殺するという

悲劇に出会う。この大学時代に本39・40話の脚本を担当する藤

川桂介と出会う。


 二人のコンビネーションは、完璧な作品を数多く生みだしてい
るが、それは、二人の長年の協力関係と友情を根拠にしている

ことが窺える。

 

 飯島監督は、「ウルトラQ」「ウルトラマン」において、重厚な傑

作を演出し、千束北男の名で名作脚本も多数執筆している。

 「Q」の「2020年の挑戦」、「マン」の「侵略者を撃て」「科特隊宇

宙へ」といった傑作の脚本・演出を担当されたのは監督であり、

ケムール人・バルタン星人の産みの親でもあらせられる。

 

 本第39話、続編40話に登場するガッツ星人も、不気味な存在

感と冷酷非情な性格により、『セブン』の悪役を代表するキャラ

クターとして、視聴者の心に、恐怖感と強烈な印象を焼き付けた。

 
 藤川桂介は、『ウルトラマン大全集』(1987年、講談社)に
おいて、この39・40話について、次のように確かめている。


 

  セブンで印象に残っているのは、「セブン暗殺計画」で
  すね。僕にとっては、初めての前後編でした。もともとは、
  「セブン暗殺命令」と題して、前後編ではなかったんです。
  飯島監督とも打ち合わせをして、話をふくらませました。
  かなり打ち合わせをしましたよ。

 


 飯島・藤川両氏の、熱き情熱が、緊張感と昂揚に富む傑作を
産み出した。

 

 故高野宏一監督の特技演出も輝いている。飯島氏との演出

コラボは完璧である。

 

 冒頭のアロン対セブンの激闘が、白黒画像で映される映像

に、セブン・ファンは心を奪われた。

 

 セピアの色彩が強い白黒画像で、カットは細かく割られ、
セブンの力が、何者かによって解説される。


 神秘的・ミステリアスで、見事な導入だ。アロンはアイスラッ
ガ―で倒されるが、この際もスローの演出もあり、卓抜した

技術が光る。ドキュメンタリーの如く、丁寧に対象を映し、語っ
ているとも言えるし、ロシアの巨匠セルゲイ・エイゼンシュテ
イン監督の如くに、ダイナミックで、映す対象を大きく、力強く、

描いているとも言えよう

 


 怖いガッツが現れる。一人・二人。どうやら四人いるようだ。
その姿の現出・隠蔽も見事に為し、神出鬼没の方法を体得

していることが、映像でも語られている。


 この映像で語る技術が豊かであるからこそ、台詞の不気味

さも一層鋭く響いて来るのだ。

 


 どうやら、ガッツは、セブンの戦闘能力を分析する為に、ア
ロンを実験台にしていたようだ。仲間を見殺しにするだけでな
く、その死に様から、敵の力を探る、という非情で冷たい手法
だ。

 セブンにとってガッツは、仲間の命をも見捨てる大敵であり、
強力な組織力を持っている存在であることが窺える。本39・40
話が後の「ウルトラシリーズ」に与えた影響は計り知れない。


 宇宙人の首魁が、敵の能力を探る為、或いはおびき出す為に、
部下の怪獣をヒーローに倒させることで、見捨て、見殺しにす
るという物語は、『帰ってきたウルトラマン』では市川森一が
書いた深遠・秀抜な傑作「悪魔と天使の間に・・・・・・」における、
ゼラン星人とプルーマ、上原正三が悲劇美を極めた大傑作

「ウルトラマン夕陽に死す」におけるナックル星人とシーゴラス・
ベムスターの関係にも、通ずる。

 

 21世紀に、長谷川圭一が「ウルトラシリーズ」に熱きオマー
ジュをこめた傑作『ウルトラマンメビウス&ウルトラ兄弟』(2006

年、監督小中和哉)においては、三代目ガッツ星人と二代目

ナックル星人は、仲間で、メビウスを十字架に監禁している。
彼等は仲間の二代目テンペラ―星人が、メビウスに敗死した

事実も、メビウス研究のデータが出来たこととして驚喜する。
 


 残忍・冷徹な性格なので、悪役の凄味も格別なのだ。話題が
横道に逸れるが、最近の時代劇の軽さは、ガッツ星人・ナック
ル星人の如き、魅力的な悪役が描けていないことも一因であろ
う。

