ウルトラセブン サイボーグ作戦

『ウルトラセブン』「サイボーグ作戦」

テレビ　トーキー　30分　カラー

放映日　1968年4月7日

製作国　日本

製作言語　日本語

放送局　TBS系

監修　円谷英二

プロデューサー　末安昌美

脚本　藤川桂介
 

撮影　永井仙吉

美術　成田亨

　　　　岩崎致躬　

照明　新井盛

音楽　冬木透

録音　　松本好正

効果　　西本定正

編集　　柳川義博

助監督　安藤達己

制作主任　高山篤

特殊技術

撮影　　　鈴木清

美術　　　池谷仙克

操演　　　平鍋功

照明　　　小林哲也

光学撮影　中野稔

助監督　　円谷粲

制作主任　熊谷健

東京現像所　

キヌタラボラトリー

TBS映画社

出演

中山昭二（キリヤマ隊長）

森次浩司（モロボシ・ダン）
菱見百合子（友里アンヌ）

石井伊吉（フルハシ・シゲル）
阿知波信介（ソガ）　　　　

古谷敏（アマギ）　　

広瀬明（野川由起夫）　　　

宮内恵子（早苗）

小西良夫

岡部正（キタムラ博士）

菊池英一（ボーグ星人　スーツアクター）

近藤征矢（ボーグ星人人間体

　　　　　　ボーク星人声の出演)

