ウルトラセブン 散歩する惑星 | 俺の命はウルトラ・アイ

ウルトラセブン 散歩する惑星

『ウルトラセブン』「散歩する惑星」

テレビ トーキー 30分 カラー

放映日 1968年5月12日

 

製作国  日本

製作言語 日本語

放送局 TBS系

 


 

監修 円谷英二

 

プロデューサー 末安昌美

原案 虎見邦男
脚本 上原正三 

    山田正弘

 

撮影 永井仙吉

美術 成田亨

    岩崎致躬 

照明 新井盛

音楽 冬木透

 

録音  松本好正

効果  泉典彦

編集  柳川義博

助監督 山本正孝

制作主任 高山篤

 

特殊技術

撮影  鈴木清

美術  池谷仙克

操演   平鍋功

照明   小林哲也

光学撮影 中野稔

助監督  円谷粲

制作主任 熊谷健

 

東京現像所 

キヌタラボラトリー

TBS映画社


出演


中山昭二(キリヤマ隊長)

 

 

森次浩司(モロボシ・ダン)
菱見百合子(友里アンヌ)

 

 

石井伊吉(フルハシ・シゲル)
阿知波信介(ソガ)
古谷敏(アマギ)  

 

山村哲夫(アギラスー ツアクター)

鈴木邦夫(リッガー スーツアクター)

加藤芳巳
宮川洋一(マナベ参謀)

 


上西弘次(ウルトラセブン スーツアクター)
浦野光(ナレーター)

 

特殊技術 高野宏一

 

 

監督 野長瀬三摩地

 

 

制作  円谷プロダクション

     TBS


森次浩司→森次晃嗣
菱見百合子→ひし美ゆり子

石井伊吉→毒蝮三太夫

 台詞の引用・シークエンスへの言及

は研究の為です。

  円谷プロ様・TBS様におかれましては

ご理解・ご寛恕を賜りますようお願い申し

上げます。

  

 地球防衛軍作戦室において、ソガはV2か

らの連絡を受ける。未確認飛行物体が地球

に接近しおり、この物体はアステロイドベルト

から外れた小惑星と推測されることを、キリ

ヤマ隊長に報告する。

 

 隊長は、ダン・フルハシ・アマギの三隊員に

24時間のパトロールを命じる。

 

 ホーク1号で宇宙空間に捜索にでかけた三

人は、空飛ぶ島を発見し驚愕する。空飛ぶ島

はホークに向かって攻撃を仕掛けてくる。


 通信で島のホークへの襲撃を聞いたキリヤ

マは、ソガと共にホーク3号で捜索するが、島

を発見出来なかった。


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 ホーク1号は陸地に不時着していた。覚醒し

たダンは、フルハシ・アマギを起こす。ホーク

から出てみた風景は富士山もあり、一見日本

のようだ。

 
 だが、ダンは自分たちが居る場から見える

謎の建物を「宇宙前衛基地」と喝破し、その証

拠として、地球にはない、岩石を発見する。

 どうやら謎の島にホーク1号と三隊員は捕ら

えられ、島は日本に着陸したようだ。

 

 

  ダン「恐らくV2から連絡してきた小惑星です
      よ。」


  
  

  フルハシ「じゃあ、アステロイドベルトから
        来た訳か。」


 


  ダン「ええ、散歩する惑星ですよ。」


 


  アマギ「冗談言ってる場合じゃないぞ、
       侵略基地だったらどうする。」


  

  フルハシ「それじゃあ、あのへんてこりんな
        建物に殴り込みだ。」


 

 三人は建物の中に入り、アマギは強力な電磁

波を発信している機械を見つけ、島の心臓部に

当たるこの機械の停止を目指す。


 その作業中に建物のドアが突然閉まり、三人

は監禁されてしまう。


 
 小惑星から発信された電磁波により地球防衛

軍ではレーダーやウルトラホークが使用不能状

態になってしまった。


 キリヤマは、ダン・フルハシ・アマギの三隊員が
消息を絶ったのは、小惑星と関係していると直感し、
ソガ・アンヌ両隊員と調査に赴く。キリヤマ・ソガ・

アンヌの三人が乗るポインターは見えない壁にぶ

つかり、これがバリアであることを実感する。アン

ヌがバリアの中を双眼鏡で見るとホーク1号が映

った。ソガが通信しようとするも連絡は不能である。


 

  ソガ「隊長、あの惑星、移動しています。」


 

  キリヤマ「どうやら、目指す地点は地球防衛軍
        基地だ。」



 

