ウルトラセブン 悪魔の住む花 | 俺の命はウルトラ・アイ

ウルトラセブン 悪魔の住む花

『ウルトラセブン』「悪魔の住む花」

テレビ トーキー 30分 カラー

放映日 1968年5月5日

 

製作国  日本

製作言語 日本語

放送局 TBS系

 

監修 円谷英二

 

プロデューサー 末安昌美

脚本  上原正三
 

撮影 永井仙吉

美術 成田亨

    岩崎致躬 

照明 新井盛

音楽 冬木透

 

録音  松本好正

効果  西本定正

編集  柳川義博

助監督 安藤達己

制作主任 高山篤

 

特殊技術

撮影  鈴木清

美術  池谷仙克

操演   平鍋功

照明   小林哲也

光学撮影 中野稔

助監督  円谷粲

制作主任 熊谷健

 

東京現像所 

キヌタラボラトリー

TBS映画社

 


出演


中山昭二(キリヤマ隊長)

 

 

森次浩司(モロボシ・ダン)
菱見百合子(友里アンヌ)

 

 

石井伊吉(フルハシ・シゲル)
阿知波信介(ソガ)
古谷敏(アマギ)  

 

松尾文人(キタムラ博士)

伊藤実(高田医師)

山村哲夫(ダリー スーツアクター)

 

矢野陽子

斉藤陽子

 

若山真樹(香織の友人)

松坂慶子(香織)

 


上西弘次(ウルトラセブン スーツアクター)
浦野光(ナレーター)


 

特殊技術 的場徹

 

 

監督 鈴木俊継

 

制作  円谷プロダクション

     TBS

森次浩司→森次晃嗣

 

菱見百合子→ひし美ゆり子

 

石井伊吉→毒蝮三太夫

  台詞の引用・シークエンスへの言及

 は研究の為です。

  円谷プロ様・TBS様におかれましては

 ご理解・ご寛恕を賜りますようお願い申

 し上げます。

 


 快晴の日の花畑。

 

 可愛らしい女子大生達が花の美しさに感動

する。

 

 学生の一人香織は、キュートな美人だ。

 

思わずに花弁に接吻するした香織が苦しそう

にしているので、友人は不審に思う。香織は出

血して倒れ込んでしまう。


 

 香織の血小板が激減し、特殊な血液型で
一致しているアマギ隊員が献血する。


 「患者の容体に不審がある」という連絡を
受けたキリヤマ隊長は、ダンに調査を命じる。


 

 夜
香織はベッドから抜け出し、恐ろしい表情を
浮かべ、心配して迎えに来た看護師を殴り
倒す。かけつけたアマギも殴打される。香織
は血液を欲していたのだ。

 


  ダン「こんな美しい顔で、血を吸う訳がな
      い!きっと何か原因がある!」


 

 ダンはアマギを殴り倒した後、病院のベッド
で疲れて熟睡している香織の美しい寝顔を見

て、彼女は何者かに操られている、と直感す

る。キリヤマは、香織の療養先をウルトラ警

備隊基地に決定する。


 電子顕微鏡で、香織が握りしめていた花弁

を分析したダンは、病気の原因が宇宙細菌

ダリ-であることを突き止める。


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 キタムラ博士は、「フィブリノーゲンを食ってる

恐ろしい奴です」と解説する。

 


  アンヌ 

  「この細菌に、血を吸い取られていりのね。」


 

  ダン「こいつの為に恐ろしい吸血鬼にされて
     いるんだ。」

 


 アンヌは、ダリ-退治の方法を問う。だが、キ

タムラ博士は「現代の医学では」無理、と述べる。

 


 夜
香織は再び起き上がり、基地から逃げ出す。隊

員達が香織に光線を浴びせられて気絶し、かけ

つけたキリヤマ・アンヌも光線を香織の浴びて

歩行が厳しくなってしまい、倒れ込む。

 アマギが香織について歩み出すのを隊長は

見る。

 


  キリヤマ「アマギ、行っちゃいかん!」


 ダン・ソガが二人を追跡する。


 

 遊園地

 回転木馬に乗るアマギと香織の二人は、幸せ
一杯の笑顔を浮かべて談笑し合う。


 

  ソガ「アマギ!」


 

 ダン・ソガは倒れているアマギを発見し、(ダ
リ-に洗脳されて)逃走する香織を、―かけつ

けたフルハシ(石井伊吉、後の毒蝮三太夫)の

提案もあり―気絶させて基地に収容して、ベ

ッドで寝かせる。


 キリヤマは宇宙細菌撃退の方法を問うが、

キタムラ博士と高田医師は、「今の所」は不可

能であることを強調する。


 そこへ意識が回復したアマギが現れ、その

心情を熱く語る。

 