上西弘次（ウルトラセブン　スーツアクター）
浦野光（ナレーター）

特殊技術　的場徹

監督　　　　鈴木俊継

制作　　円谷プロダクション

　　　　　TBS

　☆

　森次浩司→森次晃嗣

　菱見百合子→ひし美ゆり子

　石井伊吉→毒蝮三太夫

　宮内恵子→牧れい

　菊池英一→きくち英一
　☆

　　台詞の引用・シークエンスへの言及

　は研究の為です。

　　円谷プロ様・TBS様におかれましては

　ご理解・ご寛恕を賜りますようお願い申

　し上げます

　☆☆

　夜
　隕石が朝日沼に落ちる。

　
　昼
　地球防衛軍の通信隊員野川由起夫は、
美しい婚約者水城早苗と車で地球防衛軍

基地に向かっていた。

　二人は、朝日沼の景観を眺めている。

　　野川「早苗ちゃん、ソガさんは先輩だけど、未だ
　　　　　　独身だからな。」

　　早苗「了解、了解、刺激しないように婚約披露の
　　　　　挨拶だけに止めておきゃいいんでしょ。」

　　野川「明日からイビられるんじゃかなわいからな。」

　　　　
　野川が早苗と共に車に乗り込んで、アクセルを踏むと、
何故か前進できない。

　　早苗「野川さん、危ないじゃない」

　野川の車は沼の宇宙船に引き寄せられてしまう。

　若者達が、「♪俺たちゃ、街には住めないからに」と
「雪山賛歌」を歌っていると、倒れている早苗を発見す
る。

　
　地球防衛軍基地作戦室

　ダン「はいこちら作戦室。え、女が。隊長、朝日沼

　　　　付近で倒れているっていうんです」

　キリヤマ「朝日沼」

　ダン「ソガ隊員、パトロールに出動しましょう」

　フルハシ「おい、ダン、ソガにはお客が来るんだぞ」

　アンヌ「それもソガ隊員のお友達とその婚約者」

　アマギ「俺が代わってやるよ」

　ソガ「いいんだ。待たせたって退屈しない二人だから。

　　　　隊長行ってきます」

　朝日沼にダン・ソガが駆けつけ、救出された早苗と

対面する。早苗は「野川さん、野川さん」と婚約者の名を呼ぶ。

　　ソガ「おい、野川は何処行ったんだ」

　　ダン「ソガ隊員、この人は僕が基地に連れていきます」

　ソガは現場を探索し、オイルの漏れた跡が、沼に通じて

いるのを発見する。フルハシ・アマギ両隊員も協力するが、

野川の行方は杳として知れなかった。

　作戦室

　キリヤマ「明朝を期して朝日沼を中心にB地区をの捜索を

　　　　　　　開始する」

　　ダン「ソガ隊員、何か手がかりが掴めるかもしれませんよ」

　　ソガ「うん」

　野川隊員は沼底に潜む甲冑状宇宙船の中にいた。

銀色の服を着た女性が、拘束台に束縛されている

彼に話しかけている。

　　銀色の服を着た女性
　　「お前は、今、新しい生命を得た。その生命を我々
　　　の為に使ってもらう。」

　野川、頷く。

　　銀色の服を着た女性
　　「お前は、ボーグ星人に選ばれた人間なのだ。
　　　わかるだろうね、お前は地球防衛軍の一員で

　　　ある資格をフルに生かして我々の為に働いて

　　　貰わなければいけない。」
　　　

　銀色の服を着た女性は野川に光線と煙を当て、

縛を解く。立ち上がる野川。

　　銀色の服を着た女性「行け」

　野川は歩きだす。

　銀色の服を着た女性は笑い出し、本来の姿として

のボーグ星人に戻る。

　夜　
　

　早苗の部屋。　野川が入室する。

　　野川「早苗さん」

　　早苗「え」

　　野川「早苗さん、僕です、心配かけちゃったね。」

　　早苗「野川さん、何を？」

　　野川「それは言えない、秘密を要する仕事が出来
　　　　　たんだ。」

　　早苗「もう済んだの？」

　　野川「しばらくのお別れに来たんだ。」

　　早苗「野川さん」

　　野川「早苗さん、僕がここに来たことを絶対に

　　　　　 口外しないで下さい、いいですね。」
　　　　　

　早苗、頷く。立ち去った野川は、まるで別人のよう

になっていた。　

　地球防衛軍基地に野川がやってきた。

　　ソガ「野川。貴様、心配かけやがって！何処を

　　　　　ほっつき歩いていたんだ？婚約者を放り出

　　　　して何をしてるんだ？地球防衛軍隊員の風上

　　　　にもおけない奴だぞ」

　　キリヤマ「まあ待て。とにかく無事に帰って来たんだ。

　　　　　　　野川君、今日はゆっくり休みたまえ」

　　野川「はい」

　　ダン（独白）「あいつ、まるで死人のようだ」

　　ソガ「畜生。思いっきりとっちめてやろうと思ったのに」

　　キリヤマ「ソガ。一眠りしてから気の済むまで締め上げて

　　　　　　　　やるんだな」

　　ダン「ちょっと見てきます」

　野川は地球防衛軍の隊員を殴って気絶させ、何か

を基地に設置していた。ダンが諫める。

　　野川「騒ぐのはやめ給え。午前6時、この基地が、

　　　　　　勤務交代の　隊員で一杯になる時が、地球
　　　　　　防衛軍基地の最後なのだ。地球はあと数時

　　　　　　間で我々ボーグ星人のものになるのだ。」

　ダンが制止すると、野川は彼に殴りかかって打擲する。

ソガがショックガンで野川を気絶させる。アンヌは「ダン」

と彼の名を呼んでかけよる。

　キリヤマは野川が仕掛けていたのが小型のプレート

爆弾であったことを知る。

　メディカルセンター

　キタムラ博士が、野川のレントゲン写真を

キリヤマに見せる。

　　キタムラ「野川隊員は部分的にですが、サイボーグになって
　　　　　　　　いたんです。」

　　キリヤマ「サイボーグ！？」

　　キタムラ「彼を操っていたのは脳にしかられた催眠プレート　
　　　　　　　　ですね。」

　　アンヌ「野川隊員は元の人間に帰れないんでしょうか？」

　　キタムラ「何とかなるでしょ、アンヌ隊員手術の用意を。」

　うなされる野川は「朝日」とつぶやく。キリヤマはアンヌを

連れてホーク1号で朝日沼に向い、ボーグ星人の宇宙船を

攻撃する。

　　午前5時50分　メディカルセンター

　フルハシ・アマギの必死の捜索にも関わらず、爆弾の最後

の一個が見つからない。そこへ銀色の服を着た女性実はボ

ーグ星人人間体が侵入し、フルハシ・アマギ・キタムラを気絶