 作戦室
 
 
 キリヤマが小惑星が基地に接近していることを報
告するとマナベ参謀(宮川洋一)は、新兵器で迎撃
することを検討する。


 

  ソガ「しかし、あの基地にはダン達が!」


 

  マナベ「現在この基地は麻痺状態にある。あの
       怪電波の為だ。放っとくわけにはいか
       ん。」


 

  アンヌ「小惑星の移動速度からすると、あと53
      分でこの基地へ。」


 

  マナベ「ここまで待とう、あと20分だ。これより
       中に入れる訳にはいかん。」

 


 小惑星の基地では、ダン・フルハシと背を踏み台

にしてアマギがロック装置の解除に取り組んでいる。

 

 

  ダン「さっきから、ずっとこの惑星、移動し続け
     ていますよ。もしかすると、この惑星自体
      が時限爆弾かもしれない。」
     


  フルハシ「何故、時限爆弾だと思う?」


 

  ダン「地球防衛基地に接近しているからですよ。
      侵略目的が無ければ、無人基地を送り込む
      必要もありませんしね。」

 


  フルハシ「そのことは本部でも気づいてるんだろ
       うな?」


 

  ダン「勿論ですよ。直径1キロメートルもあるんです。
     どっからでも見えますよ。」


 


  フルハシ「とすると、何故攻撃してこないんだ?」

 


  ダン「我々のことを気遣っているんでしょう。」

 

 

  フルハシ「アマギ、早くなんとかしろよ!味方から
        ミサイル攻撃目標にされるなんて決して
        名誉なことじゃねえからな。」



 

 アマギは遂にロック解除に成功し、三人は建物を出て
ホーク1号に乗り込むが、電磁波の為に発進出来ない。

 


  アマギ「電磁波を止める必要がある。」


 

  ダン「止めてきます。」

 


  アマギ「俺も行こう。」


 

  ダン「いや、一人で行きます。もし駄目なら
     (時限爆弾を取り出しし)これで爆破
     しますよ。
     すぐ飛び立てるようにしといて下さい。」


 

  フルハシ「よし、気をつけていけよ。」

 

  
 小惑星に怪獣リッガーが現れる。


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 ダンはセブンに変身しようとするが、電磁波でウル

トラアイが効かない。

 


 フルハシ・アマギがリッガーに応戦しようとするが、
全く歯が立たず、逆に窮地に立たされる。ダンはカ

プセル怪獣アギラを送って、リッガーの攻撃から同

僚二人の守護を命ずる。

 


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 リッガーの強力な攻撃に対して、アギラは奮闘

する。


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 ダンは建物に入り、時限爆弾で基地を爆破する。


 作戦室

 


 電磁波が消え、レーダーやホークが回復する。


 
 キリヤマとフルハシは通信に成功する。

 


  フルハシ「隊長、この惑星を早く攻撃して下さい。」


 

  キリヤマ「何だと?」


 

  フルハシ「この惑星自体が時限爆弾装置になってい
        ます。それに怪獣はめっぽう強い。早く
        粉砕しないと防衛基地が危険です。隊長、
        我々にかまわず早くミサイルを。」


 

  キリヤマ「参謀!」

 

  マナベ「攻撃用意!」


 

 ダンはアギラをカプセルに戻し、電磁波が消えた
こともあり、機能が回復したウルトラアイを用いて
セブンに変身して、リッガーに応戦する。


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 セブンとリッガーの戦いを知ったマナベは新兵器
キリ-の使用を待つ。


 キリヤマはホーク3号でソガ・アンヌ共に、ダン・
フルハシ・アマギの救出に向かう。


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 激闘の末、セブンはアイスラッガ-でリッガーの
首を斬る。



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 セブンはリッガーの首で小惑星を誘導して破壊に
導き、キリヤマガ・アンヌ・フルハシ・アマギの五人

も無事脱出に成功する。



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☆惑星に捕らわれた三人☆


 『散歩する惑星』の原案は虎見邦男である。

『ウルトラQ』「バルンガ」の脚本家を担当して

いる。

 上原正三はバンダイ『ウルトラ怪獣戯画』の

解説において、虎見について、次のように語

っている。

 


  お洒落で、性格もシャイで無口、バルンガのように
  茫洋とした人だった。山田さんとは兄弟の仲の良さ
  だった。1967年3月虎見さんは急逝した。虎見さん
  はウルトラセブンのプロットを用意していた。それ
  が「散歩する惑星」である。(1)

 