  アマギ「彼女を治してやって下さい!輸血が
       必要ならば、僕のをいくらでもあげ
       ます!隊長!ダン!」


 


  ダン「(独白)たった一つだけ方法がある。
      ミクロ化して体内に潜り込むことだ。
      だが、これは非常に危険だ!」


 

 ダンは、隊員仲間が部屋から去って一人にな

ったことを確かめると、セブンに変身して、ミクロ

化して、香織の鼻腔に入る。




 

  香織の体内。

 

 ついにセブンはダリ-を発見する。


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ダリ―の眼光が煌めく。


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 激闘になり、ダリ-が放った雪のような光線

にセブンは苦戦する。


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 セブンはダリ-にシャボン玉を浴びせる。
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ダリ―の体はシャボン玉に溶かされる。

セブンは香織の体から出て花束の花に入る。


 

  香織「あたし、どうしたの。」

 


 
 晴れた日の花畑。


  回復した香織とアンヌが花を眺めている。


  ダンとアマギが現れる。


 

  アマギは一輪の花を香織に渡す。



 

  ☆美しいひと香織さん☆


 「悪魔の住む花」の魅力は何か?

偉大な傑作なので、数多くの答えが挙がる

ことは充分に推測しうるが、根本は、何と言

っても、ヒロイン香織役の松坂慶子の可愛

らしさであろう。


 後に日本映画界を背負って立つ大女優と

なる女性は、少女時代に「ウルトラセブン」に

おいて、その可憐な個性の花を咲かせてい

たのである。

 

 女性の年齢を言うのは失礼と知りつつ、敢

えて言う、放映当時十五歳の美少女であった。

少女で既に女子大生を堂々と演じきっている

のだから、その存在感の凄さは当時から光っ

ていたことが窺える。


 上原脚本は、深遠な世界を探求している。タ

イトルから重層的だ。「悪魔の住む花」は、勿論、
花弁に宇宙細菌ダリ―が潜んでいたことを明示
しているが、同時に、純真な「花」である香織の

肉体に、「悪魔」のダリ―が「住」みついてしまっ

たことも指している、と言えよう。

 

 1966年のアメリカ映画『ミクロの決死圏』 

FANTASTIC VOYAGE(監督リチャード・フライシ

ャー)に想を得て、人体の内部という未知の世界

に、主人公が入ってゆく物語だ。


 宇宙細菌ダリ―の名は、スペインの画家でシュ

ールレアリズムの作家サルバトール・ダリに由来

すると言われている。偶然だが、ダリが盟友ルイ

ス・ブニュエルの監督作品『アンダルシアの犬』 

UN  CHIEN  ANDALOU  の脚本・出演を担当

したのは、本第31話放映年である1968年から丁度

40年前の、1928年の出来事であった。


 今回の特殊技術の美術監督は、池谷仙克。

香織の体内の美術の神秘性と幻想世界は、白

眉である。


 ダリ―との戦いも、これまでセブンが経験した
ことのない人体。武器の使い方によっては、香

織の体を傷つけてしまうかもしれない、という緊

張感をセブンは背負うことになる。


 少女を狙う卑劣な宇宙細菌に対する、ダンの怒
り、アンヌの悲しみ、アマギの切ない痛み。


 一人の美少女が苦しんでいる。彼女を救えずして
「ウルトラ警備隊」としての存在意義を成立し得よ
うか?


 この問いが、ダンやアマギの胸に熱く燃えたこと
は充分に窺えよう。


 


 香織とアマギが回転木馬に乗って微笑み合うシー

ンは、幻想的・耽美的で深い感銘を受けた。この場

面に流れる、冬木透の音楽は、甘美さの極致である。

 

 

 

  「音楽が恋の糧なら、続けてくれ」


 

とは、『十二夜』のオーシーノ公爵の切ない言葉だ

が、まさにこのシーンの冬木サウンドは、「恋の糧」

そのものだ。


 
 アマギが香織に抱いたほのかで淡い想い。

 

しみじみと感動する。

 

男にとって、美少女への片想いとは、全ての行動・

思考の原点なのだ。


 

 ラストで香織が語る言葉も深い。

 
  
 アマギにとって、香織が元気になって微笑んでくれ
れば、それで嬉しいのだ。「恋人になりたい」という気

持ちが無い訳ではない。そうした大いなる希望よりも、

「大切なひとが幸せに生きてくれている」ということへ

の感謝がある。切ないけれども、自分のものにする

よりも、彼女が生きてくれるだけで、アマギは幸せな

のだ。


 

 「欲する」よりも、「愛する」ことに充足を感ずる。

 

 

 一輪の花は、その心を咲かせてくれているのだ。


 

                     

 

                         文中敬称略

 

 

 参考資料 『ウルトラセブン』DVD.vol.8



                            合掌