させ、眠る野川の前に立つ。

　ボーグ星人「残された一個の爆弾でも基地は爆破出来る。

　　　　　　　　　だが、お前は裏切った。」

　その時、ダンがウルトラガンを発射して、銀色の服を着た女

性の凶器を撃ち、野川を救う。銀色の服を着た女性は逃走し、

ボーグ星人に戻る。　

　ボーグ星人は巨大化し、ダンもウルトラアイでウルトラセブンに

変身し巨大化して追跡する。

ボーグ星人「セブン、何をしている？」


　ウルトラセブン「プレート弾の残りの一個はどこ

　　　　　　　　　　にあるのだ？」

　ボーグ星人「残り一つはお前に付けてあったのだ」

　セブンは自身の体に付けられた爆弾を外し、ボーグ

星人に投げつける。

　セブンとボーグの激闘が、緑豊かな地に展開する。

　セブンの強さにボーグ星人は恐れを感じ逃げよう

とする。

セブンは、アイスラッガーを放つ。

アイスラッガーはボーグ星人の首を切断する。

ナレーター「事件が解決して数週間後、全快した野川隊員と

　　　　　　　早苗にとって大きな喜びが待っていた」
 

　結婚式にはウルトラ警備隊隊員も出席して二人を祝福する。

　ソガ「気をつけて」

☆甲冑に身を包む侵略者☆

　　第27話「サイボーグ作戦」、幼少期から今日まで、再放送・

ビデオ・DVDで何十回と見ています。ゾクゾクと迫ってくる恐怖

感は格別です。『ウルトラセブン』の中で、「特に怖かった作品

を三つを挙げよ」と言われたら、第2話「緑の恐怖」、第43話「第

四惑星の悪夢」そしてこの「サイボーグ作戦」を選びます。

　幼い頃祖父と共に見た時、大感激しました。

　藤川桂介の最初の構想「半人間」では、野川と早苗の恋は

引き裂かれた悲恋に終わります。侵略者から脳にプレートを

埋められた野川は手術が無理で、早苗との結婚を諦め、二人

は涙を飲んで別れるという物語だったのです。

　難しい題材が織り込まれた悲痛な物語ということもあってか

「半人間」は製作が無理になり、恋する二人が苦難を超えて

愛を成就する「サイボーグ作戦」に改稿されました。

　藤川脚本と鈴木演出と的場演出は、視聴者の心にサスペン

スに満ちたドラマを描き出し、恐怖感と緊張感で胸に溢れさせ

てくれます。

　深夜の沼に落ちてきた隕石。沼を旅する恋人達を引き寄せる

宇宙人。

　沼地に住む女性。魔力のような不思議な力を持った彼女、洗

脳した男性を自身の野望の計画のために働かせる。

　ボーグ星人人間体役の近藤征矢の名演は、迫力があって怖

かったです。近藤さんの知的な美貌が、ボーグ星人の冷たい

魅力を輝かせてくれています。

　藤川脚本・鈴木演出の描く怪異の不思議な世界には、シェイ

クスピアの戯曲傑作『マクベス』　Macbeth　が大きな影響を与え

たのではないかな、と想像しています。

　銀色の服を着た女に操られる野川の関係性に、『マクベス』に

おける三人の魔女とマクベスの物語を想起しました。

　スコットランドの武将マクベスは、「綺麗は汚い、汚いは綺麗」と
語る魔女三人に出会い、やがて「王になる」と予言され、野望に目

覚め、残酷な殺人を数多く犯して王位を手に入れます。けれども

王位を得た後は、不安の日々で、自身が滅ぼし命を奪った先王ダ

ンカンの息子マルコムやライバル・マクダフに追い詰められ、魔女

に踊らされていた事に気づき後悔しますが、マクダフに挑み討た

れて破滅するという悲劇です。

　不思議な催眠術を使う女性に、男が野望の道具として使われる

という点に、『マクベス』と似た妖気を感じるのです。

　野川（陽）とサイボーグ野川（陰）を、広瀬明が声と表情で見事に

演じ分けました。

　「ひとりのなかに潜むふたつの顔」という点にも、、「綺麗は汚い、

汚いは綺麗」と通底するものを感じます。

　野川はマクベスと違い、サイボーグから、本来の自己に帰り、良

心を回復し、婚約者と結ばれ幸福になるので、結末は大きく違って

おりますが、洗脳され闇の世界に入っていく段階は、とても似てい

ます。

　女性らしいボーグ星人ですが、彼女のドラマにも『マクベス』との
相似を感じます。

　野望と挫折の悲劇に、『マクベス』のドラマを想起せずにおれませ

ん。

　セブンとボーグのバトルのシーンは、上西宏次と菊池英一（14・15
話のセブンのスーツアクター）というセブンスーツアクター役者二人
による、「夢の対決」が実現しました。鍛え抜かれた二人の激闘は、
特に見応えがあります。

　セブン対ボーグ星人のバトルには、森次浩司・上西弘次＆近藤征

矢・菊池英一という声優二人・スーツアクター二人の名演が激突し

迫力が極まるバトルになっています。

　セブンの身に爆弾が仕掛けられたということは、野川とダンの激闘

の場になされたのかと、藤川脚本の緻密さに驚嘆しました。セブンが

爆弾を投げ返し、ボーグ星人に激闘を挑みます。バトルシーンでも白

眉と思われます。セブンがアイスラッガーでボーグ星人の首を討つ場

にも、『マクベス』のクライマックスを感じます。
　

　ラストの結婚式の幸福一杯のムードは、序盤から中盤の恐怖の描

写が凄絶であったこともあり、視聴者の胸に大きな安堵感を与えてく

れます。
　

　侵略者の野望から救われて遂に結ばれた二人。その二人を優しく

見守るソガ隊員。阿知波信介は無言の演技にも、暖かさがあります。

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　文中一部敬称略

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　合掌

 

　参考資料　『ウルトラセブン』　DVD VOL.7

　　2011年8月1日に記事を再編しました。

　　近藤征矢様

　　名演に感謝します。

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　南無阿弥陀仏

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　セブン