 虎見氏が残されたプロットを元に上原正三・山田正弘

が脚本化した。本第32話は、虎見邦男追悼作品である。

 本第32話において熱く描写される、ウルトラ警備隊

隊員達の絆に、ウルトラシリーズの脚本家達の友情

が深く反映していること思う。

 

 ダン・フルハシ・アマギの三隊員は24時間パトロー
ルを命じられ、勤務中に小惑星の襲撃を受け、拉致さ
れ、人質にされてしまう。

 

 三人を襲った事態は苛酷であり、厳しい。小惑星(を
操る存在)の冷厳な仕打ちにめげず、果敢に挑戦し、
更に逞しい存在となって成長していくところに、虎見・
上原・山田三氏のドラマの深さがある。


 いのちの歩みにおいては、何時なんどき、予想不可

能の悲しい事態が起こるかわからない。避けたいし、

逃げたい思いは勿論ある。だが、逃避しても、冷厳な

事実は私達を捕らえて離さないことも、起こる時には、

起こる。

 問題は、その不幸や悲しみから、どう立ち上がるか、

である。

 

 仏教の目覚めである「三摩地」をその名とされた野長
瀬三摩地監督は、突如惹起した不幸や悲しみに出会っ

ても、それに崩されず、その辛苦と痛哭の中で、なんと

か生きる喜びを見いだして行こう、という仏教の根本テ

ーマを静かに語っておられるようにも思えるのである。


  
 キリヤマ・ソガ・アンヌの三人がポインターで行方不

明の三人を探しに行くが、小惑星の近くにいながら救

出できぬ焦燥感も、緊張感に富んでいる。


 ダン・フルハシ・アマギの三人が、建物の中に入るが
ドアを閉められて監禁されるが、ロック装置解除に挑む
精神は、逆境にあっても、希望と勇気を持ち続けること
の大切さが語られている。


 

 同時に、上原脚本の個性の一つである、「不屈の闘

志」もこめられていることを察する。敵の奇襲にあって

も、決して臆せず、諦めず、暗闇の中で光を見いだし、

逆転の機会を待つ。


 ダン・フルハシが自分の背を踏み台にして、痛みに耐
えながら、アマギのロック装置解除作業に協力するの

は、仏教における菩薩の捨身の精神と通じるものを感

ずる。


 ダン・フルハシが自身を踏み台に捧げて、友の働き

に応答しようとする心根に、亡き友虎見邦男の脚本

世界のいのちを伝えようとする、上原・山田のこころ

がこめらていることを思う。


 フルハシ・アマギを守る為に自ら電磁波解除の作業
に赴くダン。

 

 友セブンの為に強敵リッガーに挑戦するアギラ。

 

 本第32話には、自身を捧げて仲間を助けようとする
「義」のこころが描かれている。これは、勿論、「他者」
に「踏み台」「犠牲」になることを強いる傲慢な「命令」
とは質を全く異にするものである。

 既に何度か述べたように、上原や盟友金城哲夫の

作品の根底には、沖縄に古くから語られている言葉、

「命どぅ宝」の教えがある。

 

 自己のいのち、友のいのち、家族のいのちを大切に

して、いのちに感謝する精神である。

 

 「いのちが横暴によって傷つけられるのは耐えられな
い」という精神が、セブンの地球防衛の活動の根にある。
薩摩次郎の優しさに感動した彼は、次郎のごとく生きて
いきたい、と願って、請われずとも、地球人のために、
その身を捧げていく。

 

 

  為諸庶類 作不請友
  (『仏説無量寿経』)

  
  《現代語訳》
  菩薩は、諸々の人々の為に、請われることがなくて
  も、自ら進んで友となるのである。


 虎見原案・上原・山田脚本、野長瀬監督が描く、ウルト
ラセブンの生き方には、まさに、この菩薩の慈悲の精神

が成就していることを実感する
 


 リッガーの強さを見て、自分やアマギにかまわず、キリ
ーを発射して欲しい、と キリヤマに懇願するフルハシ。
ここにも自己の命を任務に捧げようとする慈悲の精神

がある。

 


 セブンの活躍によって、小惑星の攻撃から地球が守ら

れ、ウルトラ警備隊隊員達も救出される。


 

 ラストシーンにおいて大空を飛翔するセブンの雄姿に、
「いのちを守りたい」という大いなる願いに帰してを生きる
者の優しさが光っている。

 

 

 

                         文中一部敬称略


 



(1)バンダイ 『ウルトラ怪獣戯画』

  「ウルトラ兄弟激闘史 Ⅳ」解説

 


 
参考資料 『ウルトラセブン』DVD.vol.8

 

 

                                 合掌