 視聴者が、「こいつ、悪いやっちゃなあ、セブン・新マン、倒
したれ!」と思わず実感し、声を挙げたくなる悪役。ヒーロー
と共にドラマには不可欠な存在である。

 

 ダンとアンヌが、ガッツ軍団に囲繞される夜のシーンも迫力に
満ちている。どんなに恐怖にあっても、愛するダンの為に懸命に
頑張るアンヌの優しさ・可愛らしさも、藤川脚本は丁寧に描写し
ている。

 

 ウィンダムがガッツに敗死するのも、衝撃的な展開だ。これま
で、『ウルトラマン』においても、ピグモンが二度死ぬという悲劇
が描かれたことはあった。だが、『セブン』におけるウィンダムは
レギュラーで、「どんな危機が迫っても、最後はセブンに助けら
れるのでは?」と視聴者に淡い期待を抱かせていた。だが、藤川
脚本は、静かにウィンダムの悲劇を描く。「レギュラーキャラクタ
ーにも死は訪れる」という峻厳なる事実が伝えられる。

 

 その後、ウィンダムは「平成版セブン」で登場し、『メビウス』
においてもマケット怪獣ファイヤーウィンダムが製造される。39

話の重傷から治癒したのかもしれないが、長く戦死したとファン

には記憶されていた。


 更に敷衍して言うと、本39話の後半、セブンがガッツの罠に陥る
のも、ウィンダムの仇討ちをしたいという友情と焦りもあったから
だろう。


 
 後半、ガッツがセブンを幻惑して、圧倒するバトルは、幻想的な
演出で描かれる。セブンの得意技は、ガッツの変幻自在の術の前に、
脆くも崩壊する。セブンが難敵に苦戦するバトルの中でも、特に圧
巻で、白眉である。


 高野・飯島監督の深い演出が、セブンの悲痛なドラマを描く。

 宇宙の平和を守るという義に生きるセブンが、侵略を目論むガッ
ツの陰謀に倒され、囚われ、死刑囚にされてしまう。


  セブンは十字架に磔にされる。

 
 イエスは人類の罪を背負って十字架に磔にされ、亡くなった後に
復活された。

 

 第39話における、セブンの十字架への磔にも、宗教的な意味が

められているのかもしれない。侵略者とはいえ、敵対した宇宙人・

怪獣達の命を奪った罪を背負ってセブンは、十字架にかかったの

であろうか?

 日本においても、古来より、十字架は死刑囚が、肉体をそこに

貼り付けられた刑具であった。

 


 死刑囚の悲しみを背負い、罪を思う。このことが、『セブン』のド
ラマに内包されたテーマであったことは、確かであろう。

 

 罪の痛みを感じるが、ガッツの卑劣・卑怯な侵略に屈する訳

にはいかない。逆境にあっても、セブンは、必死に抵抗を試みる。

 

 「後編」における、ウルトラ警備隊の勇気・友情によるセブン
救出のドラマは、愛が冷酷さを打ち破る、復活のドラマとも言え
よう。

 

 それにしても、「前編」クライマックスにおける、夕陽を背景に
したセブンの磔刑の映像は、切なさが極まる。


 

 「義は力に敗れてしまうのか?」という問いが重く響く。

 

 

 本第39話は、セブン対アロンのバトルの白黒映像、セブンのガッ
ツ敗戦のカラー映像があまりにも強烈であったため、バトルシーン
がまず、心に浮かぶが、藤川脚本は、ウルトラ警備隊隊員達のキャ
ラクターも細密に描いている。


 ガッツの罠に警戒している繊細なダン。ガールフレンドからの
宝石に思わず喜ぶフルハシの真っ直ぐな性格。機知と勇気を兼

備するソガ。闘志溢れるアマギ。どんな悲しい事態が起こっても
冷静な判断を失わないキリヤマ。
 セブンの悲劇を受けて、ガッツへの闘魂を燃やし、地球防衛に
尽力するタケナカ。


 そして、ダンの帰還・無事を祈り続けるアンヌの一途で暖かい
こころ。このアンヌのひたむきな祈りと願いは、純で篤い。

 


 菱見百合子の清らかな瞳の輝きは、視聴者に、どんなに悲し
い状況にあっても、願いと希望を失わないことの大切さを教えて
くれる。
 

    
   
                                参考資料

 

                    『ウルトラセブン』 DVD.vol.10

              『ウルトラマン大全集』(1987年講談社)


 

                                文中敬称略          
       

 

                                   合掌